Sick Teamでの活動やLAノ名門レーベル、Delicious Vinylからの作品リリースなど、国内外をまたにかけた精力的な活動を行っているビート・メイカーのBudaMunk。5月27日にリリースされた彼の新作アルバム『The Corner』では、制作機材をアップデートしながら、外部スタジオでレコーディングを敢行。5lack、ISSUGI、PUNPEE、mabanua、DJ Scratch Niceといった盟友に加え、EVISBEATS、KOJOE、jjjという初共演となるゲスト・ラッパーをフィーチャーし、新境地を切り開いている。
なかでも、Fla$hBacksの一員にして、昨年11月に初のソロ・アルバム『YACHT CLUB』をリリースしたビートメイカー、ラッパーのjjjとの世代を超えたコラボレーション"Everywhere"は、BudaMunkの進化を象徴する1曲として大きな話題となった。日々更新されている彼のビートは果たしてどこへ向かうのか。7月31日に5lack、DJ 16Flipらと代官山UNITでスタートさせるレジデントパーティ「Weeken'」で『The Corner』のライブセット披露を控え、BudaMunkとjjjのスペシャル対談を行った。
Photo:Takuya Murata、Interview:Yu Onoda、Edit:Keita Miki
きっと、ダイレッテド・ピープルズの見方も俺とjでは違うんじゃない?
— Budaくんは相変わらず作品リリースが精力的ですが、今回のアルバム『The Corner』は、5lackやISSUGIくんといったお馴染みのラッパーに加えて、jjjくんやEVISBEATSといった新たなゲストを迎えているところに大きな特徴がありますよね。
Budamunk:まず、今回は日本人のMCを迎えたアルバムを作ろうと思ったんですけど、いつものメンツだけでなく、自分の仲間を中心に、その範囲をもう少し広げてみた感じですね。
— かつてはロスで活動をしていたこともあって、以前は日本のヒップホップにあまり馴染みがないと語っていましたけど、その後の活動を通じて、共演したり、交流する機会は増えたと思います。今の日本のシーンについて、どんな印象をお持ちですか?
Budamunk:jもそうですけど、若いアーティストは昔と違うテイストというか、アメリカのヒップホップにおけるスキルの競い合い、グルーヴとかフローといった音楽的な部分をより深く理解しているような気がしますね。
— Budaくんとjjjくんの出会いというのは?
Budamunk:お互いのことを知らずに同じ現場にいたことはありそうだよね?
jjj:そうかもしれないっすね。一番最初は、5lackの『MY SPACE』のリミックス(2010年の『BUDA SPACE』)を聴いて、Budaくんのことを知って。その後は佐々木(KID FRESINO)がアルバム(2013年の『Horseman’s Scheme』)を作ってる時にBudaくんのビートを持ってきて、俺がその録りを担当したんですよ。
Budamunk:俺はFla$hBackSのフリー音源(2013年のEP「FLYFALL)を聴いたのが最初かな。その後、実際に会ったのは、ライブの現場だよね。でも、東京で一緒に遊ぶというより地方で一緒になることが多いかもしれない。
jjj:しかも、自分は出る予定がないのに、MUTAくんと一緒に、ひでおくん(仙人掌)のライブに付いていって、大阪、和歌山に行った時とか(笑)。
— お互いが作る作品については、どんな印象を持ってますか?
jjj:Budaくんのトラックはベースがグイグイくるし、ノリがホントにスゴいんですよね。あれは考えて作ってるのか、その場のノリでババッと作ってるのか………。
Budamunk:そんな考えてはやってなくて、作るとそうなっちゃうというか………。
jjj:Budaくんのグルーヴはすごい首に引っかかるんですよね。だから、聴いてると、ずっと首が振れるところが好きですね。
Budamunk:俺は動きたくなっちゃうグルーヴが好きだし、聴いてる人を乗せたいんですよね。
jjj:Fla$hBackSの場合は、グルーヴをズラさず、クオンタイズでタイミングをきちっと合わせて作っていて。
Budamunk:そこが新しく感じるところだし、自分がjと同じ歳だった頃と比較して、若くして、ここまでのクオリティのものが作れるのはスゴいと思いますね。俺は90年代のヒップホップに影響を受けているんだけど、jの場合は2000年以降のヒップホップの影響が感じられるし、それは育った時代の違いも大きいんじゃない?
jjj:2000年頃っていうと、俺は高校生だったんですけど、当時出てきたファレルとかカニエを聴いてた感じでしたからね。
Budamunk:その頃、俺はLAにいたんだけど、90年代後半辺りからメインストリームのヒップホップを聴かなくなっちゃってて、当時、アンダーグラウンドな存在だったダイレッテド・ピープルズのライブを地元のレコード屋で観たり、彼らがどんどんキャリアアップしていくところを目の当たりにして、彼らの影響は自分のなかで大きかったですね。
— ダイレッテド・ピープルズのエヴィデンスはSick Teamのアルバムにフィーチャーされていますけど、jjjくんも去年出したアルバム『Yacht Club』で彼に声を掛けてたんですよね?
jjj:そう、結局、彼のツアーが始まっちゃって、話が流れちゃったんですけどね。
Budamunk:でも、きっと、ダイレッテド・ピープルズの見方も俺とjでは違うんじゃない?
jjj:俺はエヴィデンスのソロからダイレッテド・ピープルズを掘り下げていったんですけど、俺はQバート(インビジブル・スクラッチ・ピクルズ)とかビートジャンキーズとか、そういうターンテーブリストが好きだったから、ダイレッテド・ピープルズはDJバブーにもぐっと来ましたね。
Budamunk:いま、スクラッチを練習している若い子っているのかな?
jjj:地方に行くと多かったりしますよ。
— というか、jjjくんはもともとターンテーブリストになりたかったんでしょ?
jjj:そうっすね。
Budamunk:俺も俺も(笑)。
jjj:YouTubeでターンテーブリストの映像を観て、ターンテーブルを買いましたからね。
Budamunk:俺は現地で観てたし(笑)、映像もビデオを探すしかなかったからね。そういう意味でjとは世代の違いを感じるな(笑)。
jjj:俺らの世代は興味を持てば、ネットで簡単に触れることが出来るし、機材も手に入りやすければ、トラックの作り方もYouTubeのメイキング映像で勉強することが出来ますからね。
Budamunk:そういう意味で、若い世代は学んだり、吸収するのが早いと思うんですよ。
jjj:ただ、表面的なのかもしれないですけどね。
Budamunk:まぁ、そういう面もあるのかもしれないけど、吸収したものをどうやって自分のものにするかは人によるよね。