ロベルト・バッジョ、マルコ・ファンバステン、アイルトン・セナにボリス・ベッカー。思えば子供の頃、僕らを夢中にさせたアスリートたちは、必ず[DIADORA(ディアドラ)]という文字を身に纏っていた。そんな愛しの[DIADORA]のシューズたちが、近年ファッションの世界でも大きな注目を集めている事は既に当サイトでも継続的にお伝えしてきているが、この度、24 kilates、Concepts、Hanon、KITH、Packer Shoes、Patta、Soleboxという世界に名だたる7つのキーアカウントが参加した注目のカプセルコレクションが新たに登場。
『FROM SEOUL TO RIO PACKS』と銘打たれたこのプロジェクトでは、1988年に当時契約していたアスリートの為に[DIADORA]が開発した『IC 4000』と『INTREPID』という2つのモデルにフィーチャーし、各ショップから、Made in Italy のシューズと共に、特別にデザインされた、トラックジャケット、T シャツ、バッグも同時リリースされる。
本特集では、そんな『FROM SEOUL TO RIO PACKS』を、同コレクションを日本で唯一フルラインナップで取扱うmita sneakersとBEAMS T HARAJUKUの証言を得ながら、徹底解剖。各シューズの紹介はもちろん、mita sneakersのクリエイティブディレクターである国井栄之と、BEAMS T HARAJUKUのショップマネージャーである新井伸吾という両キーマンのインタビュー、そしてBEAMS Tによるスタイル提案と、盛り沢山の内容でお届けしていく。
なお、商品の販売はmita sneakersとBEAMS T HARAJUKUにて、9月3日(土)から、期間限定のスペシャルイベントという形式でスタート。気になる方は、こちらの特集を熟読した後、早めに店頭まで足を運ぶことを強くオススメする。
Photo:Masaya Fujita、Kazuki Miyamae、Text&Edit:Keita Miki
実はブランドのリローンチや特定のモデルの復刻に、これだけ世界中のキーアカウントが一斉に飛びついたのって結構久しぶりのことなんですよ。(国井栄之)
— 国井さんが[DIADORA]というブランドに意識的に触れたのはいつ頃のことですか?
国井:実はスニーカー業界に入る前にレーサーを志していた時期があったんですが、その時期にカートレースで一番最初に履いたのが[DIADORA]のレーシングシューズでした。あとは実際に僕が履いていた訳では無いのですが、中学生の時にマルコ・ファン・バステンをはじめとしたオランダ代表の影響で、サッカー部の人がみんなブラック×オレンジの[DIADORA]のスパイクを履いていたのが印象的ですね。[DIADORA]は幅広くスポーツをサポートしていたので、スポーツブランドとしての認識は幼いころからあったように思います。
— ファッション的な意味で[DIADORA]のシューズを履くようになったのは最近のことでしょうか?
国井:そうですね、Diadora Japanが今の体制に移行してからだと思います。本国イタリアでコラボレーションプロジェクト等を担当しているマルコという人物がいるのですが、彼が共通の友人を通して、僕にコンタクトをとってくれて。実際に会って、話をして、その結果として誕生したのが『diadora N.9000 “made in ITALY” “Aperitivo” “mita sneakers”』。先ほどお話ししたように、元々は[DIADORA]をスポーツブランドとして認識していたのですが、親しみは大いにありましたし、ちょうどヨーロッパ発で独自の技術やテクノロジーを持ったブランドを探していた時期でもあったので、一緒にやることになったんです。
— 近年の[DIADORA]というブランドのポジションについて、国井さんはどのように考えていますか?
国井:今までのスニーカーって、どうしてもアメリカのストーリーだけで完結することが多かったんですよ。でも、最近、周りの人がヨーロッパの展示会に行く機会が増えて来た影響もあってか、ヨーロッパの情報とか、ストーリーを掘り下げるのが楽しくて。そういう意味では、すごく新鮮な立ち位置だと思いますし、ブランドの姿勢も好きですね。コラボレーションって、極論を言えば、メールのやり取りだけでもモノを作ろうと思えば作れるんですけど、[DIADORA]の場合は「アーカイブも設置してあるから、まずは1回イタリアに来てくれ」って話から始まって。歴史とか、そういう部分も含めて、自分たちのブランドをきちんと理解してもらってからスタートしようという姿勢は本当に素晴らしいと思いますし、実際、そこで色々な発見もありましたしね。
— 国井さんにとっては[DIADORA]のどんな部分が魅力的ですか?
国井:自分が多感で能動的に情報を集めていた時期に輝いていたブランドなので、”リアルに伝えられる部分がある”というところですかね。歴史のあるブランドは数多くありますし、古いモノが復刻されることも良くあることですが、実際に”その時”をリアルに体感したモノって意外に少ないんですよ。[DIADORA]に関しては、リアルに体感した部分と、そうでない部分のバランスが丁度良いというか。機能性とか、ヨーロッパならではのカラーリング、Made in Italyへのこだわりとか、細かく言えばたくさんあるんですけど、一番は今お話したようなことなのかなと思います。とはいえ、[DIADORA]は今でも様々なスポーツをサポートしていますし、決して過去の栄光を頼りに、復刻だけをやっているようなブランドでは無いですから。僕らとしては、その辺を上手くお客さんに伝えていければ良いなと考えています。
— たしかに。最近は1年に何回も復刻という言葉を目にするようになりましたね。
国井:でも、実はブランドのリローンチや特定のモデルの復刻に、これだけ世界中のキーアカウントが一斉に飛びついたのって結構久しぶりのことなんですよ。それだけ、[DIADORA]というブランドが世界中のスニーカーヘッズに新鮮に映ったということだと思います。もちろん、キーアカウントの人間は様々なブランドのスニーカーを履き倒している訳で、彼らをリローンチや復刻というトピックだけで納得させることは出来ません。そういう意味でも、[DIADORA]はお客さんの前に、まず僕らを満たしてくれましたね。今回、『FROM SEOUL TO RIO PACKS』を全種類取扱うのは東京のmita sneakersとBEAMS T、そしてローマのSUEDEという世界3店舗のみなのですが、すごく光栄な事ですし、お客さんの欲しいと思うモノを適正価格で届けるというのが僕達の使命であるとも思っているので、ありがたい限りです。
— もし今回のプロジェクトにmita sneakersが参加していたとしたら、国井さんはどんな1足を作ったと思いますか?
国井:『diadora N.9000 “made in ITALY” “Aperitivo” “mita sneakers”』がイタリアの食前酒からインスパイアされたモデルだったので、もしやるなら、前菜を作るか、いきなりメインディッシュを作るか、そんな感じで考えていたと思いますね。ストレートにスポーツを反映するよりは、恐らくそういう手法を取っていたんじゃないでしょうか。
— 今回の7足の中からあえてお気に入りをあげるとすれば?
国井:個人的にはPattaとKITHのモデルが好きですね。ベースこそ違えど、どちらもモノトーン一辺倒の今の世の中で、独創的なカラーリングのモノを作っていながら、それぞれに特色がある。一番分かりやすいアメリカとヨーロッパの対比だと思います。
— 今後、[DIADORA]と実現してみたい事が何かあれば教えてください。
国井:やっぱり[DIADORA]って同世代の人に聞くとサッカーのイメージがすごく強いんですよね。この間、『BRASIL』が復刻されていましたけど、僕らも[DIADORA]と一緒に実用的で街でも履けるようなトレーニングシューズを出せないかな、と。サッカーのトレーニングシューズって、スケートで使う人がいたり、自転車に乗る時に履く人がいたりと、意外とストリートカルチャーとのマッチングが良い靴だと思うので。今はそんな感じですかね。