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MasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「Mastered Mix Archives」。今回登場するのは、スチャダラパーのANI、ロボ宙、AFRAからなるDonuts Disco Deluxe。
2010年に始動した彼らは、3人がDJを行いながら、マイクを持ち、DJユニットとライヴユニットの間を自在に行き来するパーティスタイルを熟成。その活動の場は、マンスリーのレギュラーパーティを行う恵比寿のBar Black Pantherからフジロック、はたまた全国各地のクラブと幅広く、状況やオファーに応じて、柔軟に形を変え、場を盛り上げてきた。
2014年に実況録音盤『LIVE! LIVE! LIVE!』を含め、5枚のストリート・ミックスCDをリリースしてきたものの、その活動にまだまだ謎が多い彼ら。今回はインタビューと提供していただいた実況DJミックスから、その実体に迫ってみました。
Interview & Text : Yu Onoda | Photo & Edit : Yugo Shiokawa | Special Thanks : Bar BLACK PANTHER
※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)
オールドスクール・ヒップホップ的にいえば、移動ディスコです。まぁ、レゲエのDJとMCみたいな、ああいうことをヒップホップっぽい感じでやりたいなっていう。(ANI)
— Donuts Disco Deluxeは結成が2010年になるんですよね?
ANI:そうみたいですね。もともとは渋谷のORGAN BARで、SHINGOSTAR主催のElectric Thunderというイベントがあって、この3人もDJやMCで参加していたんですけど、そこでやろうかって。あの、僕がパソコンでDJするようになったことをきっかけに(笑)。
— パソコンにしたことで、DJのモチベーションが上がったという?
ANI:そうそう(笑)。
— 重いレコードを持ち運ばなくてもいい、みたいな?
ANI:それもあるけど、パソコンの方がカッコイイかなっていう(笑)。
— 正しくヒップホップ的な、黒人的な、新しいもの好きな発想ですね。
AFRA:それ以前からANIさんがDJ、僕とロボさんがマイクを持ったりしてたんですけど、そのノリで何かやりたいですねっていう話になり、その時期にANIさんがSeratoでDJをやり始めて……。
ANI:なんか出来るんじゃないか?って(笑)。
— 非常にざっくりしてますね。
AFRA:はははは。それで最初はミックスCDを作って、そこからライヴをやるようになったんですよね?その時は今のようなルーティーンもなく……。
ロボ宙:うん。ANIのDJを即興的にマイクで煽って、ビートボックスやってっていうのがスタートですよね。
ANI:そこから俺だけじゃなく、2人もDJをやって、3人がマイクを持つのがいいんじゃないかなって。それで、ゲッターロボ的に、その場でフォーメーションが変わっていく今のスタイルになっていったという。
ロボ宙:全員がDJやって、マイクを握れるチームはなかなかいないと思うんで。
— 世の中的にはラッパー、ビートボクサーとして知られている3人ですし、その3人が同時にDJもやってるところが画期的ですよね。しかし、Donuts Discoっていうと、普通は7インチでディスコをかけるDJクルーを想像すると思うんですけど、最初の時点からパソコンを使っていると。
ANI:(笑)そう、ドーナツ盤とはあんまり絡んでないんです。
AFRA:まぁ、DJとしては、ソウルだったり、ファンク、ディスコを基本として、3人がそれぞれ好きなものをかける感じです。
— そして、この3人でやっているうちに、徐々にライヴのルーティーンが出来ていった、と。
ANI:そう、やっているうちに、ライヴのオファーが来るようになって。
AFRA:それもDonuts Disco Deluxeがライヴユニットなのか、DJユニットなのか分からないままのオファーだったりして(笑)。頼まれる時間も2時間だったり、20分だったり、バラバラなんですよ。
— 20分!?
ロボ宙:ライヴユニットという前提のオファーだったんでしょうね。
— なるほどなるほど。
ロボ宙:大体、ANIがDJやっているっていうのもね。呼んでくれた人はラップやるもんだと思うでしょ。「ああ、DJなんだ……」って思う人もいるだろうし、でも、意外とDJが上手かったりして(笑)。
AFRA:だから、それぞれの要望に合わせて、ライヴに凝縮したり、DJの時間を長くしたり。
ANI:練習したりもするしね。
— ちなみに、恵比寿のバー、ブラックパンサーでやってるレギュラーパーティは、朝まで3人が代わる代わるDJするタイムテーブルになっていますよね?
AFRA:一応、タイムテーブルはあるんですけど、イベントが始まったら、そこは流動的な感じで、「まだ、準備出来てないから、先にやってください」とか。
ロボ宙:「もうちょっと、DJ引っ張った方がいいな」とか。
— では、最短20分、最長一晩の幅で、Donuts Disco Deluxeは活動してると。
ロボ宙:3人がバック・トゥ・バックでDJすることもあるし、ここ最近はドーナツ盤タイムを設けて、ドーナツ盤だけでDJやってみようかってことにもなっていて。
— それも後付けで(笑)。
ANI:最近、ドーナツ盤が流行ってるから、流行りを取り入れていこうと思って(笑)。DJのスタイルとしては、2枚使いが基本としてあって。
ロボ宙:ちゃんと、『Ultimate Breaks & Beats』を使ってたもんね。
ANI:曲が短いから、DJは忙しくなっちゃうんだけど、そこはコンピューターだから、ループさせたりして、凄腕っぽく聴かせるっていう(笑)。
ロボ宙:まぁ、ANIが作ったエディットも何曲かあるしね。
— ちなみに使ってる機材はSeratoと……
AFRA:SP-404と、あとパッドですね。
ロボ宙:ヴォコーダーを使ってた時期もあるよね。ANIはマイクで煽るタイプではないから、ヴォコーダーは一時期多用してたよね。
AFRA:あと、気になる機材が出たから、買ってみようっていうANIさんの風潮もあり(笑)。
— AFRAくんのビートボックスがある時点で相当自由度は高いと思うんですけど、機材を交えるとなると、やれることは無限ですね。
ロボ宙:だから、DJとライヴの間のことが出来るんですよ。例えば、DJが盛り上がらなくなってきたら、「ビートボックスお願いします」とかね(笑)。
AFRA:「ちょうど、ドリンク買ったところなのに……」って思ったりしつつ(笑)。まぁ、でも、そういう感じでやりながら、「ここが良かったら、次またやってみよう」とか、そうやって試しながら、今に至っている感じです。
— 2014年に出たアルバム『Live! Live! Live!』は過去に録音したパーティの実況音源をメガミックス的にエディットした内容でしたもんね。
ANI:そう、毎回ほぼ録音していて、今までに2回やった九州ツアーでは、移動する車のなかで前日の音源を聴いて、反省会をやって、次のライヴに臨むっていうことを繰り返して、それによって、グループとしてだいぶまとまりましたね。
AFRA:Donuts Disco Deluxeの活動を考えるうえで、九州ツアーはデカかったですね。だって、ほぼ毎日ライヴをやってましたから、そうやってライヴをやりながら、自分たちでも何をやってるのか、ようやく分かってきたっていう(笑)。
— えっと、では、話を整理したいんですけど、Donuts Disco Deluxeはライヴユニットなんでしょうか? それともDJユニットなんでしょうか?
ANI:サウンドシステムです(即答)。
— なるほど。ワイルド・バンチみたいなものなんですね。
ANI:そう。オールドスクール・ヒップホップ的にいえば、移動ディスコです。まぁ、レゲエのDJとMCみたいな、ああいうことをヒップホップっぽい感じでやりたいなっていう。
ロボ宙:ね。ヒップホップの人たちはそういうスタイルでもっとやればいいのにって思うんだけど、あんまりいないんですよね。
AFRA:ヒップホップが生まれたばかりのブロンクスのあのイメージというか、こういう感じだったんじゃないかなって。
ANI:スチャダラのライヴは構成があって、きちきちやってるのに対して、Donuts Disco Deluxeはもっとユルくて……。
ロボ宙:どうにでもなる、どうにかするっていう(笑)。まぁ、自分は「悪魔の沼」みたいな、変化球なパーティでマイクを握ることが多かったから、Donuts Disco Deluxeのヒップホップなアウトプットが逆に新鮮っていう。
— 確かに、ロボさんは、ダンスミュージックの端も端の、一番エッジーなところで、マイクを握ってますもんね。同じく異種格闘技的なセッションが多いAFRAくんにとって、Donuts Disco Deluxeはどういう場なんでしょうか?
AFRA:めっちゃヒップホップですね。それから、2人とはキャリアが違うというのが、すごく大きくて。見てきた景色が全然違うというか、ゲッターロボしかり、僕が通ってないところ、普通では味わえない貴重な体験をさせてもらっているなって思いますし、3人のおもろいとするツボが若干ズレているんだけど、ステージに上がると一つのところに向かっていけるところにヒップホップを感じますね。なんせ、普段の自分はソロとして活動しているので、ヒップホップグループでの立場を意識しますね。
— では、ANIさんは?
ANI:スチャダラで出来ないこと、もっと昔っぽい感じ、初期ヒップホップの雑な感じで、それ用のトラックを作るわけじゃなく、ありもののレコードの上でラップする、そういうことをやりたいなって。
— 作品としては、ミックスCDが4枚にライヴ盤が出ているんですよね?
ANI:あと、Tシャツとか、グッズを売って、活動資金を作ってるっていう。
AFRA:だから、D.I.Y.ですよね。
ANI:そう、3人で全部やるっていう。
— 6年活動してきて、スタジオ盤を作ろうっていう話にはならないんですか?
ANI:話はしているんですけど、その先に進めないっていう(笑)。
AFRA:あと、SCANDALの……。
ANI:そうそう、シングルB面に入ってるラップ曲「ちぇりーじゃむ」のプロデュースをしたんですよ。
AFRA:それで自分たちでビートを作って、女の子になりきって仮のラップを乗っけたデモを作ったんですよ。
ANI:それをきっかけに、自分たちで7インチ・シングルを作りたいなと思って、そのためにTシャツ売ったり、機材を買ったりしているっていう。
AFRA:今年はやりたいですよねー。あとツアーは九州、広島、関西と、西日本を攻めたので、今年は東北に行きたいな、と。
ANI:スチャダラでは行けない小箱を回るのも面白いし。
ロボ宙:そうかと思えば、フジロックだったり、長野の志賀高原でやったクラフトビールのフェス(「SNOW MONKEY BEER LIVE」に出たりとか。
AFRA:沖縄のイベント、ASOBEACH!!!ではKOHHとかPSGとも一緒になったり、そういうのも新鮮でしたね。そのなかで、我々はオールドスクール感を醸し出してて(笑)。
ANI:古い!って感じで(笑)。
AFRA:まぁ、でも、今の若い世代にとっては、80年代、90年代のヒップホップが新しく感じるみたいで、新鮮に捉えて、楽しんでくれるのも面白かったりするし。今回、EYESCREAM.JPに提供する実況音源をきっかけに、各地からのライヴのオファーをお待ちしております(笑)。
Donuts Disco Deluxeへの出演オファーはこちらまで!
donutsdiscodeluxe@gmail.com