Vol.68 ROCKASEN feat. RYOSUKE – 人気DJのMIX音源を毎月配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Yugo Shiokawa

MasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「Mastered Mix Archives」。今回は、BUSHMINDが加入し、7年ぶりに本格復活を果たすヒップホップ・グループ、ROCKASENとテクノシーンで活躍する同郷千葉のDJ、RYOSUKEをフィーチャー。

千葉出身のラッパーTONANとビートメイクも行うISSACからなるROCKASENは2000年結成。当初は東京のヒップホップシーンを中心に活動していたが、ローカルシーンが脚光を浴びるきっかけとなった地元千葉のテクノ/ハウスパーティ、Future Terrorの洗礼を受け、ダンスミュージックをはじめとする広義のストリートミュージックの影響下で、唯一無二の個性を育んでいった。そして、2007年にEP『LONGTIME SHORTCUTS』、2010年にアルバム『WELCOME HOME』をリリース。時代を先駆け、ヒップホップの枠組みを積極的に逸脱したトラックを乗りこなす彼らの卓越したワード・センスとスキルは高く評価されたが、その後は数々の素晴らしい客演仕事を残しながら、長らく新作がリリースされることはなかった。

しかし2015年、彼らのサポートを続けてきたビートメイカーのBUSHMINDがグループに加入。それからさらに約2年の歳月をかけた待望の新作アルバム『Two Sides Of』が、2月17日にいよいよ配信リリースされる。今回、長いキャリアを通じて、対面取材が初となる彼らのインタビューによって、過去から現在に至るグループの足跡を紐解くとともに、彼らに大きな影響を与えたというRYOSUKEにDJミックスの制作を依頼。普段はテクノをプレイすることが多い彼の貴重なヒップホップミックスは、『Two Sides Of』のマスタリングエンジニアである得能直也(石野卓球や仙人掌、ceroほかを手掛ける)がマスタリングを施したことで、ROCKASENの復活を祝う最高のサウンドトラックとなっている。

Interview & Text : Yu Onoda | Photo : Takuya Murata | Mastering (DJ Mix):Naoya Tokunou | Edit : Yugo Shiokawa

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)

ISSACともよく話しているんですよ。BUSHMINDのトラックには俺たちが一番上手くラップをハメられるよね、って(TONAN)

— 長いキャリアを通じて、対面インタビューは今回がはじめてだとか?

TONAN:そうなんですよ。いままでやったインタビューは全部メールインタビューだったんで。

— そして、ようやく完成した新作アルバム『Two Sides Of』は、なんと約7年ぶりの作品ですよ。

BUSHMIND:アルバム(『WELCOME HOME』)を出したのが2010年だから、その翌年から取りかかって、完成までに6年かかっていますからね。

TONAN:しかも、制作を取りかかった矢先に、2人ともめでたく家族が出来まして(笑)。

ISSAC:当時は2人でスタジオを兼ねた一軒家に住んでたんですけど、さすがにそのまま住み続けるわけにはいかないので引き払いました(笑)。

TONAN:必然的にお互い仕事がメインになり、二人の都合で作業できる環境もなくなったので、すれ違い的な…。

BUSHMIND:その時期の音源っていうと、2012年に出たTONOSAPIENSのアルバム『presidents heights』だよね?

TONAN:そうですね。2人で参加した“SquAll”は、当時の心境、状況がリリックになっていたり、レコーディング自体もいろいろ訳ありで、ひりひりしたムードだったんですよ。

— 子供が生まれて仕事が忙しくなったら、音楽を辞めるという選択肢もあったと思うんですけど、そうはならなかった?

TONAN:僕らは特定のクルーに所属しているわけではなかったし、マイペースに、自由にもの作りをしてきたので、辞めるっていう選択肢はなかったですね。

BUSHMIND:「だったらもっとやれよ!」って、俺はハッパをかけ続けたんです。

TONAN:そう言ってくれるだけでもありがたいし、だからこそがんばらなきゃなって。心ではそう思いつつも、つい甘えてしまって(笑)。

ISSAC:そういう俺たちの緩さ加減は、結局のところ、音楽を金に変えようって気持ちがそこまで強くないからだと思うんですね。普通のラッパーは金に変えようと、メイクマニー精神でなんとかしようとするじゃないですか。でも、俺たちはそうじゃなくなっちゃった。

BUSHMIND:ラップで食いたいって思った時もあったの?

TONAN:『WELCOME HOME』の時まではそう思ってました。でも、その時もタカアキ(BUSHMIND)さんから「あんまり過度に期待しない方がいいよ」って言われて。ふたを開けてみたら、その通りだったっていう(笑)。ま、思い描いていたドリームがデカ過ぎたっていうのが一番の原因です。

ROCKASEN『WELCOME HOME』 結成10年目にしてリリースされた2010年のファーストアルバム。ISSACを主軸に、BUSHMIND、MASS-HOLE、TONOSAPIENSらによるビート、そして日常とパーティを行き来するラップによって、パーティラップに回収されないヒップホップのオルタナティヴなスタイルをいち早く具現化した1枚だ。

ROCKASEN『WELCOME HOME』
結成10年目にしてリリースされた2010年のファーストアルバム。ISSACを主軸に、BUSHMIND、MASS-HOLE、TONOSAPIENSらによるビート、そして日常とパーティを行き来するラップによって、パーティラップに回収されないヒップホップのオルタナティヴなスタイルをいち早く具現化した1枚だ。

BUSHMIND:TONANくんは若い頃からラップに相当な自信があったんでしょ?

TONAN:自信というか、ひとりでイベント行って、マイク奪ったりしてました(笑)。

BUSHMIND:え、そんなことやってたの? じゃあ、これから行こうよ!

TONAN:若気の至りということで(笑)。

— 従来の枠組むからはみ出してしまっているミュータント性こそがよく知られるROCKASENの個性ですから、ヒップホップ然としたアグレッシヴなTONANくんは、なんとも想像出来ないですね。

BUSHMIND:そう、ヒップホップをやってるというより、ヒップホップを使って、音楽をやってるところが、ROCKASENの最大の個性ですからね。

— ヒップホップを使って、音楽をやるという意識になっていったきっかけというのは?

TONAN:(DJ NOBUが主催するテクノパーティ)Future Terrorやタカアキさんと出会ったことが大きいですね。それまではいわゆるヒップホップど真ん中の土壌だけで活動していたんですけど、現在、美学校の講師をされている古藤さんがボスで、(ROCKASENやBUSHMIND『SWEET TALKING』のアートワークほかを手掛けるデザイン・プロダクション)WACK WACKの村上さんが店長だった、千葉のWHITE HEAD EAGLEという古着屋でバイトするようになったんですけど、そこがたまたま千葉の濃厚な先輩たちが自然と集まってくる場所だったんですね。そこでいろんな音楽やカルチャーを教えてもらっているうちに、遊び方が急激に変わっちゃって。今までの自分たちの概念が窮屈に感じるようになったというか、それまで作り上げたものが全部ぶっ壊されたんです。そして、そこから新しいものを作り上げていくことが楽しくなって、自信も生まれたし、自分たちのルーツにヒップホップがあることを周りの人たちは理解してくれました。そういう部分を大事にしてくれてたので、俺たちも「ヒップホップを土台にした新しい音楽」として返さなきゃって気持ちが自然に生まれましたね。

BUSHMIND:Future Terrorと出会う以前は、活動の主戦場は千葉じゃなかったんでしょ?

ISSAC:そうですね。そもそも、僕らは千葉から東京の高校に通ってましたし、ライヴをやってたのもFAMILY、GAME、BEDといった東京のクラブばかりで。10代半ばの頃は千葉で活動してたんですけど、10代後半からは東京が中心になってましたね。

— NOBUくんにしても、東京で遊んでたり、DJをやってたりしてたところから、ローカルのパーティを作り上げるべく、千葉でFuture Terrorをはじめたんですもんね。

TONAN:当時は地元でパーティをやるにしても、場所がなくて困ったと言ってたんですよね。自分たちだったらすぐ「東京に行こう」ってなるんですけど、そうはならない、DIYの本当の意味を知りました。だから、東京でしか活動してないのに千葉をレペゼンしているっていうジレンマがつきまとっていたし、その頃には東京にも馴染めなくなってきてたっていうのもあって。だから、WHITE HEAD EAGLEで働くことをきっかけに、地元の人たちやパーティと出会えたことは最大のターニングポイントでしたね。だって、そこからタカアキさんもそうだし、久しぶりに再会した高校の先輩がdREADEYEとして千葉にライブしにきたOS3(DJ HIGHSCHOOL)でしたから(笑)。それぞれ、異なる環境で活動していた人たちが集まってリンクするようになって、今まで自分たちが見てきたものより、はるかに刺激的な現場で純粋に音楽に接することができるようになったんですよ。

ROCKASEN『LONGTIME SHORTCUTS』 2006年のRAWLIFEでDJ NOBUのプレイ中に行われたフリースタイルで幕を開ける、2007年発表のミニアルバム。数々のハードコアなパーティ体験によって、ラップとビートがヒップホップの枠組みから解放される、まさにその瞬間の躍動感がここには封じ込められている。

ROCKASEN『LONGTIME SHORTCUTS』
2006年のRAWLIFEでDJ NOBUのプレイ中に行われたフリースタイルで幕を開ける、2007年発表のミニアルバム。数々のハードコアなパーティ体験によって、ラップとビートがヒップホップの枠組みから解放される、まさにその瞬間の躍動感がここには封じ込められている。

— 2000年代前半、ストリートミュージックの名の下に、ヒップホップやハウス、テクノ、ハードコアパンクも、不良やナードも渾然一体となった当時のスリリングなシーンに大きな影響を受けたと。

TONAN:それ以前、イベントというのはクラブの事情で朝方終わるものだと思っていましたから(笑)。DJは客を帰らせないようにプレイするし、客もDJが終わらないように盛り上げる。そうやって一緒に作っていくのが、イベントではなく、パーティなんだなと。

BUSHMIND:Future Terrorに遊びに行って、「やっぱりテクノはストリートミュージックなんだ」っていうことを確信できましたからね。

TONAN:いわゆるヒップホップのシーンにいた頃は、テクノやハウスなんてものは選択肢になくて、ヒップホップしかないと思ってましたから。ゲットー育ちの黒人がBPMの速い音楽をやってるなんて知らなかったし(笑)。

BUSHMIND:2008年に出した(ROCKASENの1st作)『LONGTIME SHORTCUTS』(2006年の「RAWLIFE」で行われたDJ NOBUとROCKASENのセッションやBUSHMINDのトラックを収録)は、そういう空気感を上手くリリックに落とし込んだよね。

TONAN:だから、そういう体験が出来た僕たちはラッキーだったと思います。そういうパーティ経験をバックボーンに、千葉の(歓楽街)栄町に借りたマンションで『LONGTIME SHORTCUTS』を作った後、ISSACと空気の入れ換えも兼ねて引っ越した新しいスタジオで『WELCOME HOME』を作ったんです。千葉から東京に行って、再び千葉に戻って、やっと地元に居場所を見つけて「おかえり」って感じだったんですけど、それからさらに6年か……(笑)。

— でも、それからの6年の間に、BUSHMINDは2011年『GOOD DAYS COMIN’』と2015年の『SWEET TALKING』という2枚のソロアルバムにROCKASENをフィーチャーし続けてきましたよね。

BUSHMIND:そうですね。俺としてはROCKASENに期待を寄せていて、ポイントごとにフィーチャーリングで参加してもらってたんですけど、そのすべてが最高の出来でしたからね。だから「やればできるじゃん!」って思ってたし、2人の背中をさらに後押しするために、ROCKASEN加入を宣言したんです。

BUSHMIND『SWEET TALKING』 サイケデリックBボーイ、BUSHMINDが2015年にリリースした3rdアルバム。最高のラッパー、ビートメイカーをフィーチャーし、ヒップホップの枠組みを拡張。その先進性は未だに更新されていない傑作。「Get Back」ではアシッド・シーケンスが走るテクノトラックでROCKASENがほとばしるようなラップを披露している。

BUSHMIND『SWEET TALKING』
サイケデリックBボーイ、BUSHMINDが2015年にリリースした3rdアルバム。最高のラッパー、ビートメイカーをフィーチャーし、ヒップホップの枠組みを拡張。その先進性は未だに更新されていない傑作。「Get Back」ではアシッド・シーケンスが走るテクノトラックでROCKASENがほとばしるようなラップを披露している。

— BUSHMINDにとって、これまでトラックを提供したり、自作でコラボーレションしてきた他のラッパーとROCKASENの違いというのは?

BUSHMIND:他のラッパーには、ある程度、そのラッパーの色だったり、ヒップホップであるかどうかを意識してトラックを渡すんですけど、ROCKASENの場合はそういうことを意識せずフラットな気持ちで作ってみて、それをまず2人に聴かせて、ラップできるかどうかっていう感じですね。

TONAN:いいトラックは、図々しく横取りさせてもらいましたしね。

BUSHMIND:正直渡したくない曲もあったんですけど、「この曲も欲しいっす」ってずっと言われて、しょうがなく最終的に渡したりして(笑)。でも、ROCKASENは期待を越えたものを返してきますからね。ダンストラックとして作っていた曲でも、2人のラップが乗ることで、ちゃんと成立したケースが過去に何度もあったし。例えば、曲でいうと……。

ISSAC:やっぱり、「Hard Drive」じゃないですか。

BUSHMIND:ああ。「Hard Drive」はもともとBPMがもうちょっと早めで、自分としてはハウス・トラックとして作ってたんですよ。それを2人に聴かせたら、やりたいっていうことになったので、BPMを落としてラップを乗っけてみたら、まさかの仕上がりになったっていう。海外は別として、日本ではROCKASENみたいにダンスミュージックを消化したヒップホップをやってるグループは他にいないんだからもっと胸を張っていいし、俺にとってもROCKASENは一番相性がいいと思ってから。

TONAN:そうですよね。ISSACともよく話しているんですよ。タカアキさんのトラックには俺たちが一番上手くラップをハメられるよね、って(笑)。

— それに対して、BUSHMINDからトラックを渡される側のROCKASENとしては、トラック選びの基準はいかがでした?

ISSAC:こっちもフラットでした(笑)。

BUSHMIND:2人ともヒップホップに限らず、いろんな音楽を聴くし、好みも近いので、お互いフラットなスタンスでいられたんじゃないですかね。

TONAN:僕らの制作は、以前はお金を払ってスタジオを使っていたんですけど、自分たちにとってのものづくりのキーポイントは、レコーディングしながら積み重ねていく過程で起きたハプニングをプラスに転換していくところだったりして。そうなると、スタジオを使う場合は時間が限られてしまうので、今の自分たちにはちょっとマッチしていなかったな、って。でも、今回はタカアキさんの家で作るようになったことで、時間や金銭的な制約が解消されたし、さらに言えば、友達の家で録ってるみたいな感じで、レコーディング前にゆっくり話をできる余地が生まれたんです。だからコンセプトを決めず、何も言わなくとも、3人それぞれの意図ややりたいこと、テンションが上手くマッチした作品に繋がったんだなって。

— いわゆる、ワン・ループの王道なヒップホップトラックでラップしてみたいという欲求は?

ISSAC:そういうゴリゴリなトラックでもやってみたいんですけど、その場合は自分のなかにあるROCKASENでのキャラクターとはまったく違う感じでやりたいんですよね。

— 変名とか?

BUSHMIND:覆面したりとか。でも、体型ですぐバレるっていう(笑)。

ISSAC:リリックに関しても、ROCKASENでやるからこそ扱わないテーマも自分のなかにはたくさんあったりしますし。

BUSHMIND:ハスリングとかイリーガルな側面はROCKASENでは出してないもんね。

ISSAC:そうですね。そして、ROCKASENでは聴いた人がどう思うか?ということであったり、聴いた人の頭のなかで絵が浮かぶような描写を意識しますし、自分の生活を描写するだけじゃなく、オチもきっちり付けるようにしました。

— トラックメイカーでもあるISSACは、ビートメイクにまで時間が回らなかった?

ISSAC:そうですね。『WELCOME HOME』までは、ミックスまで全部自分でやっていたんですけど、今はなかなか時間がなくて。それよりタカアキさんと遊びながら作るのがおもしろくて、タカアキさんが出した音にこちらから音を返すというやり方で、今回の作品に入っている「Intro A」を作ったんです。

BUSHMIND:ただ、ISSACのトラックメイクはラップの録りに応用していて、バラバラに録った声のパーツをビートにハメながら合体させていくんです。そのやり方は、自分にはないアプローチだったので、いい刺激をもらいましたね。

— そういうパッチワーク的な録り方、ハメ方であれだけ言葉をグルーヴさせられているのはスゴい。

BUSHMIND:そうかと思えば、TONANくんのラップは頭からつるっと録っていくんですよ。そのやり方の違いがROCKASENの個性のコントラストにもなっているんですよね。

— コントラストということでは、今回のアルバムは『TWO SIDES OF…』というタイトルが付けられていますよね。

TONAN:『WELCOME HOME』以降の6年は、劇的に自分たちの生活パターンや環境が変わり、それに順応しなければならなかったし、そのフラストレーションが試練みたいな感じでした。自分たちのなかで、相反するものの境目がはっきりした瞬間でもありました。そういった二面性の狭間でバランスを取りながら、アルバムを作っていたということもあって。

BUSHMIND:それでアルバム・タイトルを『TWO SIDES OF』にしたんです。

— この6年の進化ということでいえば、今回、ISSACが歌っているところもROCKASENの新機軸ですよね。

ISSAC:すごい勇気がいることだったんですけど、そうですね。今まではタイトにラップすることに注力していたんですけど、もう少しキャッチーな要素を入れたいなって思って、メロディをちょっと歌ってみました(笑)。

TONAN:ISSACはディアンジェロがすごい好きで、車の中で聴きながらよく歌うんですけど、歌うというより、歌い上げてるんですよ。すごく気持ち悪い(笑)。

ISSAC:ディアンジェロの歌にハモりにいくって感じで(笑)。

BUSHMIND:その話を聞かされて、そんな勢いで歌われたら……って思って、すごい不安でしたね(笑)。

ISSAC:それはそうですよね。自分としても歌ってますっていう感じを消さないと、下手の横好きになってしまうので、録音する時には、自分が歌いすぎてないかどうかをタカアキさんやTONANに逐一確認してました。

BUSHMIND:まぁ、でも、これからでしょ? 次はもっと歌っていくと思うんで(笑)。

— はははは。

ISSAC:今後、歌うかどうかはともかくとして(笑)、他と被らないように、新しいやり方はつねに模索していきたいなって。

TONAN:今までは僕がサビを作ったりしてたんですけど、その一方でISSACもノウハウを蓄積していたし、ラップの実験的なアプローチにトライしていたので、今回、ラップに関してはISSACに委ねましたね。

BUSHMIND:今回はISSACがサビを作った曲も多いし、レコーディングもかなり引っ張ってくれたもんね。

TONAN:僕が自分のことでいっぱいいっぱいだったということもあって。今までは楽しいだけでやっていたことが、今回は正直苦しかった時もあったんですよ。ただ、苦しみのなかでも真摯にラップと向き合えば、ちゃんといいものが生まれるということが分かったのは大きな収穫でしたね。

— その苦しかった部分っていうのは、何を歌うかっていう?

TONAN:そうですね。その気持ちの葛藤はリリックに表れていると思うんですけど、もともと、自分には強気なところもありつつ、タフなキャラクターを売りにしていたわけでもないので、その辺は包み隠さず素直に歌いました。その方が自分もすっきりするし、リアルに響くだろうなって。

— 今回のリリックのエモさは、BUSHMINDのトラックと相まって、ぐっと来ます。かつてのパーティ体験の回想を交えつつ、BUSHMINDのダンストラックに乗せているのはパーティラップでなく、音楽的にも、精神的にもダンスミュージックを消化したラップということになるのかな、と。

TONAN:自分たちの曲を改めて聴いてみると、悲しいことも結構歌ってて。それは意図してそうしたわけではないんですけど、フロアの楽しい時間にはどこか悲しさもあったりするじゃないですか。僕らがこれまで遊んできたパーティには、いろんな人にそれぞれのシチュエーションがあって、そういう状況下でみんなが言葉にせずとも、日々の生活で蓄積したものをぶつけて、一心不乱に踊ってる。そのギャップが楽しくも見えるし、悲しく見えたりもする。僕らのリリックは、そういう経験に培われたものだと思うんです。

— 70年代のアンダーグラウンド・ディスコシーンでは、魂を浄化して、明日の活力が得られる場所として、ディスコが教会と呼ばれていたのもまさにそういうことですしね。

BUSHMIND:たしかに。

TONAN:ホントそうですね。

BUSHMIND:最初、エモいリリックは避けて、遊んでることをもっと歌おうよってずっと言ってたんですけど、結果的にエモい方向でまとまって良かったかなって。ただ、エモいことを歌いはじめて、そこでストップしちゃう人はたくさんいますからね。

TONAN:昔はあんなハードだったのに、エモに走って、ストップしたアーティストもたくさんいるじゃないですか。それは避けたいというか、自分でもわかってるから大丈夫です(笑)。

BUSHMIND:まだまだ、これから先がありますからね。まぁ、でも、そう言いつつも、この6年で録り貯めた音源を俺のミスで全消去しちゃって、この作品も最後のところでつまずきかけたし。あの時は2週間くらい言い出せなかったな…。

TONAN:そのことを伝える電話がかかってきた時のことは鮮明に覚えてますもん。「大丈夫です、大丈夫です」としか言えなくて、でも、電話を切った後冷静に考えたら、そのヤバさに気づくという(笑)。

ISSAC:でも、データ復旧を経て、無事完成したわけですから、ROCKASENは今後も続けろよってことなのかなって(笑)。

TONAN:今回のアルバムは、コンセプトがあって作っていたものではなく、1曲ずつ作っていって、ある程度まとまったところで出そうと思っていたんですけど、音源が全消去されるというハプニングもあって、それが今回のリリースのきっかけになったわけだから、結果よかったなって。

— 今後のさらなる活動に期待しつつ、最後に、今回、DJミックスの制作を依頼したRYOSUKE氏について一言お願いします。

TONAN:RYOSUKEさんのスタイルはしっかりしたバックボーンがありつつも、ものの見方がフラットで、好奇心旺盛にして新しいもの好きだと思います(笑)。だから、僕たちがやってる音楽も素直に受け入れてくれるし、例えば、自分がいま好きな曲だったり、物事の話をすると、次会う時には掘り下げて、また、こちらにフィードバックしてくれる。いつまでもいい距離感でキャッチボールしてくれる、かっこいい地元の先輩です。ちなみにRYOSUKEさんは、WHITE HEAD EAGLEの初期メンバーでもあります。

ROCKASEN SoundCloud
https://soundcloud.com/rockasen

ROCKASEN『Two Sides of』

配信開始日:2017年2月17日(金)
配信サイト:bandcamp(https://rockasen.bandcamp.com) / AWA / Apple Music / Spotify
レーベル:ASSASSIN OF YOUTH

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