『対談:CRO-MAGNON × grooveman Spot』- ニューアルバムで新機軸に挑んだレーベルメイト2組。その真意を探る!!

by Mastered編集部

top五本木に移転したJAZZY SPORTに地殻変動あり!? そんな新展開が聴き取れる作品が続々と登場している。一組目は1999年の結成以来、3枚のオリジナル・アルバムをリリースしながら、国内外のパーティでのライヴを中心に活動を行ってきた、大竹重寿、コスガツヨシ、金子巧からなるグルーヴ・トリオ、CRO-MAGNON。インスト・バンドかと思われていた彼らの新作『Joints』には、ロイ・エアーズや七尾旅人、土岐麻子、PSGのPUNPEE & S.L.A.C.K.ら11組のヴォーカリスト/MCが参加し、歌モノという新境地を鮮やかに切り開いている。

そして、もう一組は2010年4月に4年振りのソロ・アルバム『Change Situations』を発表し、14年目を迎えるMCのU-ZIPPLAINとのヒップホップ・ユニット、ENBULLの一員としてニュー・アルバム『SEVENTH HEAVEN』のリリースも間近に控えているgrooveman Spot a.k.a. DJ Kou-G。活発な動きを見せた2010年を経て、Mark EやThe Revengeの作風とシンクロするかのようなビートダウン/リエディット・アルバム『Runnin’ Pizza』が早くもリリースされるのだ。ヒップホップとディスコ/ハウスをしなやかに行き来する、そんな彼ら2組の対談を通じて、音楽シーンにおける地殻変動の予兆を探ってみた。

インタビュー・文:小野田 雄
写真:浅田 直也

うちらはサンプリングからオリジナルを知った世代というか、音楽にそういう奥行きを求めているところはあるからね。そういうものが失われた今のヒップホップを聴いている若い子は可哀想なところもあるんじゃない?(大竹重寿)

— CRO-MAGNONもgrooveman Spotも共にJAZZY SPORT所属ですが、2組が顔を合わせる機会はよくあるんですか?

コスガツヨシ(以下コスガ):そうですね。Kou-Gくんの家の2階がスタジオになっていて、そこでレコーディング作業をしているので、アルバムを作っていた時はそれこそ毎日顔を合わせてましたよ(笑)。

grooveman Spot(以下GS):だから、アルバムが出る前にCRO-MAGNONの曲が頭にすり込まれちゃってて(笑)。だからっていうわけじゃないんですけど、今回のアルバムはホント好きすぎちゃって。あの、俺の家にはレコーディングした音源を聴くためのラジカセがあって、普段、それでCDを聴くことはないんですけど、CRO-MAGNONの『Joints』は例外で、毎朝8時に起きると、CDをセットして七尾(旅人)くんが参加した3曲目の「Fading Echo」を聴くのが日課になってるくらい。それくらい気に入ってますね。

大竹重寿(以下大竹):おお(笑)。それはうれしいっすねー。

— 今回の対談は、ニュー・アルバムで新しいことにトライした2組ということでお集まり頂いたわけなんですが。

コスガ:なるほど。Kou-Gくんは今回の『Runnin’ Pizza』でビート・ダウンだったり、アシッドものだったり、今までの作風とは違うことをやってますもんね。

— ニュー・アルバム『SEVENTH HEAVEN』をリリースしたばかりのENBULLは不動のヒップホップですし、grooveman Spotとして4月にリリースした『Change Situations』もスペーシーなサンプルと黒いビートをベースに、ヴォーカルもの中心だったのに対して、矢継ぎ早に登場する新作『Runnin’ Pizza』はリエディットやビート・ダウンにフォーカスしたインストになっていますよね。

GS:そうですね。実は『Change Situations』完成直後に浮かんだアイディアを形にしてみたら、その方向性をもっと突き詰めてみたくなって。それで作業を続けていたんですけど、気がついてみたら、アルバム分の曲が出来ていて(笑)、「だったらアルバムとして出さない?」っていうことになったんですよ。リエディットとかビート・ダウンものは、JAZZY SPORTの店で売ってるし、ここ最近よく聴いてもいるので、自然とそういうトラックが作りたくなったってことなんでしょうね。

— かたや、CRO-MAGNONは、前身バンドのLOOP JUNKTIONに山仁 da sportsmanというMCがメンバーがいましたし、ヴォーカルを扱うことが初めてではないものの、長らくインストを作り続けていたという意味で今回の『Joints』は久々のヴォーカル・アルバムですよね。


大竹 重寿(おおたけ しげとし)
CRO-MAGNONのドラム、パーカッションを担当。ジャンルレスなダンス・ミュージックを愛し、先人の通った道を愛するグルーヴ・マスター。

大竹:そう。インタビューでは「なんでヴォーカル・アルバムを作ろうと思ったんですか?」ってよく聞かれるんですけど、うちらはインストにこだわっているわけじゃないし、LOOP JUNKTIONの時代にもflex lifeの青木里枝ちゃんとコラボレーションしてますしね。だから、今回の『Joints』もたくさんあるやりたいことのなかの一つが形になったっていうことなんですよ。

コスガ:ヴォーカルものは相手あってのことなんで、曲作りは人によって違うんですけど、1曲1曲をきっちり作り込んでいきながら、その曲をより良くしていくという意味ではインストもヴォーカルものも変わらないですしね。

— Enbullの場合、サンプリングをエモーショナルに扱いながらソウル・フィーリングを出していくトラック・メイクであるのに対して、今回の『Runnin’ Pizza』は延々と続くサンプリング・フレーズのループ感が作品の肝になっていますよね。やはり、それぞれトラック・メイクのアプローチは当然変わってきますよね。

GS:そうですね。Enbullの場合は、ヒップホップの王道というか、時間をかけてレコードを聴いて、「このレコードのこの部分とあのレコードのこの部分を使おう」って感じで吟味しながらネタを選んでいくのに対して、『Runnin’ Pizza』の場合、レコードに針を落として、良さそうなフレーズに出会ったら、すぐにサンプリングする感じなんですよ。だから、曲によってはどのレコードからサンプリングしたのか覚えていないものもあったりして(笑)。

コスガ:でも、リエディットはリエディットで難しいと思うんですよ。イジャット・ボーイズが言ってたんですけど、「リエディットはリエディットのままじゃダメだ」って。要するに「リエディットがオリジナルにならないと」っていうことなんですよね。


金子 巧(かねこ たくみ)
CRO-MAGNONのキーボード担当。DJ MITSU THE BEATSやSEQUICKなどの作品や各種セッションにも参加するなど、時にメロウ、またある時はトリッピーな鍵盤さばきに定評がある。

金子巧:いつだったか、群馬の高崎でやったパーティでDJ HIROAKIくん(Psychogem)と一緒になったんですけど、僕らのファースト・アルバムに入ってる「Life Traveller」を自分でリエディットして、それをDJの時にかけてて、すごいよかったんですよ。あのリエディットがきっかけで、Psychogemの「Runnin’ Away」にうちらが参加することになったんだよね?

GS:CRO-MAGNONとしては、そうやってリエディットされたり、サンプリングされたりするのは本望でしょ?

大竹:まぁ、いいものに限るけど(笑)、うちらは録音にこだわってやってるからね。

GS:トラック・メイカーからすると、CRO-MAGNONの曲はサンプリングしたくなる音だもん(笑)。

— サンプリングやリエディットはトラック・メイカーとプレイヤーの音を介したコミュニケーションになり得る可能性があると同時に、今のヒップホップはシンセと打ち込みのみのサウンドが主流ですよね。

GS:そうですよね。シンセと打ち込みのみっていう意味ではテクノっぽいニュアンスに近いっていうか。そういう進化はそういう進化で面白いし、JAY-Zがいて、カニエがいてっていうトレンドの流れがあるからこそ、その次のまた違う音楽があるわけですからね。

— そういう意味で、ヒップホップから失われたサンプリング・カルチャーをダンス・ミュージックにおけるリエディットが担っているという言い方も出来ると思うんですよ。

大竹:そういうこともあるかもしれないね。うちらはサンプリングからオリジナルを知った世代というか、音楽にそういう奥行きを求めているところはあるからね。そういうものが失われた今のヒップホップを聴いている若い子は可哀想なところもあるんじゃない?

— そういう意味で、過去に残されたクラシックに対するリスペクトが感じられるところがJAZZY SPORTらしさの一端であるような気もします。ちなみにgrooveman SpotがCRO-MAGNONをリエディットするとしたら?

GS:じつは勝手に作らせてもらったんですよ、すでに。

コスガ:そうそう聴かせてもらったよね。

GS:土岐(麻子)さんとやってる「Crystal Girl」なんですけど、あのメロウな曲のインスト部分をいい感じにリエディットさせてもらったっていう。

大竹:ま、そこは同じJAZZY SPORT所属ってことで。

— では、2011年はそのリエディットが作品化される可能性も?

GS:そうなったら最高なんですけどねー(笑)

CRO-MAGNON『Joints』

発売中

LACD-0207 / 2,500円
(Lastrum/Jazzy Sport)

http://www.cro-magnon.jp/

→Amazonで購入する

Enbull『SEVENTH HEAVEN』

発売中

EBR-003 / 1,980円
(ENBRAIN RECORDS)

http://www.enbull.com/

→Amazonで購入する

grooveman Spot『Runnin’ Pizza』

2月2日(水) 発売予定

JSPCDK-1004 / 1,890円
(Jazzy Sport)

http://www.jazzysport.com/

※現在iTunes Storeにて『Runnin’ Pizza』収録曲のうち5曲を収めた『Runnin’ Pizza EP』が先行配信中!

「Mastered」は、
2017年5月までEYESCREAM.JPだったサイトが生まれ変わった、
新しいファッション&カルチャーメディアです。