仕事と遊びは仲よくできるということ
ヘアサロンでありカルチャースペースでもあるGuru’s Cut & Standの魅力は口コミで伝播していった。
「僕らはコマーシャルなことを意識していないから、あくまで自分たちの店に来てくれる人たちの口コミで広まればいいなと思っているし、実際そうなっています。アート作品もそうだし、スタンドもディストリビューションを通していないので全部お店のスタッフがいいと思ったものしか置いていません。普通のセレクトショップでは扱っていないインディーズブランドや海外のスケートブランドのアイテムも置いていることもあって、だんだん雑誌でフィーチャーされるようになったんです。のちに大手と契約して、ここから巣立ったブランドもいくつもあります。中にはロンドンのDOVER STREET MARKETでピックアップされて、そのまま銀座のDOVERで扱われているブランドもありますよ」
「今でこそ祐天寺にもシャレた洋服屋さんやコーヒー屋さんがあるけど、この店を出したときは若者のカルチャーの匂いがする感じはほとんどなかったですね。ここはもともと30年以上商売をしていた薬局だったんです。いろんな街を流れて、祐天寺でこの物件を見たときに“ここしかない!”と思いました。目の前にお店がないことと、線路が近いから大きな音も出せると思ったのが大きいです。今は難しくなりましたけど、オープン当初は店内でパーティをやってガンガン音楽を鳴らしていたんですよ。店の前で仲間とスケボーをやっていましたし。当時、周りに住んでいたおじいちゃんおばあちゃんがみんな面白がってくれて」
久保の信条はシンプルで一貫している。それは、仕事と遊びを切り離す必要はない。むしろ、仕事と遊びが両立することで、双方に豊かなフィードバックがあるということだ。
「この店も自分が行きたい遊び場を自分で作ったという感覚があるので。自分の店を誰よりも自分自身がカッコよくて楽しい場所と思えなきゃ嘘でしょって思いますね。そういう場所だからこそ、カットにしても自分がいいと思うスタイルをお客さんと自然に共有できる。そのスタイルが何年後かにトレンドになったりすることもあるのが面白いなと思います」
「今後の展望は楽しみたいということしかないです。海外でも国内でも自分が面白い、イケてるなと思うことをひとつでも多く見つけたい。その感覚は店に勝手に反映されていくので。今は別の者に店長を任せていて、彼がお店のディレクションもしてくれているから、僕はもっと遊べるようになりましたね。年に数回は海外へ旅に行けているし、スケートもしたいし、写真も撮りたいし、2人の子どもとも遊びたい。遊びが忙しいです(笑)」
彼にとって、“スタンド”での仕事も究極の遊びのひとつということなのだろう。