2013年秋のブランド大特集 VOL.03:[DIGAWEL]

by Mastered編集部

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—今度パタンナー特集でも組んでみましょうかね。少し話は変わるんですが、DIGAWELって基本的にジェンダーというか、男女間の性差をあまり意識させないような部分があると思うんです。洋服にしても、店舗にしても、スタッフにしても。でも、一方ではマスキュリンだとか、ガーリーって言葉が存在することからも分かるように、ファッションと性差って切っても切り離せないような部分もあるじゃないですか。その辺りについて、西村さん、そしてDIGAWELはどのように考えているんですか?

西村:そうですね、ここで言う性差っていうのはジェンダーという単語よりも、セックスという単語に近いかもしれないんだけど、僕らの考え方としては、デザインとしての性差に限定すれば、”一緒くた”になってるんじゃないかと。もちろん、ジェネレーションの問題もあるとは思うんだけど、テクニカルな話をすると、男性から見た女性と、女性から見た女性のイメージっていうのは全然違うじゃないですか。ってなんだか難しい話になっちゃったけど、要は、もし僕が女性用の洋服を作るとしても、性差というのはあまり意識しないでしょうね。ただ、絶対的に違うのは身体。洋服っていうのは身体性の中で発生していくものだと思うから、身体の違いっていうのは絶対に押さえておくべき所だと思います。だけど、それもデザインをどう置き換えていくか次第って部分はあるんですけどね。

—南さん(1LDK ディレクター 南貴之)以前のインタビューで全く同じことを話してましたよ。

西村:洋服も含めて、自分をカテゴライズしたくないし、されたくないんですよね。でも、これは今現在の僕の意見であって、明日には変わるかもしれないけど。男性、女性って絶対的に違うものだから、そういう違いが面白いと思う部分もありますしね。

—話はDIGAWELに戻りますが、洋服にしても、小物にしても、男性的とか女性的って言葉が当てはまるアイテムは見当たらないですよね。

西村:そう言ってもらえるのはすごく嬉しいですね。そもそも僕は、デザインに関しての”男らしさ”、”女らしさ”、”自分らしさ”みたいなことに全く興味が無いんです。例えば、”自分らしさ”っていうのには、いわば”なりたい自分”が反映されている訳じゃないですか。だからダメな時は全然ダメだし(笑)、デザインにそういうことを反映させるのには興味が沸かないんです。デザインに反映させるのは、今の気分とか、自分が楽しいと思うかどうか。それだけでやっていると言っても良いかもしれません。

—では、西村さんにとっての楽しい瞬間というのはどんな時でしょうか?

西村:それはずっと変わらないですよ。好きなレコードを聴いて、モノを作っている時は最高に幸せ。一生変わらないんだと思います。

Radioheadのアルバム『KID A』

Radioheadのアルバム
『KID A』

—そういえば先シーズン(2013年春夏シーズン)は、”How to disappear completely“というテーマでしたが、あれはRadioheadの楽曲からの引用でしたよね。

西村:まぁ、あれはRadioheadの曲名を借りただけで、曲自体に対してどうこうっていうのは無いんですけどね。あのタイミングで、トム・ヨークって人にフォーカスすること自体が面白いのかなと思ったりもして。「FUCK OFF」、「NOTHING TO LOSE」、「ここでは無いどこかへ」。僕はこの3つがロックンロールの精神だと思っているんだけど、タイトルに限らず、自分の作る洋服自体にメッセージ性は持たせていないんですよね。アルバムと一緒で、1曲目にこの曲を持ってくるっていうのは、同時に、残りの9曲との相対性の中で1曲目に持ってくるってことでもあって、あくまでアルバムを完成させるという目的があってこそ。

洋服も同じで、1つ1つのアイテムは、あくまでもコレクションを完成させる為に存在しているんです。だから、こういう風にコレクション全体に対して面白いという感想をもって、取材をしてくれるのはすごく嬉しいんですよ。例えばTシャツだけを取り上げて、「これ良いですね」って騒がれても、正直僕にとってはどうでも良くて。エゴを言えば、もっと全体を見て欲しいし、その上で買いたいっていう衝動が生まれたなら最高だなと思います。メッセージは無いけど、そういう衝動が生まれるくらいのものはデザインに込めているつもりなんですよ。

—自分の洋服を見たお客さんに、何かを感じたり、考えて欲しいと思うようなことは無いですか?

西村:お客さんは本能的に感じてくれてるんじゃないかなって信じたい部分もあるんだけど、先ほどの話と同様、それを言い出すとデザイナーのエゴになってしまいますからね。でも、ファッションとか洋服って、そういうことを抜きにした軽薄な部分っていうのもすごく大きくて、だからこそ好きだったりもする。誤解を恐れずに言えば、自分が楽しいと思って作ってるんだから、買ってくれる人も楽しければ良いなとか、それぐらいにしか思ってないですよ(笑)。

—なるほど、でもDIGAWELの直営店に来て、DIGAWELの洋服を買う人は西村さんのそういうスタンスも含めて好きなんだと思います。

西村:そうだと嬉しいんですけどね。やっぱり、洋服を続ければ続けるほど歯切れが悪くなるようなところもあって。表現の難しさっていうのを痛感しますよ。

—前回の取材時のシーズンくらいから、シーズン毎に写真集であったり、ZINE的なモノであったり、色々な表現方法を継続的に試していますよね。今は静的な手法が多いですが、将来的には他の方向にも興味はありますか? 例えば動画であるとか。

西村:うーん……動画に関しては自分では作らないかもしれませんね。メディアとして洋服に向いているようで、実は全然向いていない気もするんです。動画って、みんなが見るかどうかっていうのが結構大きなファクターじゃないですか。でも、一般的に考えた時に、ファッションの動画を見るのって、すごくハードルが高い。以前フセイン・チャラヤンの展示を見に行ったんですが、当然たくさんの動画もあって。あの人ってそういう事に関しては第一人者というか、すごく長けている人じゃないですか? それでも動画を見てみようって気には全然ならなかった。でも、この間の[C.E]のプレゼンテーションとか、ああいう形式は面白いと思いますよ。ああいうものがあってこそ、”ファッション”って気もするし。

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