特別インタビュー:世界のファッション・シーンを牽引するART COMES FIRSTが初来日。

by Mastered編集部

サム・ランバートとシャカ・メイドー、この二人からなる[ART COMES FIRST(アートカムズファースト)]はロンドンを拠点に活動するクリエイティブ・ユニットだ。サヴィル・ロウのビスポーク・テーラーで修行した経験や、スタイリストとしてのキャリアをもとに、よりモダンかつスタイリッシュなデザインや、様々なブランド、クリエイターとのコラボレーションを行い、世界的に高い注目を集めるユニットである。このたびUNITED ARROWSが彼らを招聘し、原宿本店 メンズ館にてポップアップストアを開催。またとない機会に彼らを訪れ取材を敢行した。

Photo:Ko Tsuchiya、Interview & Text:Ryosuke Numano(EYESCREAM)

僕らが“ニュー・ジェネレーション”を牽引しているのではなく、彼らが僕らを牽引してくれている。

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— 今回のポップアップストアはどういう流れで行われることになったんですか?

サム・ランバート:昨年、「THE HARD GRAFT」というプレゼンテーションを様々な国で行ったのですが(※サンプリング、カッティング、リミキシングといったDJのテクニックはメンズウエアにも適応されると[ART COMES FIRST]が提唱したプロジェクト)、そのときに僕らは[DENHAM]のエプロンを着てプレゼンテーションを行っていました。それを見たUNITED ARROWSのPOGGYが「うちとコラボレーションしてそのエプロンを販売できないか」と言ってくれたんです。[DENHAM]ディレクターのリアムにそれを話したことで今回発売したコラボレーションアイテム「テイラーズ エプロン」のが実現しました。その発売に合わせ、以前からやりたいね、とお互いに話していたポップアップストアが実現することとなりました。

— それ以前からもPOGGYさんとはお知り合いだったんですよね?

サム:「The Sartorialist」を運営しているスコット・シューマンが開催したザ・サルトリアリスト・ランチで出会いました。スコットが今までに撮影してきた人たちを一同に集めて映像として形に残すというプロジェクトで、それを機にビジネスの輪が広がることも目的とした交流の場だったんですが、その前からinstagramといったSNSやインターネットを通じてPOGGYの存在は知っていました。実際に話してみたら音楽やカルチャー、スタイルといった部分で共通することが多かったんです。ランチが終わった後もしばらく話し込むくらい気が合った。そこで何か面白いことをやりたいねっていう話をして今に繋がっています。

今回の主役であるサム・ランバートとシャカ・メイドー

今回の主役であるサム・ランバートとシャカ・メイドー

— 今回はそこに[SuperDuper Hats]も加わっての来日でしたけど、デザイナーのマッテオ・ジョリとはどうやって知り合ったんですか?

サム:ピッティ・ウオモといった展示会があったので彼の存在は知っていました。マッテオと出会う前は、ハットを他の人に頼んで作ってもらったり、ヴィンテージのものを使ったり、色々試してみたはものの中々しっくりこなくて 「これ!」というハットに出会えなかった。でも、マッテオと知り合い、色々と話をしているうちに自分たちが持っているクラフトマンシップのマインドや、影響を受けているカルチャーがPOGGYと同じように共通していました。僕らより若いクリエイターですけど、しっかりと自分の意見を持ってもの作りをする姿勢にインスパイアされ、[SuperDuper Hats]と一緒に取り組むようになりました。

— ポップアップストアのパーティでは人前かつ生実演でハットを作っていたじゃないですか。ああいったことは普段からやっているんですか?

マッテオ:実演は初めてでした。今まではアトリエで作業することが主だったので集中して製作するような技術的なことに重きを置いていましたが、最近ではハット・メイキングのパフォーマンスをやろうと思うようになりました。ちょうど1ヶ月前くらいに新しいアトリエが出来たのですが、そこでは[SuperDuper Hats]のハットがどういう作業で、どういう手順で、どういう素材で、どういう人に作られるのかというところをお客さんに見てもらう機会を設けたいと思っています。そういう新たな接し方は重要ですし、今後も続けていきたいと思っているので、今回のポップアップでのパフォーマンスは自分にとって良いターニングポイントになりました。

[DENHAM][ART COMES FIRST][UNITED ARROWS & SONS]によるトリプルコラボのテイラーズエプロン

[DENHAM][ART COMES FIRST][UNITED ARROWS & SONS]によるトリプルコラボのテイラーズエプロン

— パーティに来ていた人たちは若い世代が多かったじゃないですか。みなさんのフォロワーじゃないですけど、クラシカルなハット・スタイルを上手く着崩していて、ここ日本ではこれまでに見なかったスタイルの人が多かった。サムが彼らを “ニュー・ジェネレーション”と呼んでいましたけど、そんな新たなファッション・キッズを牽引しているという自覚はありますか?

サム:たぶん、僕らが“ニュー・ジェネレーション”を牽引しているのではなく、彼らが僕らを牽引してくれている。例えば、アーティストとオーディエンスの関係で言うと、オーディエンスはアーティストから影響を受け、そのカルチャーをプッシュしてより大きいものにしようとするし、その反応を受けてアーティストはより良いものを作ろうとするサークルが生まれると思うんです。僕らもまさにそのサークルと同様で、自分たちが“ニュー・ジェネレーション”を引っ張っているというわけではないはず。
シャカ・メイドー:そうですね。僕たちはオーディエンスとお互いにインスパイアし合いながら新しいものを作っていて、“inspired by inspire”という言葉をよく使います。そんな感覚だからこそ思うのですが、それこそハットやスーツというアイテムは当然僕らが発明したものでないですよね。昔から存在するクラシックなものからインスパイアを受けることで新しいものを作るというサークルです。“ニュー・ジェネレーション”の人たちがそれをフォローしてカルチャーが大きくなっていき、またそこから色々な人がインスパイアを受けるという一種のムーブメントだからこそ、自分たちがそういったものを牽引しているとは思っていないですね。

[SuperDuper Hats]のマッテオによるハット製作の生実演

[SuperDuper Hats]のマッテオによるハット製作の生実演

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— そのサークルを作ったことの一因にインターネットがあると思うんです。みなさんがTumblrやinstagramを活用することで多くの人々がフォローしている。それはデジタルというものがファッションに対して有機的になってきたことを意味しますが、ただ情報を垂れ流すのではなく、サークルが生まれること、服の作り方やビジネス上でのブランディングなど、多くのことを意識しながらデジタルを活用しているのでは?

サム:Tumblrやinstagramはもちろんやっていて、そこで一番大事にしているのは自分たちはアナログでありながらデジタルの中に生きているということ。チェックしてもらえればわかるんですけど、何でもかんでも写真に撮ってみんなに紹介しているわけではなく、自分たちが大切にしている素材や道具のリサーチ結果やその歴史といったものをメインにアップしています。インターネットは自分たちの中にあるアナログなポイントを世の中の人、特に若い世代に向けて紹介するために使用しているんです。
シャカ:僕たちはそのバランスを意識しています。インターネットはワンクリックで様々な情報が入ってきますけど、自分たちが生まれ育った時代ではインターネットはおろかコンピューターも普及していなかった。その時代背景と現在の若い世代が通ってきた道は違うのも当然です。どんどんジェネレーションが変わっていく中で彼らとコミュニケーションを取るツールとしてインターネットは最適のツールなのは間違いないです。ですが、ただ広く伝えるというのではなく、サムが言うように僕らが持つアナログの良さを紹介するためにデジタルを利用しています。

マッテオ:基本的にはシャカと意見は同じで、バランスは大事だと考えています。例えば今話しているようなインターネットだけの情報に頼ると、すごい偏った考え方やマインドになってしまうんです。いまだに僕が新聞を読んでいるのは、各紙それぞれ批判的なポイントが異なっていて、その中から自分たちが情報を選んで自分のものにして、しっかり自分なりの意見も持てるようにするのが大事だと思ってます。

日本が誇るファッション・アイコンであるUNITED ARROWSの小木“POGGY”基史

日本が誇るファッション・アイコンであるUNITED ARROWSの小木“POGGY”基史

UNITED ARROWSの創設者のひとり、栗野宏文もDJプレイを披露した

UNITED ARROWSの創設者のひとり、栗野宏文もDJプレイを披露した

— では最後に、今回が初めての来日ということで、日本に来て感じたことはなんでしょう?

シャカ:日本人の仕事に対する姿勢ですね。他の国の人に比べて自分たちの仕事にちゃんと敬意を持っているのが垣間見えました。タクシードライバーやホテルマン、レストランのウェイターが自分達の仕事に誇りを持って働いているのがすごくわかったんですよね。それがなんとも印象的でした。

マッテオ:他の国ではさっき言ったような人たちの一部は自分の仕事に対して誇りを持っていないように見えてしまうことがあり、だからなのか他の人が彼らを見ても敬意を持てないと思うんです。そうして職業差別も起こる。だけど日本ではそういう印象は受けなかった。

サム:色々なお店を見ましたけど、どこもセレクトのラインナップが混沌とミックスされていながらも見事に成り立っていました。そのバランス感覚がすごく長けていると思いました。例えば、ヨーロッパのマーケットはアイテムごとに区分されて置かれていることが多いので、より印象的に映りました。

— 高円寺で行われていたパフォーマンス・グループの写真をinstagramにアップされていましたけど、あれも日本独自のものとして新鮮に見えたんですよね?

サム:すごくモダンな音楽が流れていたんですけど、動き自体はトラディショナルなダンスに見えたんですよ。身体を金色や白色にペイントしていてとてもアーティスティックでした。その次の日には浅草に行ったのですが、浅草寺の造りやそこで働く女性の振る舞いにそのパフォーマンスと共通するものを感じました。自分たちがやっているサブカルチャーとカルチャーをミックスさせるような感覚というか。サブカルチャーはカルチャーというリファレンスがあり、そこから発展したものですよね。それがあのダンスにも通ずるものだとしたらすごく面白いなと。ホテルに戻ってからパフォーマンスの意味を調べてみて、どういうものが背景にあるのかというのを理解しました。お寺の歴史だったり、そういう日本の伝統的な背景が自分たちに通ずるなと思いましたね。

【ART COMES FIRST、SuperDuper Hats】
展開店舗:ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館
東京都渋谷区神宮前3-28-1
営業時間:平日12:00~20:00 土日祝 11:00~20:00
TEL:03-3479-8180

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