藤井健太郎のoff-air 第4回:SITE(Ghetto Hollywood)

by Keita Miki

規制だ、コンプラだ、とネガティブな言葉が飛び交う昨今のTV業界。だけど、そこにはまだまだ尖ったヤツらがいる。マスメディア界の異端児、藤井健太郎がホストを務める連載『藤井健太郎のoff-air』では毎回さまざまな分野の個性を招き、昔ながらのクジ引き形式で出たテーマに沿ったり逸れたりしながら、電波にはのらない放談をお届け。テレビじゃ聞けない裏話や驚きのアイデアが飛び出すかも知れないし、飛び出さないかも知れない。見逃し厳禁、規制がかかるその前に。
第4回目のゲストは、PUNPEE”タイムマシーンにのって”のMVをはじめ、数々の映像作品を監督したことでも知られる「HIPHOP何でも屋」であり、特殊情報機関・Ghetto Hollywoodを主宰するSITE。2019年より『週刊SPA!』にて連載中のヒップホップ漫画『少年・イン・ザ・フッド』で漫画家デビューを果たし、遂に待望の単行本をリリースしたばかりの同氏の過去と現在を探る。

Photo:Rintaro Ishige | Text&Edit : Keita Miki | 収録日:2020年8月11日

”いじめっ子のセンスが生み出すお笑い”も時代に合わせてもっと頑張って欲しいんですよ、そんなに簡単に駆逐されないで欲しいんです。(SITE)

— まずはお2人の関係性について教えていただけますか。

藤井:最初はPUNPEEくん繋がりでって感じですよね?

SITE:そうですね。僕がめちゃくちゃテレビっ子なので、お会いする前から藤井さんのことを一方的に知ってはいましたが……。

藤井:歳も近いですしね。

SITE:僕が1つ上なんですけど、共通の友人も結構多くて、青春時代に藤井さんが遊んでた場所はなんとなく分かるっていう。世代が一緒なんで。

藤井:当時のヒップホップ方面のコミュニティは狭いですから。

SITE:藤井さんは僕の中で”UNITの楽屋で会う人”ってイメージが強くて(笑)。

— こうして2人だけで会うことは珍しい?

SITE:そうですね、大体はBIMとかパンちゃん(PUNPEE)が一緒なんで。自分にとってパンちゃんは親戚みたいな存在で、藤井さんは「パンちゃんがお世話になってる人」って感じ(笑)。

— SITEさんの地元はどこなんですか?

SITE:幡ヶ谷です。20代までは渋谷区に住んでいて、30歳を超えてから川を越えて神奈川に来て。引っ越してきてからは映像を始めて、10年間映像をやりました。昔からずっと映画を撮りたいなと思っていたんですけど、PVで賞をとっても結局は映画とPVって業界が全然違って。どこに行っても「映画をやりたいなら原作が無いとダメ」って言われたので、じゃあ、まずは漫画で原作を書こうと。そうしたら、運良く『SPA!』の連載が決まって、去年からは漫画家をやってます(笑)。

藤井:SITEくんは「ヒップホップ何でも屋」なんて言い方もされてるように、映像が撮れて絵も描けて、そしてとにかく知識量が半端じゃないっていうすごい人なんですけど、結果、漫画家としてはかなり特殊な経歴ですよね(笑)。

SITE:40歳から漫画家って結構美味しいんじゃないかなと思っていたんですけど、『王様ランキング』の十日草輔先生は42歳から漫画家になって、あの大ヒットなので、それを考えると自分は大したことないっていう……。

『少年イン・ザ・フッド』 第1巻

— (笑)。今は漫画家に専念している感じなんでしょうか?

SITE:一応、ちょくちょくPVも頼まれてはいるんですけど、全体では無く一部だけ関わったりって感じのモノも多くて。最後に撮ったのは、Marukidoちゃんの”合法JK”って曲のMVですかね。というか近頃思うんですけど、最近の日本語ラップって、ダンスミュージックとしてのグルーヴが弱くなった気がしてて。Chaki Zuluくんとか、4つ打ちを通って来た人達が作るビートは相変わらずボトムが強いんですけど、現代の他のジャンルのダンスミュージックと比べても、日本語ラップはうねりのデカさだったり、現場でのサウンドシステムのこだわりが弱くなったように感じるんです。

藤井:よく言われる話ですけど、最近はスマートフォンで音楽を聴くことが主流になって、さらにマーケットの規模も大きくなった分、もはやヒップホップはクラブミュージックとしての側面を失いつつあるのかもしれませんね。

SITE:僕、10年ぐらい前はSEEDAくんとかNORIKIYOくんとかのA&Rをやっていて、その時から携帯の音質の話ってしてたんですけど、今って結局、スマホからBluetoothで良いイヤフォンとかヘッドフォンに音を飛ばすじゃないですか? それこそ着メロ時代とかは低音なんか必要ないじゃんって感じだったんですけど、今はみんなどこに行っても低音をブンブン鳴らしているから、また低音が必要な時代になって来てるようにも思うんですよね……って、いきなり話が逸れちゃいましたね。

— いえいえ、全然構いません。ちなみにコロナ禍の影響もあって、この連載の収録はかなり久々なんですが、お2人はどんな風にコロナ禍を過ごしていますか?

SITE:元々僕はインドアで、仕事も基本的には全てリモートで出来るので、あまり状況は変わってないですね。リモートなのでアシスタントと会うことも無くなり、1人きりで作業をしているので、すぐにサボっちゃって……。正直なところ、コロナ以前は「最近遊びにいけてないな」っていう負い目というか、現場との距離感を感じてしまうことも多かったんですけど、こうして必然的にベッドルームカルチャー(=オタクカルチャー)が主流になってくると、「俺もう1回トップに行けるかな」って勘違いしちゃいますよね(笑)。全く準備していなかったのに、急に順番が回ってきちゃった感じ。

藤井:自分もインドア派なので、プライベートな部分はほとんど変わらずですね。もちろん、仕事への影響はありますけど。

SITE:もうテレビの収録は再開しているんですよね?

藤井:企画によりけりって感じですけど、制限もたくさんあるので、やりたくても出来ないことは多いですよ。例えば、地方や海外でのロケとか、街で不特定多数の一般人と接触するような企画は出来ないですし。

SITE:テレビが急に作り込めなくなりましたもんね。藤井さんの番組はちゃんと作っている印象なんですけど、YouTubeの延長みたいなテレビ番組が急に増えたじゃないですか。冒頭で話したとおり、自分はテレビっ子なんで、自粛期間中もずっとテレビは見ていたんですけど、やっぱり選択肢が少ないと質って落ちるんだなって思いました。各々で頑張ろうとしているのは、すごく伝わってくるんですけど。

藤井:YouTubeの勢いは、このご時勢で更に加速しましたよね。自宅で少人数で作ることが出来るっていうYouTuber的な動画の性質と、時代が見事に噛み合った感があります。

SITE
HIPHOP何でも屋。特殊情報機関Ghetto Hollywood主宰。

— ではそろそろ、1つ目のくじを引いてみますか。

SITE:やってみましょう。……じゃあこれで。

— お、YouTubeの話から見事に繋がりましたね。お題は”モーニングルーティーン”です。

SITE:僕、むしろ朝になってから寝るんですよね(笑)。

藤井:自分もそうですね(笑)。朝寝て、昼に起きるって生活で。

SITE:中学生くらいからそうなんですけど、深夜のテレビ番組が全部終わらないとスイッチが入らなくて。年々、「もうやるしかないぞ」ってところまで追い込まれないと手が進まなくなってきていて、作業の開始時間は遅くなる一方(笑)。『暴れん坊将軍』が始まったら、いよいよやらないとヤバいって合図ですね。

藤井:4時ってことですね(笑)。僕もそのくらいの時間に作業していることが多いです。深夜から朝方にかけての時間帯って誰からも連絡が来なくなるから、一番集中出来るんですよね。日中は作業中に連絡も来るし、メールの返信とかもしなきゃいけないので、必然的に編集とかの集中が必要な作業が出来るのは、どうしても深夜帯になってしまって。

SITE:そういう作業はTBSの社内でやることが多いんですか?

藤井:基本、部屋にこもってやりますけど、場所はまちまちですね。ただ自宅ではあまりやらないかもしれません。

SITE:本当はそういう風に場所を変えて、気持ちを切り替えた方が良いんですよね。この部屋は漫画の作業用に作ったんですけど、同時にここで生活もしているので、仕事とプライベートの境目が一切無くなっちゃって。だから、漫画も最終的には自分自身の好奇心と同期させて、『美味しんぼ』みたいなルポ漫画にしたいなと思っているんです(笑)。

藤井:でも、『少年・イン・ザ・フッド』は、ほとんどSITEくん自身が体験したストーリーを基にしていますよね?

SITE:そうですね。実は漫画に関しては18歳くらいの時に「女の子と背景を書くのが嫌だから」って理由で一度挫折していて。だから、この漫画自体が自分にとってのセカンドチャレンジみたいな側面もあって、全然予測していなかったことなんですけど、そういう面が96年編の師匠っていうキャラクターと妙にリンクしちゃっています。

— 勝手なイメージなんですが、週刊での漫画連載ってめちゃくちゃ忙しくないですか?

SITE:基本的には週刊なんですけど、最後の週は隔週なので、1週間休みが入るんです。なので、その1週間でMVの作業をやったり、色々と他のことをしています。まぁ、それでも正直めちゃくちゃ忙しいんですが、絵は昔から描いていたので、別に苦にはならなくて。ただ、4話から10話くらいを描いている時は、もう本当に無理だと思いましたけどね。「こんなこと出来るやついんのかな?」って感じで(笑)。連載をスタートする前に3ヶ月猶予をもらっていたんですけど、そのストックは最初の3話で全て使い果たしちゃって、4話の時にはスカスカの絵しか描けなくなっちゃいました。時間をかけて書いた3話までは自分の中で75点くらいの出来だったんですけど、4話ではそれが30点くらいまで下がって(笑)。5話からはアシスタントに入ってもらったので、少しはマシになって、今はようやく65点くらいまで戻すことが出来てるんですけど。これからはもっと完成度を上げていきたいですね。

藤井:でも素人目にも、話が進むにつれて漫画としてどんどん整ってきてるのが分かるし、成長を感じますよ(笑)。

SITE:色々と試行錯誤を繰り返して、今の形に落ち着きましたね。最初はラフを描かずに即興で描いてたんですけど、今は簡単なラフを描いてから作るようにしています。ただ、1巻まではドラマ用のプロットを用意していたので、単純にそれをなぞれば良かったんですけど、それ以降、段々とストーリーが進まなくなってきちゃって。なので、直近ではまた即興で描くことも増えてきました(笑)。

藤井:連載漫画ってやっぱり走り出してみないと分からない部分も多いんですね。ストーリーが勝手に派生して、よく言う「キャラクターたちが実際に動き始める」って感覚というか。

SITE:そうなんですよね。キャラクターボックスには事前にたくさん情報を入れてあるので、何か状況を与えた時にそれぞれがどう動くかってことを一番大事にしています。考えられるパターンの中から、面白そうな方を取捨選択していく感じで。だから、自分はクリエイターというより、プレイヤー的な視点で作品に参加している感覚なんです。

藤井:96年編はまさにキャラクターたち自身が盛り上げたって感じがしました。

SITE:僕もそうだったんですけど、ヒップホップって自分を発見出来るんです。自分の名前を自分で呼んで、そこから自分を発見したり、鏡の前でなりたい自分を発見したり。自分で自分に自分を教えるみたいな側面があるので、何も無いやつが始めるならヒップホップが一番なんですよ。僕は昔からオタクだったんですけど、それでもヒップホップをやり続けていると、信じられないようなことが起こる。でも、それって僕の力じゃなくて、ヒップホップの力だと思うんです。世界中のどこに行っても、ヒップホップ、スケートボード、グラフィティが格好良いカルチャーであり続けてくれているからこそ、僕たちが飯を食えているのかなと。例えば、舐達麻なんかはその意識がすごく高いというか、「ヒップホップが自分たちを磨いてくれている」ってことを意識的に自覚していると思うんですよ。「不良はみんなアートやろうぜ」って、もう最高じゃないですか。

藤井:ラッパーとしても不良としても舐達麻は本当に格好良いですよね。

SITE:意外とみんな気付いてないんですけど、舐達麻って、実は僕らのようなオタクの系譜にすごくフィットするんですよね。彼らが作っている洋服だったり、ライターのピックの仕方だったり、アートの趣味を見ていると、完全に僕ら好みで。そういう部分にも勝手にシンパシーを感じているし、パンちゃんと舐達麻のヒップホップゲームの仕方は本当に大好きですね。オルタナティブと正統派。僕はオルタナティブと不良が常に好きなので。

— では、次のクジにいってみましょう。

藤井:引きますね……はい、”夏を感じる曲”。

SITE:この夏は、Tommy Guerrero(トミー・ゲレロ)が再びマイブームですね。まじで夏っぽいなって思います。

藤井:おぉ~!

SITE:トリップ・ホップとかも聞くんですけど、緊張感がある音楽よりは緩い感じの方が今の気分に合っていて。藤井さんはどうですか?

藤井:なんだろうな……、昔はレゲエをよく聴いてたんですけど、最近はあまり夏ってことを意識して音楽を聴いていないかも。ホモフォビアの問題もあってか最近のダンスホールは盛り上がりきれてない気がしますよね。ChronixxとかKoffeeとかルーツロック寄りのアーティストしか目立ってない印象。

SITE:そういえば、ずっと藤井さんに聞きたかった事があって。最近、日本のお笑いでは「ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)が表現に対してマイナスに働いている」って意見を耳にするんですけど、Netflixとかを見ていると、個人的には逆にポリコレに対してしっかりと対策をしている作品の方が攻め所をわかってるからギャグの勢いも強度もあると思っていて。どちらの意見も正直で、言い分は分かるんですけど、藤井さんはどう思いますか? 藤井さんは、とんねるず以降における”いじめっ子のセンスが生み出すお笑い”の最後の番人だと僕は勝手に思っているので、ぜひ意見を聞きたいんです。

藤井:(笑)。

SITE:藤井さんも現代においてのそういうお笑いに対する風当たりの強さは、色々な面で実感している訳じゃないですか? でも、僕らの世代は、ずっととんねるずとかダウンタウンのお笑いを見て育ってきて、腹を抱えて笑った記憶があるから松嶋菜々子のコントとか、「え、あんなにみんな笑ってたのにそれもなかったことにしちゃうの?」って思うこともたまにあって。ギャングスタラップじゃないけど、どうしようもない無頼を演じることくらいは許されてもいいんじゃないかと。だから僕は、”いじめっ子のセンスが生み出すお笑い”も時代に合わせてもっと頑張って欲しいんですよ、そんなに簡単に駆逐されないで欲しいんです。そういう意味で、僕の中では千鳥の大悟さんとか藤井さんがその最後の灯火なんですよね(笑)。

藤井:うーん、なかなかコメントが難しい話ですが(笑)、当然、時代に合わせないといけない部分はあるし、「何がOKで、何がダメなのか」って判断については、最終的に世の中のルールと自分の中でのルールをうまく照らし合わせて結論を出すしかないんですよね。ただ、必ずしも世間の感覚と自分の感覚をぴったり揃える必要は無いと思っていて。なので、世の中の状況を見ながらも、自分の感覚は曲げないってことが大事なんじゃないかと。

SITE:例えば、『水曜日のダウンタウン』のクロちゃんの企画って大きく分けると”いじめっ子のセンスが生み出すお笑い”だと思うんですけど、最高に面白いし、本人にとっても確実にプラスにはなっているというか、ちゃんと機能していますよね。そういうクマノミとイソギンチャクのような関係を築けている限りは、”いじめっ子のセンスが生み出すお笑い”って不滅だと個人的には思いたいんですけどね。

藤井:面白いもので、クロちゃんがいじめられる側の時って全然苦情が来ないんですよ。でも、クロちゃんが企画の中で強者の立場になると、苦情が殺到する(笑)。苦情の中には、クロちゃんの外見に対する単純な差別も多く含まれているし、みんな無意識にクロちゃんを下に見てるんですよ。だから、その辺はクレームを入れてくる人の方がよっぽど差別的だったりする場合もあるんですよね。

SITE:Twitterとかでも、クロちゃんに対するコメントの方がよっぽどひどかったりしますもんね。

藤井:クロちゃんだからって何を言っても良い訳じゃないですからね。

SITE:10年後に同じ企画が出来るのかって言われると分からないし、藤井さんはそういうボーダーラインで戦っていて、本当にすごいなと勝手ながら思っていますよ。

藤井:時代感っていうのは確実にあるし、昔は笑えたけど今は笑えないってことがあるのは事実なので、そこは時代にあわせて上手くやっていきたいですけどね。

SITE:ポリコレを気にし過ぎてみんなが空気を読もうとしすぎるのもおかしいと思うんです。スケーターの悪ふざけから『jackass』が生まれたみたいに、迷惑かけるけど面白いやつはいつの時代もいるじゃないですか(笑)。

藤井:まぁ、色々な意見がありますよね。超えちゃいけないラインっていうのも常に変化する訳ですし。

SITE:僕は”1軍になりたい2軍”にも入らない第3勢力で、1軍になりたいと思ったことすらないって感じの青春時代を過ごしてきたんですけど、そんな僕でも、やっぱり1軍は笑いが絶えない場所であって欲しいと思うんですよ。

藤井:1軍は笑いにおいても1軍であって欲しい、と。

SITE:そうそう。自分がそっち側の人間じゃないからこそ、1軍の人たちには「ここが頑張り時だぞ!」ってエールを送りたくて。

藤井:面白いってのも不良の大事な要素ですからね。

SITE:もちろん、差別が絶対にNGっていうのは今の時代、当たり前のことなので、理解してるし、それが作品のテーマでもあるんですけど、それとは別に”社会通念的には正しくないかもしれないけど、言うことを聞かない自由”っていうのも誰にでもあると思うんです。グラフィティとか、ストリートでのスケートとか、マリファナとかLSDも、やりたきゃ自分でリスクを冒してやればいいんですよ。1度きりの人生、言うことを聞き続けなければいけないって決まりは無い訳で。やっちゃいけないことをやる自由っていうか隙間は、社会の中に常に存在していて良いと僕は思うんですけどね。

藤井:たしかに。グラフィティは違法だから”悪”だって決めつけるのに、そういう人たちがBanksyを持ち上げるのは全く意味が分からないですからね。

SITE:Banksyはグラフィティの世界から出てきた人で、グラフィティの世界のネームゲームの中で、あの人がカマしてきたものをずっと見てきたからすごく好きなんですけど、今の状況は、言うならばNBAの中でMichael Jordan(マイケル・ジョーダン)しか見ていないようなもんで。それって本当に何の意味も無いことなんですよね。あれ……、そもそも僕らは何の話をしてたんでしたっけ?

一同笑

— ”夏を感じる曲”ですね(笑)。では、この辺で次のテーマにいってみますか。

SITE:そうですね、……”幸せを感じる瞬間”。藤井さんはやっぱり番組が出来上がった時ですか?

藤井:いち生活者としての幸せは他にも沢山ありますけど、仕事面で言えば、結局は番組が出来上がって、それに対する視聴者の反応を見た時ってことになりますかね。

SITE:自分の作品を認めてもらえた時の幸せってやっぱり別格ですよね。グラフィティの世界では、良く「自分の作品を5時間以上見ていられない奴はダメだ」って言うんですけど、「あぁ、やっぱり俺の作品は良いな」ってずっと見ていられるよう人じゃないと実際に続かなくて。色々と試行錯誤して作ったものが褒められたら、すごく嬉しいですよね。

藤井:結局はそこがモチベーションだし、面白いって思われたいから頑張りますしね。

SITE:やっぱり藤井さんには、「日本で一番面白い男でありたい」って想いがあるんですか?

藤井:いやいやいや、僕はあくまでも裏方ですから(笑)。

SITE:たしかに(笑)。でも面白いものを作るっていう意味では、一番を目指していますよね?

藤井:僕個人としては、現在の日本では、まだ地上波のテレビ番組が最も笑えるコンテンツであると思っていて。コメディ映画よりもテレビのバラエティ番組の方が面白いし、ネタも含む地上波バラエティのコンテンツが笑いに関しては未だに1位だと感じているので、その中で戦っている以上は常に最先端でありたいという想いはありますけどね。

SITE:お笑いの何が良いかって、やっぱり戦っていることだと思うんですよ。あれだけ多くの芸人さんが、賞レースをはじめとした様々な舞台でしのぎを削りあっているからこそ、そこに価値がある。本来ならば、ヒップホップもその楽しみを担うべきなんですけどね。海外では、日本のお笑いくらいの感覚でヒップホップに接していて。たまに「お笑いとラップは似ている」みたいな意見を見ますけど、まだまだ日本では、お笑いとヒップホップに歴然とした差がありますよ。ヒップホップは、圧倒的にプレイヤーの頭数が少ないですから。お笑い芸人を目指すように、みんながラッパーを目指せば、日本でもヒップホップは強大なカルチャーになると思うんですけどね。

藤井:90年代と比べれば、これでもだいぶラッパーは増えましたけどね。

SITE:T-Pablowのお陰でかなり増えましたよ。そういう意味では、彼はゲームチェンジャーですよね。もちろん好き嫌いはあるだろうけど、確実にあそこからシーンが変わった。「なりたい職業=ラッパー」を増やしたのはT-Pablowだと思いますよ。

藤井:確かに、ラップのスタイルを進化させたのは5lackやKOHHだけど、シーンを変えたって意味では間違いなくPablowですよね。

藤井健太郎
TVディレクター
1980年生まれ、東京都出身。大学卒業後にTBSテレビに入社。入社3年目で『リンカーン』の立ち上げに参加し、その後『クイズ☆タレント名鑑』等を演出・プロデュース。現在は『水曜日のダウンタウン』などの番組を手がけ、話題や火種を生んでいる。

— その辺の話を始めると終わりが見えなくなりそうなので、次にいきましょう(笑)。

藤井:そうですね……、”最近買った便利グッズ”。何か買いましたか?

SITE:VHSデッキを買いましたね。今また、自分の中でVHSが熱くて。

藤井:マジですか(笑)。

SITE:とにかく競争率が低いから、お宝が、そこかしこにあるんですよ。僕、昔から荒い映像が好きなんですよね。想像の余地があるじゃないですか。例えばファミコンの時は8bitの絵から、鳥山明先生の絵を想像していた訳で。昔のモノって周りの雰囲気を想像する余白があったからこそ、みんなが「エモい」って言うと思うんですよ。最近の映像にVHSのようなエフェクトを入れるのもそういうことだと思うし、結局はみんなその隙間を今でも追い求めているんですよね。あとは単純にゴミになったものを再利用出来るっていう意味でも、VHSとVHSデッキが便利グッズだと思っています。

藤井:ビデオテープは最近見てないな~。それこそTBSにもテレビデオが死ぬほどあったんですけど、それもあるタイミングから完全に無くなりましたね。

— VHSの仕入先はネットがメインになるんですか?

SITE:ネットと個人ですね。この部屋にあるスケート関連のDVDとVHSはこの1年で集めたものなんですけど、集めるきっかけになったのは、友人がフリマに1本300円で出品していたスケートビデオ。それを27本買って、そこから一気に火がついたんです。改めてVHSって素晴らしいですよ。今の子たちが「エモい」って追い求める気持ちも分かるし、自分自身、そこにずっと寄りかかって生きてきた人間なので嬉しくもあります。”不便さの魅力”って確実に存在していて、キャンプが流行っているのも同じ理由だと思うんですよね。あと、カセットテープは最近高いんですけど、VHSはマジで安い(笑)。正直、ここ最近はずっとVHSでスケートビデオを見てるので、Netflixすら見ている暇が無くて。藤井さんは何か集めているものとかあるんですか?

藤井:フィギュアは昔から好きですね。ヒップホップもののフィギュアはほとんど持っているはず。あのMASTER Pのトーキングフィギュアとか未だに大好きですよ(笑)。

SITE:でも、ヒップホップ関連のフィギュアって基本的に価値が付かないんですよね。ヒップホップの人たちってフィギュアは作るんですけど、フィギュアのゲームに乗っからないから。フィギュアの世界にも当然ゲームはあって、誰が塗装を塗っているとか、価値のつく指標がいくつかあるんですけど、ヒップホップの人たちはそこにこだわない。良く出来ているのに勿体無いですよね。ところで、最近の藤井さんのオススメのテレビ番組って何かありますか?

藤井:個人的に好きで見る番組はドキュメンタリー系のものが多くて、まだチェックできてないんですけど、この前、NHKスペシャルでやっていたナベツネ(渡辺恒雄)のドキュメンタリーは面白そうでしたね。

SITE:あ~、リアルタイムじゃないものだと、戦後が一番面白いですよね。僕自身、その時代が大好きで。あの時代の日本が最強だと思います(笑)。

— そろそろ時間も無くなってきたので、次で最後にしましょう。

藤井:そうしましょう。最後は……”健康”(笑)。

SITE:いまは一人暮らしなので出来ることからやろうと思って、毎日、もずくとめかぶと野菜ジュース2本。あとは『R-1』を飲むようにしていますね。コンビニで出来る最善の策(笑)。

藤井:僕も最近、腕を怪我して健康であることのありがたさを再認識しました。

SITE:あとはビールを飲むのを止めました。ビールと日本酒が好きで、痛風まっしぐらだったんですけど、コロナの影響もあって外で呑まなくなったので。今年に入ってから生ビールは3杯ぐらいしか飲んでないですね。食事に関しては特に何も気を使っていないですけど。

藤井:僕も同じで食事を摂生する気にはならないんですよね。睡眠時間を削って働いて、仕事に追われる生活の中で、メシまで我慢しようって気にはとてもならなくて。

SITE:テレビ業界の人には、美味しいものを食べていて欲しいですけどね。誘われて、一緒にお店に行ったときにアガる、みたいな(笑)。そういう業界であって欲しいっていう勝手な願望があります。

— それでは本日はこの辺で。みなさん、ぜひとも『少年イン・ザ・フッド』の第1巻を買って読みましょうってことで〆ですかね。

SITE:とりあえずは読んでみて欲しいですね。自分の漫画が漫画好きに刺さるかは分からないけれど、この漫画は僕自身の成長物語でもあって、クライマックスまでにはしっかりと仕上げて、名作にするつもりですので。乞うご期待ということで。

「Mastered」は、
2017年5月までEYESCREAM.JPだったサイトが生まれ変わった、
新しいファッション&カルチャーメディアです。