宮藤:それでは次…「奈良さんは宮藤監督と同じ東北出身ですが、監督の作品に“東北っぽさ”を感じるときはありますか? それはどんなところですか?」という質問です。
奈良:これはねえ…たとえば。今のNHKの朝ドラがすごいヒットしてるじゃないですか。あれには東北っぽさを感じる。それの前あたりにやってたお好み焼きのにはまったく感じなかった。そういう“ところ”。それが東北っぽさだと思う。変な言い方をするけど。
―それは舞台がということではないんですね。
奈良:うん、舞台がどうとかじゃなくて、表現の仕方。なんかこう、優しいことを厳しく言う優しさと、厳しいことを優しく言う…うーん、なんかうまく言えないけど。
宮藤:厳しいことを優しく言うのと…、優しいことを厳しく言う?
奈良:いや俺も言っててよく分からなくなったんだけどね。
客席:(笑)
奈良:なんちゅーかねえ(笑)。「ダメで元々」とか「暗い中にも笑いがある」とか、そういうところに感じるものがある、かなあ。最初からデーンとあるんじゃなくて。お祭りがあると人が変わるような感じ。普段は猫背でしょんぼりしてるおじさんおばさんが、お祭りのときだけワーって弾けるような。沖縄の人はほら、いつも楽しい感じで踊ってて…
客席:(笑)
奈良:なんかすごい羨ましいなあと思って。
宮藤:沖縄の人にも悩みはあると思いますよ(笑)。
奈良:でもテレビとかで見ると沖縄のおばあちゃんはいつもニコニコしてて。もう死んじゃったけど、うちのおばあちゃんはいつも「死にてえ…死にてえ…」って言ってたから。
客席:(笑)
―東北のおばあちゃんはそういう方が多いんですね。
宮藤:割とそうですね。
奈良:ネガティブなことを言いますよね。でも本当はあれ、耐えられるから言うんだよね。
宮藤:そうですね。昨日、NHKのドラマで音楽担当をしてる大友良英さんと会って話してたんですけど、 絶対自分たちのことよく言わないんですよね。「寒くてすみません」とか、「わざわざ来てもらって」とか…
奈良:「よくこんなとこまで来たね」って絶対言うよね。
宮藤:そうそう! でもだからって自分たちに自信がないのかっていうと、決してそうではない。他所の人が言うと「ふざけんなこの野郎!」っていきなりなるんです。
奈良:いきなり人が変わるっていうのあるよね。
宮藤:うん。とにかくね、面倒くさい、東北の人。たとえばお祝いの席とかで、お祝いのお金を別れ際に出すと。「いやいや、いいですからいいですから」、「いやいや、そんなそんな」、「いやいや」って、ずーっとやるんですよ。
奈良:(笑)
宮藤:最終的に相手のポケットに手を入れてお金をねじ込むまでやるんですよ。
―そこまでやらないとだめなんですね。
宮藤:だめなんです。そこまでやられて初めて受け取るんです。
―でもそれをやらないで途中で引いちゃうと?
宮藤:「なんだあの人は!失礼な人だ!!」ってなる。
客席:(笑)
宮藤:「あの人はなんにも分かってない!礼儀が分かってない!」って、帰ってから悪口の嵐ですよ。
奈良:勝手に言われるんだよね、本当に。
宮藤:そうそう。だからもう最終的に両手挙げて、ポケットさらして「いやいや、いいですからいいですから」っていうところにお金入れてもらって、「なんかもうすいません色々」って言って終わりですよ。本当にめんどくさい!
客席:(笑)
宮藤:時間が勿体無いんですよ。もう何なら「ちょうだい!」って言われた方がよっぽどいい。
奈良:うん、回りくどい。ハッキリと結論を言わないで「うーん…んだなあ」「んだべえ」「んだべかあ」って感じ。
―なるほど。面白いですね。
宮藤:たとえば東北の人に褒めてもらったとしても。「ありがとうございます」なんて言って褒めてくれてると思って話を聞いてると、「あそこがよくない」「ここがよくない」ってどんどん出てくるんですよ。それで結局ダメ出しされてたみたいな。 青森もやっぱりそうですか?
奈良:青森もねえ、そうだねえ。どこが良かったのかは言わないね。悪かったとこだけは事細かに言う(笑)。
宮藤:ですよねえ、言いますよねえ。それ以外は良かったってことなんですかね。
奈良:きっとそうなんだよね。
宮藤:いやあ、面倒くさいですよ東北の人は。ってもう一括りにしちゃいましたけど。
客席:(笑)