庄司信也 × 安孫子真哉 × 角張渉の『レコ道 ~ 音楽トキワ荘 2015 ~』 第1回(ゲスト:サイトウ “JxJx” ジュン)

by Mastered編集部

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「サザンなんか知らねーよ!ハワード・ジョーンズだろ!」って心の中で超キレるっていうね(笑)。(サイトウ “JxJx” ジュン)

— 角張さんとジュンさんはどうやって出会ったんですか?

角張:単純に俺がすごく好きで、ジュンくんのライブに行ったのが最初かな。ライブでOrnette Colemanの”Broadway Blues”をカバーしてたんだけど、それがめちゃくちゃ格好良くて。翌日、タワレコでCD探したもんね(笑)。で、なんだかんだ仲良くなって、2000年のAIR JAMの前日に家に遊びに来てくれたりもして。

JxJx:次の日、AIR JAMに行くんですなんて言ってたところを「朝まで遊ぼうぜ!」ってすごい邪魔したよね(笑)。

— 第0回ではそれぞれの音楽の原体験について話を伺ったんですが、ジュンさんの原体験はどんな感じだったんでしょうか?

JxJx:ちょっと、長くなりそうなんですが、まず自分は、東京生まれなんですけど、とにかく転校が多くて。その転校生だった、っていうのが自分の人格形成に深く関係している気がしていて、音楽の原体験にも関係があるといいますか。ちなみに小学校で言うと4つ変わってるんですよ。

庄司:場所は?

JxJx:神戸、東京、千葉、神戸って感じで4ヶ所なんだけど、知らない場所で知らない人たちと仲良くならないといけないっていう、なかなかなピンチな時に、なんとなく、本能的に何か情報を持っていると仲良くなれるなって思うようになっていった気がするんだよね。で、当時、小1の時に団地に住んでたんだけど、隣に小6のお兄さんがいて、その人からトッポいことを教えてもらえる訳。『コロコロコミック』を読んでると、「え?まだそんなの読んでるのかよ!こっちだよ、こっち!」って言われて、『リングにかけろ』の単行本をポンっと渡されるわけ(笑)。『北斗の拳』以前のジャンプのノリ。そうなると、内容もエグいしで刺激が強いしで、もう夢中ですよね。しかも、クラスでは誰も読んでなかったりする、と。

庄司:小学校6年生が読んでいるモノを1、2年生に啓蒙してる訳ですもんね。

JxJx: で、そのノリを同級生に伝播させる感じになるんだけど、自ずとそのセンスが共有できる同級生と仲良くなるわけじゃないですか。ということは、トッポい情報を持っているってことは、そういったセンスを分かち合える子と仲良くなれる武器なんだなってことを本能的に察知してというか、それがさらに転校という経験と組み合わさることで、結構なパワーを発揮したような気がするんだよね(笑)。

安孫子:なるほど!

JxJx:さらにその転校の回数を重ねるごとに、使い方、楽しみ方をわかっていった感じもあったりして。それで、同級生でも、お兄ちゃん、お姉ちゃんがいるような子は洋楽を聴き始めるのが早かったりするじゃない? 同じタイミングで、自分でもテレビCMで使われている洋楽とかをチェックし始めていて、「あぁ、これがデュラン・デュランか、歌謡曲よりこっちのほうがカッコいいなぁ」と思っていた時に、たまたまクラスの子でこれまでそんなに仲良くなかった子と「デュラン・デュラン? 知ってるよ」みたいな話になって、新たに仲良くなるみたいなパターンってのがあったんだよね。今度はマンガじゃなくて、音楽、しかも洋楽で。それが、最後の転校の時にバシっと決まったっていうか、その転校先で、洋楽好きを介して仲良くなった友達とは、リアルにセンスの共有で繋がれたっていうか、結局、彼らとは今でもずっと付き合いがあるもんねっていう。

庄司:ジュンくんは一人っ子?

JxJx:妹が2人いるんだけど、そういう意味では一人っ子状態。だから近所の兄ちゃんたちからもらったきっかけの情報を片手に、今度は勝手に自分でディグる作業に入っていたような気がするね。さっきの洋楽の話に戻るけど、「コロコロよりジャンプ」っていうのと一緒の理論で「クラスで流行ってる歌謡曲より、洋楽」って、なっちゃう。で、もっと知りたくなっちゃうから、今度はCMとかじゃなくて、自発的にチャートを調べ始める。全米TOP40、ビルボードとかね。そうすると1位はずっと変わらないから、面白くない。それじゃって、当然、40位ぐらいをチェックし始めるようになるんだよね。

角張:動きがある方にね(笑)。

JxJx:そうそう。断然そっちのほうが面白い。で、更にそこから「いや、イギリスじゃないか?」ってなるんだよ。

庄司:「USじゃ無ぇだろ!」と(笑)。

JxJx:しかも、ビルボードを見ててもUKモノっていうのが、ちょくちょく入ってくるじゃん。そこきっかけに、じゃあ、UKチャートって何だろうと思って。そしたら、もう雰囲気が全然違う。シンセ主体っていうか、エレポップみたいな曲がガンガン上位に入っていて。The Communardsとか。これが、また面白かったんだよね。

庄司:でも、俺も子供の頃はThe BeatlesとかLed Zeppelinってアメリカのバンドなんだと思ってた。そもそもイギリスって概念が無かったもん(笑)。全部アメリカだと思ってた。

安孫子:うん、それは分かる。

JxJx:そんな風にして楽しみ方が自分の中に出来上がってきて、いよいよ洋楽のレコードを買いはじめる感じ、かな。

ハワード・ジョーンズのアルバム『Best of』

ハワード・ジョーンズのアルバム『Best of』

角張:それはベストヒットUSA的なモノを買うってこと?

JxJx:そうなんだけど、1位の、いわゆるみんなが好きなヤツじゃなくて、やっぱりさっき話していた40位くらいのものの方が好きっていうか(笑)、少ないお小遣いをわざわざそっちに投下するんだよね。ハワード・ジョーンズとかに。すごい好きだったね、バッチリ、アメリカのチャートでも下の方をうろうろしてたから(笑)。髪型もオレンジ色の刈り上げだったりして、丁度あの時代の雰囲気がバリバリで。そして、ついに中1の時に我が家にコンポがやって来ると(笑)。

庄司:出たー!コンポ!! 言わなくなったよね、コンポって(笑)。

JxJx:家にコンポを設置する日に電気屋のオヤジ来るんだけど、設置した後に、音が出るか試したいって言われて、そこで自分はここぞとばかりにハワード・ジョーンズのLPをこうさ……

一同笑

JxJx: 「これをかけてください」って言って、あのエレポップサウンドが自宅で炸裂する訳。そしたら、オヤジがおもむろにボリュームを下げて「何か他の無い? サザンみたいなの」って言われて。

一同笑

JxJx:で、それに「サザンなんか知らねーよ!ハワード・ジョーンズだろ!」って心の中で超キレるっていうね(笑)。まぁ、そこら辺から自分って世間とズレてるんだなみたいなことには気付くんだけど、今さらもう引けないからね。当然、そのズレのまま加速していくわけで、そうなると、中学の早めの段階で、パンクに出会うし、ヒップホップにも出会ってしまう、と。

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