AZUSA IIDAと『MY SHELTER』

by Saori Ohara and Keita Miki

現在、The SHEL'TTER TOKYO / MOUSSY FLAGSHIP SHOPにて個展『MY SHELTER』を開催中のアーティスト・AZUSA IIDA
同エキシビジョンはアートとファッションを共鳴させるMOUSSY(マウジ-)のアートプロジェクトシリーズ『PROJECT U』の一環として開催されているのだが、このプロジェクトにキュレーターとして参加しているのが、Masteredでもお馴染みのoffshore tokyoのファウンダー・的場良平だ。
今回はそんな両者に兼ねてより注目していたという、ファッションキュレーター・小木"Poggy"基史がインタビュー。両者のクリエイティブ活動のモチベーションに迫った。

Photo:Rintaro Ishige | Interview:Motofumi ”Poggy” Kogi | Text:Saori Ohara | Edit:Keita Miki

小木:的場くんと僕は、結構昔からの付き合いだよね。でも的場くんが、自分のアートキュレーションの仕事についてメディアで話したことってまだ無いんじゃない?

的場:無いですね、僕はあくまで裏方なんで(笑)。今回こういう機会を頂けたので、Poggyさんのお力添えで、僕の関わっているアーティストさんの名前がより広く世界にまで届くといいなぁ、と。

小木:offshoreを始めてもう6年目。お店でのアートの展示って、最初はカフェスペースで始めたんだよね?

的場:そうです。最初のきっかけは、当時バリスタだったスタッフの提案や人脈。写真家の石田真澄さんや、アーティストの佐野凜由輔さんはじめ、色々な方の作品展示をカフェでやってました。AZUSAさんもそのスタッフに紹介してもらった作家さんですね。『artists』という個展タイトルで70人くらいの人物を形取った木の作品を壁に飾ってもらったんですけど、かなり華やかな空間ができて、すごく評判が良かったんです。

AZUSA:最初の展示は駆け出しの頃で、カフェの空間を明るくしたいという思いから壁を彩るように表現をした展示でした。作品の土台となる木を糸鋸で切り取って削ってやすって、色をつけて、全て自分の手で黙々と制作をしました。

的場:AZUSAさんの作品は販売用じゃなかったんですけど、売って欲しいって声もすごく多くて、会期中に急遽、受注会みたいなことをすることになったくらい。お客さんのリクエストに合わせて、またそのウッド作品を作ってもらって。

小木:それからoffshoreの店内でも展示をやってたよね。的場くんがアートの展示をカフェからお店の方に広げたのは何がきっかけ?

的場:2020年の、コロナ禍に入る直前くらいに思いついたんですよね。カフェでの展示を重ねていくにつれて、アートに対しての要望も増えたので、思い切ってお店をアートの空間にしてみようと。お店での展示は、まずは以前からカフェで展示してくれていた人たちにお願いしようと思ってたので、佐野さんやAZUSAさんに声をかけて、という流れです。

小木:僕もアートはすごく好きなんだけど、ファッション業界の人間がアートに関わる時って、なんだか普通よりも気をつけなきゃいけない気がしてます。的場くんは何か気をつけてるところはある?

的場:一緒に取り組みをする人を決めるときは、単純にみんなが知っている人気アーティストをってことでは無く、作家さんの人間性を重視しています。純粋にクリエイティブなことが好きな才能のある人を、少しでも支援できたらというか、力になりたいとうか。もちろんそれが、結果的にはお店を盛り上げてくれることにも繋がるんですけど。

小木:AZUSAさんの作品を見てると、アイビー坊やを描いた穂積和夫さんみたいに、ファッションが好きで、アパレルの知識がある人ならではのディテールが感じられるんだけど、的場くんもそういうところに惹かれたのかな?

的場:そうですね。色彩も素敵でパワーがもらえますし。服が好きなのも、音楽や映画が好きなのも伝わってくる感じ。彼女はThe BandやNeil Young(ニール・ヤング)が好きで、逆に僕が色々教えてもらってるくらい、音楽についても博識なんですよ。

AZUSA:音楽も服も絵も、小さい頃から近くにあり、今の自分に欠かせないものです。色々なお仕事をしながらも、漠然とずっと、「絵を描くことを仕事にするんだ!」という意識はありましたね。

小木:子供の頃はシルバニアファミリーの家を背景に、仮面ライダーやゴジラの人形を戦わせてたって話を聞いたけど(笑)。

AZUSA:そうですね(笑)。戦って、帰る家はシルバニアファミリー(笑)。

小木:幼少期の体験とかって、やっぱり今の作品づくりにも影響してるのかな?

AZUSA:していますね。今回の『PROJECT U』での取り組みも、MOUSSYはデニムがアイコニックなブランドなので、展示のほかに、最も身近なアートのひとつとしてデニムのぬいぐるみも作らせてもらいました。なぜトカゲなのか、とよく聞かれるのですが、小さい頃にトカゲを育てていたことがあるくらい大好きで。それで提案させていただきました。

的場:多分、MOUSSY側も「え? トカゲ?」ってなったよね(笑)。ブランドのベテランデニム職人さんにトカゲを作ってもらって、AZUSAさんがそれに1点1点違う装飾を施した、10点限定のぬいぐるみなんですけど。

AZUSA:トカゲへの愛が止まらないまま大人になっちゃいまして(笑)。

小木:そもそも、この『PROJECT U』との取り組みは、的場くんのキュレーションで、年に4組のアーティストがThe SHEL’TTER TOKYO / MOUSSY FLAG SHIP SHOPで展示をしてるってことだけど、どうやってスタートしたの?

的場:(offshore tokyoで)展示をやり続けていたのがきっかけですかね。縁があって『PROJECT U』のキュレーションのお話をいただいたんですけど、先方にもアートへの理解や愛があるなって感じたので、やらせていただくことにしました。原宿のど真ん中に店を構えて、ファサードをブランドの広告じゃなく、アートの展示に使わせてくれるってすごい心意気だし、街並みを巻き込んで表現ができるのはアーティストさんにとってもすごく良い機会になるんじゃないかなと思って。

AZUSA:あのファサードを自由にアートで表現させていただけるというだけで、そんな貴重な機会はないですよね。小さい頃から見ていた原宿の街の中心に自分の絵が掲示されるのはすごく感慨深いです。普段は展示をする空間に合わせどんな作品を作るか考えていて、木を使ったり、鏡を使ったり、刺繍をしたり、手法を変えていたんですが、今回は『MY SHELTER』というタイトルで、作品を通しこの空間が沢山の人たちの心の拠り所になればいいな、という思いからキャンバスを選び、私も真正面から絵と向き合いました。

小木:AZUSAさんの今後の展望は?

AZUSA:イラストレーターとして仕事がはじまりましたが、元々は立体や映像や色々な表現に挑戦をしてきて、そこに原点がある。これからもどんどん表現の幅を広げていきたいと思ってます。自分の手でどこまで作れるか、0を1にしていくことを深めていきたいです。絵本など子供の頃影響を受けた大切なものを今度は自分で作ってみたいという思いもあります。

的場:その絵本に、シルバニアファミリーと仮面ライダーが出てきたら面白いね(笑)。