クリヱヰター百鬼夜行 Vol.1 アーティスト・TOMASONが語るアメコミ、妖怪、ベイブレード

by Nobuyuki Shigetake and Mastered編集部

2 / 2
ページ

— 作品として描くようになったのはいつ頃からですか?

TOMASON:高校生ぐらいまでは、ノートの端っこのラクガキで、誰かに向けて描いたり、人に見てもらいたい気持ちもなかったんです。ちゃんと作品と意識して描き始めたのは高校を卒業して、大学に入ってからですかね。

— 学生時代はどういう過ごし方を?

TOMASON:私大のデザイン学科に入ったのですが、合わなかったのか、とにかく肩身が狭い学生生活でしたね(笑)。4年生になると卒業制作展があるんですけど、書き続けたモンスターを展示しようと思って、プレゼンをしたら教授から鬼のような酷評を受けて食らっちゃって。でも吹っ切れたというか、「このヤロウ」って思って、卒業制作展のタイミングに合わせて、会場から徒歩5分くらいのギャラリービル4フロアを借りて『TOMASON EXPO』という個展を開催しました。

— おぉ、パンクですね。

TOMASON:卒展には『TOMASON EXPO』のフライヤーだけ置いて「個展会場で待つ」とメッセージを残して。今思うと結構やばいですけど、大量の作品の制作や会場の設営はもちろん、ビラ配りから始まり、告知動画の制作やコラボレーションするアーティストのキュレーション、好きなアーティストを呼んで前夜祭をセッティングしたり、全てをイチから作ったこの経験は、僕にとっての財産ですね。

— 結構、DIYマインドがあるんですね。

TOMASON:MATのここ(ピンクのレジカウンター)も自分で作ってますしね。地元の友達の石田さんっていう、おじさんと。

— MATはオープンして半年ほどになりますね。

TOMASON:ありがたいことにいろんな人に助けてもらいながら、なんとかやれている感じです。

— MATではキュレーターという立場ですが、どのようにアーティストを見つけてるんですか?

TOMASON:基本的にはSNSで面白い人を見つけたらDMでオファーして、という流れが多いですが、数珠繋ぎでアーティストを紹介してもらったりもしてます。

— MATというスペースの存在は、自身にとってどのように作用していますか?

TOMASON:これまではどこにも属さずに自分のペースで制作をしていたのもあって、あまり世の中にコミットしている実感がなかったんですけど、ギャラリーを作ってからはいろんな人を巻き込んで物事を作るようになって、自分がとても恵まれていること、感謝したい人たちが周りにたくさんいることに気付かされました。2019年の『TOMASON LAND』や、リリースしたばかりの図鑑もそうですけど。

— 4月に出版レーベル、白い立体から図鑑『MONSTER BOOK』をリリースされましたね。

TOMASON:おかげさまで。売れ行きも思ったより良くて、安心しています(笑)。

『MONSTER BOOK』
252体のモンスターを収録。税抜3,500円。

— 価格もちょうど良いですよね。

TOMASON:そうなんですよ。白い立体と擦り合わせて、ギリギリのところに設定しています。ギリギリというのは、手に取りやすい価格だけど、あまりカジュアルになりすぎない値段というか。「安ければ良い」ってものでもないので。

— 掲載されているモンスターについて、少し教えてください。

TOMASON:まずこいつ、結構気に入ってるんですよ。『DARKNESS SMITH』。

— 良い名前ですね(笑)。

TOMASON:あとはこいつ。『NN COOL C』。

— LL COOL Jっぽいですね。

TOMASON:こいつもラッパーなんですよ。ヒットソングに“need is C”って曲があって、ヒットしすぎて“一国を滅ぼす“ほどの影響力があると言われています。

— どういう影響力?

TOMASON:あとは『MR.INTERNET』。

— これまた良い名前ですね。

TOMASON:こいつは『情報一武道会』っていう、情報の強者を決める大会があって、その大会に優勝するとネット社会を牛耳ることができるんですけど、それで優勝しています。

— なるほど。

TOMASON:あとはこいつ。『KIMPO』。“クリエイティブの神“とされていて、KIMPOに称賛されたクリエイターは出世するって言われてるから、毎日のようにたくさんのクリエイターが作品を持って参拝しに来るんですけど、そのほとんどが酷評されるっていう。

— これが252体、それぞれにあるって考えるとすごいですね。モンスターの名前やストーリーは、どのように生まれているんですか?

TOMASON:仕上がったモンスターの顔や佇まいを見ると自然と浮かんでくるんですよね。まずは名前が思い浮かんで、その次にストーリー、って感じで。

— この初回特典の、オリジナルのモンスターも、嬉しいです。

件の作品集の初回特典として書いてもらったモンスター『SHIGEKING』。
100%パワー系。

TOMASON:手が届く範囲でしかやれてないですけどね。

— TOMASONさんの作品には、分かりやすさというか、普遍的なところがあるように感じます。

TOMASON:それこそ日記のようにモンスターを描いているので、その時々で世の中や自分のトレンド、あとは世相だったりもなんとなく反映されていたりするのかもしれませんね。

— モンスターを描く上での決まり事はあるんですか?

TOMASON:頭の中に存在しているモンスターを産み落としている感覚なので、ルールとして挙げるとすれば“書き直さない“ということ。いわゆる“良い作品“を作ることが目的ではないですからね。人間と同じで、生まれた子を親が見て「この子の顔が気に入らない。直そう」ということにはならないですよね。

— モンスターを描き続ける理由を教えてください。

TOMASON:人間は成長に応じて、知識や教養を身に付けて、コミュニティに属して、それによって人格や趣味嗜好が変化するし、大人になると少なからず集団に寄り添わないといけなかったりもする。人間社会では上手くやっていくために妥協しないといけないこともあると思うけど、そうじゃない世界をモンスターに求めて描いています。人間社会の生き辛さをモンスターに投影しているというか。モンスターの世界では、どんな色でも姿形でも、どんな服装でも非難されることはないですし。

— では最後に、2020年の予定を聞かせてください。

TOMASON:ひとまずはコロナの影響で延期になった『MONSTER BOOK』の巡回展から。それと、少し大規模な展示や、ブランド、セレクトショップとのコラボレーションワークも予定しています。モンスターたちが日本各地に拡散されていくのが、今から楽しみですね。

TOMASON 『MONSTER BOOK』

デザイン:白い立体
仕様:148 × 105 × 25mm /300頁 / 上製本(箔押し加工)
価格:3500円 + 税
出版:白い立体 ISBN 97 8-4-9910388-0-8

■出版記念展覧会

開催期間:2020年6月19日(金)〜6月29日(月)
開催場所:KAKUOZAN LARDER
愛知県名古屋市千種区覚王山通9-14

開催期間:2020年9月19日(土)〜9月27日(日)
開催場所:六本松 蔦屋書店
福岡県福岡市中央区六本松4-2-1 2F 421

開催期間:2020年9月19日(土)〜9月27日(日)
開催場所:MANU COFFEE
福岡県福岡市中央区大名1-1-3 石井ビル1F

開催期間:2020年11月3日(火)〜11月23日(月)
開催場所:藤井大丸
京都府京都市下京区貞安前之町605

開催期間:2020年11月7日(土)〜11月14日(土)
開催場所:IMA:ZINE
大阪府大阪市北区中津3-30-4