Photo:Shinji Yagi、styling:Daisuke Deguchi、Hair&Make-up:Ayumi Naito、Model:Hiroaki Hara、Itsuki Sakai、Sho Yakumaru、Text:Shoichi Miyake
ヘアサロンがカルチャースペースになる
東急東横線に乗って祐天寺で下車する。日中は主にお年寄りと学生が行き交う駅前に息づいている空気は都心にありながらどこかのどかで、渋谷と目と鼻の先という立地を思うと少し不思議な感覚を覚える。商店街を歩くと、古くから地域に密着している店と若いオーナーがオープンしたアパレルショップやコーヒースタンドなどがナチュラルに共存しているのもいい。
商店街に通じるガード下、グリーンに塗られた外装が異彩を放っているヘアサロンがある。その名は、Guru’s Cut & Stand。
2009年のオープン以来、スケーターを中心にストリートカルチャーの発信基地としても知られている。その理由は店内に入るとすぐにわかる。入口でお客さんを迎えるのは、オーナーである久保勝也氏自身がキュレーターを務めるアートスペース。目を動かすとインディーズブランドのTシャツやキャップなどが並ぶスタンド、さらに多種多様な小物やCD、店オリジナルのワックスなどがディスプレイされているショーケースがある。作品を鑑賞しに、あるいは物販を購入するために店を訪れる人も少なくないという。
なるほど、確かにこのヘアサロンはそこにいるだけでカルチャーに対する好奇心が高まる場所としての求心力がある。もともとスケーターでもある久保氏はどのような理想像を抱き、Guru’s Cut & Standをオープンしたのだろう?
「スケーター仲間が気軽に行けるメンズサロンを自分で出したいと思ったのが始まりです。男が美容室に行くときって萎縮しちゃうところがあるじゃないですか。そういう緊張 感を取っ払いたいなと思ったんです」
ロールモデルは特にないが、ニューヨークで黒人が営んでいる床屋のムードに感銘を受けたという。
「向こうの床屋は客が髪を切らないのにバスケの試合をみんなで観てたりする。ウチの店も外のベンチで誰かと話したり、入口に飾ってるアートを観たり、雑誌を読んだり、服を買ったりする人がいてもいい店にしたいなと最初から思っていました。お客さんと友だちの線引きがないんですね。だからこそ、出会いも生まれる。スタンドに置いているアイテムも見て刺激されて、自分でブランドを立ち上げた若者もいます」