Vol.134 Campanella – MasteredがレコメンドするDJ、アーティストのMIX音源を独占配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Keita Miki

MasteredがレコメンドするDJ、アーティストのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する『Mastered Mix Archives』。今回ご紹介するのは、6月26日に最新EP『MI Yama』のヴァイナルをリリースしたばかりのCampanella。
シーン屈指のラップスキルと先進的な音楽性に磨きをかけた2020年のサードアルバム『AMULUE』から4年。年間80~100本のペースでライブを行いながら、JJJの名作アルバム『MAKTUB』をはじめ、STUTSやKM、鎮座DOPENESS、KID FRESINO、C.O.S.A.ら、第一線で活躍するラッパー、プロデューサーたちと精力的にコラボレーションを繰り広げてきた彼は、世代を越えたプロップスを高めてきた。そして、活動の勢いはそのままに、2023年末に配信リリースされたEP『Mi Yama』は盟友のRamza、JJJ、shobbieconzに加え、この4年で親交を深めてきたDaichi Yamamoto、ACE COOL、MFS、DJ MAYAKUを新たに交えながら、自身はアンストッパブルなラップマシーンに徹した爽快にして痛快な作品となっている。
今回のMastered Mix Archivesは、最新EP『Mi Yama』のヴァイナル・リリースを記念してCampanellaにインタビューを敢行すると共に、長年、彼のバックDJを務めると共にプロデューサーとしても個性が際立ったビートを提供しているshobbieconzにDJミックスの制作を依頼。自身が手掛けたCampanella ”I DONT KNOW feat. MFS”のエクスクルーシブ・リミックスをオープナーに、多種多彩なビートが紡がれるスリリングなプレイには、Campanellaとshobbieconzが現場で培ってきた経験の豊かさが濃密に投影されている。

Photo:Takuya Murata | Interview & Text : Yu Onoda | Edit:Keita Miki

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)

「現場で自分のラップに湧いてくれているのを見て、もっと違う表情やラップの強度が高い作品を作りたくなったんです」

— 前作アルバム『AMULUE』から4年。当時はまだ存在していなかった大型ヒップホップフェス・POP YOURSに今年は出演されていましたが、先日のパフォーマンスの手応えはいかがでしたか?

Campanella:リラックスして、めっちゃラップしました。あの規模のステージになると、イヤモニを付けるので、客席の反応が伝わりづらいなか、自分との戦いになるんですけど、そんななか、気持ち良くライブをやらせてもらいましたね。

— 大きな会場でのライブは、現場経験の差が如実に表れるじゃないですか。イヤモニを付けたステージは小箱のモニター環境下でライブするのと全くの別モノだと思うんですが、Campyくんの場合、年間80~100本のペースで、小箱から大会場まで、あらゆる環境下で培ってきたライブ経験がパフォーマンスの絶対的な安定感に繋がっているな、と。

Campanella:そうですね。POP YOURSだけでなく、STUTSの武道館だったり、フレシノのフジロック、JのEX THEATERだったり、フィーチャリングでも大きな規模のステージを経験しているので、何の不安もなかったです。

— それに加えて、昨今のライブでは若いヘッズが増えているとうかがっていますし、今年のPOP YOURSでは出演時にXでトレンド入りしていたり、Campyくんを取り巻く状況も変わりつつあるような印象を受けます。

Campanella:(2016年のセカンドアルバム)『PEASTA』の頃までは、本当に近しい人としか曲を作っていなかったんですけど、(2020年のサードアルバム)『AMULUE』では表現の幅が広がって。さらにここ3、4年は色んな人と音楽を作りたくて、意識的に自分が好きなラッパーと話したり、動いたりしていたので、そういうことも少なからず関係しているのかもしれませんね。

— Campyくんが好きなラッパー、注目しているラッパーというのは?

Campanella:今回のEPにフィーチャーしたACE COOLやMFSとか。ACE COOLは、もともとファンだったんですけど、RASENで一緒になって、彼も俺も地方出身だし、苗字が同じ山本ということあって、そこからさらに親近感が湧いて。もう一人の山本であるDaichiを誘って、3人でかまし合う”YAMAMOTO”という曲を作ったんですけど、ACE COOLはどこに属しているのか、その背景も見えないし、Daichiにも同じことが言えると思うんですけど、彼らのようなラッパーはいないじゃないですか。そして、作品を聴いた俺の勝手な印象として、シーンに対して何か思ってそうだなって。作品やライブ、ラップスタイルから怒りを感じられることが自分にとっては一番デカいかもしれない。

— ”I DONT KNOW”にフィーチャーしたMFSは?

Campanella:RINちゃん(MFS)は自分が昔から知ってたクルー、Tha Jointzに入ってきて、その時から華があったし、今と変わらない格好良さがあって。その後、自然とパーティーで一緒になって、飲んだり喋っているうちに仲良くなりました。クラブに行っても、VIPルームで酒を飲みながら談笑しているのとフロアで遊んでいるのは全然違うじゃないですか。俺はフロアでボーッとDJ聴くのが好きなんですけど、RINちゃんも楽しそうに踊ってて、「この子は音楽が好きなんだな」って、その光景がすごく印象的だったというか、そこはすごく大事だと思うんですよね。

— 普段遊んでいる延長で、自分の好きなダンスミュージックでラップするのと、流行ってるからダンスミュージックを取り入れてラップするのは訳が違いますからね。

Campanella:そう。自分は前者、好きでやっているんだなと感じられる人がいいですね。

— そして、新しい出会いと共に、この4年間で鎮座DOPENESS、JJJとの仲が深まったことはCampyくんにとって影響は大きかった?

Campanella:鎮さんとはSTUTSの”Sticky Step”で初めて一緒に曲を作って、そこから一緒に遊ぶようになったんですけど、友達であると同時に、師匠みたいな存在でもあって。2人ともラップのファン、日本のラッパーのファンなんですよね。だから、会いたいラッパーと実際に会ったりするとお互いテンションが上がるし、2人のなかで、会いたいラッパーとはいつか会えると確信しているというか。そういう心持ちや考え方は遊んでいるうちに鎮さんから教わったというか、自然と身についた感じなんですよ。だから、自分にとっては大きな存在ですね。

— 作品の制作期間が被っていたJJJとは、KMの”Filter”に揃ってフィーチャーされたり、近年、ぐっと距離が縮まった印象を受けるというか、彼と初めて出会ったであろうFla$hBackS時代はここまで密な間柄ではなかったような……。

Campanella:それこそFla$hBackSの頃は、佐々木とよく遊んでいたし、Febbの方がよく喋っていたし、Jとの付き合いが一番希薄だった気がします。その後、何がきっかけだったのか、よく遊ぶようになって。一昨年くらいのJのライブはほぼほぼ参加してるし、そのついでだったり、遊ぶためだけに名古屋から彼の家によく泊まりに行ったりしていたんですけど、色んなことがあるなかで、彼のなかで色んな思いが爆発している感じがよく分かったし、長い時間を共有するなかで、こういうことが言いたいんだろうなとか、何を必要としているのかもよく分かったので、一緒に曲が作りやすかったですね。『MAKTUB』の曲では”Friendskill”が恐らく一番古くて、C.O.S.A.の”Sinner”、homarelankaの”III MY SLF”と同じ週に録ったから2021年になるのかな。もう1曲の”Something”も俺が勝手にヴァースとフックを書いたんですけど、Jはそれを自然な感じで受け取ってくれました。

— そうしたコラボレーションを行いながら、2021年には”Puedo feat. KID FRESINO”、2022年には”RAGA feat. 鎮座DOPENESS”と、単発でシングルを切った流れはどういった意図があったんですか?

Campanella:その2曲に関しては、シンプルな話、格好いいビートで誰も勝てないでしょっていうラップをかましたかっただけ。自分は今年で37歳になるんですけど、20歳のラッパーに勝ちたいといまだに思っているという(笑)。昨今、スキルを持った若いラッパーはいっぱいいると思うんですけど、ライブを観に行くと、上手いとされている子でも歌えていないんですよ。レコーディングではボーカルのピッチを補正したり、グリッドを調整してタイミングを合わせたり、いくらでも加工できるじゃないですか。そうやって作った作品とライブを切り離して考えて活動するのもありだとは思うんですけど、自分の場合はライブでもきっちり見せたいんですよね。実際、STUTSやJ、FRESINOの現場に客演で入っていった時、自分のラップのパートで湧いてくれているのを見ると「自分の作品でもっと違う表情も見せられる気がする」と思うこともありました。だからこそ、ラップの強度が高い曲を作りたかったんです。

— その延長で、先日ヴァイナルでもリリースされた昨年末の最新EP『Mi Yama』では自分のラップを見せつけるような作品を作りたかったと。フルアルバムのリリースは考えていなかった?

Campanella:アルバムを出そうと思って制作していたんですよ。その内容に関しても、冒頭で話したように、好きなラッパーとコミュニケーションを取りながら、フィーチャリング曲を今まで以上に盛り込んだ作品にしようと考えていたんですけど、作業を進めていくうちに気分が変わってしまったというか(笑)、色んな人の声が入った時、「これ、アルバムにまとまるのかな」と思ってしまったんです。その時点ですでにライブでやっていた曲もあったし、試しに出来上がった曲を並べてみたら、図らずしていいバランスの作品になったので、急遽そのまま出してしまおうと。そう決めてから、色んな人に動いてもらって、マスタリングにアートワーク、MVの制作と、まとめ作業を1か月というあり得ない短期間に凝縮して、勢いで配信リリースした次第です。

— その勢い、ラッパーとしてガツンとかましてやろうという意識が1曲目の”Mi Yama”には感じられますよね。この曲はインストか?と思うほどに、なかなかラップが始まらず、始まったと思ったら、クレジットされていないJJJのラップが口火を切るという。

Campanella:そう。ラッパーらしく、かましてやろうと思ったし、音源を再生してから長いイントロを待って、ヴァースが入ってきたと思ったら、それがJJJだったらラップファンはうれしいじゃないですか。だから、長いイントロは頑なにカットしようとは思わなかったし、俺自身、Jのラップを聴きたかったから、曲の意図を伝えて、最高のヴァースで応えてもらいました。

— そして、ビートメイカーはCampyくんと長らく音楽キャリアを共にしてきたRamza。

Campanella:Ramzaは新しいビートもあるんですけど、骨組みだけの状態のものを含めると作り貯めた曲が何百曲もあって、作った本人すら忘れているファイルやフォルダを開きながら、2人で何時間もかけて聴いて。それをブラッシュアップしてもらうという、いつもながらのやり方で提供してもらったんですけど、フィーチャリングを増やしたいと思ったのは、自分の好きなラッパーがRamzaのビートでどうラップするのかを聴いてみたいということも動機としては大きかったですね。

— ラッパーとビートメイカーの夢のコラボレーションが自分の作品を叶うのは最高の経験ですね。そして、3曲目の”I DONT KNOW”のビートを手掛けたDJ MAYAKUとはRASENでのコラボレーションがきっかけ?

Campanella:そうですね。RASENのビートがすごい好きだったし、Otagiriさんだったり関連作を聴いても惹かれるものがあって、Ramzaのトラックとは全然違うんだけど、感覚的にどこか共通するものを感じて、自分のラップに合うなって。

— RamzaもDJ MAYAKUもトレンドや特定のフォーマットにとらわれない、いい意味での歪さが他にはない個性になっていますもんね。

Campanella:それこそ昔、佐々木からめっちゃ言われていたんですよ。「MAYAKUさんいいじゃん」って。それがここ数年で波長が合ってきた感じ。RASENで作った曲も自分のライブでやっていますし、”I DONT KNOW”も気に入ってますね。

— そして、5曲目”Halo”のプロデュースは、CampyくんのバックDJを長年務め、EGO-WRAPPIN’の”かつて…。”をサンプリングした2000年の”Palo Santo”のビートも手掛けたshobbieconz。

Campanella:ショッさん(shobbieconz)は俺にとってDJのなかのDJです。キャリアもあってプレイも上手いし、醸し出す空気感がDJだなって。DJにも色々いて、前に出ていくDJもいますけど、そういうスタイルとはまた別で、一歩引いたところで存在感を発揮する、そういう振る舞いが素晴らしいというか、尊敬していますね。ビートメイクもいい意味でガツガツしてないというか、自分のタイミングで制作していて、作ったらすぐに誰かに渡すという感じではないし、タイミングが合った時に聴かせてくれるんですよ。このビートもそんな感じで、「そういえば、最近1週間くらいやってたんだよね」って、送ってきてくれましたね。

— 彼はDJとしてオーセンティックなソウル、ヒップホップからテクノ、ベースミュージックまでかける音楽が幅広いし、かけるタイミングとかかけ方も絶妙ですよね。今回ご提供いただいたミックス音源からもDJとしての研ぎ澄まされたセンスが感じられると共に、冒頭に収録された”I DONT KNOW feat. MFS”のエクスクルーシブリミックスも彼が手掛けたものなんですよね?

Campanella:リミックスはショッさんが手掛けたものです。ビートも非常に良いですよね。今回のミックスは彼らしいというか妙な落ち着きを感じていて(笑)。それがいつもの安心感に繋がるんですよね。わかってらっしゃるというか。楽しんで聴いてくれれば嬉しいです。

— ご自身のラップのアプローチ、その変化や進化についてはいかがですか?

Campanella:いいビートがあったら自然と曲を作りたくなるというか、逆にリリックを書きたいなと思って書くことはないんですよ。だから、そこにメッセージがないわけではないんだけど、これだ!ということを歌った曲はここ数年ないかもしれない。ここまで沢山ラップをしてくるとリリックを書いたりはするんですけど、フリースタイルに近いマインドになってくるというか、ビートにハマる言葉を選んでラップしてみて、それをメモに書き留めつつ、その断片を曲にまとめ上げているので、聴く人にも好きなように楽しんでもらえたらいいなって。今まで引っかかってなかったヴァースの頭がふとした瞬間に引っかかったりして、「ああ、これはこういう曲なんだ!」と勝手に思っちゃうとか、そういう接し方がいいですね。自分もそうだし、勝手に想像して楽しめるのが音楽のいいところだと思うので。強いて言うなら、ひりひりした感覚、それと表裏一体のユーモアは自分が好きなテイストだったりはして、結果的に自分のラップは日々遊んでいる感覚そのままが表れているのかなって。

— どうしても、ラップは己の生き様を歌うものということになりがちですけど、ヒップホップは一瞬の光景を描写する格好良さだったり、表現の巧みさも含めて、日常にいい感じのリズムやテンポをもたらしてくれる音楽としての魅力も成熟しつつあるというか、その点に着目すれば、歳を取っても、いつまででもラップできそうだなって。

Campanella:ラップを始めた当初、自分が37になるまでラップしているとは全く想像していなかったんですけど、今は自分がフレッシュであり続けられるのなら、ずっとやりたいなと思いますね。年を取ると、今の若い子が何考えてるか、何しゃべっていいか分からん、みたいな意見もよくあるじゃないですか。俺は自分より年上の40、50代の先輩と遊んだりもするし、自分と同じ世代だったり、20代の子たちとも酒を飲んだりしているんですけど、そうやって遊んでいて思うのが、それぞれ全然違う話題が出るし、そこで感じるものも大きく違ったりもするんですけど、どこかに共通して楽しいこともあったりして。それが合えば、世代に関係なく仲良くなるし、自分が書いているリリックはそういうものを映し出しているのかもしれないですね。ここ最近のライブは若いヘッズが沢山見に来てくれて、そのなかには中学生の頃から聴いてくれてた子もいるし、そうかと思えば、自分の10個上の先輩に呼ばれてライブをやったりもするし、東京に行ったり、地元のステージに立ったり、日々楽しいので、色んな現場に出たくなるし、そんなことをやってるとすごい本数のライブで自分のスケジュールがめちゃくちゃになってしまうという(笑)。

Campanella 『Mi Yama』

品番:DDJB-91244
レーベル:MADE DAY MAIDER / AWDR/LR2
フォーマット:12inch EP(歌詞カード付)
価格:3,300円(税込)

■収録曲
SIDE A
01.Mi Yama
02.DUDE
03.I DONT KNOW feat. MFS

SIDE B
01.YAMAMOTO feat. Daichi Yamamoto, ACE COOL
02.Halo
03.Shoo

■取扱店
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XX – Campanella / ISSUGI TWO MAN LIVE

開催日時:2024年8月2日(金) OPEN 19時 / START 20時
開催場所:渋谷 WWW
料金:3,800円(前売り)
https://www-shibuya.jp/schedule/018039.php