BEAMS Tと共に探る、ロンドンストリートシーンの現在(前編)
~ 長場雄とTHE GOODHOOD STORE ~

by Mastered編集部

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続いては、今回のアートショーの舞台となったセレクトショップ、THE GOODHOOD STOREの魅力をたっぷりとお届け。Kyle StewartとJo Sindleの2名が、2007年からスタートさせたTHE GOODHOOD STOREは、メンズ、ウィメンズ、ライフスタイル、コスメに至るまでバラエティに富んだラインナップと、抜群のセンスで瞬く間にシーンを席巻し、今ではロンドンのファッションシーンを語る上で欠かすことの出来ない、重要なショップへと成長。
彼らが提案する、ラグジュアリーな生活を再定義するような独自のスタイル、そしてショップ全体の魅力を紐解くべく行ったインタビューに、Kyle Stewartが答えてくれた。

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カジュアルなラグジュアリーだってあって然るべきだと思うんです。良いものが必ずしも高価である必要は無い。(Kyle Stewart)

— まずはTHE GOODHOOD STOREをスタートさせた経緯について伺えますか?

Kyle:僕とJoは元々[NIKE(ナイキ)]や[Levi’s®(リーバイス®)]でデザイナーとして働いていたのですが、もっとカルチャー全体に貢献したいという想いから、2007年に2人でお店をスタートさせました。「HOOD」という単語は近所やそのエリアを表す言葉なんですが、そういったローカルなコミュニティを大切にしながら、インディペンデントなものを紹介する新たな社交場になれば良いなという僕らの想いが”THE GOODHOOD STORE”というネーミングには込められています。

— お店のコンセプトについて教えてください。

Kyle:大きなコンセプトとして、大小に関わらず、自分たちが良いと思ったものや、気の合う人達を紹介していこうというのはあります。創業当時と時代は変わりましたが、そのコンセプトは今でも変わりませんね。

— 地下のLife StoreがTHE GOODHOOD STOREの特徴の1つでもあると思うのですが、このフロアはいつ頃からスタートしたのですか?

Kyle:始めたのは2011年からですね。当初、イギリスでは洋服屋で、家具や生活雑貨を取り扱うことは非常に珍しかったのですが、ファッションだけで無くスタイルを売りたいなと思い、このセクションをスタートさせることになりました。ある意味では、非常に日本っぽいスタイルかもしれません。

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— 日本のブランドも数多くラインナップされていますが、それは創業当時から?

Kyle:そうですね、為替の関係で一時期、日本のプロダクトがすごく高価なモノになったこともありましたが、[UNUSED(アンユーズド)]をはじめ、多くの日本のインディペンデントなブランドと継続的に関係を築いてきました。

— 今お話に出た[UNUSED]のほか、[Sasquatchfabrix.(サスクワァッチファブリックス)]、[Hender Scheme(エンダースキーマ)]など、THE GOODHOOD STOREでは、良い意味で”リアルな”日本のブランドがラインナップされているように感じるのですが、現在の東京のファッションシーンについてどのように考えていますか?

Kyle:日本のプロダクトやファッションシーンは世界の何処よりも先を行っていると思います。イギリスでは、これはラグジュアリー、これはコンテンポラリー、これはストリートと、縦割りでカテゴライズされてしまうことが多いのですが、ラグジュアリーは、必ずしもゴールドやダイヤモンドじゃ無くても良い訳ですよね? カジュアルなラグジュアリーだってあって然るべきだと思うんです。良いものが必ずしも高価である必要は無い。そういった部分で共感出来るブランドが、今の日本には多く存在していますね。

— とはいえ、お店に来るお客さんが、皆、日本のブランドに詳しい訳では無いですよね?

Kyle:知らない人がほとんどですね。日本では、まだ誰も知らないブランドを皆が面白がって受け入れるような傾向があるように思うのですが、イギリスではそうはいきません。だからこそ、スタイリングを中心に見せながらも、ブランドやプロダクトについて知ってもらえるよう、日々努力を重ねています。けど、少し前であれば、誰でも知っているロゴが入ったTシャツを置いておけばそれで良いようなムードもあったのですが、最近のイギリスの感度の高い若者に、そういうモノは全く響かなくなってきています。もちろん、そういう層にブランドやプロダクトのことを知ってもらうのに時間はかかりますが、その為の努力は惜しみまないようにしています。

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— 日本でも同じような現象が起きているように思います。2000年代と比較して、2010年代に飛躍的にメンズブランドの数が増えているのもそういった理由からかもしれませんね。

Kyle:非常に興味深いですよね。僕らから見ても、[UNUSED]や[Sasquatchfabrix.]がやっていることと、[NEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)]や[WTAPS(ダブルタップス)]がやっていることは全然違うと思います。どちらが良い、悪いという話では無く、その違いが今の日本のシーンの面白さに繋がっているのではないでしょうか。全てのブランドに共通して言えることは、全体的に少し角が取れたということですね(笑)。

— 今回のアートショーはBEAMS Tとの取り組みで実現した訳ですが、BEAMSというショップについてはどのような印象を抱いていましたか?

Kyle:BEAMSは歴史ある偉大なショップなので、当然存在は知っていましたし、日本に行った時にも良くBEAMSで買い物をしました。欧米にBEAMSのようなお店は無いので、見ていてとても楽しい気持ちになりますね。そして、実際にこうして一緒に取り組みをしてみて、改めて非常にオープンで、間違った固定観念の無い、理想的な会社だなと感じました。組織が大きくなればなるほど難しいことだと思うので、本当に素晴らしいと思います。

— 一緒に仕事をしてみて、長場さんについてはどんな印象を抱きましたか?

Kyle:簡単そうに見えて、実に手の込んだイラストだったので、正直なところ、かなり驚きました(笑)。でもそういった部分や、彼のキャラクターも含めて大好きですね。THE GOODHOOD STOREはファッションアイテムを取り扱う店ではありますが、アートや音楽、映画もその一部だと考えています。僕ら自身、アートが大好きですし、これからも色々な日本のアーティストと関わりを持って行けたら嬉しいですね。

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— ロンドンのストリートシーンにおいては、今どんなメディアが影響力を持っているのでしょうか?

Kyle:イギリスでは、ファッションにおいては紙媒体の影響力は皆無に等しい状況で、InstagramをはじめとしたSNS、HypebeastやHighsnobietyといったオンラインメディアが中心ですね。『i-D』より、明らかにそちらの影響力の方が大きいのが実情です。

— なるほど。最後に今後のTHE GOODHOOD STOREの展望について教えてください。

Kyle:具体的なプランはまだ無いのですが、イギリスだけでなく世界中にお店を開くことを常に考えています。GOODHOODの名前である必要は無く、その土地に住んでいる人の様式やテイストに合わせたモノをラインナップしたお店です。GOODHOODに限定して言えば、将来的にゲストハウスのようなことが実現出来たら嬉しいですね。内装が全てGOODHOODで取扱っているアイテムで構成されていて、誰もが気軽にインターネットで予約できるようなゲストハウス。まだ発表出来ないのですが、来年は、僕らにとって、とても素晴らしいことが起きる予定なので、日本からもぜひチェックしてみてください。

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