「走り続けている人は、ただそれだけでもドキュメンタリーになる」。これは以前、インタビューの際にある映画監督が発した言葉だが、たしかに、常に前を向き、進化を続けている姿勢というのは確実に人の心を惹きつける。当サイトでもおなじみとなったバッグブランド[master-piece(マスターピース)]が第一線で活躍し続け、世界中の人々から厚い信頼を獲得しているのも、きっとそういった理由からであろう。
そんな[master-piece]の姿勢をより多くの人に伝えたいという僕らの想いから誕生した本特集『A Documentary of master-piece』では、彼らの根幹とも言える自社工場、BASE大阪と、そこで働く職人たちにフォーカスし、前後編2回に渡って、EYESCREAM.JP流の[master-piece]に関するドキュメンタリーをお届け。前編となる今回の「職人編」では世代も境遇も全く異なる、BASE大阪の職人、計6名へのインタビューを敢行した。
Photo:Masaya Fujita、Text&Edit:Keita Miki
Case 01 鶴川健一・飯田大貴
— お2人が鞄職人になろうと思ったきっかけを教えてください。
鶴川:本当になんとなくって感じなんです。特に鞄が好きって訳でも無くて、普通に[master-piece]のウェブサイトの求人を見て、電話で応募しました。それまで、職人の経験は一切無かったんですけど、何故か惹かれたんです。
飯田:僕はやっぱりファッションが好きなので、ファッションに関わる仕事をしたいと思って就職活動をしていたんですが、どうしても入りたかった会社に落ちてしまって。最初からそこがダメだったら「売る側」では無く、「作る側」に回ろうと思っていたので、[master-piece]のウェブサイトを見て、アルバイトの求人に応募しました。
— 飯田さんはBASE大阪で働き出してどのくらいですか?
飯田:今、丁度5ヶ月くらいですかね。BASE大阪の存在はここで働き出す前から、『カジカジ』の特集ページを見て知っていました。
— BASE大阪の職人になって良かったと思う時はどんな時ですか?
鶴川:人との付き合い方を学んだ時ですかね。僕は基本的に1人が好きで、出来る事ならあまり他人と喋りたくないんですけど(笑)、ここにいるとそういう訳にもいかないじゃないですか。何かを縫ったり、作ったりするのは元々好きなので、そういう部分から学ぶことの方が案外、自分の中では大きいのかもしれません。
飯田:とにかく、今は毎日鞄を縫うことが楽しくて、それだけでも思い切って応募して正解だったなと思っています。この仕事は自分の性格に合ってるのかなと。受験勉強の時よりも長く座っているので、時々腰が痛くなりますけど(笑)。
— 実際に製作している側からすると、[master-piece]のバッグの魅力はどんな部分にあると思いますか?
鶴川:一番は機能性ですかね。バッグ毎に色々な機能が付いていますし、パーツのバランスもすごく良いと思います。実際に出来上がった時に「良く考えられてるな~」と感心するぐらい。
飯田:ポケットや収納が多いのが個人的にはすごく好きですね。あとは縫いながら「この生地、格好良いな」って思うことも良くあるので、使われている生地にも注目してもらえればと。
— では、BASE大阪の魅力は?
鶴川:他の工場と比較すると、自由にやれる部分が多いところじゃないですかね。あとはみんな仲が良いし、色々な話も出来る。何でも自由にやらせてくれるし、生産ベースで考えなくて良いので、物作りの勉強をするには最高の場所だと思いますよ。
飯田:今、鶴川さんも話していた通り、一番の魅力は人かなと。若手もベテランも関係無く、みんな仲が良いので、そういうところは本当に素晴らしいなと思います。
— 最近ご自身が担当したバッグの中で、お気に入りの1品を教えてください。
鶴川:『SPEC』ですかね。”今までで1番”と言えるくらい手間がかかっているバッグなので。
飯田:僕は伊勢丹別注のナイロンのリュックが印象に残っていますね。たくさんの工程に携わらせてもらったので思い入れもあるし、出来上がった時にはただただ嬉しかったです。