対談:ACO × 山㟢廣和(toe)

by Mastered編集部

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ACOのニューアルバム『TRAD』

ACO
『TRAD』
「悦びに咲く花」をはじめとするセルフ・カヴァーを中心に2曲の新曲、マッシヴ・アタック「Teardrop」含む3曲のカヴァーを収録した彼女のキャリアにおける決定的なスタジオ・アルバム。

— そして、toeの“月、欠け”とフジロックでのライヴを経て、今度はACOがアルバム『TRAD』の制作時に山㟢さんにゲスト参加を依頼した、と。

ACO:そう。でも、その前にtoeとの繋がりはもう一つあって。山ちゃんと初めて会ったモテキのライヴでは別の人が叩いてたんだけど、私のバンドではtoeの柏倉(隆史)くんがドラムを叩いてくれてて。

山㟢:それはいつからなの?

ACO:アルバムでいうと、去年出した『LUCK』から。“月、欠け”のレコーディング前からだね。柏倉くんは憲ちゃんに紹介されて、お願いするようになったんだけど、歳も近いこともあってか、レコーディングでは細かく説明する必要がないし、なにより、彼のドラムはすごい歌いやすいんだよね。

山㟢:例えば、俺がギターをちっちゃい音で弾くと、それに合わせてドラムも小さくなるし、柏倉のドラムは曲の主旋律に寄りそうドラムを叩くから、ヴォーカリストにとっては歌いやすいのかもしれないね。

ACO:toeのドラムに比べて、私の時は音数をシンプルに、ということでお願いしてもらっていることもあるんだけど。

山㟢:でも、これしか出来ないっていうタイプではなく、器用なドラマーだから、そういうアプローチもACOちゃんの曲に合わせて考えているんだと思うよ。

— そして、今回、ACOが山㟢さんに参加をお願いしたのはイギリスの女性シンガー・ソング・ライター、スカウト・ニブレット“kiss”のカヴァーですよね。

ACO:今回の『TRAD』では他にもマッシヴ・アタックとジェフ・バックリーの曲を取り上げてて、どれも好きだからという単純な理由でカヴァーしたんだけど、ボニー・プリンス・ビリーとのデュエットで歌ってるスカウト・ニブレット“kiss”はスティーヴ・アルビニがプロデュースだったりするし。

山㟢:ボニー・プリンス・ビリーは、普段、カントリー・シンガーみたいだけど、トータスともコラボレーションしてるし、客演がすごい格好いいんだよね。この曲のチョイスにしてもそうだけど、ACOちゃんはインディー系の音楽がすごく詳しいよね。俺が90年代の終わり頃に買ったUSインディーズのコンピがあって、それはネット検索しても出てこないようなマニアックな盤なんだけど、そこに入ってるジェーン・ウッドっていう女性シンガー・ソング・ライターがすごい好きで。ACOちゃんにその話をしたら、普通に知ってて、びっくりしたんだよね。

Scout Nibbrett『This Fool Can Die Now』90年代のグランジ、オルタナティヴの流れを汲む英国の女性シンガー・ソング・ライターがプロデューサーにスティーヴ・アルビニを迎えた2007年作。ACOが取り上げたボニー・プリンス・ビリーとのデュエット曲「Kiss」はロマンスの炎が静かに燃え上がる隠れた名曲だ。

Scout Nibbrett
『This Fool Can Die Now』
90年代のグランジ、オルタナティヴの流れを汲む英国の女性シンガー・ソング・ライターがプロデューサーにスティーヴ・アルビニを迎えた2007年作。ACOが取り上げたボニー・プリンス・ビリーとのデュエット曲「Kiss」はロマンスの炎が静かに燃え上がる隠れた名曲だ。

ACO:そういう趣味が合うんだよね。山ちゃん、乙女っぽい曲が好きだから(笑)。

山㟢:俺、乙女だから(笑)。

— はははは。しかし、今回の共演は曲のチョイスも素晴らしいですが、ギタリストの山㟢さんにヴォーカリストとしての参加を依頼したというのも面白いですよね。

山㟢:そう。初めてですよ。しかも、最初は「歌うパートも少ないし、ちょっと歌ってくれればいいから」って言ってたのに、原曲を聴いたら、3分の2くらいが男の声っていう(笑)。

ACO:(笑)。しかも、この曲は歌うのが難しいんだよね。

山㟢:そうそう。オリジナルは彼の雰囲気ものでハモってる感じで。

— ボニー・プリンス・ビリーは酔いどれ系のシンガー・ソング・ライターですからね。

ACO:そう、たまたま歌ってみたら、良かった、みたいな感じの歌。だから、「これ、歌うのは難しいだろうな」って思いつつ、山ちゃんには無理してもらったんだけど、結果的にいいものが出来たから、お願いして良かった。でも、すごくいい感じの歌が録れたのに、ミックスの時に山ちゃんが「自分の声は小さくしてくれ」って言うから、私は「なんでよー!」って言ったんだけど(笑)。

山㟢:そう。「もうちょっと小さくていいんじゃない?」って何度も言って。というのも、ACOちゃんの歌に対して、俺の歌はピッチが微妙だからさ、「微妙なところはコンピューター上で直してね」って言ったのに全く直ってないっていう(笑)。

ACO:(笑)。そんな、アイドルじゃないんだからさー。

山㟢:いや、俺はアイドルとしてやっていきたいんだよ(笑)。

ACO:でも、喋ってるようなセクシーな歌声だし、その揺れの部分が味なんだから、大きめに聴かせよう!って。

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