electraglide 2012開催直前! Andrew Weatherall 独占ロングインタビュー

by Mastered編集部

今年4月に3枚組ミックスCD『Masterpiece』でBPM120を切る新感覚のサイケデリックなダンス・ミュージックを展開してみせた英国のカルトDJ、アンドリュー・ウェザオール(Andrew Weatherall)。それから7ヶ月を経て登場したアスフォデルズ(The Asphodells)は、彼が主宰するレギュラー・パーティ「A Love From Outer Space」に触発され、ティモシー・J・フェアプレイ(Timothy J. Fairplay)と結成した新たなプロジェクトだ。フロアから誕生した、そのデビューアルバム『Ruled By Passion, Destroyed By Lust』について、間もなくelectraglide 2012に登場のアンドリュー・ウェザオールが語る来日直前インタビュー。

Photo: Steve Gullick
Interview & Text : Yu Onoda
Edit:Mastered

どんなに奇怪な形をした建築物でも土台はしっかり作られているように、このアルバムはアイディアだけでなく、それを成立させるための土台、歴史や技術についての知識と努力がある。そうしたものがなければ、どんなアートも脆弱なままだろう?

— ここしばらくロックンロールの要素が盛り込まれた作品が続いていましたが、フロアに軸足を置いた作品はひさしぶりですね。

The Asphodells
『Ruled By Passion, Destroyed By Lust』
BPM120を切るスローモーなグルーヴに、アンドリュー・ウェザオールの25年に渡る音楽遍歴を注入した2012年屈指の傑作アルバム。

Andrew Weatherall:そもそもは自分のパーティ「A Love from Outer Space」でプレイしたい曲が足りないことへの不満がアルバム制作の始まりだったんだ。それだったら自分たちで作ってしまおう!と思ったのさ。多分一番最初に手がけたのはARケイン“A Love from Outer Space”のカバーだったと思う。大体、自分のスタジオにこれだけの機材が揃っているのに、最初から何でそうしなかったのか自分でも不思議なんだが(笑)、このアルバムの75%はそうした発想から作ったもので、残りの25%はギター・リフやボーカルの断片から手を付けて、そこにはロックンロールの要素も残されているよ。

— では、ダンストラックを意図したわけですね。

Andrew Weatherall:そもそも、曲作りと一口にいっても、楽曲をアレンジするのとダンスフロア用のトラックをアレンジするのは全く別のアプローチだが、制作初期は曲を作ろうとして苦戦していたんだ。そこでトラックを構成したうえで、その土台に曲を肉付けしてみようと発想を転換して、今までのアルバムと同じ要素を分解してダンスフロアにふさわしい形に作り直してみたのさ。アートというのは突飛なものであるべきだと思うが、ジャクソン・ポロックしかり、ピカソしかり、どんな抽象的なアートも何らかのシステムを土台に構成されているだろ? いや、何も自分をピカソに喩えるつもりはないんだが(笑)、どんなに奇怪な形をした建築物でも土台はしっかり作られているように、このアルバムはアイディアだけでなく、それを成立させるための土台、歴史や技術についての知識と努力がある。そうしたものがなければ、どんなアートも脆弱なままだろう?

— プレイしたい曲が足りないと感じる「A Love from Outer Space」とはどんなパーティーなのか、ご説明していただけますか?

Andrew Weatherall
『MASTERPIECE』
アンドリュー・ウェザオールのレギュラー・パーティー「A Love From Outer Space」の3時間を3枚のディスクに凝縮した最新ミックスCD。アスフォデルズとのセットで聴いてみるべし。

Andrew Weatherall:先週は相方のDJ、ショーン・ジョンストンと交代で6時間通しでプレイしたんだが、5時間から8時間かけてプレイできるパーティーをやりたくて、「A Love from Outer Space」は始まったんだ。そして、100BPMでスタートして、120を超すことは滅多になく、ハウス、ニュービート、ポストパンクからテクノまで、様々な音楽要素がそこにはある。とにかく自分が好きな音楽を全部プレイするパーティーなんだよ。そもそも、DJを始めた頃、俺は自分のことをDJだとは思っていなかった。自分が好きな音楽をただ流していただけなんだ。だから、今のプレイスタイルは、そのルーツに戻ってきているということなんだろうね。一時期、テクノだけをプレイしていた時もあったが、正直つまらなかったんだ。やはり自分が好きな音楽を、ジャンルを問わずプレイするスタイルが自分にとってはしっくりくるんだよ。しかも、様々な音楽を2時間に詰め込まず、最初はゆっくり、そして徐々にテンポを上げていく感じで長い時間かけて、徐々に慣れさせるようにプレイするから、どんなオーディエンスでも楽しめるはずだし、自分のこれまでの音楽遍歴をDJでカヴァーするとなったら6時間ぐらいの余裕があると丁度いいしね。

— なるほど。

Andrew Weatherall:ただ、自分がこの25年間で蓄積してきた音楽をプレイしているのはノスタルジーではなく、今につながる遺産としての音楽を意識しているんだよ。昔着ていた古いコートを羽織るように、ノスタルジックな気持ちに浸るのも悪くはないが、遺産は次の代に受け継げるし、影響だってずっと続くだろう?「あの頃はよかった」なんて語るより次の代に受け継いで影響を残すための遺産の方がずっといい。もちろん昔は素晴らしいことも沢山あったが、今までの歴史を振り返るより、その歴史が今にどうつながっているかを明らかにするほうが、より意味あるオマージュになるんじゃないかね。

— そのうえで、今回のプロジェクトは、以前から作品制作のサポートを務めていたバタントのティモシー・J・フェアプレイと全面的にタッグを組んだわけですが、ソロ名義ではなく、新たなプロジェクトでのリリースとなったのは?

Battant
『No Head』
ティモシー・J・フェアプレイが在籍するロンドン発のダーク・ウェイヴ・バンド。そのファースト・アルバムのプロデュースはアンドリュー・ウェザオールの盟友、イヴァン・スマッグ。

Andrew Weatherall:ティムとは元々10年前から友人としての付き合いがあってね。俺が所有する地下スタジオ施設の隣の部屋で彼が作業をするようになってから自然と一緒に仕事をするようになったんだ。ユニットをやらないかと誘ったのは俺だよ。それ以前から彼のプロダクションに手を加える手伝いもしていたし、彼も私の仕事のやり方を理解していた。そして、今回も「アンドリュー・ウェザーオール・アルバム」と呼ぶより、また新しい名前を発表して世間をまた混乱させてやろうかと思ってね(笑)。だから、「新しいユニットを始めたよ」と伝えたら、マネジメントに「…また?」とため息つかれたよ。でも、実際のところ、今回のトラックの多くはティムが始めて僕が完成させたものだし、ティムはこのアルバムのプログラミングとエンジニアリングの大半を手がけたからね。

— そのプロジェクト名にアスフォデルというユリ科の花の名を付けた動機を教えてください。

Andrew Weatherall:俺はエドワード時代とかビクトリア時代の文学や文化にちなんだ物のコレクターでね。ビクトリア時代のアスフォデルの花言葉は「後悔」だったんだ。そのしばらく後でギリシャ神話で「絶望」と「世界の終わり」という意味を持っていたことを知ったんだ。つまり、俺は知らないうちに自分のバンドを「後悔」と「絶望」と「世界の終わり」を意味する花にちなんで名付けてしまったってわけだ(笑)。ただ、そんな雰囲気のバンドを作ったつもりでもないよ。実際の花の名前にLをもう一つ足したのも、自分が好きな60’sサーフバンドに似た感じがするかなと思ったからだし(笑)。しかし、若い頃から美しさと危険が隣合わせになったものに魅力を感じてきたのは確かだが、まさかあんなに綺麗な花が絶望や後悔を意味するとはね……(笑)。

— 確かにあなたの作品の多くはダークなもの、危ういものにインスパイアされていますよね。それはどうしてなんだと思いますか?

Andrew Weatherall:メロディや歌詞を考えると、俺の音楽にはダークなユーモア性があると感じるね。単純に驚かせたり怖がらせようとするのではなく、陰の部分をちらつかせるのが好きなんだ。闇の中に懐中電灯を向けるとつい笑ってしまうようなものが見えたりするだろう? 人生を生きていると怖いことはたくさんあるが、それを笑うのが人間の本能だ。だって、笑えなかったら泣くしかないだろう。イギリスのユーモアもダークな要素が強いし、ドタバタの裏にブラックな笑いが見えるが、困難を笑い飛ばすのは日本と同じ島国で、何千年もの間、外国からの占領に脅かされていた歴史の中で、恐れを感じながら笑い飛ばすユーモア性を我々は培ったのかもしれない。

我々は威厳を与えられたチンパンジーにすぎないんだ。棒きれやタイヤで遊んでいれば十分で、新しいオモチャを放ると一時的に熱がついたように夢中になる。でも、気づくと次の日にはもう元の棒きれとタイヤに戻っている。それがヒトの進化プロセスなんじゃないのかね。

— また、本作でも、以前から引き続きあなたのヴォーカルがフィーチャーされています。これは『THE DOUBLE GONE CHAPEL』以降の試みがあなたの血や肉となり、音楽制作において必要不可欠なものになったということなんでしょうか?

Andrew Weatherall:自分より有名な友人たちにゲストボーカルを頼んでいたらもっと何百枚も売れていただろうね。5年後、路頭に迷った時に後悔しなければいいが(笑)、自分の歌は当然パーソナルなものだし、人前で歌うことはいい挑戦になるからね。自分が一番憧れるソングライターはザ・ポーグスのシェイン・マガウワンやニック・ケイヴのように歌うというより朗読に近い歌い方をするシンガーソングライターなんだ。ニック・ケイヴの“Into Your Arms”、それからロンドンについて書かれた曲で自分がもっとも好きな曲の一つであるザ・ポーグスの“Rainy Night in Soho”の半分でもいい歌が書ければ大満足だよ。でも、まだまだ書き足らないがね。ただ、それ以前に自分には野心がちょっと足りないね。目標はあるが野心が足りない。だから時々人生に多いに悩んだりする(笑)。「野心」と言うと人は「キャリア」と結びつけがちだが、自分がやっていることは仕事であってもキャリアではない。多忙でエキサイティングで楽しい仕事だが、キャリアだとは思えないんだ。自分のなかにあるただひとつの目標は今ある瞬間を楽しみ、人が楽しめる音楽をなるべく長く続けることなんだが、キャリアはそれ以上に厳しいものだからね。目標を達成するために犠牲を払うとか、俺はなるべくそういうのは避けたいね。

— 本作には、パーティ名の由来となったA.R.ケイン“A Love From Outer Space”のカヴァーがミックスCD『Masterpiece』収録のアナザー・ヴァージョンとして収録されています。あなたにとってA.R.ケインとはどんなアーティストなんですか?

A.R.Kane
『I』
ジャンルや時代に回収されないサイケデリアを放った英国のドリーム・ポップ・デュオの1989年作。アンドリュー・ウェザオールが愛してやまない“A Love From Outer Space”のオリジナルを収録。

Andrew Weatherall:80年代当時から大好きなトラックだったんだ。曲のタイトルも気に入っていたから新しいパーティをつくろうって話になった時にネーミングはすぐに決められたんだ。今でも人に聴かせるたびに「なんだこの音楽は?」と驚かれるし、この曲には別世界から来たような雰囲気がある。もともと俺が音楽に入れ込んでいったのも、静かでつまらない田舎町での生活から逃避したかったのが理由だし、今でも別世界のようなフィーリングがあるトラックには惹かれるんだ。どんな音楽が好きかと聞かれたら、俺はジャンルに問わず「別世界のような音楽」と答えるしね。

— カヴァー曲としては、もう1曲、ジョン・ベッチェマン卿が1974年にリリースしたオブスキュアなアルバム『Late-Flowering Love』収録の“Late-Flowering Lust”を取り上げていますよね。彼は日本で馴染みのない、しかし、現代のイギリスで評価の高い詩人ですが、この曲をカヴァーした動機を教えてください。

Andrew Weatherall:「20世紀に生きたイギリスを代表する詩人を挙げよ」と出されたら10人のイギリス人のうち9人はジョン・ベチャマン卿の名を出すだろう。彼の作風は絵に描いたような当時のイギリスの優雅な中流階級を彷彿させながら、かすかにダークで皮肉を残した描き方が特徴なんだ。そして、“Late-Flowering Lust”の内容は年老いた元・恋人同士が酔った勢いで暗闇の中で絡み合おうとするも、虚しさが残る結末を迎えるという、実に身に染みる話だよ(笑)。だが、その音楽がまた良くてね、今回、コピーさせてもらうことにした。彼は70年代に二枚のアルバムを出していて、その一枚の「Late Flowering Love」から拝借したんんだ。音楽をバックに自身の詩を朗読しているものなんだが、これが想像を超えるもので、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを彷彿とさせる曲があるかと思えば、“Late Flowering Lust”の原曲はニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズのようにも聴こえる。彼は偉大な詩人にして優れた音楽家でもあり、すばらしい音楽アルバムも出している。彼の存在は、最近になってまた注目を浴びるようになってきたようだね。ブリティッシュ・シー・パワーやジャーヴィス・コッカーも最近ライヴでカバーしたと聞いて妙に納得したよ。

— ジョン・ベッチェマンを取り上げたことと関連があるのかどうかは分かりませんが、近年のあなたはエドワーディアン・スタイルの服を好まれていますよね。イギリス人であることやイギリスの伝統とあなたの音楽はどのように結びついていると思いますか?

Sir John Betjeman
『Late Flowering Love』
20世紀イギリスを代表する詩人、ジョン・ベッチェマン卿が1974年にリリースしたアルバム。アスフォデルズがカヴァーした“Late-Flowering Lust”のオリジナルを収録。

Andrew Weatherall:昔の詩人が言っていた「ファッションとは自分自身のスタイルを築くまでのものだ」という言葉があるんだが、正しいと思うね。ある年齢を越えても最新トレンドを追い続けるのは滑稽に見えるよ。妻は高級ブティックのバイヤーだから、自分もファッションは嫌いじゃないが、まぁ、なんて馬鹿馬鹿しくて無意味で表面的で楽しいものなんだろうと思うよ(笑)。半年ごとに入れ替わる点では使い捨てポップ・カルチャーと同じだね。自分が好きなのはファッションではなくてスタイルなんだ。ファッションは外野から面白おかしく見届けている立場だよ。ヴィヴィアン・ウェストウッドの物はたまに買うこともあるが、現代の洋服には魅力が感じられないし、自分が着たらさぞ変な格好になるだろうよ。
1900年代初頭にデザインされたアーミー用のショートパンツなどは履いてもTシャツなんて滅多に着ない。だって、ショートパンツ姿でもエドワーディアン・スタイルでいられるんだからね(笑)。なぜ、エドワーディアン・スタイルが好きかって? 俺は1890年から1920年ぐらいにかけての時代に非常に興味があるんだよ。芸術、社会、科学の面で、人類の発展においてとても重要な時期だったと思う。だから、その時代のアートや文学、彼らの服装やスタイルに興味があるんだ。なぜそこまで惹かれるかは自分でもよく分からないが、そのきっかけのひとつは学生時代に読んだジョセフ・コンラッドの「シークレット・エージェント」だよ。

— そして、今回のアルバム・タイトル『Ruled By Passion, Destroy By Lust』は、男女関係や人生の教訓のようでもあり、現在の社会や経済状況と響き合っているようでもあり、様々な解釈が可能なものだと思います。あなたがこのタイトルに投影したものとは?

Andrew Weatherall:我々は威厳を与えられたチンパンジーにすぎないんだ。棒きれやタイヤで遊んでいれば十分で、新しいオモチャを放ると一時的に熱がついたように夢中になる。でも、気づくと次の日にはもう元の棒きれとタイヤに戻っている。それがヒトの進化プロセスなんじゃないのかね。人類の原動力は新しいキラキラしたものへの欲望なんだ。それと同時に自分たちの人間らしさを思い出させるもの、どれだけ長い歴史を経て、ここまでやって来たかを思い出させるものをも求めている。そうやって文化はその次の世代の人間の姿を映し出している。アルバムタイトルはそんな人間の生態を象徴するフレーズなんだ。

— 「アメリカではダンス・ミュージックがディスコ以来の成功を収めたが、EDMというのは、その成功を手にするために、ダンス・ミュージックが長らく築き上げてきたものを骨抜きした音楽だ」と書かれていたガーディアンのDEADMAU5のアルバム・レビューはご覧になりました?

Andrew Weatherall
イギリス・ウィンザー出身のDJ/ミュージシャン。初期にはPrimal Screamの大ヒットアルバム『Screamadelica』をはじめ、様々なアーティストのプロデュースを手掛けたことでも知られる。現在はWarp Records及び、自身の主宰するレーベルROTTERS GOLF CLUBから意欲的に作品をリリース。2012年にはTimothy J. FairplayとThe Asphodellsを結成し、デビューアルバム『Ruled By Passion, Destroyed By Lust』をリリース。

Andrew Weatherall:私もその批評を読んだよ。正直、DEADMAU5を観に行く奴なんか私のクラブには来て欲しくないね。彼が何をして何を言おうと、私には全く関係ないよ! いや、むしろ、ああいう連中をうちのクラブに寄せ付けないのは感謝するべきかもしれない。もし自分がDEADMAU5やThe Chemical Brothersを目指したいと思ったら20年前にすでにやっていたさ。でもそれで満足するとは思えなかったから、彼らのような金や名声や豪邸やカッコイイ車は手に入らなかった。後悔はしていないさ。ああいうのは私の世界じゃない。ネズミのかぶりものをした男が言うことをそんなに気にする必要があるのか? 1950年代からポップミュージックはずっとそんなものだよ。アンダーグラウンドで始まった音楽が次第にオーバーグラウンドに喰われる。だからアンダーグラウンドに残る決意をしたなら文句は言っちゃいけないね。彼のうぬぼれ屋らしい発言を読むと、ある意味典型的なポップスターだよ。でもポップスターがバカな発言で世間を騒がさなければ、それも心配だ(笑)。本当に私の若い頃にそっくりだよ。自分もある日を境に愛読していた音楽雑誌から発言や意見を求められるようになったんだ。それまで建築現場で働いていた若者がある日突然「天才プロデューサー」だからね。内心怖かったよ。自分がただの人間であることがバレてしまうことがね。だから人を突き放して偉そうなことばかり言っていた。この新しい音楽の世界に魅了されながらも恐怖を感じていたんだ。DEADMAU5ももしかしたら少し怖いのかもしれない。だからああやってデカイ発言をして意地を張っているんじゃないだろうか。

— 長らく直線的に進化を続けてきたダンス・ミュージックは、2000年以降、過去のモチーフのリサイクル、リヴァイヴァルのルーティーンに入ったという指摘もありますが、あなたにとって真にクリエイティヴな音楽とは? また、そのクリエイティヴィティは、どこから生まれるんだと思いますか?

Andrew Weatherall:自分のことで言えば、とにかく実現させたいアイデアが止まらないんだ。自分がやりたい音楽が人に受けられるかどうか、個性的かどうかなんて心配は足手まといになるだけだ。そもそも新しい音楽ほど早く古くなるものはないんだよ。25年もDJしていれば自然のままにプレイしたいものを選ぶ。オリジナリティを実現させたいのなら、オリジナリティを求めちゃいけない。自分に素直なままでいること、それが個性を磨く一番の方法だ。もし若いアーティストにアドバイスするなら、誰も聴いたことがない音楽を作ってやろうなんて力まずに技術とか感情とか原動力にこだわれと言いたい。心がこもった音楽が一番聴く者の心を揺さぶるはずだからね。

— 最後に。前回、7月の来日はクラブでの一夜限りのプレイでしたが、今週末に控えたelectraglide 2012ではどんなプレイが期待できそうですか?

Andrew Weatherall:幕張メッセは以前プレイしたことがあるが、観客の数が200人だろうが2万人だろうが俺には関係ないね。とにかく自分の前と後に出るDJが誰なのか、自分の出番は何時なのかが分かればそれでいい。さすがに20年以上も続けてきて、みんなに認めてもらわきゃなんて気は今さら起きないんだ。だから、夜の早いうちにデカいことをやってみんなを熱狂させようと意気込むこともない。それは目玉の出演者の役目だ。俺にとっては、デカいパフォーマンスを目指すより、観客に楽しい夜を過ごしてもらう方がよっぽど大事だからね。だから、そう、出番が来たら、やるべきことをやって、イベントを楽しむまでだ。

【electraglide 2012】
2012年11月23日(金・祝) OPEN/START 21:00
開催場所:幕張メッセ
料金:8,800円(前売) 9,800円(当日)

2012年11月24日(土) OPEN/START 21:00
開催場所:大阪ATCホール
料金:7,800円(前売) 8,800円(当日)

出演:FLYING LOTUS. 電気グルーヴ*. ORBITAL. SQUAREPUSHER. AMON TOBIN ISAM*. FOUR TET. TNGHT. ANDREW WEATHERALL. MARK PRITCHARD B2B TOM MIDDLETON*. NATHAN FAKE. DJ KRUSH*. DJ KENTARO*. KODE9. 高木正勝*. SPECIAL GUEST: 真鍋大度*
*・・・幕張のみ出演

http://www.electraglide.info/