— 角張さんの音楽の原体験的な部分はどの辺りにあるんですか?
角張:自分はお姉ちゃんっ子だったんですが、姉はフリッパーズ・ギターやThe Clashとかが好きで、その辺が全部一緒くたになったカセットテープを良く聴いていたんです。兄貴はビリー・ジョエルが好きだったんだけど、そういう家族からの影響が一番大きいですかね。
庄司: ほんと、DNAレベルでビリー・ジョエル好きだよね?
角張:最高だからね、ビリー・ジョエル。ビリー・ジョエルが千鳥格子のジャケットにブルージーンズを履いてさ、トランペットを持ってるジャケ写があるんだけど、それがとにかくすげぇ好きで。古着屋で千鳥格子のジャケット探したもん。
庄司: でも、古着屋が近くにあるってことは、角張くんは俺らからしたらかなりの都会っ子だよね。もう、初めて仙台のHMVに行った時の衝撃たるや。
角張:何店?
庄司: 仙台ビブレ店(笑)。ヤギが急に草が生い茂ってる牧草地に行くと、どっちに行けば良いか分からなくなるみたいな、そんな感じですよ。もう、どの棚から見て良いか全然分からなくなる。
角張:良く分かんないけどさ、あの頃は音楽を聴くことが一番格好良いと思ってたよね。
庄司: 90年代って、CDを買う行為自体がオシャレみたいなところがあったもんね。
— 将来的に音楽に携わる仕事をしようと思ったきっかけは何だったんでしょうか?
角張:僕はそれこそアビちゃんなんですよね。18歳でアビちゃんと仲良くなった当時、同世代で自分たちでレーベルをやろうって考えを持っている人は少なかったから。
— では、安孫子さんが音楽を好きになったきっかけは?
安孫子: やっぱりバンドですかね。
角張:山形のライブハウスを埋めてたって聞いたよ?
安孫子: [MILKBOY]のボンテージショーツとSwitch StyleのバンドT着てライブしてたよ(笑)。上京してすぐ、ファッション誌のストリートスナップにも載ったからね(笑)!
庄司: 俺、一時期もう30歳近いのに『TUNE』からやたら声を掛けられるのが悩みだった(笑)。いや、ありがたいことなんですけど、「俺、まだ『TUNE』なんだ!?」みたいな。
一同笑
安孫子: 僕は、「ぱっと出」みたいに見られてたので、ディープなパンクのイベントに遊びに行くといじめられたりもしましたよ。
角張:ダサいことはやるなみたいな価値観はあるけど、当時のパンクシーンはそのダサいの尺度が極端に狭かったんですよね。Aは良いけど、Bはダサいみたいなことがすごくはっきりしてた。今は「やる」って枠の中で戦うことの大切さも分かるけど、「やらない」のは簡単だからね。だから、みんな「やらなければ良いか」って感じになってた。
安孫子: 僕もそういう感じでした。
角張:カクバリズムではじめて体験することも多くて。全然経験ない感じの仕事のオファーがたくさん来て。もちろんダサいなって思う瞬間あったけど、そう判断する前に、よりよくかっこよく提示できないかな?っていう考え方に変わってきていて。で、さらに転換期が来ているみたいな感じ。インディペンデントの重要性と柔軟性とでもいうか………。
庄司: 俺もレーベルやってるけど、あくまで1プレイヤー/クリエーターとして動いているから、焦らず自分が「これ好きだな、良いな」って本当に思える、自分の想像を越えてくるバンドに出会いたいと思っているんだけど、当たり前かもしれないけど、そういうビッグバンがなかなか無くて、最近は理想が高くて結婚できない人みたいになってる(笑)。
安孫子: みんなそれぞれ体質が違うね~。俺は気持ち的にはただのファンだからさ。
角張:アビちゃんは車の中で6時間ぐらい「CAR10、やべぇ~、NOT WONK、やべぇ~」って叫びながら走ってる感じでしょ?
安孫子: もうガンガンだね。最高。
庄司: でもそれって一番幸せなことだよね。自分の好きなバンドの新曲を自分が一番最初に聴けるんだもん。
角張:その中に仕事としての「聴いて欲しい」っ思いもあるの? 例えば、今RADWIMPSばっかり聴いてる子たちに聴かせたいとか。
安孫子: そりゃ聴いて欲しいけど、そこはこっちの趣味や意味合いや価値観が別物な範囲だってことも分かるじゃん。例えばNOT WONKって19歳とか20歳とかなんだけどさ、「フェスとか出たいの?」って聞くと「特に興味無いっすね。」ってさらっと答えるわけ。
庄司: 格好良いね~!
安孫子: 兄弟に連れられてフェスに行ったこともあるらしいんですけど、「マジで帰りたかった」って言ってた(笑)。
角張:もしかしたら今のアビちゃんの感覚って、庄司くんがandymoriに出会った感じとか、僕らがYOUR SONG IS GOODに出会った時の感じに似てるのかもしれないね。ちょっと羨ましいもん(笑)。