大人も楽しめる「VFX/CG/アニメーション作品」。
『インサイド・ヘッド』
20周年を迎えたピクサーの新境地となる作品が誕生した。成長という普遍的なテーマを扱った本作は、喜び、怒り、嫌悪、恐れ、悲しみといった感情たちがキャラクターとして具現化され、11歳の少女ライリーの頭の中を舞台に繰り広げられる脳内アドベンチャー。
主人公ライリーの外側で起きる出来事、と内側の感情たちのドラマが、相互作用しながらストーリーが進んでいく。心理学などを踏まえた深みある設定の中で、きっと、自分もこんな思春期を経てきたのかと、自分の人生の記憶と重ね合わせた追体験から、大人になるために知らず知らずに失ってきた、脳の奥に眠った感情が強烈に揺さぶられる。
しかし、決して難解な映画ではなく、抽象的な精神世界をわかりやすく映像化しながら、ネガティブな感情も必要なんだよ、みんな違ってみんないいんだよ的な、シンプルなメッセージ性もあり、子供も存分に楽しめる内容となっている。鑑賞後は、生きることに前向きになれる、万人が楽しめるディズニー/ピクサーによる人生賛歌だ。
『ミュータント・タートルズ』
アメリカンポップカルチャーのアイコンである超人気作品『ミュータント・タートルズ』を、『トランスフォーマー』シリーズのマイケル・ベイ製作で新たに蘇らせたアクション映画。ヒロインのエイプリル役は同じく『トランスフォーマー』シリーズのミーガン・フォックスが花を添える。
90年代のアニメ版のタートルズの印象が強い方は、なかなかイカついビジュアルに驚くだろうが、これはオリジナルコミック版の丁寧なオマージュから生まれている。日本で最も馴染み深いアメコミヒーローにやられてしまっているタートルズ世代には最高の朗報として、すでに続編の製作も決定しているとのことだ。
ファンならずとも、注目したいアメコミ新シリーズの序章は、101分でサクっと見られるので、難しいことは考えずにピザでも食べながら最新VFXの壮絶なアクションに圧倒されよう。Cowabunga!
『花とアリス殺人事件』
2004年に公開された『花とアリス』を岩井俊二監督自らの手で初の長編アニメーション作品として作り上げた、少女たちの物語。前作では描かれなかった主人公たちの出会いのきっかけや、友情が始まる瞬間などを捉えている。
実写映像をもとにアニメーションを製作するロトスコープという手法が用いられている作品で、それ自体は古くからある手法だが、本作のように全編でこの手法を使うことは珍しい。たしかに奇妙な違和感があるが、それはある意味で新鮮な違和感とも言えるだろう。
『Appleseed Alpha』
『攻殻機動隊』などの士郎正宗のSFコミックを基に制作されたフル3DCGアニメ『アップルシード』の最新作。荒廃した世界観や怒涛のバトルといったシーンの超リアルな大迫力のビジュアルは圧巻。最新技術を駆使した鮮やかな映像美に目を奪われっぱなしだ。
日本の3DCGアニメーションはこれからどんどん成長するだろう。この手の視覚表現は家庭用ゲーム機のなかで長らく培ってきたのだ。とにかく3DCGで映画をもっと作って、どんどん輸出できるレベルになってほしい。そんな期待を込めて。