まだ間に合う! 正月休みのうちに見ておくべきDVD/映画 20選

by Mastered編集部

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ディープな世界へ誘う「実話ベース、ドキュメンタリー」作品

『テレクラキャノンボール2013』

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2014年の映画の話となればこの作品を挙げないわけにはいかない。カルト的な人気を誇り、口コミで大きな話題となったロードムービー仕立てのAV映画。東京~仙台~北海道をAV男優たちが素人女性とやりまくり、ポイントを競ってレースをするという内容。

セックスのエロさとグロさもさる事ながら、心をえぐるのは、AV男優と素人の女性の心の動きから立ち上る悲喜こもごものヒューマンドラマ。女はセックスの後に自分の人生をボロボロ語り出し、男はそれをめんどくさそうにタバコを吸いながら聞く。

劇場版は、カンパニー松尾の極めて映画的な映像と編集テクニックによって132分に納められているが、よりディープな人間模様を堪能するならDVDの10時間版をおすすめする。正月休みを利用して、一気に鑑賞してみてはいかがだろう。間違いなく後遺症が残る、いままでにない感覚を味わえるはずだ。

『アクト・オブ・キリング』

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1965年、インドネシア。クーデター未遂事件(「9月30日事件」)の首謀とされた共産主義者が100万以上虐殺された。虐殺を行った人々は今も生きている。政敵を一掃した「英雄」として。虐殺に関わった本人たちがカメラの前で自らの虐殺行為を語り、さらには再現映画にも出演するという過程を追った、異色のドキュメンタリー。

彼らは虐殺について喜々として語る。たくさん殺した奴ほど偉い。敬われる。何も隠し立てすることはない。なあなあ、聞いてくれ。俺はね、こうやって殺したんだよ。と身振り手振りを交えて「武勇伝」を語る。笑みを浮かべながら。その行為によって命を落とした人間がいたことなど気にもとめずに。肯定された犯罪。陽気な暗黒。滑稽な地獄絵図。徹底的な倫理の欠如は、もはや怒りや苛立ちを通り越して、笑いを誘いさえする。しかし虐殺を行った彼らも、やはり人間だ。再現映画での被害者役を通して思い悩む者が出てくる。立場が変われば見方も変わる。そうした心境の変化の過程も、カメラは逃さず確実に捉えている。

『リアリティのダンス』

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監督ホドロフスキーの子供時代を題材にした半自伝ファンタジー。監督自身がナレーションを務めている。しかし回想はすべてが信用できるものではない。ときおり幻想が混ざり込む。空想と回想が手に手を携える。ダンディズムを地で行く父親、オペラを歌うように話す母親、女の子のようなブロンド長髪のホドロフスキー。色彩豊かな町並みも、妙に書き割りじみている。南米文学にはマジックリアリズムというジャンルがある。簡単に言えば、南米の日常は他文化圏の人間にとってはあり得なすぎて、ファンタジーにしか思えない、みたいなジャンル(大意)。この映画も確実にその系譜にある。映画というよりは映像詩を見る感覚でどうぞ。見たことのない映像世界が堪能できるはず!DVD化する気配がなさそうなのでぜひ劇場へ

『アンダーグラウンド』

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第二次世界大戦中のベオグラード、武器商人マルコは市民を引き連れて地下に潜伏し、レジスタンス活動(自称)の一環として武器の製造を始める。武器が売れに売れて私腹を肥やすマルコの口車に乗せられて、市民たちは大戦が終結したことも知らされず、それから50年間、地下で生活しながら武器を作り続けることに。彼らがようやく外に出たのは、ユーゴスラビア内戦の終結後。もはや祖国ユーゴスラビアは解体されてなくなっていたーー。

第二次大戦からユーゴ内戦までを、地下室で暮らした人々の群像劇。監督は旧ユーゴスラビア連邦のサラエボ出身のエミール・クストリッツァ。「アンダーグラウンド」の人々と同じ形ではないにせよ、監督自身も祖国を失った人間である。この映画には、悲哀がある。祖国という足場を失わざるを得なかった人間の悲哀が。自分の力ではどうしようもない政治的な事柄に対する悲哀が。けれども、この映画には暖かみがある。笑いがある。そして何より、陽気な音楽がある。ジプシーミュージックのブラスが流れ続ける3時間を超える長編。20世紀映画史に残ると言われる一大叙事詩を、是非ともお正月に。

『ブラックブック』

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第二次世界大戦、ナチスドイツ占領下のオランダ。家族と共に身を隠しながら生活するユダヤ人女性のエリスは、安全を求めて逃亡する途中、ドイツ兵に家族を皆殺しにされてしまう。復讐のためレジスタンスの一員となり、ナチス将校の秘書に成り済まして、スパイ活動に身を投じるーー。

現在でも国際社会の「絶対悪」として不動地位を築いているナチスドイツ。しかし、本当にそんなふうに一括りにしてしまっていいのか。ナチスは悪人ばかりだったのか。ナチスと戦った人々は善人ばかりだったのか。悪人はいなかったのか。そんな当たり前の、しかしあまりにもしばしば見過ごされがちな疑問に対して、この映画は真っ向から”No”と答える。戦争は恐ろしい。ナチスは恐ろしい。暴力は恐ろしい。それは間違いない。けれども、そうした恐ろしいものを操っているのは、いつも人間なのだ。敵も味方も、人間の嫌なところが剥き出しになる戦争という時代を、主人公エリスはサバイヴしていく。頭を使って、体を使って、ときには自らの美貌を使って。ダークな峰ふじ子をご覧あれ。