対談:DJ EMMA(NITELIST) × HUE(DELUXE)
旧知の仲である2人が語る、「ファッション」と「音楽」の交差点。

by Mastered編集部

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— 最近、渋谷にHMVの新しいレコード屋が出来たり、結構アナログ周りに面白い動きが出て来ていますね。

DJ EMMA:かなり売り上げも良いらしいよ。

HUE:それは良いニュースですね。

DJ EMMA:あとはTechnicsが廃版になってからもう結構経つんだけど、Technicsブランドも復活したし、Pioneerから30年ぶりにアナログターンテーブル(PLX-1000)が出た。

HUE:なるほど~。そういう企業の援護射撃は重要ですもんね。

— レコードに対して強いこだわりを持っているEMMAさんは、レコードの未来についてどのように考えていますか?

DJ EMMA:一言で言うならレコードは希望です。僕にとってアナログに勝るモノは存在していなくて、最近DSDレコーダーを使っているのもそういう理由から。音楽に限らず、テクノロジーっていうのは利便性を追い求めるもので、これまでその陰で失われていくものを嫌と言うほど見てきました。例えばCDが出てきた時も「うわー」って思ったし(笑)。もちろん、それで音楽は大きく広がったんだけど、今やデジタル配信、ストリーミングと音は悪くなっていく一方です。恐ろしいことにDJがYouTubeでタダで拾ってきた曲をかける時代になってしまった。そりゃ、安いギャラかもしれないですよ。それでも、DJがお客さんの前に出すモノがYouTubeでタダで拾ってきた曲というのは本当に恐ろしい気がするんです。そもそもSpotifyなどの普及によって、日本以外の国では、現状パッケージメディアってほとんど存在していなくて、世界の流れとしてはデジタルがハイレゾ化していってるんですが、不幸中の幸いと言えるのか、日本はまだその状態にはありません。まぁ、Spotifyみたいなサービスはそれはそれで権利を守っているんですけどね。その代償として欧米ではパッケージメディアがなくなってしまった。で、今度はハイレゾ。ダンスミュージックの場合は逆に潰れた音が気持ち良かったりもするので、ほとんどハイレゾ音源は無いですけど。要は何を目指しているかっていうと、結局はアナログの音なんですよ。でも、何を選ぶかは人ぞれぞれの問題。僕が料理人ならお客さんには生の本マグロを出してあげたいと思う。1枚 1,800円とかするけど。でもだからこそ、1曲 100円とか、タダでやっている人に負けるかよ!って想いもあるんです。例え100人中99人、味が分からないとしても、生の本マグロを「どうだ、うまいだろ!」って出してあげたい。

— 以前にJAZZY SPORTのMasaya FantasistaさんとuniversoundsのRYUHEI THE MANさんの対談をやった時に、今の若い子にアナログを聴く為にターンテーブルを買えっていうのはハードルが高すぎるんじゃないかって話になったんです。そういったハード面の問題も徐々に解決に向かいつつあるのでしょうか?

DJ EMMA:DSDレコーダーだったら中古で2~3万円くらいで見つかると思いますけどね。まぁ、それでも高いのかもしれないけど。でも、これからAppleがハイレゾ配信をやりますからね。iPhoneで音楽を聴くのが良いか悪いかは分からないですけど、多少状況は変わるんじゃないでしょうか。僕も、基本家では無音なんですが、何かあった時の為にSid Viciousの”My Way”をiPhoneに入れていますよ。ハイレゾで(笑)。

— ものすごく良い話ですね。

DJ EMMA:今はヘッドフォンの再生能力が高くなって来てますしね。僕はそういうヘッドフォンは持っていないけれど、それでもハイレゾの違いは分かりますよ。というか、例え分からなくても、分かった気になってて良いんじゃないですかね。良い物には間違いない訳で。結局、安い高いって話になるとファストファッションと同じ話になっちゃうんですよね。音楽でも洋服でも、良いものは高いけど、大事にするじゃないですか。

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