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MasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「Mastered Mix Archives」。今回登場するのは、YOUR SONG IS GOODのサイトウ “JxJx” ジュン。
ダンスミュージックに触発されたアルバム『OUT』を2013年にリリース。そして、昨年から今年にかけ、このアルバムから、Being Borings、Lord Echo、FORCE OF NATUREをリミキサーに迎えた12インチシングル「The Cosmos」、「Changa Changa」、「Re-search/Dripping」を発表しながら、JxJx氏はダンスミュージックへの傾倒を深めてきた。
今回のインタビューでは、ダンスミュージックが、JxJx氏の音楽観やバンドの活動にどんな影響を与えているのか。その魅力を含めて語っていただき、併せて、近年、DJブースに立つことも多い彼にDJミックスの制作を依頼。お気に入りのダンスミュージックに差し込まれるミステリアスなトラックの正体とは果たして?
Interview & Text : Yu Onoda | Photo & Edit : Yugo Shiokawa | Special Thanks : 終日one
※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)
ダンスミュージックの余白の活かし方をバンドに応用した場合、どういうさじ加減でやったら、上手く成立するのか。それはまさに今探っているところだったりするんですよね。
— JxJxさんとYOUR SONG IS GOODのここ最近の流れでいうと、2013年のアルバム『OUT』は、YOUR SONG IS GOODが美味く呑めそうな、ルーディーかつ折衷的な音楽性からダンスミュージックに大きくシフトした作品でしたよね。
サイトウ “JxJx” ジュン(以下、JxJx):あのアルバムのリリースから2年経って、自分のバンドの音楽性は『OUT』を軸につつ、今言ってもらったような、酒が美味く飲めそうな音楽要素も徐々に混ざってきていて、また、おかしなことになってきているんですよ(笑)。混ぜ方のイメージとしては……例えば、DJが延々テクノをプレイした後、突然、生音のレコードを差し込んだ時にドキッとするじゃないですか? ああいう感じが好きなので、バンドでそういった感覚の試行錯誤している最中だったりします。
— そして、その後のリリースとしては、昨年から今年にかけて、アルバム『OUT』から3枚の12インチ・シングルをリリースしましたが、Being Borings、Lord Echo、FORCE OF NATUREという3組のリミキサーはどのように選んだんですか?
JxJx:その3枚は、『OUT』でやっていることをダンスミュージックが好きな方々にも知ってもらいたくてリリースしたんですけど、『OUT』はダンス・ミュージック的な考え方ではあるものの、実際、僕らはバンドなので、ダンスミュージックとバンド的な考え方が拮抗したアルバムだったんですね
— 音的な部分でいえば、ダンスミュージックは低音が大事なのに対して、あのアルバムはバンドサウンドの旨味である中音域を活かしていましたし、楽曲の展開の付け方もバンドらしいものでしたもんね。
JxJx:ですね。で、あのアルバムにはその2つが拮抗する面白さを担ってもらいつつ、じゃあ今度は、このサウンドがダンスミュージック・カルチャーならではのリミックスという手法でガッチリそっち方面に料理されたらどうなるのかっていう興味が出来てきまして。リミキサー陣は、メンバー、スタッフと話し合うなかで、CRUE-Lの瀧見(憲司)さんのユニット、Being Boringsがいいんじゃないかっていう話になって。たしかエンジニアのトクちゃん(得能直也)が言ってくれたんですよね。で、瀧見さんとは個人的な接点がなかったんですが、むしろそれこそ逆に面白そうかもってことで。で、ダメ元でお願いしたら、快く引き受けてくれたんですよね。しかも、上がってきたリミックスが、とんでもなくヤバいもので(笑)。いや~、これは、興奮しましたね。そんな強烈な体験があったので、じゃあ、このリミックスをシリーズ化しようということになったんです。で、Lord EchoとFORCE OF NATUREに新たなリミックスをお願いしたんですけど、ニュージーランドのLord Echoはメールでのやり取りのなかで「今回、スゴいアイデアがある!」っていうドエラい返事が返ってきたりして、その人となりも知れたりして、おもしろかったです(笑)。
— Lord Echoは生音の扱い方が上手いから、相性のいい好リミックスでしたよね。
JxJx:おもしろい作品でした。ちなみにLord Echoと一緒にツアーした時に彼がライブでこのリミックスを演奏してくれたんですけど、あれはヤバかったです。
で、FORCE OF NATUREなんですけど、実はKENTとは彼が高校を卒業する頃からくらいからの知り合いなんですよ。というのも、彼の兄貴と僕は予備校、大学の同級生だったこともあって、あの頃は週2、3で遊んでたような気がします。当時の彼はヒップホップが好きで、四街道ネイチャーに加入するあたりの流れとか、その後、FORCE OF NATUREに発展して、なんて動向を20年くらいチェックしていたので(笑)、どこかのタイミングで何か一緒に出来ないかなと常々思ったんですよね。で、いよいよ来たな、と。まぁ気付いたらお互いに良い大人になっちゃってたんで、「友達なんだからやってよ!」みたいな頼み方じゃなくて、「曲を気に入ってもらって、やれると思ったら、KZAさんと相談していただいて……」っていう感じの丁寧なお願いになりましたね(笑)
— 結果的に、FORCE OF NATURE名義としては久々の作品が完成した、と。
JxJx:みたいですね。ちょうど、また2人が一緒に何かをやる時期が来たタイミングだったらしく。良い時期に頼めて良かったですね。で、これまた、FORCE OF NATURE節のヤバいリミックスを仕上げてくれた、と。シビれました。リミックスをお願いした3組に共通して言えるのは、音数が多かったり、起伏のある展開で色んな角度から聴けるオリジナルがダンスミュージックの観点からかなり絞り込まれたリミックスになっていたことが自分としてはホントおもしろくて。
— しかも、その3作をきっちりアナログカットしているところに、JxJxさんのダンスミュージックカルチャーやアナログに対する並々ならぬ愛情を感じます。
JxJx:僕は『OUT』くらいから、最近のハウスミュージックやディスコ・リエディットをアナログで聴いて楽しんでいるので、自分もそこに参加したかったという思いがあって。YOUR SONG IS GOODの前にやっていたFRUITYというバンドでLESS THAN TVから7インチシングルをリリースした時も、パンク、ハードコアのレコードの1枚に混ざりたいと思っていたんですけど、その時と今のテンションは一緒ですね。
— ここ最近はどういったダンスミュージックを聴かれているんですか?
JxJx:いや、それがもう、新譜を毎週チェックしていて(笑)。どんな音楽でも一緒だと思うんですけど、わからないないなりに興味がおもむくままにあれこれ聴いていると、自分のツボがだんだん分かってくるし、その好みがどんどん更新されていくじゃないですか? なので、ずっと興奮しっぱないなんですが(笑)、ニューヨークのレーベル、Mister Saturday Nightは本当に好きですね。パンクとハードコアのプレス数の少ないレコードが、スキモノたちにすごい熱量で共有されているムードと同じものをこのレーベルにも感じているんですけど。リリースされるどの作品も毎回最高で、Anthony Naples、Archie Pelago、そして、自分の場合、決定的だったのは、General Luddの「The Fit Of Passion EP」でした。最初はリリースされていたシングルを後追いで聴き始めたんですけど、気づいたら、「新しいのはいつ出るんだ」という状態になっていて(笑)。その話をイルリメくんにしたら、あのレーベルがニューヨークでやってる”Mister Sunday”っていう野外パーティの動画で盛り上がったりしてて「これ、遊びに行きたいね~」なんて言ってたんですけど。で、イルさんは去年の8月に行ったんですよね。自分はその時、ライヴの予定が入ってたので、行けなくて、気が狂いそうでした(笑)。
— あと、ここ最近、アナログがリバイバルしていますけど、ダンス・ミュージックのアナログって、300枚とか500枚限定が多いじゃないですか。
JxJx:そう、そう。だから、世界中で争奪戦になっていて、リリースをチェックしてないと買い逃しちゃうんですよね。渋谷のLighthouse RecordsにDisk Unionだったり、New Tone、Japonica、naminohana recordsやUndergroud Galleryのようなオンランショップまでチェックしていて。最新のロウハウスから、鍵盤弾き目線でグレン・アンダーグラウンドも聴きますし、ルーディなムードが漂うダビーかつ、トライバルなヤツや、絶対ハズせないのがFour Tet仕事全部。あとバンクーバーのMood Hutモノや、ドイツのMax GraefにGlenn Astroとかの新世代ビートダウン系、そういうレコードをカクバリズム内で勝手に流行らせたりしてますね(笑)。
— はははは、すごい楽しそう!
JxJx:でも、自分の場合、その前の時代の偉大なる先人たちやその歴史が抜け落ちているので、新譜をチェックしながら、その前の時代の音楽もちょっとずつ補完したり、サルソウルだったり、ディスコのレコードを聴き直して、トム・モールトンのような匠の仕事ぶりに改めて感心したり、新たな発見やつながりがあって、今、すごい楽しいんですよ(笑)。
— それこそ、カニエ・ウェストが新曲「Fade」で、Fingers Inc.の「Mystery Of Love」とHardriveの「Deep Inside」をサンプリングする時代ですからね。
JxJx:そう、あれヤバいですよね!そういう視点で、みんな面白い音楽を探しているんだなって。あと個人的にダンスミュージックを聴いていて面白いのは、音楽をやっているなかで、これまで自分があまり知らなかった力の入れ具合に触れることが出来るんですよね。例えば、ハードコアなんかは限界を振り切れていくテンションは、自分の表現において土台になっているんですけど、そうじゃない力の入れ方、抜け方がダンスミュージックにはあって、そういう音楽体験は自分が音楽を作るうえで新しい引き出しになっていってるんですよね。先月のこの企画でceroの高城くんがバレアリックの話をしていましたけど、今まで自分はああいう力を抜いた感覚で音楽を聴いてこなかったですし、ダンスミュージックの余白の活かし方をバンドに応用した場合、どういうさじ加減でやったら、上手く成立するのか。それはまさに今探っているところだったりするんですよね。
— バンドにはメンバー間の化学反応によって音楽世界を膨らませてゆく楽しさがあると思うんですけど、それとは別に個人名義でダンストラックを作ったりはしないんですか?
JxJx:実は今回のDJミックスにこっそり忍ばせてあるんですよ。
— おお!
JxJx:自分がDJする時にかけたいなと思って、そういう時にもこっそり忍ばせているんですけど、その瞬間、近くに友達がいたら、「これ、俺の曲!」って言ってます(笑)。
— ははは! キーボーディストだったら、そりゃ、作りたくなりますよね。じゃあ、遠くない将来、そうやって作った曲もリリースされるかもしれないと?
JxJx:そうですね。僕は色んなタイプの曲が好きなので、色んなタイプの曲を作っているんですけど、それをどう出すか。ダンスミュージックの人って、作品の方向性によって、リリースの名義を変えたりしますけど、バンドやってるとそういう発想はないじゃないですか。だから、ダンスミュージックのそういう軽やかな発想を楽しみつつ、自分の曲をそうやってリリースするのがいいのかなって考えているところです。
— じゃあ、最後に今回作っていただいたDJミックスについて一言お願いします。
JxJx:「いわゆる最高なヤツ」といっては自分を鼓舞して、毎週せっせと集めたレコード達で作りました。いま音楽を聴くのが本当に愉しいです。