毎月お届けしているMasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する『Mastered Mix Archives』も、前回で無事1年続いたということで、今回は4週に渡って1周年を記念したスペシャル企画をお届け。 なんと、過去12本のミックス音源を再び期間限定でダウンロードできるようにします!
しかも、ただの再配信ではなく、ダンスミュージックに精通した敏腕エンジニア、得能直也氏の手によるリマスタリング音源。すでにダウンロード済の方も、是非チェックを。
というわけで、初回となる本日は二見裕志、PUNPEE、Max Essaの豪華三本立てを、ライター小野田雄氏と担当編集である私塩川との対談で振り返りつつお届けします!
※ダウンロード期間は終了しました。
→ vol.2 Bushmind・COS/MES・Back To School編
→ vol.3 CHIDA・MOODMAN・CRYSTAL編
→ vol.4 川辺ヒロシ・LATIN QUARTER・池田正典編
ライター 小野田(以下O):去年6月に2人の無駄話からMix Archivesの企画を立ち上げて、ついに、というか、あっという間に一周年ですよ。
編集 塩川(以下S):ですね。僕は長らく、ネットならではの音源を再生しながら読めるインタビュー企画がずっとやりたくて、それがようやく叶っただけでなく、気づいたら1年ですもんね。
O:というわけで、この企画の1周年を記念して、要望が多かった過去1年の12本のミックスを再アップロード……っていうだけでなく、その音源をリマスタリングしてみたら、みんなに面白がってもらえるかな、と。
S:そこでエンジニアの得能(直也)さんにマスタリングをお願いしたという。
O:得能くんというのは、THA BLUE HERBにCALM、TRAKS BOYSに(((さらうんど)))、LUVRAW & BTBに七尾旅人くん、cero、PEPE CALIFORNIA……それからCRYSTALやTHE BeautyだったりというCRUE-Lの作品やライヴのPAを手がける敏腕エンジニア。数ヶ月前から相談して、彼に協力してもらえたのは本当にありがたかったし、2人の素人耳で聴いても、マスタリングを経たことで劇的に音が変わっっているのは、さすがによく分かるよね。
S:こんなに変わるんだってびっくりしましたよ。まぁ、でも、最初に公開した音源の鳴りはそのDJならではのサウンドとして、そして今回、リマスターした音源の鳴りはまた別ものとして、聴く比べたりしながら、それぞれ楽しんでもらえたらうれしいですね。
O:では、ここからは、この1年のDJミックスを2人で振り返ってみましょうか。
S:この企画の一番最初で二見さんにお願い出来たのは大きかったですよね。
O:そうだね。この企画は取りあえずやってみようってところから始まったから、ダンスからリスニングまで、色んなアプローチが出来る人にお願いしたかったってこともあり、名前はすぐに浮かんだんだけど、二見さんはネット上でミックスを公開してないし、前例が無いだけに初回って難しかったりするでしょ? だから、引き受けてもらえるかな?とも思っていたんだけど、快諾してもらえてホント良かった。
S:しかも、取材ではお宅にお邪魔して、コーヒーまで入れていただいて(笑)。あれは美味しかったなぁ。
O:(笑)このミックスは、音の間とグルーヴの活かしたメロウなロービート/ビートダウンを得意とする二見さんらしい音源というか、派手さはないんだけど、ずっと聴ける。
S:ゆるめのBPMをキープしつつ、60分足らずのミックスに劇的な流れを作るこの感じ。いや、ホント、オトナのミックスですよ。6月公開ということで、夏感も汲み取ったうえで、LAD MUSICIANの音楽も手がけているだけにファッション好きに向けた要素も入れてくれたと思うんですけど、リマスターされたものを聴き返して、散々聴いたにも関わらず改めていいミックスだなって思いましたね。
O:そして、アダルトからヤングへ(笑)。
S:1回目、2回目でこの振れ幅が出せてよかったですよね。
O:SICK TEAMが出演した回のDOMMUNEにたまたま遊びに行った時にPUNPEEくんのDJを聴いて、その場で登場をお願いするというこの企画の計画性のなさもあったりつつ(笑)。
S:でも、それに反して、本人は緻密にミックスを作ってくれて、エクスクルーシヴなS.l.a.c.k.(現・5lack)
「HOT CAKE (So hot sunset remix)」まで入れてくれましたからね。
O:弟のS.l.a.c.k.しかり、高田兄弟はヒップホップに限らない、広く音楽全般をカバーする視点のバランスの良さとかユニークさがこのミックスには表れているというか。S.l.a.c.k.やPSGしかり、ここ数年来、面白くなってきているヒップホップ新世代の象徴的なDJ、プロデューサーだなと。
S:個人的には、冒頭のおバカなマッシュアップで「この後どうなるんだろう?」と不安を感じつつ(笑)、エンディングのオトし方もさすがというか、聴き終えた時に「あ、これがPUNPEEなんだな」って。
O:S.l.a.c.k.はその名の通り、何度電話かけてもなかなか折り返しがないのに対して、PUNPEEくんはメールや電話のレスポンスが早いのね。その一方でS.l.a.c.k.は作品をバンバン出してるのに対して、PUNPEEくんはソロがなかなか出ない(笑)。
S:メガネ(PUNPEE)と裸眼(S.l.a.c.k.)の違いというかなんというか(笑)。
O:マックスは、すでに世界中のレーベルから作品をリリースしていたから、以前から存在は知ってたんだけど、彼が2008年に日本移住した直後にたまたま知り合いになって。東京で最初のギグをお願いしたという経緯もありつつ、記事を絡めつつ紹介したいと長らく考えていたので、個人的に念願叶ってうれしかったし、深く話してみたら、さすがに長いキャリアがあるだけにレイヴ前後からのイギリス・シーンの話はやはり面白かった。
S:音源もPUNPEEに続く3回目ということで、当初は必要以上に渋く聞こえたところもあったんですけど、1曲目で日本に対するオマージュを捧げつつ、PUNPEEもつぶやいていたように、キャリアに裏打ちされているというか、「オトナのミックス聴かせてもらいました」って思いましたね。これは長く楽しめるものになってるんじゃないかな、と。
O:さらにリマスタリングを経て、そのオトナの渋みがかなりグッとくるディープ・バレアリックなミックスになっているというか、繊細さが増しているよね。
S:ですね。PUNPEEのようなパンチはないかもしれないですけど、この心地良さはリスニング・ミックスとしては最高峰というか、気づいたら始まって、気づいたら終わってる感じなんですよね。あと、このミックスをアップしたのは去年の8月だったので、今の時期に改めて聴いてみて欲しいです。