Vol.100 江村幸紀(EM Records) – 人気DJのMIX音源を毎月配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Keita Miki

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— 局所的なブームが起こっても一瞬でグローバル化に飲み込まれ、コピーされて、瞬く間に消費されてしまいますからね。

江村:それよりも何が起こるか分からない新録の方が楽しいんですよね。今、世界の音楽は相対的には均質化しがちな傾向にあると思うんですけど、それとどう向き合うかという面白みもあります。最終的に、音楽というのは個人の力によって生まれるものなので、そのお手伝いをしたい、と。レーベルとしてはそういう方向性に舵を切ったのかもしれない。他人ごとのようですね(笑)。

— 現在のEM Recordsは、グローバリズムに抗って、唯一無二の個が際立った新作を次々にリリースしていますし、タイ音楽や日本の民謡であるとか、日本を含めたアジア圏のローカル色を意識的に打ち出していますよね。

江村:これも時代の波なのかなと思っているんですけど、そこでやるべきことは何だろう? と常に考えていて、それが自分の中に複数ある複雑怪奇なフィルターを通して行動に表れるんでしょうかね。

— そんななか、タイ音楽のエキスパートであるDJデュオのSoi48や日本の民謡をディープに探求するDJデュオの俚謡山脈との出会いもあり、その流れからEM Records最新作にしてレーベル初のヒップホップ作品であるタイのアーティスト、Juu & G.Jeeのアルバム『ニュー・ルークトゥン』に繋がっていった、と。

江村:タイ音楽を広めようと、Soi48の2人と全国各地でトークとDJイベントをやっていて、東京の初回に(映画作家集団)空族の監督、富田克也さんと相澤虎之助さんが客として観に来ていた。その時、すでに彼らは映画『バンコクナイツ』に着手していたんですけど、音楽をどうしようか考えていた時に僕らがトークイベントで紹介していたタイ音楽に衝撃を受けて、すぐにコンタクトを取ってきたんですよ。それで僕らも映画に関わるようになり、Soi48が選曲、stillichimiyaのYoung-GとかDJ KENSEIさんも楽曲を提供してくれたサウンドトラックは、毎日映画コンクールの音楽賞を頂いた。あの映画で空族が描こうとしていたストーリーの一部と、その後、映画をきっかけにタイに自分の音楽の行く先を見つけたYoung-GとJuuさんとの出会い、つまり、フィクションと現実が互いを呼び込んで一体となったのが、アルバム『ニュー・ルークトゥン』なんですよ。