片想い・片岡シンと巡る東京銭湯と〆の「逸食」 – vol.02 高円寺・小杉湯 –

by Mastered編集部

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銭湯の疑問を小杉湯の若旦那とシンさんにぶつけてみた

冒頭で少し述べた、大橋さんの銭湯遍歴。子供の頃は銭湯に頻繁に通っていたということだったが、上京して銭湯に行かなくなったのは何か理由があるからだろうか。

……ということで、大橋さんが心に秘めた銭湯の疑問を暴露してもらった。

銭湯が気になるけど行けない……。

小杉湯3代目 平松佑介さん
2016年にサラリーマンを辞め、祖父が創業した84年の歴史がある小杉湯を継ぐ。小杉湯ファンのつながりから生まれたプロジェクト、銭湯ぐらしの発起人。

大橋裕之(以下、大橋):ちょっと特殊かもしれないんですが、銭湯だけでなく、そもそも1人で飲食店などに行くのが苦手なんです。俺の食べ方がおかしいんじゃないかとか思われるんじゃないかって気になって(笑)。喫茶店も、漫画のネームを考えたりとか目的があれば入れるんですけど「ただお腹減ったな、ここ入ろうかな」みたいなのが苦手なんですね。銭湯も同じで、散歩してていい感じのところを見つけても入れないんです……。

片岡シン(以下、片岡):すごく大橋さんらしい!

大橋裕之(以下、大橋):例えば、湯船に入る前にちゃんと全身を洗ったほうがいいのか、ただ湯をかけるだけなのかが分からない。あと、すごい細かいんですけど、座って体洗ったり頭洗ったりするじゃないですか。で、普段家で下半身を洗うときは立って洗うんですけど、銭湯ではみんなどうしてんのかなみたいなのが気になって(笑)。みんな座ってやってるのに俺だけ立ったらおかしい人だと思われるんじゃないかとか。

片岡:大橋さんみたいに、店の決まったルールを破りたくないっていう人は多いと思うんですよ。もちろん何が正しいか正解はないんですけど、そこは実際お風呂を経営する側としては、もう少しクリアにできればいいなって思いますね。

平松佑介(以下、平松):確かに。正しいルールみたいなのはないんですが、入浴自体がいろいろな価値観の集合体なので、入り方はある意味言い伝えみたいな感じはあります。お互いが気持ちよく、いろんな人とお風呂をシェアする。そのなかでお互いを思いやってみんなが気持ちよく入れるようにするっていう意識がすごく大事なんですかね。

大橋:あっ! あと、僕はあんまり湯船に長く浸かるタイプじゃないので、大人数で行ったときに「みんな長い時間浸かっているけど、僕はもう満足なんだけどな……」みたいなのもありますね。

片岡:あぁ、それは修学旅行で「みんな歯磨き長いな」って思うあの感じですね。僕は割とシャッって感じなので。生活感の違いは確かに気になりますよね。

大橋:パッと来てサッと銭湯に入って「あれ、早いぞ」ってなるのも嫌だし、どうでもいいんですが意識しちゃうんですよ。あともっというなら、目が悪い人ってメガネかけて入っていいのかっていう(笑)。

平松:着けてる人もいますし、大丈夫ですよ。でもそういう細かいところの疑問が多いからまだ敷居が高いんですよね。

大橋:雑誌とかメディアでは、そこまで書かないじゃないですか。

平松:でも仮に、そこまでハードル感じてしまうのなら、行きたくないと感じるのが普通だと思うんですよ。それでも銭湯に行きたいなって思ってもらえるのは、銭湯って何か魅力があるんだなって感じるんですよね。


片岡:発想的にぶっ飛んでるかもしれないんですが、料理するとき大きい鍋で茹でたほうが美味しいじゃないですか。そういうことかなって(笑)。自分は食材で、美味しい食材になりたいという欲求みたいな。

大橋:面白いですね。そういうのが潜在的にあるかもしれないってことですもんね。僕は細かいことを気にはしますけど、やはり銭湯の気持ちよさや開放感は分かるので。