対談:ACO × 山㟢廣和(toe)

by Mastered編集部

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10年代以降のグランジ、オルタナティヴ・リヴァイヴァルの流れとも響き合うストイックなバンド・サウンドと共に音楽の旅を続けるACO。ライヴ・アルバム『LIVE LUCK』と共にリリースされたばかりの最新スタジオ・アルバム『TRAD』ではゲストにtoe山㟢廣和をギター、ヴォーカルでフィーチャー。toeの”月、欠け”以来のコラボレーションとなる両者のスペシャルな共演を記念して、ACOと山㟢氏のワン・アンド・オンリーな対談がここに実現した。来年1月に行われるACOとtoeの対バン・ライヴを前に、2人が語る共演秘話は必見だ。

Photo:Takuya Murata
Interview & Text:Yu Onoda
Edit:Keita Miki
Special Thanks:TOKYO FAMILY RESTAURANT

ここ最近は、自分のなかでジャンルはどうでもいいというか。音楽人生は長いから、色んな音楽を聴きたいと思うし、やりたいなって思う。(ACO)

toe『The Future Is Now EP』

toe
『The Future Is Now EP』
2012年リリースの4曲入り最新スタジオ音源。変拍子とギターのアルペジオのなかでゲスト・ヴォーカリストACOの声が浮遊する初の共演曲「月、欠け」は美しい情景が描き出される名曲だ。

— この2組の共演は、去年、toeがリリースした『The Future Is Now EP』収録の“月、欠け”にACOが参加したのが最初の発端ですが、もともとはどういう繋がりなんですか?

ACO:私のバンドでベースを弾いてる中尾(憲太郎)くんですね。彼が私のライヴに山ちゃんを誘ってくれたのが最初です。あれは恵比寿のLIQUIDROOMでやった映画「モテキ」関連のイベントライヴだったから、2011年になるのかな。

山㟢:eastern youthが出たやつね。そうそう、俺、ACOちゃんの音楽は以前から好きだったし、憲ちゃんが一緒にやってるということで、観に行きたい!と思って。

ACO:そう、それでビールをどかっと差し入れしてもらったんだよね(笑)。

— toeの音楽は聴いたことがありました?

ACO:もちろん、知ってたよ。友達が「CM音楽を作る時に広告代理店の人がいつもtoeの名前を出すんだよね」って言いながら、toeのアルバムをかけてて。だから、代理店にモテるバンドなのかな?って(笑)。

— じゃあ、そのライヴで初めて顔を合わせて、その後、“月、欠け”を作る際にACOに声を掛けたと?

山㟢:去年出した『The Future Is Now EP』は実は結構前から録っていて、“月、欠け”も下手するとACOちゃんのライヴを見る前から作業してたのかな。まぁ、そんな感じで作ってたから、そのライヴをきっかけにゲスト参加をお願いしてみたら、快く引き受けてくれたっていう。

ACO:でも、スタジオで最初に打ち合わせをした時、山ちゃんがすごくシャイだから、全然、目を見て話してくれなくて(笑)。

山㟢:その時点で歌詞が出来てなかったから、「書いて!」ってお願いしたら、「自分でやれ!」って言われて(笑)。

ACO:だって、その時点で山ちゃんのなかには「この曲はこういうイメージで……」っていうものが明確にあったから、「それだったら人任せにしないで、自分で書けばいいじゃん!」って思うでしょ?(笑)

山㟢:(笑)。普段、歌詞を書いたりしないから、俺にとって言葉を選ぶのは難しいんだって! でも、ACOちゃんから、そう言われたから、自分で書いたんだけど、まぁ、普段やらないだけであって、人から「やれ!」って言われたら出来るもんなんだね(笑)。

— はははは。やれば出来る子だと? でも、目を合わさずに話すような人がレコーディングで微妙なニュアンスのやりとりがスムーズに出来るものなんですか?

山㟢:俺の場合、その人なりの理解の仕方ややり方をそのまま受け入れるタイプなんだけど、美濃(隆章)くんは結構頑固なんだよね(笑)。

ACO:そうだったねー。とはいえ、自分の過去の経験上、toeの現場はゆるい感じだったけどね。

山㟢:でもさ、「普段は私が考えて、それをみんなにやってもらってるから、今回、人からディレクションされて作業するのがどういうことなのか分かった」って言ってたよね。やっぱり、音楽の微妙なニュアンスって、漠然としか伝えられないから、立場が変われば思うことはあるよね。

— 一緒に作業してみたtoeというバンドはいかがでした?

ACO:お洒落……っていうと、からかっているみたいだな(笑)。でも、その後、フジロックでtoeのステージで歌わせてもらったんだけど、そのリハーサルを含めて、みんな仲いいんだよね。あの時のライヴは一番大きいグリーン・ステージだったから、人がいっぱいいて緊張したんだけど、あの仲の良さにはちょっとほっとしたかも。

山㟢:ライヴで“月、欠け”をやったのはあの一回だけなんだよね。

ACO:燃えたぎってたよね。

山㟢:ライヴは頑張ってますよ。

ACO:お酒飲みすぎて、大丈夫かなって思う時があるけどね。

山㟢:すごい緊張するから、酔っ払ってないと上手くギター弾けないんだよ。

ACO:分かる。私も緊張するもん。

山㟢:素面だと、変なことをやって、間違ったらどうしようって思っちゃう。

ACO:そう、保守的になっちゃうから、私もライヴ前には景気づけに飲むよ。

— 酒がそのトリガーを引いてくれると。山㟢さんはいつもステージ上でウイスキー飲んでますもんね。

山㟢:コンビニに売ってるブラックニッカね。

ACO:それじゃあ、終わり頃、ヘロヘロなんじゃないの?

山㟢:だから、ライヴの打ち上げでは全然酒を飲みたくないっていう(笑)。

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