気になる「お手入れ」を徹底調査! ファッションお手入れ調査団:ウール小物編

by Mastered編集部

第1回目のGORE-TEX®編は、「ビフォーアフターが分かりづらい」という結果に悔し涙を流した我々、ファッションお手入れ調査団。しかし数日後、例のごとく雪山へ行ったベテラン過ぎるニューカマー編集Tさんから朗報がありました。「確かに汚れは分かりづらい。だけど撥水が抜群に良くなっていた!」と。

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第1回目のGORE-TEX®編は、「ビフォーアフターが分かりづらい」という結果に悔し涙を流した我々、ファッションお手入れ調査団。しかし数日後、例のごとく雪山へ行ったベテラン過ぎるニューカマー編集Tさんから朗報がありました。「確かに汚れは分かりづらい。だけど撥水が抜群に良くなっていた!」と。

その言葉を聞いてうれし涙を流そうとしていたら、今度は編集部員Sさんが何やら鞄をゴソゴソ……。机の上に出したのはSさんお気に入りのビーニー!? 半年ほど被り続けて、気付けばこの状態になっていたそうなのですが、流石に最近は被るのを躊躇しているそうです。「第二回はビフォーアフターが分かりやすいものにしようと思います。」と言った気はしますが、まさかここまで分かりやすい依頼が来るとは想像もしていませんでした。まるでお手入れ調査団のために汚してくれたのかと思ってしまうほどの完璧な“ビフォー”の状態です。(※閲覧注意)

Vainl Archiveのビーニー。カラーはベージュ?キナリでしょうか。

Vainl Archiveのビーニー。カラーはベージュ?キナリでしょうか。

折り返し部分をめくってみると...これは元々ホワイトだった説が浮上。

折り返し部分をめくってみると…これは元々ホワイトだった説が浮上。

内側はというと…うわ!グロ過ぎる!(Sさんごめんなさい)

内側はというと…うわ!グロ過ぎる!(Sさんごめんなさい)

調べてみるとやはりカラー表記はホワイト。最早原形を留めていませんね……。一体どんなハードコアな被り方をしたらこうなるのでしょうか。

VAINL ARCHIVE - RIB-CORN ニットキャップ (WHITE) 【15A/W ITEM】

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口を開けると次から次へと失礼な言葉が飛び出しそうなので「とってもストリートですね!」と一言。逆にこれだけ汚いとやる気が出てきます! そんな感じで第2回はウール小物のお手入れ方法を徹底的に調査することに決定。今回も「コレだけやっておけば間違いない」という究極の”HOW TO お手入れ”を皆様に伝授していきます。

第2回 ウール小物編

ウール製品は、自分で洗って失敗するリスクを恐れて、クリーニングに出す方が多いと思います。しかし頻繁にクリーニングに出している人なんてそう多くはないはず。大体の人はリセッシュに任せっきりの状態かと思います。でも、こちらもきっちりとした手順を踏めばご家庭でのお手入れが可能。今回は依頼があった為にこちらのビーニーを洗っていきますが、ウール製品ならばセーターやパンツなどのお手入れ時にも参考になるかと思います。

心得その1.まずは基本のキ。洗濯表示を確認すべし。

お手入れのすべては洗濯表示に始まります。今回の場合、素材はウール91%、ナイロン8%、ポリウレタン1%。“ドライ セキユ系”の表示の場合は基本的にクリーニングに出すのが無難ですが、ここは腕の見せ所。漂白剤はNGとなっていますが、汚れがひどいのでこれは避けては通れません。そしてタンブラー乾燥はNGということなので、陰干し確定です。国内の洗濯表示一覧はこちらからチェック。

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心得その2.愛を込めてブラッシング。表面のホコリと毛玉を取るべし。

洗う前にブラシで軽くホコリや表面の汚れを取ります。そして毛玉もこの時一緒に取ってしまいましょう。もし毛玉が多いようであれば、毛玉カッターやカミソリを使ってください。セーターなどはT字のカミソリの方がよく取れますが、今回は小さいのでこちらの部分用のカミソリを使用。ちなみに普段から着た後はきちんとブラッシングしてあげると、毛玉になりにくいので、普段からいたわってあげてください。

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心得その3.洗剤はおしゃれ着用の液体洗剤だけを信じるべし。

気になる洗剤ですが、普段使いの弱アルカリ洗剤は厳禁。中性の液体おしゃれ着用洗剤を使います。顔や髪が当たる箇所に付いた汚れはズバリ、整髪料と皮脂。皮脂などの酸性の汚れには、弱アルカリ性洗剤が最適とされていますが、ウールは繊維の構造上、髪でいうキューティクルのようなうろこ状の組織があり、これがアルカリに触れると閉じていた物が開いた状態に変わります。そして開いている時に摩擦を加えると、うろこ同士が絡まりあってゴワゴワした手触りになったり、うろことうろこの間隔がぎゅっと詰まり、サイズが縮んでしまうというトラブルが起きやすいのです。確かに弱アルカリ性と比べると中性洗剤は洗浄力が劣りますが、ここはグっと堪えて、液体のおしゃれ着用洗剤を使ってください。とりあえず『エマール』を選んでおけば間違いありません。

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心得その4.30度のお湯を用意するべし。

ウールを洗うのに最適な温度は30度。熱すぎると縮みの原因になるのでぬるま湯を用意します。温度を確かめる時の目安として、肘をつけた時に水が温かい、もしくはぬるいと感じる時は、水温が30℃を越えています。28℃前後の水は、温かさも冷たさも感じない感覚です。ここに洗剤を少し入れ、15分ほど浸けておきます。またシミや汚れひどい部分には原液を直接垂らし、洗剤のキャップの裏などで少し叩いて馴染ませておきます。どんどん汚れが浮いてくるのがわかりますね。

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心得その5.これ意味あるの?というくらいの優しい押し洗いを続けるべし。

汚れているからといって、水中でこすることは絶対に避けてください。沈めては浮かし、また沈めては浮かす。そして握っては離し、また握っては離す。こうして優しくもて遊んでください。水が冷たくなってきたと感じれば、お湯を調節して30度程度をキープ。しばらく繰り返すと、水が濁ってきました。目立ったシミや汚れがない場合は、ある程度押し洗いをしたら洗いの作業は終了。小さなシミが一カ所だけという場合は一度、漂白材を使う前に、キッチン用の中性洗剤を垂らして叩いてみてください。運が良ければ落ちるかもしれません。押し洗いの方法はこちらの動画を参考にしてみてください。

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心得その6.漂白剤は酸素系、液体タイプのみ信じるべし。

これだけの作業で黒い汚れ、全体のくすみは落ちました。しかし黄ばんでしまった部分が落ちていないので漂白します。洗濯表示には漂白NGの表記がありましたが何気にタフなようなので、これは出来そうです。漂白剤にはまず、酸素系と塩素系が存在しますが、塩素系は、今回のようなデリケートな動物性繊維には使用厳禁。さらに液体と粉末という選択肢がありますが、液体の一択です。粉末の方が効果は早いのですが、こちらも洗剤同様弱アルカリ性なので、縮みなどの原因になってしまいます。一方液体タイプの酸素系漂白剤は、主成分が過酸化水素、弱酸性で、水に溶けた時にほぼ中性を示すので動物性繊維にダメージを与えません。

先ほど同様、シミや汚れが気になる部分には原液を直接垂らし、様子を見ながら15分ほど置いてください。今回は酸素系漂白剤『ワイドハイターEXパワー』を使用。洗剤のときも弱アルカリではなく中性を選んだように、もし悩んだらなるべく負担の少なさそうな方を選べば大丈夫でしょう。それにしてもこの黄ばみ、しつこいようです。少しでも薄くなることを願って待ってみます。ちなみにどうしても落ちない場合は、少しだけ弱アルカリ性の粉末洗剤を混ぜてみると良いそうです。ただ先ほども言ったように、アルカリ性とウールの相性は良くないので、気をつけなくてはいけません。

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心得その7.洗濯機で洗い、すすぎ、脱水をするべし。

手洗いが終わったらあとは良くすすいで完成。ここまで様子を見ながらやっていましたが、このビーニー、意外とタフな様子。そして私はすすぎに自身がないため、ネットに入れて洗濯機を“念入りモード”にセット。モノによっては色落ちや縮みが起こるので難しいところですが、状況をこまめに見ながら行えばミスは少なくて済みます。

エマールなどのおしゃれ着用洗剤には柔軟剤が入っていることが多いので今回は柔軟剤を入れません。ただしどうしても汚れが落ちずに、アルカリ性の洗剤を使った場合は、ここでアルカリ性を中和させるために、クエン酸入りの柔軟剤を使うといいかもしれません。こちらの『アラウベビー』はクエン酸と天然ハーブを使用した優しい柔軟剤。もし手に入らなかった場合は、お酢を入れるだけでも多少の効果があるそうですよ。洗濯は化学だと、改めて感じさせられます。

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心得その8.NOタンブラー!NO吊るし!地道に平干しするべし。

洗濯表示に従い、タンブラー乾燥は避けましょう。洗濯機から取り出したらそのまま陰干しをします。この際、洗濯バサミなどで挟むとどうしても伸びてしまうので、できるだけ平置きで干していきます。

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さて、気になるビフォーアフターまでもう少しです。今回は前回と違い、洗っている途中から変化を感じていたのですが、実際はどの程度の変化が見られるのでしょうか。

これは!一目瞭然じゃないでしょうか!だいぶ原型に戻りました(笑)

これは!一目瞭然じゃないでしょうか!だいぶ原型に戻りました(笑)

黄色いシミは落ちなかったものの、汚れは完璧に落ちました。

黄色いシミは落ちなかったものの、汚れは完璧に落ちました。

気持ちがいいですね。

気持ちがいいですね。

左:洗濯前 右:洗濯後

左:洗濯前 右:洗濯後

左右で比べるとここまで違います。全体的なくすみが取れた印象です。黄色いシミは残りましたが、クリーニング店で染み抜きをお願いすれば少しは薄くなってくれそうですね。白いアイテムはどうしても汚れが目立つので避けがちですが、自宅でここまでキレイに洗えるとなると、少しだけチャレンジしたくなってきたような……気もしないでもありません。(ちなみにSさんは今回で懲りたらしく、SSの展示会ではブラックのビーニーをオーダーしたみたいです。)それでは今回はここまで。次回のファッションお手入れ調査団もお楽しみに!