Vol.99 Febb SPECIAL starring JJJ, Kazuhiko Fujita, Lil’ Mercy and Gradis Nice – 人気DJのMIX音源を毎月配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Keita Miki

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Lil’ Mercyへのメールインタビュー

— 初めて、Febbに会った時のことを教えてください。

Lil’ Mercy:最初に会ったのはBEDだと思います。その時はあまり話してないですね。MASS-HOLEが松本にFebbとCIAZOOを一緒に呼んでくれてみんなでご飯食べた時、隣の席がFebbで「あん肝食べたことある?」「ないです! 美味い!!」っていう流れで仲良くなりました。朝にはもうすごく仲良くなって、すぐに家に遊びに来るようになってた気がします。ふてぶてしかったけど、FATだったのもあってかわいいけど鋭い面白いやつって印象ですね。

— Febbのソロアルバムを制作することになったいきさつは?

Lil’ Mercy:自分からオファーしました。話すようになってから割とすぐだったと思います。最初はトラックメーカー名義のアルバム作ろうと話してたんですよ。A-THUG、TOP、ISSAC、TOSHI MAMUSHIとか誘いたいって、うちで色々聴きながら会議してました。CRACKS BROTHERSがあったり、TONOSAPIENSのスタジオに通う時代を経て、ラッパーとしてのアルバムを出したいってFebbから言われて、自分もその方が面白いもの作れると思ったんで、そこからラップアルバムを作る方向にシフトチェンジしました。その初期に一緒に出そうって言ってきたスネークなレーベルがあって(笑)、Febbと一緒に話しに行った時にFebbが「俺はそこから出すべきじゃないんですよ」って言い切ってたのが最高すぎてアルバムリリースの話は進んでいきました。その位の時期に制作していた音源も収録されたのが今度出る『THE SEASON DELUXE』です。

— 『The Season』は、JJJ、KID FRESINOの関与が最小限で、色んなラッパーとの繋がりがあるなかで客演はKNZZのみ。非常にタイトなアルバムですが、内容に関して、どんなイメージがあったんでしょうか?

Lil’ Mercy:俺から「2018年のオーセンティックなHIP HOPを作ろう」ってFebbに一方的にしてたメールがまだMESSENGERに残ってました(笑)。とにかく圧倒的なクオリティーのHIP HOPのスタンダードを作ろうと2人で話してました。KNZZだけが客演なのは、その時にFebbがやりたくてまだやってなかったのがKNZZというのと、単純にFebbがラップを尊敬していたからだと思います。ちなみにKNZZとの『THE SEASON』未収録の未完成曲も存在してます。KNZZとの”WALK ON FIRE”はFebbがプロデューサー的な立ち位置という特殊な曲ですよね。制作していく中でFebb自身のトラックやJJJ、KID FRESINO、QRON-Pといった仲間が持ってきたパーツをもって完成するという確信は自分の中ではあって、制作の後半でその通りになったのは感動しました。

— 『The Season』のラップは、それ以降の作品での噛み砕かれた表現と比較すると、飛躍が大きいのか、あるいは何重にもひねりが加わっているのか、断片的かつ研ぎ澄まされたフレーズをノリでそのまま吐き出しています。あの作品でFebbが志したラップとはどんなものだったのでしょうか?

Lil’ Mercy:この辺りは当時のAMEBREAKのインタビューでもラッパーとMCという事へのこだわりを話しているので本人の言葉を読んでいただきたいです。これはいつも話してたことをすごく明確に言っていて素晴らしい記事です。当時よくFebbとラップに関して話し合っていたんですが、16小節を1小節が16こ集まったものというイメージでFebbはラップを書いていると話していたのがすごく印象的です。当時、Febbは「みんなの代表として橋の向こうで闘って行くべき」という話をよくしてました。当時の彼の見ている世界が詰め込まれてると思います。

— ビートメイカーとしてのFebbはアルバムのバランスや繋ぎの役割に徹して、基本線となるビートは外部プロデューサーに委ねた作品でした。その意図とビート(メイカー)のセレクトに関して、どんな内容を目指したんでしょうか?

Lil’ Mercy:クラシックでオーセンティックなアルバムですね。

— 作品制作は非常に難航し、リリースは延期に延期を重ねました。制作はどの部分に時間がかかりました/かけましたか? また、レコーディング中の一番印象に残っているエピソードを教えてください。

Lil’ Mercy:トラック選び、レコーディング、ミキシング、アートワーク全てに時間がかかりましたね。週の3分の1とか半分一緒にいることもざらにあったし、その時、BISONかHIGHSCHOOLかVINも一緒にいてくれて楽しかったですね。Febbが「こんなに好きなことで悩んだことない」って言ってたのもすごく覚えてます。”DEADLY PRIMO”なんですけど、KEN SPORTのトラックとしてDJ SCARFACEに聴かせてもらってFebbがやりたいってなったトラックなんですよね。実際は、KEN SPORTにゆかりはあるけど、違うもので……。KEN SPORTに会いに行った時に、”DEADLY PRIMO”のFebbがラップした音源聴いてもらったら、反応良くて、お互いの話が変に噛み合った状態で、日本戻って送られてきたトラックが全然違ったっていうのがありましたね。その曲がインスト盤に収録の”WHATS GOOD”です。

— 『The Season』はアルバムの内容とChance Lordに依頼したアートワークとのマッチングがいい意味での異質さを生み出している作品でもありますが、Chance Lordに依頼した経緯は?

Lil’ Mercy:「CURREN$Yの『PILOT TALK』みたいなジャケットにしたい」っていうFebbの希望を聞いて、CHANCE LORDの絵が真っ先に浮かびました。その少し前にCHANCEが日本に来てて、THE SEXORCISTがBEDでやってるときにそこで遊んだんですよね。裏ジャケが東京のCRAZEさんで、ニューヨークと東京のDOWNTOWN OGがアートワークを手掛けるヤングガンっていう最高のイメージです。CHANCEの作品はもっともっと評価されると思うし、アートワークも含めて価値の上がっていくものをその時の現在地で作りたかったです。一応、これはWARの『THE WORLD IS A GHETTO』をイメージして描いてもらってるんですけど、言われたら分かる感じですよね。

— かなりの紆余曲折を経て、2014年にリリースされた『The Season』はその後のMARCYくんにとってどんな意味を持つアルバムですか?

Lil’ Mercy:世界の最高峰の1つ。挑戦。

— そして、『The Season』リリースから5年半。その後の軌跡について思うこと、そして、Febb亡き後に完成した新作『Supreme Season 1.5』を聴いた感想を教えてください。

Lil’ Mercy:最高の一言に尽きます。

— 最後に。MERCYくんにとって、Febbという才能とは?

Lil’ Mercy:ONLY ONE。YOUNG OGですね。