めくるめく「スナック」の世界。東京のスナック 第5回:豊島区南大塚・浮舟

by Nobuyuki Shigetake and Mastered編集部

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念願の再訪

終始水たまりを歩いているかのような駅構内。

実は、この取材の2週間前にもいちど、僕たちは浮舟に訪れていた。

梅雨入りしたばかりの東京は、まるでバケツをひっくり返したかのような大雨で、こんな日に取材だなんて……と、ひとりごちながら、お目当てだった当店の前に足を運ぶと、なんと店休日。こんな雨だし、個人営業だしな、と理解はできたものの、浸水したスニーカーと色が変わるくらい濡れたTシャツには正直食らった。

そんな洗礼を浴びてからのこの日も、図ったかのような雨。

2週間前と比べるとだいぶ弱雨だったものの、なんだか嫌な予感がするなー、怖いなー、などと考えながら足を運ぶと、遠目に看板の電気がついているのを確認でき、まずほっと一息。

カラオケが終わったタイミングで入店をする。(これはスナックにおけるマナーなので、覚えておくように)

比較的こじんまりした店内を切り盛りするのは、2人のママ。「あら、こないだも来てくれてたの? ごめんね〜、あんな雨の中お客さんなんて来ないと思って、臨時休業にしちゃったの(笑)。今日は、お詫び料としてちょっと安くするから、ゆっくりしてってね」と、くみこママ。

ここ浮舟のママ2人は、いわゆる”飲むママ”で、僕たちが入店した21時の時点で、4人いたお客さん共々、ママ含めハードに酔っている人しかいない状況。非常に盛り上がっておりました。

特製の抹茶割りは、ついつい飲み過ぎてしまう、危険な味。

終始賑やかな店内。カラオケも止むことなく、常に誰かが歌っている。途中、酔いも手伝って、自分がいつの時代のどこにいるのかが分からなくなる。

「浮舟は、今年で32年かな。巣鴨でスナックをやって、そこを小料理屋に改装して、そのあと大塚で浮舟を始めたから、業界歴はもう50年以上になるの」

絵画はいずれも韓国の画家さんが描いたもの。

ママ同士も非常に仲が良く、見ていて微笑ましい。お客さんも、ガンガン絡んでくる。営業を開始した30余年前から、なにひとつ変わっていないんだろうなと、思わせてくれる。きっと、そんなことはないんだろうけど。

また、店名の由来を尋ねると「”何回沈んでも、浮いてくる”っていう意味。なんかいいでしょ? 心の拠り所のような感じがして」。オープンしたバブル真っ只中は、それはもう連日連夜盛り上がっていたそうだ。スナックというカルチャーも、例に漏れず、ここ浮舟も。