BEAMS Tと共に探る、ロンドンストリートシーンの現在(後編)
~ スニーカー、スケート、異端の者。 ~

by Mastered編集部

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スケートが昔よりも随分メジャーになった今でも、女性のスケーターは意外と珍しいものだが、「元スケーターでメンズウェアのデザイナーを務めている女性」を探すのは中々に至難の業である。そんな異色の経歴を持つMaria Falboが手がける[COPSON(コプソン)]は、女性ならではの視点と、スケーターらしい無骨さがミックスされた独自のコレクションで、近年、世界中から大きな注目を集めるメンズブランド。

元々はTHE GOODHOOD STOREでスタッフとして働いており、ロンドンのスケートシーンにも深く精通したMariaの日本初となるインタビューをお届け。

美味しい食事を食べ、美味しいワインを飲んで、たまにヨガをする。今はそんな生活を愛おしく思っています。(Maria Falbo)

— 元々は前編にて紹介したTHE GOODHOOD STOREで働いていたと伺いましたが、洋服作りを始めたのはいつ頃からですか?

Maria:2009年にスケート、音楽、そしてトロピカルをテーマにしたブログを始めたんです。そこでオリジナルのTシャツを販売したことはあるのですが、本格的に洋服作りを始めたのは2014年からになりますね。

— 洋服作りはどこで学んだのでしょうか?

Maria:基本的には独学です。大学ではデザインマネジメントを専攻していて、主にブランドのマーケティングやマネジメントについて学びました。

— スタートがブログということですが、メディアにも興味はあったのですか?

Maria:いえ、そこまで大それたモノでは無く、当時はバルセロナに住んでいて、そこでスケートをしている自分や、自分の好きなエレクトロミュージックのことを淡々と綴ったブログをなんとなく始めたんです。Blogspotを使ったブログで本当に簡単なモノだったんですが、徐々に読者が増えていき、そこから派生してブランドを始めることになりました。

— ブランドを始めようと思った理由は?

Maria:ファッションというよりはメンズのスタイルに興味があって、今のマーケットに無い、私が好きなものを作りたいと思ったからですね。特に明確なプランがあった訳では無く、ブログを始めた時のように、極々自然な流れでスタートしました。私がブランドを始めた頃は、どのスケートブランドも同じようなことをやっていて、すごく退屈だったんですよね。だから、[COPSON]では色使いはもちろんですが、普通よりも短いショーツを展開したり、少しフェミニンな要素を取り入れたりと、あまりシリアスに考えずに楽しみながら洋服作りをしています。

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— Mariaさんは女性ですが、なぜウィメンズでは無く、メンズのスタイルに興味が生まれたのでしょうか?

Maria:先ほども少し触れましたが、私は若い頃からスケートをして育ってきたので、周りには自然と多くの男性がいて、彼らから影響を受けたのだと思います。私自身、メンズブランドの洋服を着てスケートをしていたので、メンズウェアに興味が湧くのは、当然と言えば当然だったのかもしれませんね。でも、[COPSON]はメンズウェアのブランドですが、女性のファンも多くいるんです。なので、ユーザーの感覚としてはユニセックスに近いのかもしれません。

— [COPSON]のパステルカラーはすごく印象的ですもんね。

Maria:子供の頃、イタリアのビーチで生活をしていた私にとって、パステルカラーはとてもナチュラルな色で、遺伝的と言えるくらい、私の生活の中に溶け込んでいるモノなんです。最近はブラックを使うことも多いですが、パステルカラーとブラックはとても相性が良いんですよね。

— 洋服を作る時のインスピレーション源はどんなところにあるのですか?

Maria:私はイギリス出身なのですが、今お話ししたようにルーツはイタリアにあります。なので、1980年代のイタリアのスタイル、具体的に言うと、自分の父や叔父が着ていた洋服からインスピレーションを得ている部分はあるのかもしれませんね。当時、ホリデーに皆でホテルに泊った時、彼らは決まって普段着ないようなレジャーウェアを着ていました。今はもう、そういったカルチャーはイタリアにはありませんが、なんだかそれが懐かしくて。今考えるとすごく新鮮ですし、そういったレジャーカルチャーを上手く現代の洋服にミックス出来たら面白いなと思ったんです。ムービーをあえてスケートのイメージが無い南イタリアで撮影したり、型にはまらず、色々な要素をミックスすることを心がけています。

— クリエーションの上で影響を受けたブランド、アーティスト、デザイナーはいますか?

Maria:その時々によって違いますが、[Our Legacy(アワーレガシー)]のクリーンでクラシックなスタイルはずっと好きですね。あとはスケート的な要素で言えば、やはり[Supreme(シュプリーム)]にも影響を受けていると思います。音楽に関しては、ずっとダンスミュージックが好きでしたが、最近はボサノバも聴くようになりました。

— 洋服づくりに関しては0からのスタートだったと思いますが、何か苦労した点はありますか?

Maria:最初は[PALACE(パレス)]を手伝っているGregという友人が手助けをしてくれていたので、私はプロダクションの大変さや、ブランドを運営することの難しさをあまり理解していませんでした。だから、その大変さが身に染みるようになってきたのは最近のことですね(笑)。だけど、同時にようやく落ち着いてきて、周りの反応も良く見えるようになってきたので、毎日楽しいですよ。大変な分、やり甲斐も感じています。

— 現段階で、Mariaさんのやりたかったことは、[COPSON]というブランドの中でどの程度実現出来ていますか?

Maria:勢いで始めたようなところもあるので、特にプランは無かったのですが、遠く離れた日本で、しかもBEAMSという素晴らしいショップで、[COPSON]のアイテムが販売されることは考えもしませんでした。基礎はこの2年間で出来てきたように思うので、後はこれを向上させていければと思っています。

— BEAMSに対するMariaさんの印象を教えてください。

Maria:BEAMSとはとても良い関係性を築けていると思います。BEAMSチームは皆、とてもハッピーで、良いバイブスを持ち合わせています。スタイルや生き方に関しても、良い意味でリラックスしていて、あまり無理をしていない感じが好きですね。そういう意味でも、[COPSON]とはとても相性が良いんじゃないかなと思います(笑)。

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— 今日初めてお会いしましたが、Mariaさんの生き方はとても素敵だなと思います。ご自身で、そして[COPSON]というブランドとして何か大切にしていることはありますか?

Maria:ライフワークバランスですかね。どんなに忙しくても、ホリデーにはちゃんと出かけるべきだし、長い目で見て、良い人生を送る為には、仕事とオフのバランスを上手に取って行くことが一番重要なんじゃないかなと思います。[COPSON]のコレクションを通して、世界中の人達にそれを伝えて行けたら嬉しいですね。

— 毎シーズン、コレクションの制作はどういった感じでスタートするのですか?

Maria:まずはホリデーに出かけて、沢山のインスピレーションを得ることが重要ですね(笑)。あと、私達のチームでWhat’s App(アメリカで人気のLINEのようなチャットアプリ)のグループがあるのですが、そこで、それぞれが気になったイメージや写真をいつでも共有出来るようにしています。なので、いつもそのグループに投稿されたイメージを元に話し合うことから始めています。

— 若い頃はスケーターだったと話していましたが、Mariaさんが好きなモノも昔と比較すると変わりましたか?

Maria:そうですね。例えば昔はパーティーが大好きでしたが、美味しい食事を食べ、美味しいワインを飲んで、たまにヨガをする。今はそんな生活を愛おしく思っています。周りの仲間たちもある程度歳を取って、昔は皆で1ユーロのビールばかり飲んでいたものですが、今はホテルでカクテルを飲めるぐらいには成長しました(笑)。

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— [COPSON]をワールドワイドに展開したいという願望はありますか?

Maria:今はあまり考えていませんね。ウェブでの反応がとても良いので、そこをより強化しつつ、国ごとにキーとなるディーラーとしっかり組んでやっていければなと思っています。

— 洋服以外のモノをデザインしたいと思うことはありますか?

Maria:今後はレジャーウェアというコンセプトをより強くしていけたらと考えていて、例えばイビザとか、レジャーウェアにマッチするような場所でイベントをして、自分たちが好きな音楽と共に[COPSON]のアイテムを発信していけたら最高ですね。”クラブコプソン”を世界中にオープンさせるのが夢なんです。外装も内層もクールで、音楽も最高。お酒も美味しくて、スタイリッシュな人たちが集まるクラブ。もちろん、実現は遠い先の話になりそうですけど(笑)。

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BEAMS T HARAJUKU
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