2013年秋のブランド大特集 VOL.04:[Sasquatchfabrix.]

by Mastered編集部

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—ところで、[Sasquatchfabrix.]は今年で10周年ですよね。立ち上げ当初、自分たちが描いていた立ち位置と比較して、今の[Sasquatchfabrix.]のポジションに満足していますか?

横山:振り返ってみればあっという間の10年でしたね。10周年は10周年なんですけど、自分としては1回リセットされたような感覚なんです。相方だった荒木が福岡にいくってなった時くらいにリセットされて、今年リスタートって感じ。根本的な部分とか思想は10年前と変わってないですが、この先の10年を考えると、ここから少しずつ変わってくるのかなと。

—やはり年齢的な変化と共に変わる部分も大きいですか?

横山:もちろん。むしろ、全く変わらないなんて奴はヤバいと思います(笑)。僕らがいるマーケットって、作り手とダイレクトに繋がっているじゃないですか。だから、その人の心持ちで右往左往して、結果、周りのフォロワーもそれについていく人と、ついていかない人に別れるし、そうであるべきなんですよね。逆にさっき話にも出てきましたが、清水さんとかは年齢と比較して、ものすごく感覚が若いですよね。2周位まわって、僕より若いぐらい(笑)。

—街で見かける[Sasquatchfabrix.]の洋服を着ている人って、結構若い世代が多いように思うんですが、とすると、自分の年齢が上がると共にお客さんとのギャップも大きくなってくる訳ですよね。その辺りはどう考えていますか?

横山:そこに関しては、そもそも最初から僕らが考える[Sasquatchfabrix.]の洋服と、お客さんが考える[Sasquatchfabrix.]の洋服って、めちゃくちゃズレがあるんですよ。むしろ、誤解されてここまで続いているような部分もあるので(笑)。だから、このままで良いかなって。洋服をそういうパーソナリティを押し付けるようなモノにしたくは無いし、もしそれがやりたいのであれば自分でお店をやって、「これはこうやって着るんだぞ!」って洗脳する方が早いですから(笑)。

—ちなみに直営店をオープンする予定は?

横山:無いですね。将来的にやりたい気持ちはあるんですが、中途半端にやっても仕方ないし、そもそも洋服屋で1度も働いた事が無いので、ノウハウも無いし、自分が店頭に立っている姿が想像出来ないんです。

—話は変わりますが、[Sasquatchfabrix.]って色々なコミュニティに顔を出すけれど、常に独立した、不思議な立ち位置を保っていますよね。NEPENTHES出身では無いブランドが、NEPENTHESとコラボライン(SASQUATCHfabrix. Chilling)を持っているっていうのも国内で言えば、それこそ異例じゃないですか。

横山:そうですね。僕らもカテゴライズされたいです。○○系って言われたいです。系統、欲しいっす(笑)。というのはさておき、清水さんはもちろん、大器さん(ENGINEERED GARMENTS)、宮下さん(TAKAHIROMIYASHITATheSoloIst.)、NEPENTHESの人たちって、メインのシーンと付かず離れず、丁度良い感じで物事をやれているじゃないですか。年齢と共に着実にステップアップしているし、尊敬すべき点は非常に多いですね。あとは小林さん(......&#46RESEARCH)も。皆さんそれぞれしっかりとした自分の基地があるし、共通した感覚を持っているように思います。

—なら横山さんも尚更お店を出すべきでは?

横山:そうなんですけどね。でも結局お店を出すと、お店を回すってことを考えないといけなくなるから、そこに引っ張られた時、自分が丁度良くやれるのかなって。僕らの世代で中々それが出来ないのって、時代感もあるような気がするんですよ。今の時代にあったやり方っていうのが、お店以外に何かあると思うんですけど、それがまだ見つからないですね。さっき名前を挙げさせてもらったような先輩たちと同じように僕がお店を出して、同じ事を出来るかって言われたら多分出来ないだろうし。だから、まずはデザイナーとして色々なことを経験して、[Sasquatchfabrix.]の自由度を高めたいと思っています。

—自由度を高めたいということは、究極的に言えば[Sasquatchfabrix.]のタグが洋服以外に付くこともあり得る? 今後デザインしてみたいものというのは何かありますか?

横山:うん、全然あり得ると思いますよ。デザインしたいもの……そう言われるとなかなか無いですね(笑)。器用貧乏というか、意外に何でもやれてしまうので、お題とか縛りが無いと作りたいものが出てこないんですよ。たぶん普通に生きてて、何も作らなくて良い状況だったら、何も作らないと思います。本当のアーティストの人って、自然と何かを作ったりするじゃないですか。僕はそういうの全く無くて。なんかこう、朝起きて、内から湧き出るものに任せて手が動いて……みたいなのは1度も無いですね(笑)。

—今回のブランド特集は「10年後の東京のメンズシーンを支える人」というテーマで人選をさせてもらったんですが、横山さん、そして[Sasquatchfabrix.]の10年後のビジョンを伺えますか。

横山:自分個人のことはまだ分からないですけど、ブランドに関してはさっき話した”和洋服”、要は日本のオリジンであるっていう強度、空気感を持った服ということにこだわりたいですね。コミュニティと言うと違和感がありますけど、そういう空間みたいなものを作り出したい。土地みたいなものが欲しいんですよね。ほら、○○民族とかっているじゃないですか? そういう人たちが世界中に散らばっているのが僕の理想なんです。同じような感覚を持った人が自然に集まって日常生活を送る傍らに、そのライフスタイルに適した洋服がある、みたいな。別に全員が[Sasquatchfabrix.]を着ている必要は全く無くて、そういう日本人ならではのオリジンな感覚を生み出す一端になれたら良いなと。”象徴”って言うんですかね。江戸時代や明治維新にはそれがあったじゃないですか。ぱっと見て、瞬間的に「日本だ」と思える感覚。例えばギャルとか、ギャル男、オタクっていうのもそうなんですけど、ああいうのは排他的すぎて、永続的では無いんですよ。上手く言葉には出来ないですけど、なんかもっと永続的な、「これが日本だよね」っていうようなモノ。そういう意味で言えば今はセカンドステージなのかもしれないですね。前のめりで走った時期はもう終わって、さぁこれからどうしようっていう状態です。

—それはファッションと言うよりは先ほど話していたような真の意味でのカルチャーに近いのかもしれませんね。

横山:日本の文化の端くれの1つにでもなれたら十分なんですけどね。逆にいえばそれぐらいしか出来ないと思うんですよ。絶対に日本中で流行るような洋服では無いですから(笑)。

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