Photo:Shuhei Nomachi Text&Edit:Fumihito Kouzu
アーティストS-WORDとG-Star RAW
—S-WORDさんには[G-Star RAW]のコレクションの中から一本のデニムを選んで頂いたわけですが、この『TYPE C』をチョイスした理由から教えて頂けますか?
S-WORD:洋服を見る時に一番気にするのがシルエット。大切にするのがインスピレーション。これはシルエットが凄く気に入りましたね。
—デニムのシルエットで一番気にするポイントってどこでしょうか。
S-WORD:もういい年なんで、自分に似合うもの、自分に合うサイズ感、自分のキャラクターに合うものってだいぶ分かってきてるんですよ。そこにしっくるくるかこないかってことなんです。腰回りがある程度ルーズで、足首がしまっているテーパードシルエットが自分のスタイル的にも気分的にもいい具合になるなと。一昔前だったらバギーとか太めのパンツでしたけど、それはもうちょっと違うし、スリムまでいくとパンキッシュになるんで自分の文化圏ではないというか。
—色とかはどうですか?
S-WORD:今回はリジットに近い濃いものを選びました。自分の周りのブランドは「今はダメージだ!」って騒ぐようになってきててダメージも少し気になったんですけど、まだ少し早い感じがするんですよ。自分は10年ぐらい服を作ってきたんですけど、2000年代の前半ぐらいにダメージデニムがもの凄くフィーチャーされて売れた時期があって。その後に生デニムとかリジットって呼ばれるものが流行ったんで、そろそろもう一回ダメージっていうのも分かるんですけど、まだちょっとね、乗らなくていいかなと。
—『TYPE C』をしばらく穿いた感想をお願いします!
S-WORD:特にストレッチが入った素材ではないんですけど、座ったりしゃがんだりした時に突っ張らないんですよね。そこらへんは本当に25年っていう歴史の中で培ってきた技術だと思うんです。何度も何度もあらゆることを試して辿り着いた計算されたシルエットなんでしょうね。
—S-WORDさんは洋服を作られていたこともあるからか、お話を聞いていてもシルエットには随分とこだわっているというか、気にされていますよね。
S-WORD:同じパターン、同じ指示書でも、作る工場、作る人によってシルエットって変わってしまうんですよ。例えば今穿いているデニムを、別の工場に持っていってこれと同じものを作ってくれって言っても同じにはならないんです。絶対に野暮ったくなった劣化版があがってくる。見た目がスマートで、かつフィットするシルエットを生み出せるブランドって本当に価値があると思います。[G-Star RAW]のディレクターの人は、作りたいもののビジョンがはっきりとしていて、そこに向けて相当現場とやり取りしてるんじゃないですかね。その意気みたいなものがシルエットから感じられます。やり切ってるなって思いますね。
—S-WORDさんにとってデニムってどんな存在でしょうか。
S-WORD:サラリーマンの人がスーツを着るような割合で着ているものなんで、それぐらい自分のスタイルに密着しているものですね。それから、自分と一緒に育っていく感覚があるもの。シワや色落ちって、年輪みたいなもので、誰かと同じにはならないし、同じ人間が穿いてもその時その時のライフスタイルで違ってくるものだから。デニムには穿いている人の歴史が出る。
—最後に自分に合うデニムってどうやって見つけたらいいんでしょうか。
S-WORD:もうそこはたくさん穿いて、たくさん失敗することですね。間違って、間違って、自分に合ったシルエットが見つかるというか、自分のスタイルが分かってくるというか。最初は誰かのマネでもいいと思うんですけど、突き放すわけじゃなく最終的には自分で見つけるしかないですよ。
ルーズなトップブロックと細長いリアポケットた特徴的な『TYPE C』。ヴィンテージデニムのディテールをモダンなテーパードフィットに融合することで、ベーシックでありながら今の時代感にあう雰囲気をまとっている。