Vol.69 JJJ – 人気DJのMIX音源を毎月配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Yugo Shiokawa

MasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「Mastered Mix Archives」。今回登場するのは、ヒップホップ新世代を牽引するFla$hBackSのラッパー、ビートメイカーにして、DJでもあるJJJ。


ソロ・ファースト作『Yacht Club』から2年3か月。その間にビートテープ『Thousand』、ISSUGI×JJJ名義のフリーダウンロード作品『LINK UP 2 EXPERIMENT MIXTAPE』を発表。さらにC.O.S.A.×KID FRESINO「LOVE」やCAMPANELLA「PELNOD feat. 中納良恵」、YOUNG JUJU「LIVE NOW feat. B.D.」、SIMON「Eyes feat. IO & RYKEY」といった名曲のプロデュースを手掛け、ビートメイカーとしての突出した評価を確立した彼が満を持してセカンドアルバムの制作に着手。ビートメイカーとしてはもちろん、ラッパーとしても大きな進化を遂げ、2017年屈指の名作『HIKARI』がここに完成した。今回、その作品世界を紐解く1万字を越えるインタビューと彼が特別に制作してくれたDJミックスを通じて、日本が世界に誇るべきJJJという光輝く才能に迫った。

Interview & Text : Yu Onoda | Photo : Takuya Murata | Edit : Yugo Shiokawa

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)

音楽は自分を救ってはくれないんですけど、自分を一番保てるものだと思います。

— 新作アルバム『HIKARI』は、2017年を代表する素晴らしい一枚になりましたね。

JJJ:制作に関わってくれた人達みんなのおかげです。本当にありがとうございます。

— 新作のレコーディングには、いつ頃着手したんですか?

JJJ:一度ストップしてたんですけど、担当A&Rと話をして、去年4月くらいから本格的に制作をはじめました。

— 去年、Jくんと話すなかで、「年内に出します」、「いや、年内は無理かも」っていう波が何度かありましたもんね。

JJJ:去年10月に、ラッパーのムタくんが住んでるタイに遊びに行ったんですけど、そこでトラックを作ったりして、日本に帰ってから一気に作業を終わらせました。

JJJ『HIKARI』 JJJの切れ味を増したビートとラップを軸に、Fla$hBackSの2人に加え、ラッパーのYOUNG JUJU、5lack、STICKY、仙人掌、シンガーの鋼田テフロン、Emi Meyer、ビートメイカーのENDRUN、STUTS、Aru-2を適材適所でフィーチャー。海外のトレンドに回収されない揺るぎないオリジナリティを極めた2017年の傑作アルバム。

JJJ『HIKARI』
JJJの切れ味を増したビートとラップを軸に、Fla$hBackSの2人に加え、ラッパーのYOUNG JUJU、5lack、STICKY、仙人掌、シンガーの鋼田テフロン、Emi Meyer、ビートメイカーのENDRUN、STUTS、Aru-2を適材適所でフィーチャー。海外のトレンドに回収されない揺るぎないオリジナリティを極めた2017年の傑作アルバム。

— その直前は煮詰まってる空気が感じられたので、突然、スイッチが入ったような気分の変わりようだなって思いましたよ。

JJJ:タイに余計なマインドを置いていけた、っていうことなんじゃないかと思います。

— そして、今回のアルバム・タイトルは、当初は4曲目の曲名と同じ『COWHOUSE』になる予定だったと聞いています。

JJJ:昨年春の時点では、こういう曲調、そういう世界観……かっこいいギターやプログレのサンプルで固めたアルバムを1枚作りたいなって思っていたんです。実際にビートはできたんですけど、ラップのマインドがそこと合わなくて、アルバムまるごとというのはなくなりました。「COWHOUSE」で歌ってるのは、クラブとかでの自分の過ごし方みたいなことです。

— 「COWHOUSE」は、フィーチャーしているYOUNG JUJUのラップしかり、ビートもラップも非常に攻撃的な曲ですよね。

JJJ:JUJUには派手な曲はあるけど、こういう攻撃的な曲はないから、「COWHOUSE」ではそういう面が引き出せたらいいなって。

— このアルバムは全てが攻撃的なマインドではないと思うんですけど、「もし全てGoodであれば書けない歌詞」とも歌っていますよね。

JJJ:自分のリリックの根底にはそういったテーマがあって。でも、それをポジティブに曲にできたと思います。今回あんまりリリックは深く考えすぎないように、フローに任せてフリースタイルに近い感覚で書いていった曲が多いです。

— 振り返ると、前作『Yacht Club』は怒りという意味で今回のアルバム以上にひりひりした作品でしたし、当時の心境は歪んだ音像にも反映されていたと思うんですよ。

JJJ:たしかに当時の心境が反映された音でしたね。パンパンにマキシマイズさせて音を歪ませたり。とりあえずキックで全てを潰して、みたいな。

JJJ『YACHT CLUB』 全17曲のプロデュースとラップを一手に手掛けた2014年のファースト・ソロ作。Fla$hBackSの2人に加え、RIP SLYMEのSU、ACO、MONJU、Kiano Jonesらをフィーチャー。歪んだ音像の濃密なプロダクションと硬質なラップが展開されている。

JJJ『YACHT CLUB』
全17曲のプロデュースとラップを一手に手掛けた2014年のファースト・ソロ作。Fla$hBackSの2人に加え、RIP SLYMEのSU、ACO、MONJU、Kiano Jonesらをフィーチャー。歪んだ音像の濃密なプロダクションと硬質なラップが展開されている。

— でも、音響的に今回のアルバムははるかに音がいいですよね。

JJJ:今回、機材を変えたりしたことが大きかったです。(NATIVE INSTRUMENTSの)MASCHINEに変えたことでミックスをPCでやり込めるようになって、1音1音の見方や気配りがだいぶ変わったと思います。

— 前作のように音が詰め込まれていないし、すっきりしてますよね。

JJJ:今回はシンプルにしたかったんです。リリックもトラックも無駄なものを付けたくなかったし、ラップも声を被せずに1本で録った曲を入れたり、自分の意図する通りの作品になったかなって。

— そして、トラックに関しては、前作完成直後には「次のアルバムはトラックをいろんなトラックメイカーに任せたい」と語っていましたけど、今回起用したENDRUNとAru-2、STUTSという3人は、Jくんから見て、それぞれ、どういったトラックメイカーなんでしょうか。

JJJ:ENDRUNくんは大阪にライヴで行くようになって、家に遊びに行かせてもらって。なんか大阪のトラックメイカーの人はみんなノリが近いんですよね。ずっと遊んでいられるっていうか。

— 彼との共作曲「ELA」を聴くと、プログレッシヴロック好きなところが2人の共通点になっているのかなって。

JJJ:使ってるネタもかっこいいし、送ってもらった彼のトラックはどれも不穏な世界で戦っている感じがあって、それがその時の自分の気持ちにハマったから、リリックを即書いてって感じで。Aru-2の「SOUL」は去年の夏くらいに、彼のSoundcloudに「FRIENDS」って曲名でアップされていたんです。それをたまたま聴いてたら、何故か泣きそうになって。後日そのことを本人に話したら「是非やって下さい」って、そのトラックをもらいました。彼とやるのは初めてだったし、ノークオンタイズの曲のノリがアルバムにはなかったから、それも新鮮でよかったです。

— STUTSが手掛けた「ORANGE」のトラックについては?

JJJ:「ORANGE」のビートは、STUTSの家に遊びに行った時、自分が後ろからディレクションしながら一緒に作ってったトラックなんですけど、STUTSは、このアルバムに参加してくれた人のなかで一番古い付き合いでもあって。

— Fla$hBackSを結成するはるか以前からの付き合いだとか。

JJJ:あいつが東京に出てきて、俺も東京でライヴするようになって、同い年のうえに当時はSTUTSもラップしながらトラックを作っていたので、やってることが自分と近い友達が出来てうれしくて。その後、定期的に会っては曲を作ったりしてたんですんですけど、お互い忙しくなったこともあって、「ORANGE」は久しぶりに2人で作業したトラックなんです。

— そして、Jくんは前作以降、メロウな、メロディックなトラックの評価が高まっていると思うんですけど、Fla$hBackSのアルバムから一貫しているアッパーかつハードなロックギターサウンドの重ね方やエディットの仕方もさらに進化していますよね。

JJJ:やっぱり、自分にとって、ギターの音は一番アガるんですよね。拳を突き上げたくなるっていうか。「はい、勝った~」って気持ちになります。

— 昇龍拳、って?(笑)

JJJ:一音でブチアガれるし、ギターは楽器のなかで一番好きで、やっぱり、どうしても使いたくなっちゃうんですよね。普段、ロックはそこまで聴いてないんですけど、好きなバンドだと、ベタですけど、IRON CLAW、SHILVER、CHICAGO、ASIA、CAMELとか。ロックには戦ってる曲が多いじゃないですか。そういう、パワーがある曲が好きなんです。

— ギターとはまた違いますが、近年のヒップホップではあまりフィーチャーされなくなっているスクラッチが作品に散りばめられているところも、以前はターンテーブリストを目指していたというJくんらしいですよね。DJ SCRATCH NICEにはどういうオーダーをしたんですか?

JJJ:SCRATCH NICEには、表のリズムじゃなく、裏のリズムにひっかけるようなスクラッチをお願いして。例えば、高速でフェーダーを切る感じのコスりじゃなくて、本当に一発で聴く人を仕留めるような、首を振らずにはいられないような、かっけえコスりを入れてもらいました。コスるネタも曲のテーマにあった感じでお願いして、JADAKISSだったりEVIDENCEだったり、自分の好きなラッパーの曲を使ってもらいました。いつも仕事が早くて、本当にかっこいいノリを持った最高のDJだと思います。

— 一方でメロウな「PLACE TO GO」はJくんの繊細なトラックメイクが際立っていますよね。

JJJ:じつはこの曲で俺、ハーモニカを吹いているんですよね。ワンフレーズですけど。楽器はラップのフローに近いというか、当たり前のことなんですけど、吹き方によって表現が自在に出来るから、その点が普段使ってるシンセサイザーとは全く違ってて。改めてそこに気付けてよかったです。自分の曲に自分で楽器を弾いて入れた初めての曲だったので、すごい感動したし、その経験にインスパイアされて、もっと楽器を買って増やして、将来的にはギターとベース、ハーモニカを弾いて、ブルースみたいな曲を作ってみたいなと思います。

— ビートメイクから一歩踏み出して、楽器を弾きたい欲求が駆り立てられた記念すべき曲だったんですね。

JJJ:海外のトラックメイキングの動画をよく観るんですけど、みんなある程度ループが出来たところでその作業を止めて、一度楽器を触るんですよ。自分にはそういうプロセスがないから、電気がなければ音楽を作れないし、楽器が弾けなければ、ミュージシャンともプロデューサーとも言えないなって思ったりして。

— A Tribe Called QuestのQ-TIPも、2001年に録音して、2009年まで長らくお蔵入りになってたアルバム『Kamaal/The Abstract』の辺りから自分で楽器を弾くようになって、A Tribe Called Questのラストアルバム『We Got It from Here… Thank You 4 Your Service』では自宅スタジオにミュージシャンを呼んで膨大なセッションを行ったとか、そういう話もあったりしますよね。

JJJ:J.Coleが「4 Your Eyez Only」のレコーディング風景を「Eyez」っていう30分の動画にしてYouTubeで公開しているんですけど、俺はその映像にすごい食らってて。ヴァイオリニストやピアニストなんかがいろんなフレーズを弾いてて、1曲のためにみんなが力を合わせて作り上げていく様子がすごくかっこいいなって。そこにはまさにA Tribe Called Questの最後のアルバムにも参加している、キーボード奏者のBIGYUKIさんが日本代表みたくスタジオでぶちかましているんですけど、その様子がめちゃくちゃ最高で。いつか俺も、スタジオでそういうセッションをしてみたいですね。

— スタジオセッションという意味では、まさにそういうEP『Salve』を出したKID FRESINOの動きはJくんから見て、どう写ってるんでしょう?

JJJ:ヒップホップとはまた違う面を表現してて、それをちゃんと形にしてるからすごいですよね。あいつ、adidasのネットのCMでナレーションをやってたじゃないですか。俺はちょっと恥ずかしくて出来ないけど、ダサいやつがやるよりあいつがやった方が絶対いいし、そういう矢面に立った時でもあいつはかっこいいな、って。

— Jくんは『Salve』のタイトル曲に参加してますけど、生音でラップしてみて、いかがでした?

JJJ:最初、あの曲で俺が歌った1回目のサビをコピーして、二回目のサビの所に貼り付けようとしたんですけど、生音だから曲のテンポが違ってて、ズレるんですよね。だから、1つ目のサビと2つ目のサビを別録りしたんですけど、自分が普段やってる「BPMの変わらないトラックにラップを入れる作業」とまた違って面倒なんですけど、そうやって(生音ならではの)唯一無二なノリが生まれるんだな、と。

KID FRESINO『SALVE』 ex-LOOP JUNKTION、PETROLZの三浦淳悟を擁する4人編成のバンドとセッションを敢行。LAの才人、Mockyのプロデュース曲を含む4曲にJJJ、Campanella、茂千代をフィーチャーし、洗練を極めた生音と共にラップを躍動させた2017年の最新作。

KID FRESINO『SALVE』
ex-LOOP JUNKTION、PETROLZの三浦淳悟を擁する4人編成のバンドとセッションを敢行。LAの才人、Mockyのプロデュース曲を含む4曲にJJJ、Campanella、茂千代をフィーチャーし、洗練を極めた生音と共にラップを躍動させた2017年の最新作。

— そして、Fla$hBackSは、Febbも昨年末にDoggiesのEPを出して、3月にはソロのセカンドアルバムを出すじゃないですか。彼の動きについては?

JJJ:あいつも音楽のことしか頭にないような男だから、勢いがすごいんですよね。会うたびに新しく録った自分の曲とかビートを永遠に聴かせてくれて、すごい刺激になってます。破天荒すぎるアイディアとかめっちゃ聞かされて、たまに落ち着けって思うけど、着々と動いていってるから、3月に出すあいつのアルバムもすごいことになると思います。

— ここに来て、Fla$hBackSの3人それぞれの個性が色濃くなってきていて、Febbは最新のUSヒップホップをキャッチアップしているし、KID FRESINOはヒップホップだけじゃなく、もっと大きな枠組みでの音楽を追究している。そして、JくんはFebbとKID FRESINOの間を取り持ちながら、ビートメイカー兼ラッパーとして突出したオリジナリティを獲得しつつある。Fla$hBackSのアルバムを出したのは2013年ですが、当時と今とでは変わりつつあるという実感はありますか?

JJJ:そうですね。根っこにあるものは3人とも変わってないんですけど、作り方、伝え方は変わってきていて、それはおもしろいところでもあるから、2人の個性をもっと引き出せるトラックが作れたらいいなって思います。

DOGGIES『YOU BARK WE BITE』 2014年の名作ソロ作『The Season』以降、活動が活発化しているFebbがKNZZ、J-SCHEMEと結成したストリートチームのファーストEP。A-THUGを交えたトラップへのアプローチはGucci Maneをも虜にしている。

DOGGIES『YOU BARK WE BITE』
2014年の名作ソロ作『The Season』以降、活動が活発化しているFebbがKNZZ、J-SCHEMEと結成したストリートチームのファーストEP。A-THUGを交えたトラップへのアプローチはGucci Maneをも虜にしている。

— 「EXP」は、『Salve』でキャッチーなアプローチを披露したKID FRESINOが、ゴリゴリなヒップホップを打ち出していますよね。

JJJ:「EXP」は、FRESINOが自分の作品に入れるからということであげたトラックだったんですけど、やっぱり、俺のアルバムに入れたくなって奪い返したって感じで。自分のリリックに関しては、映画『シュガーマン』にインスパイアされたものです。

— そして、「2024」では、久しぶりにFla$hBackSが集結しました。

JJJ:最初、その曲はFla$hBackSでやろうと決めていたわけではなかったんですけど、自分のヴァースを含めて、トラックが出来た瞬間にブチアガって、自動的にあの2人にトラックを送ったんですよ。そうしたら、FRESINOからヴァースが返ってきて、「フックは安井(Febb)がやるんでしょ?」って言われて(笑)。そういう感じで、3人が自然と通じ合って出来た曲だったりもするし、この曲は今はあんまり会えなくなった友達のリリックを使っている曲でもあって、その人がどこかで聴いてくれたらいいなって。

Fla$hBackS『FL$8KS』 ラッパー、ビートメイカーのJJJとFebb、そして、この作品ではビートメイカー、DJだったKID FRESINOからなる若き3人の突出した才能を知らしめた2013年のクラシック。

Fla$hBackS『FL$8KS』
ラッパー、ビートメイカーのJJJとFebb、そして、この作品ではビートメイカー、DJだったKID FRESINOからなる若き3人の突出した才能を知らしめた2013年のクラシック。

— ラッパー、シンガーのゲストでは、アルバムのオープニングを飾る「BABE」にフィーチャーした鋼田テフロン a.k.a. BACHLOGICは、その起用に驚くリスナーがほとんどだと思います。

JJJ:「BABE」はヴァースが出来て、フックをどうしようか?と思ったんですけど、自分でやったらいつもの感じになっておもしろくないから、トラックに合う、いい感じのシンガーはいないかなって思ったんですよね。それで、「日本で一番垢抜けたヤバいやつは誰だろう?」って考えたら、テフロン氏が思い浮かんだので、それじゃあ、お願いしてみよう、と。

— BACHLOGICとは以前から知り合いだったんですか?

JJJ:一回だけ飯食って、話したことがあって、その時はトラックの作り方や機材の話題になったんですけど、俺はずっとBL氏のファンで、トラックもラップも歌も全てホントすごいし、クオリティをずっと維持出来る日本で数少ないアーティストだなって思ってて。そういう人が俺たちのことにも興味を持ってくれてたからすごい嬉しかったし、今回、いいメロディを乗せてもらったことで、自分だけでは絶対出来ない曲になったと思います。

— そして、「ORANGE」にフィーチャーしたSTICKYは、以前、Jくんが好きなラッパーとして挙げていましたが、彼のどういう部分に惹かれるんですか?

JJJ:STICKYさんのラップは、「ORANGE」のリリックがまさにそうだと思うんですけど、全くポジティヴではないじゃないですか。

— むしろネガティヴというか、勘ぐり系のリリックというか。

JJJ:STICKYさんのリリックって、極論だと思うんですけど、俺、その気持ちがすごい分かるんですよ。まず、2小節目で速攻金の話をしてるところとか、変わらずにかっこいいんですよね。このレコーディングに立ち会った時もマジでブチアガって、「ホントにSTICKYだ。STICKYが目の前にいる!」って思いましたもん。

— JくんもSTICKYも同じ川崎の出身で昔から繋がりがあった?

JJJ:いや、直接は知らなかったんですけど、自分の通ってた中学の隣の中学出身で、噂だけはちょっと聞いてたという感じで。今回のアルバムでは唯一お会いしたことがない人だったので、共通の知人を通じて、連絡させてもらいました。そして、まず、俺のヴァースが乗った曲を送ったら、「いいこと言えばいいんでしょ?」って言われて(笑)。

— はははは。

JJJ:「まぁ、そうなんですけど、とりあえずSTICKYさんの『今』が聴きたいです」って伝えたら、レコーディング当日、目の前で最高のラップを上げてくれて。ホントに感激しました。

— 5曲目の「HPN」にフィーチャーした5lackとは、Jくんもレギュラーメンバーに名を連ねる代官山UNITのパーティ「Weeken’」で定期的に会っているんですよね?

JJJ:FRESINOの最初のアルバム(『Horseman’s Scheme』で5lackが参加した「Story」)を作った時に会ったのが初めてで、「Weeken’」からちゃんと話すようになって。「いつか、Jのかっこいいトラックでやりたい」って言ってくれたから、このタイミングでお願いしよう、と。5lackのことは、飾らないでいて、本当にシンプルでかっこいい人間だと思っているんですけど、シンプルな作品を目指したアルバムの方向性とも合っているし、5lackには、ラップもフックもできるだけ一本で録って欲しいとお願いしたら、バッチリのラップを返してくれました。

— 仙人掌とEmi Meyerをフィーチャーした「MIDNIGHT BLU」はラップと歌だけでなく、Emi Meyerの生ピアノを挿した曲という意味で、C.O.S.A. × KID FRESINOの「Swing at somewhere feat. コトリンゴ」に続く楽曲ですよね。

JJJ:でも、最初から生音を入れようと思って作ったわけじゃないんですよ。当初、声ネタのサンプリングを用いた全然違うビートだったんですけど、そのネタが権利的にダメと言われて。どうしよう、ってなった時にネタの部分をミュートして代わりにピアノと歌を入れたらいいかもって思いついたんです。それだったらと、ファンだったEmi Meyerさんにお願いしてみました。Emiさんには何パターンかピアノを弾いてもらったり、サビとは別のハミングとかを送ってもらったんですけど、その音源をさらにサンプリングし直して、元あったドラムにチョップしてハメていきました.。アルバムでは一番手間暇をかけた曲で、全てができあがった時には本当に感動しました。

— この曲の仙人掌のラップは、去年末に出した彼のアルバム『VOICE』の後半の流れを汲んだエモーショナルなものですよね。

JJJ:そうですね。トラックができてから、仙人掌くんには俺の家まで来てもらって録ったんですけど、「こんな話していいんだ」って。このラップには感動しました。

— そして、Jくんのラップに関しては、言葉を点でハメていく前作のスタイルからしなやかなアプローチに変化しただけでなく、発声や使うキーも変わりましたよね。

JJJ:そうした変化は、マイクを変えたことがすごく大きくて。新しいマイクだと、いつもの歌い方でラップすると今まで聞こえてなかった部分が露わになって、それがトラックに浮いてしまい、まったくしっくりこなかったんです。だから、トラックに対して何度も歌って、しっくりハマる自分のキーを探すっていう試行錯誤をやっていった結果、自然にあのキーに落ち着いていきました。ラップする前に1回走り込みして腹から声出そう、みたいなことをやったりとか(笑)。

— 「ELA」も唾が飛び散るようなラップですもんね。

JJJ:最初のテイクを聴き直すと、キーが全然低すぎて、録り直すたびにどんどん良くなっていくから、アルバムを通じて、自分に合ってるキーを探した結果が形になっているんです。だから今回、ラッパーとして、やっと第一歩が踏み出せたんじゃないかなって。

— そういう意味でトラック、ラップ両面の進化が最高の作品に結実した、と。リリックでも歌っていますけど、今回の作品では、結局のところ信用出来るのは、自分の揺るぎない信念と音楽というか、Jくんにとっては音楽が全てなんだなと改めて思いました。

JJJ:音楽は自分を救ってはくれないんですけど、自分を一番保てるものだと思います。でも音楽以外でも何かあったら楽しいかなって最近は思います。

— Jくんは、いつもライヴの現場でみかけると、そこに人がいようと一切関係なく、イヤフォンをして、携帯に入ってる(ソフト)iMaschine 2でずっとトラック作ってるじゃないですか。個人的には今回のアルバムを聴きながら、その光景を思い出すんですよ。

JJJ:最近、いろんなところでトラックを作るのにハマってて、今回のアルバムもそうやって作ったトラックが多いんですよ。タイに行った時とか、福岡にライヴしに行った時とか、いろんな場所で作るとその場のノリが出て、思い入れのある、色のあるトラックが出来るんですよね。

— 場所や土地という意味では、今回のアルバムは制作上の転機になったタイ旅行もそうですし、アルバムのアートワークはカメラマンの小阪吾郎くんと出掛けた台湾。そして、スタジオ石のMMMさんと撮影した「BABE」のミュージックビデオの舞台は香港ですよね。ここのところ、Jくんはアジアづいていませんか?

JJJ:タイに行く時、格安航空券を使って台湾を経由したんですけど、台湾は真夜中に9時間くらい空港で過ごしただけだったので、なんか気になってて。台湾にはBINっていう友達がいて、「来るなら言ってくれよ!」って言ってくれてたんです。アルバムのアートワークは、電飾がいっぱいあるところで写真を撮りたい、って思ってたのもあったんで、遊びがてら、台湾へ撮影に行ったんです。

— そういう電飾のニュアンスがアルバム・タイトルの『HIKARI』とも被りますし、同時に電飾はアジアの象徴でもあると思うんですけど、それを求めたのはどういうことなんでしょうね?

JJJ:タイトルの『HIKARI』は「希望を意味してるんでしょ?」ってよく言われるんですけど、全然違って。街にある光、なんでもないただの光、そういう、いろんな光のことなんですよ。こないだ、香港にビデオの撮影に行った時もいろんな種類の電飾がめっちゃあって、すごくかっこ良くて、それを表現したかったんです。

— 以前のインタビューで、Jくんは音楽を作るうえで、ゲームや機材、ソフトのビジュアルに影響を受けてるって言ってたと思うんですけど、それと同じようなことなんですかね?

JJJ:そうですね。いまさらではあるんですけど、最近、漢字がすごいかっこいいなって(笑)。

— そういう言葉では説明できない感覚や、抽象的、視覚的なセンスであったり、リリックにしても、安易な分かりやすさや口当たりの良さに逃げない表現者としてのJくんの意地や心意気を感じます。

JJJ:一発でそれと分かるものだけだと、人はどんどん馬鹿になっていくと思うんですよ。聞く人が自分で少し考えてみて、答えを出してくれたらいいなと思います。

— ただし、今回、CDには初めて歌詞カードが付けられているっていう。

JJJ:自分が中学の時とかに聴いてたアルバムには絶対歌詞カードが付いてたなって、ある時思ったんですよ。俺、昔はリップスライムやドラゴンアッシュの歌詞を歌詞カードで覚えて、カラオケで歌うのがすごい好きだったな、って。俺の曲はカラオケには入ってないんですけど(笑)、そういうことを自分の音楽でもやりたいなと思って、歌詞カードを付けました。

— 歌詞カードで歌詞を覚えて、俺のライヴで歌ってくれ、と。でも、実際に歌われたら歌われたで、Jくんは嫌がりそう(笑)。

JJJ:はい(笑)。ただ伝わればいいかなと。

— Jくんは周りの状況がどうなろうが、やりたくないことはやらずに、ただただ純粋にやりたい音楽を作り続けて今に至ると思うんですけど、そういう日々の原動力はどこにあるんだと思いますか?

JJJ:これだけ自由にやらせてもらって、ホントに感謝しているんですけど、やっぱり海外と比べると、やってることはまだまだなんですよね。だから、海外に引けを取らない作品を日本から出していかないとダメだし、俺が言うのもどうかと思うんですけど、そうしないと若いやつら、かっこいいやつらが育っていかないじゃないですか。だから、そういう作品をなんとか残していきたいっていう、そういうモチベーションで今後も音楽を作っていきたいですね。

— 最後に、時間をかけて作ってもらったDJミックスについて一言お願いします。

JJJ:水中に潜ったり水面に上がったりを繰り返してる感覚で作ってみました。是非!!