藤井健太郎のoff-air 第1回:渡辺淳之介(WACK 代表取締役)

by Keita Miki

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— 大人の汚い部分をちょっと垣間見ちゃいましたね。

渡辺:そうですね。別にヤンキーだったわけでもないですし。ただ、この前、先ほど話に出てきた後輩に久しぶりに会って言われて知ったんですけど、僕、あだ名が”歩くチンポ”だったらしくて。

藤井:(笑)。

— すみません、ちょっと説明をお願いします。

渡辺:高校生のときは脳みそが完全に精子で出来ていたので、誰彼構わずヤってたら、結構下の学年とかまで知れ渡ってたらしく。多分、そういうところも含めて、学校的には「こいつ切っとけば、みんなちょっとは真面目になるんじゃねぇか」みたいな感じだったんじゃないですかね。

— そのくらいの時期に影響を受けた人とかっていましたか?

渡辺:青山正明さんっていう編集者がいて、『危ない薬』って本を書いた人なんですけど、その人ですかね。その人がコカインとか大麻から何からすべて自分で試して、その実体験を書いてる本だったんですけど、中学校のときに読んで衝撃を受けました。

— 退学まっしぐらですね。

渡辺:その本、最初に「なんで俺がこんなこと書けるかっていうと、絶対捕まらないからだ。こんなの読んでる警察なんかいないんだよ」みたいなことが書いてあったんです。もちろん、後で捕まるんですけど。

藤井:(笑)。

渡辺:薬をやりすぎて、色々悩まれて自殺しちゃったんですけど、その本はすごく面白くて。こんな大人になれたらいいなって思ったんです。昔からThe Rolling StonesとかOasisとか、何でもいいんですけど、海外だと「ヤク中が今は立ち直った!」みたいな形で世に出せるじゃないですか。ヤク中だけじゃないですけど日本ってなかなか失敗とかに厳しいから海外の人たちがうらやましいな、みたいな感覚はすごいありました。昔よりも一層日本は生きづらくなってる気がしてます。

— 閉塞感みたいなものは強まってますよね。

渡辺:それこそ(週刊少年)ジャンプとかでもそうですけど、死体表現とかができなくなってるじゃないですか、今は。だから、昔そういうものをガンガンやってた人たちにはやっぱり影響を受けてました。『世紀末リーダー伝たけし!』みたいな。

— そういう規制の影響を感じる機会はテレビが業界が1番多いんじゃないですか?

藤井:そうですね。僕がテレビをやり始めた頃と比較しても、今は結構変わってますし。まぁ、僕は決められたルールの中で面白いものをいかに作っていくかしかあんまり考えてなくて。ルール自体を広げようとするタイプの人もいるかもしれないですけれど、僕はそんなにそういった意識は無いので。もちろん、やり難いなと思う部分はありますけどね。

渡辺:人の真似をしても成功できるか分からないし、目立つにはやらなきゃいけないときもありますよね。だから、インディーズの人たちはルールの中でどれだけ目立つことを出来るのかって事が大事なのかなとは思います。

藤井:人と同じことをやってたら目立たないなんて当たり前ですけど、実際は難しいですよね。過激なことをやれば良いっていう話じゃ絶対にないし。

渡辺:僕、だいたいスベってますからね。そういうこともやってみましたけど。

— 例えば、どんな?

渡辺:自分でスベったわけじゃないですけど、最近、ダイエット企画みたいなのをやってYouTubeに上げてたんですよ。で、本当にその子に痩せてほしいと思って、ライザップとかのお金を僕が出して、冗談半分で俺が「ブタ!」とか言ってたんですけど。それがフェミニスト系の方の目に止まってしまって。別に罵ってなかったハズなんですけど、”ブタと罵っているプロデューサー”って構図が見つけやすかったんでしょうね。で、ダダスベりしました。わざわざ金払って、プロモーションでもなんでもないことに茶々入れられてる自分は本当にクソだな、って思いました。

— 踏んだり蹴ったりですね。

藤井:それ、嫌ですよね。どんな企画にも粗は当然あるわけで、100人が100人面白いと思うものなんて絶対に面白くないですから。99%の人が面白いと思って、1%の不快に思う人が出るのはある種当然なのに、その人の声ばかりが強くなるのは、本当に良くない。「面倒臭いな。だったらやめよう」ってなっちゃうんですよね。そういう人が芽を摘んでいることって沢山あると思うんですよ。次にまた何かをやるときに「面倒臭いこと言われるんだったら大人しいものにしよう」っていうような気運はすごくある。自分でもなくはないし、みんな多分思うだろうな、って。

渡辺:そうですよね。ただ、僕のダイエット企画はダダスベりなんで。おもしろいこともやってないし、炎上するしで、本当にただスベっただけの企画です。

— 教訓だけ得た感じですね。

渡辺:そこからやっぱり、フェミニズムに関してはかなりセンシティブに考えるようになったので、良い機会だったなとは思ってはいるんですけどね。この間、週刊誌であった”ヤレる女子大”の話とかも結局はそういうことじゃないですか。

藤井:あれも難しいとこですけどね。「そんなことまで批判しなくても別に良くない?」とも思いますけど。

渡辺:僕、(藤井さんが『水曜日のダウンタウン』の中でやっていた)『モンスターハウス』っていう企画は本当にプログレだなと思ってて。だんだん話が展開していくうちに、みんなウズズしてきちゃって、ネットで観てる子たちが騒いで物議を醸しながら盛り上がってくるっていうのが。最後は雪だるま式に大きくなっていったのかな、って。

藤井:どうなんだろう(笑)。『モンスターハウス』は視聴率があまり良くなかったので、社内的には「アレどうすんだ」みたいにずっと言われてました。そこは現状マネタイズされてないから仕方ないんですけど。ビジネスとしての視聴率指標もどうなんだとは思いつつ、実際お金に変えるやり方も考えないといけなくて。とはいえ、周囲やネットから肌感覚として感じる熱とかとは全然比例してないんだなとは思いましたね。

— タブーや規制っていう点では、女性アイドルもシビアそうですよね。

渡辺:まだ大丈夫かなって思ってる感じですね。直接的にブタとか言わない限りは(笑)。まだ1個のコンテンツ、サブカルチャーっていうか。アングラカルチャーのようなものなんで。これがモーニング娘。だったら名前が売れちゃってるんでもっとセンシティブなのかなとは思ってはいるんですけど。僕らはまだそこまで至ってないので。それに、別に僕は何かをぶっ壊したいとかっていうより、昔のテレビぐらいの感じになってほしいなって思っていて。僕が4歳ぐらいのとき、『バカ殿』が大好きだったんです。なんで好きかって、ゴールデンタイムにおっぱいが出てくるから。親には「恥ずかしい」、「見ちゃダメ」とか言われながらも観るっていう。なんか、あれで情操教育された気がします。この前CDを出したんですけど、どうしても歌詞に”ちんこ”ってフレーズを入れたくて。今、”ちんこ”とか”うんこ”って言っちゃいけない社会になりつつある感じがするんですよね。でも、そのくらいは言わせてほしいっていうのが1個目標としてありますね。