現代の「デートカー」を探る。『酒と泪と男と車』 第4回 尾崎雄飛 vs 山田拓治

by Seiya Kato

今では到底考えられない話だが、僕らが産まれたバブル期には自分が乗っている「クルマ」で女の子にモテようという邪まな考えがあったらしい。フェラーリ、ベンツ、ポルシェといった高級外車が飛ぶように売れ、若者達は「デートカー」なる”デートに最適な車”を無理してローンで購入する。そんな時代が、かつて、たしかにあったのだ。
けれども時は流れ、”クルマ”はいつしか男たちにとって、”モテるための道具”から”頼れる相棒”へと変化した。車はその人のライフスタイルを映す鏡であり、しばしば誰にも邪魔されない時間を提供してくれる自室そのものにもなり得る。
本連載『酒と泪と男と車』では、さまざまな分野で活躍するクリエイターに自慢の愛車に紹介してもらい、その魅力を存分に語ってもらった後、Mastered編集部が招いた3名の女性審査員が「どちらのクルマの助手席に乗りたいか」を完全主観でジャッジ。果たして僕らの”頼れる相棒”は、現代のデートカーになれるのか!?
第4回は、尾崎雄飛と山田拓治という2人のデザイナーに登場して頂きます。

Photo:Kazuki Miyamae

YOUNG & OLSEN(ヤングアンドオルセン) デザイナー 尾崎雄飛の愛車 『CITROEN CX 25 TGI SAFARI 1990年式』

ハイドロニューマチックサスペンションを搭載した”空飛ぶ絨毯”のような乗り心地

— クルマに興味を持ち始めたのはいつ頃からですか。

17歳の時、先輩方が乗っていた旧い欧州車に憧れを抱いていました。その当時は、免許を取るのがとても待ち遠しかったですね。

— このクルマを購入した経緯を教えてください。

社用として荷物の運搬に使えるクルマが必要で、事務所駐車場の関係で車高が低めのステーションワゴンを探していたところ、このクルマに出会いました。人生で初めて乗ったクルマが『CITROEN』の『2CV』だったので、『CITROEN』にはいずれまた乗りたいと考えていました。運命的なものを感じたこともあって、購入しました。

— このクルマのお気に入りのポイントを教えてください。

ハイドロニューマチックサスペンションを搭載した”空飛ぶ絨毯”のような乗り心地で、エンジン始動時にサスペンションのオイルが回り、フワッと車高が上がるんです。同じ機構でも、積荷や路面状況によって車高を上下させることができるところも気に入っています。駐車時には車高が地上から15cmほどまで下がり、ペットが伏せをしているような状態でお出迎えしてくれるのがたまらなく可愛いです。あと、コクピットが変で、運転する度に笑えます(笑)。

歴代オーナーがそのときどきに手をかけお金をかけ、修理改良してきている車両なので、自分も次のオーナーさんにこのすばらしい旧車リレーのバトンを渡せるよう、大切に乗っています。

— クルマでの休日の過ごし方を教えてください。

取り回しが面倒なクルマなので、休日はこのクルマで山梨県、長野県など郊外に行くことが多いです。高速走行で真価を発揮するので、高速道路の走行が楽しいんですよ。今年は、春になったらこのクルマで上越や東北に行きたいと思っています。

尾崎雄飛(おざきゆうひ)

セレクトショップのバイヤーを経て、カットソーブランド・FilMelange(フィルメランジェ)をスタートさせる。
その後、2012年にはSUN/kakke(サンカッケー)を設立し、現在に至る。
また、2020年には、Youtube番組『尾崎雄飛の洋服天国』を開始し、経歴の中で出会った世界中の良いモノを紹介している。

Name.(ネーム) デザイナー 山田拓治の愛車 『VOLKSWAGEN GOLF2 GLI URBAN ELITE 1992年式』

あまりカッコ良すぎると身の丈に合っていないというか、ちょっとダサいくらいが自分にはちょうど良い

— クルマに興味を持ち始めたのはいつ頃からですか。

正直ずっとクルマには興味が無かったのですが、家庭を持ち、利便性を考えるとあったほうがいいかなと(笑)。

— このクルマを購入した経緯を教えてください。

1980〜90年代の角張ったデザインが好きなのですが、あまりカッコ良すぎると身の丈に合っていないというか、ちょっとダサいくらいが自分にはちょうど良いと思い、このクルマを購入しました。

— このクルマのお気に入りのポイントを教えてください。

高級感があるブラックのレザーシートが気に入っています。後付けしたThule(スーリー)のルーフキャリアは、車の雰囲気にマッチするよう、当時の物を探して購入しました。荷物もたくさん載せられるのでかなり重宝しています。ちなみに、前のオーナー夫妻が”タロウちゃん”と息子のように可愛がっていたのを聞いて、我が家でもそのまま”タロウちゃん”と呼んでいます(笑)。

— クルマでの休日の過ごし方を教えてください。

主に週末は、息子の少年サッカーの送迎に利用してます。あと、コロナ禍以前はよく家族でキャンプに行っていました。

山田拓治(やまだたくじ)

デザイナーズブランドにてパタンナーを務め、2018年秋冬シーズンよりName.のデザイナーに就任。

Judgement Time

某不動産会社にて勤務しているMさん。

「クラシックなデザインに惹かれるので、山田さんの『GOLF2』で。落ち着いた印象なので、どんなシーンにも合いそう!」

某セレクトショップの販売員として勤務しているNさん。

「尾崎さんの『CX 25 TGI』もオシャレな雰囲気で好きだけど、気軽に色んなところへ出かけられそうなので山田さんの『GOLF2』で!」

飲食店のバーテンダーとして勤務しているAさん。

「尾崎さんの『CX 25 TGI』が良いです! 後ろのタイヤが半分隠れてるデザインが珍しくて良いなと思ったのと、クラシックな表情が単純に好みです」

総括

”多機能なクルマ”に心をくすぐられるのは、やはり男性陣だけのようです。