Vol.99 Febb SPECIAL starring JJJ, Kazuhiko Fujita, Lil’ Mercy and Gradis Nice – 人気DJのMIX音源を毎月配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Keita Miki

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Doggies 『You Bark, We Bite』
『THE SEASON』リリース後に、Febb、KNZZ、J-SCHEMEによって結成されたストリートチームが、A-THUGをフィーチャーして2016年にリリースしたEP。療養明けのFebbのコンディションは万全とはいえないが、シカゴのドリルミュージックの影響が色濃いビートとラップを通じて、彼の進化をまざまざと見せつけた。

Febb As Young Mason 『BEATS & SUPPLY』
あたたかく洗練されたソウルフィールと冷たく太いビートを混在させたアプローチにFebbの個性とその時のモードが反映された2017年リリースのビートアルバム。すでに完成していた続編の『BEATS & SUPPLY 2』が、彼の死後、2018年5月にリリースされた。

Febb As Young Mason 『So Sophisticated』
ラップに重点を置いた前作『THE SEASON』に対して、ラップとビートメイクの両面を自ら担った2017年のセカンド・ソロ作。Nasの客演で名を馳せたAZをはじめ、V DonやNY Bangers、Luca VialliらUS勢とSCRATCH NICE & GRADIS NICE、KNZZ、B.D.、A-THUGら日本勢を迎え、現行シーンに呼応したヒップホップを提示してみせた。

PNC BOYS CLUB 『PARTNERS IN CRIME MIXED BY DJ SCRATCH NICE』
録音、ミックスは相当にラフだが、Jeru The Damaja”Ain’t The Devil Happy”をビートジャックした”YOUR DRUGZ”やAriana Grande”Be Alright”をサンプリングした”2 Hot”など、正規のアルバムフォーマットに収まりきらないアイデアを怒濤の勢いで具現化した2017年発表のミックステープ。ラッパーで仙人掌、Young Juju aka KEIJU、Mud、Lil’ Mercy、ビートメイカーでDJ Scratch Nice、JAZADOCUMENTが参加している。

— そして、2016年12月にリリースされたDoggiesのEP『You Bark, We Bite』を皮切りに、2017年2月リリースのビートアルバム『BEATS & SUPPLY』(続編『BEATS & SUPPLY 2』は2018年5月リリース)、同年3月リリースのセカンドアルバム『So Sophisticated』、PNC BOYS CLUB名義のミックステープ『PARTNERS IN CRIME』とリリースが立て続きます。

Fujita:『PARTNERS IN CRIME』は俺がジャケットを担当したんですけど、あの頃、リリースを控えた作品が何個もあって、「明日までにジャケやってもらっていいですか?」っていう話をしながら、「その次のコラボのミックステープのタイトルは~で、ジャケはこれなんだよね」って、画像を見せられて、制作意欲の鬼だなって思いましたね。

JJJ:いきなり家に来て、4時間のうちに5曲録って帰っていったこともありましたね。『THE SEASON』以降のFebbは、NYヒップホップからシカゴのヒップホップにハマって、G Herboの名前が頻繁に出るようになったり、Chief KeefとかYoung Chopを聴いたり、ブーンバップからチキチキした音に傾倒するようになったんですよね。

— Doggies『You Bark, We Bite』からセカンド作の『So Sophisticated』と、ラッパーとしてのブランクを埋めようと試行錯誤を続けつつ、足りない部分も含めて、その時に出来ることを最大限聴かせようと腹をくくっているところがぐっと来るというか。

JJJ:そうですね。俺も『So Sophisticated』を最初聴いた時、リズム感とか声の出し方とか、表現力がなくなってしまったと思ったんですけど、その代わり、今までなかった部分が出てきたというか、Febbの人間らしい生々しさが感じられて、今は好きなアルバムですね。AZが参加した“ANGEL”はNASと同じネタだったから、最初はマネージャーに断られたらしいんですよ。でも、AZ本人がFebbのラップを気に入ったのか、結局はやってくれたんですよね。

Fujita:AZは最近のミックステープもチェックしていたし、OGから若手まで全部聴いてましたからね。

JJJ:あと、『So Sophisticated』はリリックの整合性も『THE SEASON』までの時期と比べるとしっかりしていて、普通に喋っているような感じがいいんですよね。

— スタジオでリリックを書いていて、ものすごい時間をかけていた『THE SEASON』に対して、この頃はあらかじめ書いておいたリリックをスタジオで一気に録るようになったと本人は言ってました。

Fujita:そう。携帯に思い付いたフレーズを打ち込んでいたんですよ。

JJJ:『So Sophisticated』の後に『PARTNERS IN CRIME』を矢継ぎ早に出してましたし、リリックを書くスピードは確実に上がってましたよね。

Fujita:この頃は一緒にいても常に携帯で誰かと仕事の話をしてるか、何かを書いたり、見たりしてて、「なんで一緒にいるの?」って感じだったんですよ。かといって、放っておいて、好きなようにやらせたら、とんでもない方向に行こうとするから、やらせてあげたい気持ちもありつつ、今は休んだ方がいいんだよってことを分からせるのにめちゃめちゃな労力と心を削られる毎日で、そんななか、『So Sophisticated』はようやく出せた1枚なんですよ。だから、個人的には完成した時は、「ああ、よかった」って思いましたね。

JJJ:かと思えば、アルバムの最後に入ってる”CONQ CITY PT.2”なんか、”CONQ CITY”っていう佐々木の曲(『Horseman’s Scheme』収録)の続編を勝手に作ったものだし、以前出した”Story pt.2”(Fla$hBackSのEP『FLY FALL』収録)も佐々木の”Story”っていう曲を意識して、勝手に作ったりしてて、Febbらしい笑えるところもあるっていう。

— Febbは文句を言ってた時期もあるけど、常に幼なじみの佐々木くんを意識していたし、大好きなんですよね。

JJJ:そうなんですよ。だって、「次の次のアルバムタイトルは『Breezy Conquering』だから」って言ってて、それ、意味が分からないでしょって(笑)。恐らく、佐々木の”Easy Breezy”とアルバム『Conq.u.er』から来てるんだと思うんですけど、無意識的に佐々木に引っ張られてるんですよ。そういう調子で5枚目とか6枚目のアルバムのことを考えたりしてて。

Fujita:もともと計画性を大事にするやつなんですけど、この時期は気持ちと体が一致してなかったんですよね。