奥へと続くカウンター、ダウンライト、大量のキープボトルと、”ザ・スナック”的な店内は、まもなく創業より50年を迎えるというにもかかわらず、非常に清潔な雰囲気。
「いらっしゃい。今日は初めての来店ですか? ゆっくりしていってね。1杯目は何にしますか?」。
長澤まさみが「ドロンします!」と言って夜の街に消えて行くシーンの背後に映る”餃子の王将”で食事を済ませていたぼくたちは、オススメされるがままに、ヘベスが入ったサワーをオーダー。
10席程度のカウンター席をまわすのは3人のママ。それぞれが完全に仕上がっている常連客と、楽しそうに会話をしている。
お客さんの層を伺うと「下北沢は”石を投げればダン(=劇団員)とシャン(=ミュージシャン)に当たる”なんて言われてるからね。お客さんもそんな感じよ(笑)」。
見渡すと、確かに年齢層は少し低め。そこはやはり街柄か、と納得。実際のところ、創業当初から下北沢は若者に拓けた街だったのか伺ってみると、
「そんなこともないのよ。きっかけは、(本多)劇場が出来たことかな。それから若者が多くなったの。昔は、ピンク・サロンも何店舗かあったし、駅前にはキャッチと立ちんぼの女の子がずらーって。すごかったんだから!」。
新宿、渋谷、池袋などと同様に”夜の街”としてかつて男たちに愛されていた下北沢は、今や清廉潔白なカルチャーの発信地。高円寺、吉祥寺と同じく、”サブカルタウン”として語られることも多いが、かれこれ20年下北沢で暮らしているという、チーママのみゆきさんはこのように語る。
「昔はもっと、個人経営のディープなお店が多かったんです。いわゆる”シモキタ”っぽい感じの。でも、今はもうメインの通りはチェーン店ばかりになっちゃって。どんどん変わっていってますね。それでも、やっぱり帰ってくると落ち着くんですけどね」。
また、かつてテレビ東京の『アド街ック天国』で下北沢の紹介がされた際に、”シモキタの愛のキューピッド”という異名とともに同店およびしょうこママが紹介されたことも。
「(うちは)若い女の子を雇ってるでしょ。だから、常連さんとの色恋もあったりして(笑)。これまでに、何組も結婚してるの。常連さん同士がくっつくこともあって、合計すると、もう10組以上になるかも」。
下心全開で来店するのは当然NGだけど、良いバイブスが渦巻いていることは間違いなしなので、男性諸君は足を運ぶことをオススメしたい。