突然ですが、ダウン、レザー、スウェード、ウールなどのちょっと面倒な洋服の洗濯やお手入れ、EYESCREAM.JP読者の皆さんはどうしていますか? 買ってから一度も洗っていない洋服が、クローゼットにあったりしませんか?
「全然着てないから大丈夫」と思っていても、酸性雨の雨や車の排気ガスなどで、目に見えない汚れは付いているもの。そのまま放置していると数年後にはもう着られないなんてことも……。せっかく良いものを買ったなら、末永く良い状態で着たいところですよね。
とはいえ、いざ文明の利器、インターネットを駆使して調べてみても方法は様々。「あれが良い、これが良いって、結局どれが良いんだ!」と、やけくそになってキーボードを叩きつけるのも無理はありません。そんな服飾愛好家達の声に応えるべく、EYESCREAM.JPが独自にお送りする本企画『ファッションお手入れ調査団』では、洗濯やお手入れに困るアイテムを毎回1つずつ取り上げ、そのお手入れ方法を徹底的に調査。「コレだけやっておけば間違いない」という究極の”HOW TO お手入れ”を皆様に伝授していきます。
第1回 GORE-TEX®編
記念すべき第1回は、洋服好きならば誰しもが1つは持っている、そうGORE-TEX®の”HOW TO お手入れ”について。シーズンに数回しか着ないからとケアを怠ると、自分の汗や汚れが生地に浸透するのはもちろんのこと、撥水や透湿といった機能も低下してしまいます。
それでは、早速はりきってお手入れ方法の解説へ。まずはGORE-TEX®のオフィシャルウェブサイトに、丁寧に洗濯の手順を説明したビデオがアップされていますので、そちらをチェックしてみましょう。
おおまかには、洗濯→乾燥→撥水コーティング→乾燥という手順ですね。オフィシャルでアップされているので、基本的にはこの手順を追っていけば間違いないはずなのですが、果たして本当にそれでケアは出来るのか。ここからがファッションお手入れ調査団の腕の見せ所であります。
今回サンプルとして使用するのはGORE-TEX®のプロシェル製品。写真で見ると分かりづらいのですが、着倒れ企画でもおなじみのベテラン過ぎるニューカマー編集Tさんが雪山でハードに着こんだだけあり、全体的にくすんでいる印象です。また部分的に油性、水溶性のシミが見受けられますね。
心得その1.洗濯表示を確認すべし。
一口にGORE-TEX®と言っても、使用されている素材によってケア方法は千差万別。ファスナーやボタンに使用されている素材によっては、洗濯方法が指定されている場合もあるので、まずは洗濯表示を確認しましょう。
心得その2.ジッパーは全て閉めるべし。
無理な不可が掛かってしまうのを防ぐため、必ずジッパーは閉めましょう。ポケットの中を洗浄するために開けておくことを推奨するブランドもありますが、基本的には全て閉めておくのがベスト。またこの時、ベルクロやバックルもきちんと閉め、コードは緩めておきましょう。
洗濯をする前にまずは撥水性のチェック。過去に1度お手入れをしているため、まずまずといったところでしょうか。ただ、ジッパーの周りはかなり水が浸透しているのが分かりますね。
心得その3.洗剤は専用のものを使うべし。
気になる洗剤・撥水剤ですが、専用のものを使ってください。GORE-TEX®のケアといえばNIKWAXが有名ですが、なんといっても匂いがキツい。そして洗濯した後に乾燥、撥水コーティングを施して再度乾燥という2ステップが必要なため、余計な時間と手間を要します。そこで今回使用するのが、アウトドアの達人たちもこぞってオススメするこちら。
イギリスのGranger’sというメーカーから出ている『2イン1 ウォッシュ&リペル』であります。(ウエアの内側にも撥水加工がされるため、内側が起毛されたソフトシェルなどには使用NG。)
なんとこちらは、洗浄と撥水の2ステップを1つに簡略化し、本来掛かる膨大な時間とエネルギーを節約できるという秀逸な1品。驚きのあまり、軽くカズダンスでもしたくなります。例えるならば髪の毛がとんでもなくサラサラツヤツヤになる、リンスインシャンプーといったところでしょうか。そしてNIKWAXのような独特な匂いがないのも嬉しいところ。[ARC’TERYX(アークテリクス)]なども推奨しているプロダクトで、アウトドア専門店やAmazonなどで購入出来ます。
ちなみにGORE-TEX®の公式アナウンスでは、家庭用の液体洗剤でもすすぎを十分行い、しっかり落とせば問題ないと伝えていますが、そのすすぎが十分でないと目に見えない通気口の穴をふさいでしまう可能性があるので、「あらいぐまラスカル」レベルのすすぎスキルを持っていない限りは使用を控えた方がベター。また、粉末洗剤・漂白剤・柔軟剤の使用は「ダメ、絶対」であります。
心得その4.部分汚れは直接洗剤をつけてもみ洗いするべし。
袖口などの部分的な汚れは洗剤を直接つけて、ぬるま湯でのもみ洗いがベスト。基本的にブラシは使わず、汚れがしつこい場合は柔らかい毛のブラシを使用しましょう。ただ、あくまで洗剤であって染み抜きではないので、やはり浸透してしまった染みは落ちず……。どうしても落としたいシミがある場合には、クリーニング専門店に持って行くのが良いでしょう。
心得その5.洗濯標準コースで、すすぎは2回、脱水なしにセットすべし。
洗剤はウエア1着に対してキャップ2杯(100ml)。水でも十分落ちるそうなので今回は水を使いますが、こだわりたい方はお風呂のお湯を使うなど工夫して、30~40度のぬるま湯を使用しましょう。もしも洗濯機に“念入り”などのモードがあれば、それにセットするのが◎。前述したように何よりも重要なのは”すすぎ”です。すすぎが不十分だと洗剤が生地に残り、機能を低下させてしまうため、最低2回は行いましょう。GORE-TEX®をはじめとする防水浸透素材の場合、生地が水を通さないために洗濯機に大きな遠心力がかかり、故障をまねく場合があるので危険。洗剤のボトルの表記にはしっかりと“脱水”の文字がありますが、脱水は避けるのがベターです。
心得その6.水を切って乾燥機に入れるべし。
すすぎが終わったらウエアを取り出し、大きめのタオルで挟んで、くるくると巻き、体重をかけて水を切ります。生地を傷める場合があるのでぞうきん絞りは厳禁。ある程度水が切れたら撥水性を確かめてください。肝心の撥水性の回復ですが、このままだと洗濯前との変化があまりよく分かりませんね。そのまま乾燥機に20分ほど入れて、きちんと乾かします。ほとんどのGORE-TEX®ウエアは乾燥機の使用が可能となっていますが、洗濯表示を再度確認してくださいね。
ちなみに私は以前、洗濯機に付いている乾燥機機能を使用した際、悪臭が漂い、服にも臭いこびりついてしまうという散々な目にあったことがありますので、不安な方は、きちんと掃除してから乾燥機に入れましょう。
『2イン1 ウォッシュ&リペル』には撥水剤が入っているので、ここまでの手順だけで撥水コーティングもされているはずなのですが、あまり変化が見られなかったので、今回はさらに撥水剤を使用します。使用するのは同じくGranger’から出ている吹き付けタイプの撥水剤『パフォーマンス リペル』です。
ジッパーが全てきちんと閉まってることを確認した後、全体に吹きかけていきます。バックパックのショルダーストラップなど、日常で摩擦する部分は重点的に吹きかけると良いでしょう。『2イン1 ウォッシュ&リペル』もそうですが、こちらのプロダクトは撥水加工技術と同じ撥水成分を採用しているので、新品と同等の性能を取り戻すことが可能とのこと。これは期待出来そうですね! ちなみに、ソフトシェルには撥水剤が入っていない洗剤『パフォーマンス ウォッシュ』を使用し、こちらのスプレーで表面を撥水加工するのが最適です。
心得その7.ふたたび乾燥機へ入れるべし。
一度乾燥させているので、今回は10分に設定し、再度乾燥機にかけていきます。乾燥が終了したら撥水性をチェック。洗濯前は大粒の水滴はきちんと玉状になり、ウエアの上でコロコロと転がりましたが、小さな水滴はあまり見受けられませんでした。しかし、洗濯後は小さな水滴までもがきちんと撥水! ジッパー周りも念入りに撥水剤を吹き掛けたので、あまり浸透していません。
ビフォーアフターはこんな感じ。洗濯前の画像を無駄にキレイに撮ってしまったので、正直、写真では全くと言っていいほど違いが分かりませんね(笑)! しかし肉眼で見てみると、全体的にくすみが取れてかなり明るい印象に。完全に浸透してしまったシミはほとんど落ちなかったものの、袖口など、もみ洗いした部分の汚れは少しばかり薄くなっているように思います。
てな感じで少し長くなってしまいましたが、GORE-TEX®編はこれにて終了。今回使用したGranger’sをはじめ、現代では質の良い専門の洗剤が世に出回っているので、恐れずにガンガン洗濯してみましょう。信頼できる洗剤ときちんとした方法が分かっていれば、あとは洗濯機に任せるだけです。それでは、次回のファッションお手入れ調査団もお楽しみに~!!