昨今のサーフブランドの台頭の中で、知っておきたいブランドがある。
90年代にプロサーファーとして世界を制し、数々の記録を残したレジェンドBRAD GERLACHを中心に厳選されたアーティストで構成されたブランド[BANKS(バンクス)]だ。
アメリカ、オーストラリア、日本の3カ国共同プロジェクトとして2014年に誕生したこの革新的なサーフブランドにいち早く目をつけたのが、BARNEYS NEW YORKだった。
世界有数のスペシャリティストアとして知られ、高級で洗練された雰囲気を持つBARNEYS NEW YORKと、新進気鋭のサーフブランド[BANKS]。一見相入れないようにも思える組み合わせだが、[BANKS]はデザイナーブランドで目の肥えた同店のユーザーをたちまち虜にした。
彼らが[BANKS]に惹き付けられるのはどうしてなのだろうか?同ブランドを取り扱う JAMGLEJAM 営業 古内芳宗、BARNEYS NEW YORK PR 矢野考太郎、バイヤー 中箸充男がその魅力について語ってくれた。
Photo:Takuya Murata Text & Edit:Shu Nissen
サーファーがいない銀座という街でも[BANKS]が受け入れられたことを嬉しく思います。(古内)
— 2014年からスタートしたとのことですが、[BANKS]は、どのように始まったのでしょうか。
古内:もともと弊社で取り扱っていたカリフォルニアのブランドの[roial(ロイアル)]が、アメリカで一旦お休みになってしまったことがあったんですよ。その間に、当時ライダーだったBRAD GERLACH(ブラッドガーラック)との再会をきっかけに、またブランドを新しく始めていこうと立ち上がったのが全ての始まりです。その後、なかなかアメリカで展開するのが難しかったのですが、何とか頑張って行こうと話をしていく中で、アーティスト集団によるオーストラリアのサーフブランド[TCSS]もその夢に乗っからせてくれと言ってくれまして。日本、アメリカ、オーストラリア、この3カ国共同ブランドがスタートすることになりました。3カ国共同っていうのは、サーフブランドの中では初めての試みだと思います。何が共同かというと、まずは、それぞれの国でいいものを持ち寄って、アイテムを生み出していくということ。そして、そのアイテムは機能性、サスティナビリティ(持続可能性)、環境に考慮したもの作りを意識し、サーフマインドを根底に持ったブランドとしてデザインしていこうというプロジェクトです。コンセプトの原点はこんな感じです。
—この新しいブランドをBARNEYS NEW YORKで取り扱い始めた理由は?
中箸:サーフっていうジャンルは、僕らもちょうど6年ぐらい前からトレンドとして注目していたんですよ。それが最近どんどん大きくなってきていて、ようやくデザイナーズ系のブランドもそうなんですが、例えば海外の[Moncler(モンクレール) ]のウィンドウディスプレイにサーフボードが飾ってあったりだとか、[Saint Laurent(サンローラン)]などのハイブランドを傘下に持つKeringグループからも[Outer known(アウターノウン) ]っていうサーファーのKellySlater(ケリースレーター) が手がけるブランドが出てきたり。今ちょうど旬なところだと思うんですよね。そんな時代の匂いもあり、[BANKS]は、超有名人BRAD GERLACHが関わっているブランドで、物自体もシンプル、さらにサスティナブルで機能性にも優れているという、今の時代に合った要素をすごく持っていたので、それをお客様に提案していこうというのがきっかけでした。
古内:そうですね。中箸さんにお話を持って行った時ぐらいから、時代がマッチしてきてるっていうのをすごい感じていて。お知り合いになったのは結構前だったんですけどタイミングが合わずで。ようやく時代にフィットしてきたっていうのは、サーフ側の人間からするとすごい嬉しかったです。
中箸:シティサーフっていう言葉からもわかるように、街でみんながリアルに着られるようなアイテムになって来てるのが、今の時代感にマッチしている表れと言えるんじゃないかなって思うんですよ。さらにここから、どんどん進化していけるかなって。
古内:洋服屋さん、セレクトショップで今までなかった海パンが売ってるっていうのも、サーフに対するイメージが変わったってことなんだと思います。
矢野:サーファーの方とそうでない方を含めて、日本人はサーフに対して絶対的な憧れがありますよね。海外の人気ショップは日本でも大人気じゃないですか。本国のお店に実際行ってみると日本とは別物だったりはしますが、それは逆に言うと、とても上手に日本ナイズされているということ。そういう細やかな提案力と、日本の大人のカジュアル着が昔だったら[RalphLauren(ラルフローレン)]みたいなカッチリとしたトラッドな方向から、ゆるい気分に移ってきているっていう流れをうまくミックスしている。だから今、日本の中でサーフがファッションとして非常に受け入れられやすい環境になって来ているのかなぁと。
古内:それに[BANKS]は、いままでのようなコテコテのサーフブランドっていうところとは、真逆の切り口で打ち出しているので、エンドユーザーの方が、そこにちょっとしたおしゃれ感っていうのをすごく感じてくれているようで。
中箸:女性のお客さんなんかも、すごい良いイメージを持ってますよね。自分はサーフィンやらないけどっていう方にも間口が広いように感じます。BARNEYSのお客様で、デザイナーズブランドも買ってくれるような方が[BANKS]をミックスして着てくれているんですよ。ジャケットのインナーに着たりとか、おしゃれ着として着てくれていて。僕らの提案にちょうどぴったり持っていけて良かったなと思います。
— BRAD GERLACHを知らない方の為に、簡単に紹介をお願いします。
古内:もちろん世界一にもなっている伝説のサーファーなんですけど。彼のかっこいいところは基本ワルなんですよ。スタイルを持ってるところに多くの人がすごく憧れていて、カリスマ的存在ですね。彼が「サーフィンは地球上で一番重力を感じられるスポーツだ。だからもっと楽しめ。」って言っていて。それまで僕はモテることしか考えないでサーフィンをやっていたので、その一言を聞いた時に考え方が変わりました(笑)
一同:(笑)
古家:先日、GERLACHが来日してBARNEYS NEW YORK 銀座店でイベントを開催したんですが、おかげさまで大好評で。
中箸:イベントの日は、1日100ピース売れて完売しましたからね。売り場からは、イベント後に売るものがないという嬉しい悲鳴が(笑)
古内:あのイベントは僕らの夢でもあって。サーフブランドっていうのはサーフショップでしかできないと思ってたんですよ。でも、ブランド自体もそこじゃない部分を目指していたので。まさかサーファーがいない銀座っていう街でイベントをやるっていう。そのギャップで、先程お話しした逆からの切り口っていうのを体現できたので、本当に嬉しく思ってます。
中箸:ちょうどGERLACHがイベントに来て演奏してくれた時の格好もセットアップのジャケットのインナーにTシャツを着ていて「そういうのもありだよねー!」って言って買ってくれる方が多くて。やっぱり彼の着こなし、人間性には人を惹きつける何かがあるんでしょうね。Tシャツ2枚買い3枚買いするお客さんもいらっしゃいましたから。
古内:彼は、普段からそういうスタイルなんですよ。カリフォルニアの海に車を停めて、サーフボード持ってスーツのセットアップを着ている写真をInstagramにアップしたりしていて、そういうサーフっぽくないテイストも彼の好きなファッションなので。