Vol.100 江村幸紀(EM Records) – 人気DJのMIX音源を毎月配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Keita Miki

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Juu & G. Jee 『ニュー・ルークトゥン』
タイのヒップホップシーンにおけるマスターポエットとしてリスペクトされるラッパーのJuuとその弟子のG.Jee、Young- G(Stillichimiya)や鎮座DOPENESSをはじめとする日本勢が2年の歳月をかけて共同制作したEM Records初のヒップホップアルバム。水牛に乗ったドレイクともオートチューンを手に入れたキャプテン・ビーフハートとも形容されるアジア・ローカルな楽曲の数々は均質化しつつある音楽シーンに一石を投じている。

— いよいよ、今回のインタビューの核心部分に辿り着きましたね。

江村:Juu & G.Jeeのアルバム『ニュー・ルークトゥン』に関して言うと、アジアのヒップホップシーンにおいて、全くのゼロから国境を跨いだコラボレーションによって作られたアルバムって、かつてあったのかなって思うんですよ。

— 国境を越えたトラック提供やフィーチャリングは増えつつありますけどね。

江村:Keith Ape“It G Ma”にKOHHとLootaが参加したのもフィーチャリングですし、88risingのコンピレーション『Head In The Clouds』も企画色が強いですよね。それ以前に昔から芸能界の人たちがアジア公演を積極的にやっていたり。日本とアジア近隣の国とのコラボレーションは結局いくら儲けたかってことです。ビジネスの関係がほとんどだと思うんですけど、それって、ホントのコラボレーションなのかなあ。『ニュー・ルークトゥン』はJuuとYoung-Gの間で音を抜き差ししながら作ったトラックにJuu & G.Jeeがラップを重ねて、さらに鎮座DOPENESSとstillichimiyaが加わって、完成までに2年。長い対話を通して、お互いの価値観、考えていることを共有しながら作り上げたアルバムで、2020年代に向けて、こういうのもあるんだぜってあり方を提示できたんじゃないかな。SNSに逆行してますね(笑)。