その道のプロが選んだ愛用品を大公開!『俺の商売道具』 第4回 上山悠二

by Mastered編集部

様々な分野で活躍するプロたちの話を伺いながら、愛用する5つの「商売道具」を紹介してもらう連載企画『俺の商売道具』。 第4回目となる今回登場するのは、アートディレクターの上山悠二さんです。

Photo:Takuya Murata

1. Gosha Rubchinskiy × Kappaのバッグ

Gosha Rubchinskiy(ゴーシャラブチンスキー)は買わないと思っていたのですが、JACKPOTで一目惚れしてつい購入。大容量で、なんでも放り込めるので大雑把な僕の性に合う。機材などの大きな荷物を持ち歩くことが多いので重宝しています。防水性があるので雨の日でも困らないのも嬉しいですね。サッカー部だったのでKappaのロゴに親しみがあったのも、否定できません。


2. DELFONICSのファイル

これはもう20年ほど前に購入した気がします。バラバラになりがちな仕事の資料も、とりあえずこれに放り込んでおけばなくなる心配がないし、色がついていて整理しやすい。フリーランスなので、特に確定申告の時期には助けられています(笑)。


3. Philipsのスピーカー

とにかくベースの音がよく響く、そして音がデカい!! HIPHOPのビデオを撮る時などは街中でゲリラ撮影することがあるのですが、その時に必ず役に立ってくれます。デザインも可愛いですし、オススメですね。多分今すごく安くなっていると思うので、Bluetoothスピーカーを探してる人はチェックしてみてください。


4. Blu Tack

壁にポスターを貼ったり時計を掛けたりするのに使うものなんですけど、僕の場合はアニメーションを作る際のコマ撮りで、関節部分につけて少しずつ動かしたり、絵コンテを壁に貼ったりする時に使っています。あとは指でコネコネしながら考え事をしたり。あとiPhoneスタンドにもなります! これは仕事をする上でかなり重要なアイテムですね。


5. 布地

月に一度は日暮里の繊維街へ行っています。布地はスキャンして柄を使ったり、シワや質感を使ったり、とにかく色々な使い方をしていますね。映像なら、あえてグリーンバッグで撮って後から合成したりも。いらなくなったら枕カバーにしたりして再利用しています。無駄がないでしょ(笑)。


— 上山さんが仕事道具を選ぶ際に重要視してるポイントってなんでしょう?

子供の頃からどうにもこうにも青、特にドラえもんみたいなコバルトブルーが好きなんです。だから買い物している時、まずこの色があれば手に取りますね。機能性は二の次。こういう仕事をしていると、普段使う画材などにこだわりがある人が多いと思うのですが、僕の場合はツールにこだわるとダメになることが多くて。だからあえてこだわらないっていうこだわりを持っています。

— グラフィックデザイナー、そして時には映像ディレクターとして幅広く活躍されていますが、具体的にはどんなお仕事をされていますか?

グラフィックデザイン、イラスト、アニメーション、映像ディレクター……。なんでもやります。昨年初めてエディトリアルデザイナーとしてのお仕事をいただいて、さらに幅が広がりましたね。アートディレクターっていう表現も偉そうに聞こえるので、本当はしっくりきていないんですけど、あえて言わせてもらえるならそんなところですかね(笑)。

— この道を志したのはいつ頃でしょうか?

子供の頃から絵を描いたり、何かを作ったりするのが好きで、高校卒業後は迷わず美大へ進学しました。主にグラフィックや映像を勉強して、卒業後は広告制作会社に入社。当時はadobe FLASH(現Animate)を作っていたのですが、FLASHってデザイン、イラスト、アニメーション、インタラクションっていう様々な要素が必要とされるので、一つに囚われないというスタンスはその頃身についたのかもしれません。

— お部屋を拝見してもレコードやカセット、CD、VHS、おもちゃと様々なカルチャーで溢れていますが、こちらも昔からのご趣味ですか?

はい。子供の頃から兄の影響もあってHIPHOPやスケートなどのストリートカルチャーが大好きでした。あとはアメコミですね。これでもだいぶ減った方なんですけど、収集癖もあって気付いたらどんどん集まっていました(笑)。昔はアメリカ一色だったのですが、最近はヨーロッパに気持ちが移ってて、特に ベルリンは、1980年代のニューヨークみたいで面白くて。あとは今ポルトガルのグラフィックデザインも気になってます。

— 作品を制作する上で、そういったカルチャーから影響を受けている部分はありますか?

ストリートカルチャーは僕の地盤になっていますが、今は少しお腹いっぱいかな。ただ、制作する上でストリートの考え方とか視点は大切にしています。そして僕の作品がハイコントラストになりがちなのは、アメコミの影響ですね。映画に関しては、ビジュアルコミュニケーションする上でとても役立っています。昨年ベルリンに一ヶ月半ほど滞在して仕事をしていたのですが、やはりそこでも細かいニュアンスを伝えるために、映画のワンシーンや世界観で説明するとイメージ共有がスムーズにできました。

— お仕事をする上で大切にしていることはありますか?

こんな仕事だからこそ、フィジカルであることが大切かなと思っています。僕のやっている仕事ってPC上で出来てしまうことが多いのですが、あえて手を動かす。例えば煮詰まった時も、実際にペンを握って手を動かしてみると隙が出て来て、物事が立体的に見れたりするんです。あとは何か一つに絞らないということですかね。昔は何か一つに徹していないとタブー的なところがありましたけど、今はそういう時代じゃない気がするので。

— 時代が変わるにつれてクリエイターとして求められることも変わってきたということでしょうか?

そうですね。極端な話、F1レーサーやりながら映像を作ってもいいと思うんです。興味のあること、好きなこと、やりたいことは全部やってみる。そこでフィットする形を探せばいいんだと思っています。なにも最初から一つに絞らなくていい。そして単に一枚のイラストを描いて評価されることに喜びを覚えるのではなくて、どう魅せるのか、というところまで考える。今の時代はその力が必要とされている気がします。

— もしこれから業界を目指す若者に一言伝えるとしたら?

SNSがなくなっても生き残れるようにならないといけないと思います。いまの子達は10代の頃からSNSに触れていて、それが当たり前。僕もインスタをはじめ、SNS経由でお仕事の話をいただいたりすることもあるのですが、やっぱりそれだけを頼りにしていてはいけないなと。これからこの業界で働くことを目指す方に伝えると同時に、自分にも強く言い聞かせています。

■上山悠二
グラフィックアーティストとしてKINGKONG MAGAZINE、Chelsea FC、Hombre Niñoなどのグラフィックを手掛けるほか、jackpot、BlackEyePatch、FULLBKのシーズンルック、そしてRIPSLYMEやANARCHYをはじめとするアーティストのMVのディレクションを手がける。またカクバリズム所属のDJ/プロデューサーユニット、MU-STAR GROUPのメンバーとしても活躍するアートディレクター。
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