Interview & Text : Yu Onoda | Photo:Tomoya Miura | Edit:Nobuyuki Shigetake
※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)
— ATOSONEは、RC Slum Recordindsのレーベルオーナーであり、レーベルのアートワーク、映像、ウェブデザインも手掛ければ、ラップやDJもやるし、思い立って小説を書いたりもする。さらにアパレルショップの運営を経て、昨年にはご自身がデザインを手掛けるブランドCOMMA VIOLETAも立ち上げたりと、ありとあらゆることにずば抜けたセンスを発揮していて、この人は一体何者なんだろうと。
ATOSONE:RC Slum Recordindsとブランド・COMMA VIOLETAのオーナーですね。
— 個人的に、どんな凶悪な音楽の話をするのかと思ったら、初めて会った時も話題に上がったのは、岡村靖幸とかORGINAL LOVE、Corneliusだったりとか、DJでも色んな音楽をかけますよね。ご自身のなかで、RC Slum Recordindsはヒップホップ・レーベルという認識なんですかね?
ATOSONE:そうですね。株式会社HIPHOPです。UG NOODLEもHIPHOPです。
— Campanella、C.O.S.A.、Ramzaを始め、RC Slumとその周辺のアーティストは、エッジーな音楽性もさることながら、音楽から醸し出される独特なムードが大きな特徴だと思うんですけど、ATOSONEが生み出してきたムードは彼らに確実に受け継がれている気がします。
ATOSONE:悪臭とか変な音楽が流れてるとか、まず、ムードの悪いところにはいたくないです。全てに一貫して流れているのはそういう気分です。
— ATOSONEが、名古屋・栄に最初に出したショップ・STRANGE MOTEL SOCIAL CLUB、その後、名古屋・某所にオープンした会員制ショップ・Boutique Strange Motel共に、店名に”STRANGE”と付けられていましたよね。
ATOSONE:BLACK GANIONのUKNOWくんが「ソウタ(ATOSONE)には”STRANGE”が合うと思う」って、考えてくれました。
— ショップを始める前っていうのは?
ATOSONE:世間知らずでした。有限会社SQに入って常識と偏見を植えつけられました。
— 当時、自分のなかで音楽とファッションはどう繋がってました?
ATOSONE:暴力装置の窃盗服でした。
— はははは。『NOSE DIRT』時代はとにかく無茶苦茶だった、と。でも、そうはいっても服は好きだったわけですよね?
ATOSONE:服はずっと好きでした。シミラーが増えすぎて、俺の影武者が何人もいました。直属の上司すら俺の影分身に騙されてたね。「そっちは残像だ!」って感じ。
— はははは。
ATOSONE:そして、洋服屋を通して沢山の人と仲良くなりました。一度、BLACKGANIONのアキラ君と大喧嘩をした翌日、バールとビールを持ってきて「どっちがええんじゃ?」って広島弁で言われて、「ビールください!」って言ったら仲直りできました! アキラくんには若い頃たくさんの音楽を教えてもらったけど、今でも聴いているのはMr.BungleとかMelvinsとか。
— ハードコアだけでなく、ストーナーとかエクスペリメンタルと呼ばれるようなロックとも出会ったと。
ATOSONE:うん、様々な音楽との別れのない出会いをしました。死ぬほどノイジーなバンドをやりながら、ラヴァースやチカーノスウィートソウルをかけるDJに音楽は自由だと教えられた気がします。
— ヒップホップ、ハードコアの人がヒップホップ、ハードコアを聴くのは当たり前だと思うんですけど、そうじゃない”STRANGE”なものを貪欲に指向している人がATOSONEの周りにいた、と。
ATOSONE:奇妙キテレツな人がたくさんいました。その人たちと遊んでいる事が糧となって今の生活が成り立っています。
— 自分のショップを始めるのとRC Slum Recordingsを始めるのはどちらが先だったんですか?
ATOSONE:24歳で独立して店を始めて、その半年後に(ヒップホップグループ)TYRANTを始めて、RC Slumを立ち上げました。レーベルを立ち上げるうえでは(WDsoundsの)MERCYとの出会いもデカかったし、それから(下高井戸のレコードショップ、TRASMUNDOの)浜崎さん、CE$も手助けしてくれました。今年の冬にMIKUMARI君のアルバムを雪山に行って作ろうと思っています。
— レーベルを立ち上げる際のビジョンはありました?
ATOSONE:ありました。ゲームのテーマソングを作ってカプコンに買い取ってもらおうと思っていました。HIRAGENが言ってた”計画買い取らせるカプコン”です。『WE ARE TYRANT』もそのつもりでした。
— これまで発表してきた作品は、ヒップホップのメインストリームに向けたものではなく、”STRANGE”なものですよね。
ATOSONE:主流ではないですね。あくまでカウンターでいたいし、常に不意打ちを食らわせたいんですよ。ファッションもそう。大体3歩早い。今は雑誌のFRUiTSとかに載ってた女の子のファッションが好きです。
— ファッションもまたカウンターなんですね。
ATOSONE:そう。不意打ち不意打ち。
— 2020年夏にご自身のブランド・COMMA VIOLETAを立ち上げたのも不意打ちでした。
ATOSONE:ブランド名も子供の名前が由来だったりするし、単純に、子供が生まれて、家にいたかった。
— 描かれている犬のキャラクターは子供が見ても喜びそうなものだったりしますしね。
ATOSONE:日常的におもちゃを見ているせいか、色使いが派手になった。
— しかし、昨年夏の第1回展示会が『DRUGS, LOVE & HATE』、冬の第2回展示会が『GEORGE CONDOM』。どちらもキッズ・フレンドリーとは言い難いテーマですよね。
ATOSONE:初回は、ドラッグには愛と憎しみしかないなって。そして、『GEORGE CONDOM』は、子供が好きで見ている『おさるのジョージ』とみんなが付けているマスクがコンドームみたいだなっていう。まぁ仕方ないけど、照れ屋か? って感じですよね。顔がわからない(下半分を隠している)相手に洋服を売るのはなかなか難しいですよね。
— ”STRANGE”なカウンター精神はそのデザインにどう反映されているんでしょう?
ATOSONE:全く何も考えてない事だと思います。でもクソみたいな扱いをされていた服を再構築してクソかっこいいグラフィックをつけて倍の値段で売ります。MIYATAと作るときは彼らのパターンを借りて、こちらのグラフィックを提供します。あとUENO SERINAという敏腕縫い子がイメージを形にしてくれます。自分で縫うこともたまにあります。糸を解く方が得意です。次の展示会では「ア、アレ、アレだよ、何だっけ?」って感じのグラフィックにします。
— RC Slumとしては、UG Noodleをはじめ、ROCKASENのISSACのソロに、名古屋、関西の新世代ラッパーを集めたコンピレーション『Sooner or Later』、バトルシーンで名を馳せたCROWN-Dのソロと、今までにない広がりが生まれつつありますが、今、ご自身のなかで音楽とファッションはどう結びついていると思います?
ATOSONE:『Sooner or Later』は弊社優良社員マニラ名倉の仕事です。ISSACに関しては色気がありますよね。CROWN-Dのアルバムは3年半越しの約束を果たした感じです。ファッションと音楽の繋がりは無いです。
— 最後に今回提供してくれたDJミックスについて一言。
ATOSONE:このミックスは、大阪にDJしに行った次の日の昼下がりにCE$の家でとても良いムードが流れていて、そしたら徐に彼が火をつけてくれました。それと同時に録音が始まったのですが、彼の家の窓から見える景色もよく、とても充実した時間を過ごせました。結果最高のミックスが完成したと思います。タイトルは『NEEDLES』です。この音源はその半分ですが、それではお聴きください。