対談:DJ EMMA(NITELIST) × HUE(DELUXE)
旧知の仲である2人が語る、「ファッション」と「音楽」の交差点。

by Mastered編集部

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— HUEさんが初めて見た頃のEMMAさんと、今のEMMAさんでは何か変わった部分ってありますか?

HUE:若い頃に見たEMMA君は、本当に雲の上の存在でしたね。そういう意味ではこうしてお話しさせて頂く様になり、段々とEMMA君の人柄も分かって、イメージは変わりましたが、昔からプレイ自体は全く変わらないですね。むしろ歳を取るにつれて、どんどんパワフルになっているような気がします。EMMA君って、色々な所に対しての免罪符を持っている人だと思うんですよ。レコードを軸に色々なジャンルの人を集めて、僕たちには出来ないことを実現出来る。そういう部分の厚みが自然とプレイに出ているように思います。

— なるほど。では続いて、本題である『EMMA HOUSE XIX MOUSE-COLORED CAT』に話を移しますが、前回のインタビュー時にEMMAさんは「EMMA HOUSEに関しては今の所、全然リリースの予定が無い」と話していました。そこから考えると結構短いスパンでリリースされたなぁ、と(笑)。EMMA HOUSEシリーズの新作を作ろうと思ったのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

DJ EMMA:あれ、そんなこと言いましたっけ………?

一同笑

DJ EMMA:まぁ、次の作品って意味ではいつも何かしら考えてはいるんですけど、大きなところでは『ACID CITY』というプロジェクト自体が、色々と反対はされながらも(笑)、段々と形になって来た。そのお陰で僕の中で一段落というか、ちょっと落ち着いた部分が出来まして。次に何をすべきかってことが明確になったんですよね。それが何かと言うと、やっぱり僕の中では2011年の3.11ってすごく衝撃的で、結果、表現したいと思ったのは、小さい頃に幼馴染と何も考えずに、言葉さえ交わさずに一緒に居るような、”あの感覚”。それを表現するには、EMMA HOUSEしかないのかなって結論に至りました。だから、どちらかと言えば初期のEMMA HOUSEに近いように思いますね。感覚的にそれを意識した部分もありますし。

— ということは、数あるシリーズの中でEMMA HOUSEシリーズはEMMAさんにとっても特別な存在であると。

DJ EMMA:最初は全然そんなこと思っていなかったんですけどね。だけど、「EMMA HOUSEをきっかけにHOUSEを好きになりました!」とか「音楽を好きになりました!」って人達と数多く出会う内に、自分の中でも自然と意識してしまうというか、ある種、特別な存在になっていったのかもしれません。気付けば、EMMA HOUSEシリーズも長くなりましたからね。数字の上でもそうですけど、一番最初のEMMA HOUSEは1995年にリリースしたので、来年で20周年になるんです。不思議なことに5年も新作を出して無かったのに、図ったかのように19作目が19年目に出るという………(笑)。20年もやってるんだなと思うと、自分の中にも、それだけの作品を生んできたシリーズだという自負は生まれますね。

— あえて言葉にするならば、過去18作と比較して、今回の『EMMA HOUSE XIX MOUSE-COLORED CAT』はどんな作品になっていますか?

DJ EMMA:テーマとしてあるのは「ただ楽しいだけじゃない」ってこと。そうじゃない時があるからこそ、楽しい時を共有出来たり、それを大事に思えたりする。実はこういうことを教えてくれたのって、アスリート達なんですよね。一生懸命練習をして見事1等賞を獲る人もいれば、そうじゃない人もいる。彼らが流す涙はただの嬉しい涙なのかって言えば、そうでは無いじゃないですか。だから、僕スポーツを見ているとついつい泣いちゃうんですよね。

HUE:嘘が無いですよね、スポーツには。

DJ EMMA:そうそう。おこがましいんですけど、日頃アスリートから教えてもらっているそういう感情を音楽で表現出来ないかなと思って。今回のアルバムで完全にそれが実現出来たかと聞かれたら、それは僕には分からないですけど、きっとみんなが共感出来るものにはなっているんじゃないかな。今支持されているものに僕が近づいていくのでも無ければ、その逆でも無い。もっと違うところにある表現が今回は実現出来たように思います。一発録りで一切編集は無し、本当に1回限りで録音しているのにも意味があって。他のDJからしたらアホらしいことなのかもしれないですが、僕にとっては大事な事なんです。綺麗なミックスなんて簡単に出来るんですよ。ライブじゃないミックスなんて簡単なんです。でも、そうでは無いものを商品化することに意味があるし、EMMA HOUSEはライブだからこそ20年もやってこれたんだと思います。

— 20作目のEMMA HOUSEは来年に出ると考えても問題無いですか?

DJ EMMA:来年出しますよ。20年目に20作目。来年は僕がDJを始めてから30周年の年でもあるので、その記念盤を『EMMA HOUSE XX』として、僕の誕生日である9月に出すってことまでは決めています(笑)。

DJ EMMA『EMMA HOUSE ~LIVE AT YELLOW~』

DJ EMMA『EMMA HOUSE ~LIVE AT YELLOW~』

— ではEMMA HOUSEの20年、DJ活動の30年を振り返ってという話は、またその機会に(笑)。今回の『EMMA HOUSE XIX MOUSE-COLORED CAT』も含めると、EMMA HOUSEシリーズには20作もの作品がありますが、EMMAさんの中で特に印象深い作品は?

DJ EMMA:印象深いと言えば『EMMA HOUSE Live at Yellow』になりますかね。お客さんがいる中で後ろにレコーダーがセットしてあったんですけど、本当にものすごく孤独で。お客さんが「頑張れ!」って言ってくれるのさえプレッシャーになって、吐きそうでしたね(笑)。レコーディングした時間帯もそんなに深い時間帯では無かったし、僕が考えたのは結構地味な選曲だったんですよ。でも現場は目の前にある訳で、盛り上げなくちゃいけないし、良い意味でも悪い意味でも、とにかく印象に残っている1枚です(笑)。

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