Vol.41 DJ Highschool feat. CENJU

by Yu Onoda and Yugo Shiokawa

EYESCREAM.JPレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「EYESCREAM.JP Mix Archives」。今回登場するのは、12月10日に初のソロ・アルバム『MAKE MY DAY』をリリースするDJ Highschoolと、11月に同じく初のソロ作『CAKEZ』を発表したばかりのラッパーCENJUです。


Bushmind、Starrburstとのユニット、BBHの一員として、2012年にアルバム『THE ALBUM』をリリース。ERAやCAMPANELLAらのトラックを手掛けるプロデューサーであり、また、OS3としてERA、O.I.とともにD.U.O. TOKYOの一員として活動するラッパーでもあるDJ Highschoolは、WDsoundsより登場の『MAKE MY DAY』にD.U.O. TOKYO、仙人掌、CAMPANELLA、CENJUら、第一線のラッパーをフィーチャー。サイケデリックにバウンスする新感覚のヒップホップを展開している。
一方、DOWN NORTH CAMPに所属するCENJUは、初のソロ・アルアム『CAKEZ』において、BBH×MONJUのコラボ曲「SPACE BROTHERS」に象徴されるDOWN NORTH CAMPとWDsoundsのクロスオーバーをさらに発展。Mr.PUG、仙人掌、16FLIPからDJ Highschool、O.I.、ERA、jjj、PUNPEEまで、多彩な才能を迎え、鋭いワード・センスにさらに磨きをかけている。

そんな2人のインタビューとDJ HighschoolによるDJミックス+α(!)を通じて、2014年も多数の素晴らしい作品がリリースされ、大きな地殻変動が続くヒップホップ・シーンの最新レポートをお届けしよう。

Interview & Text : Yu Onoda | Photo & Edit : Yugo Shiokawa

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)

CENJUはダメ出しされた後にリリックを書き直して、俺がいない時に録ったテイクが最高なんですよ。だから、一回締め付けた後で解放するといい仕事をするってことが分かりましたね(笑) – DJ Highschool

— Bushmind、Starrburstとのユニット、BBHのアルバムから2年。当時のインタビューでは、ソロ・アルバムの構想は語っていませんでしたよね。

BBH『The Album』 Bushmind、Starrburst、DJ HIGHSCHOOLからなるサイケデリック三銃士がビーツで描いた傑作サウンド・アドヴェンチャー。マジカルなミステリーツアーにぐにゃりキラリと誘われる。

BBH『The Album』
Bushmind、Starrburst、DJ HIGHSCHOOLからなるサイケデリック三銃士がビーツで描いた傑作サウンド・アドヴェンチャー。マジカルなミステリーツアーにぐにゃりキラリと誘われる。

DJ Highschool:そうですね。あの頃もそれなりに真面目に音楽を作ろうと思ってたんですけど、活動していくうえで自分に何が必要か考えた時、決め手となるのは、ちゃんとしたアルバムだなって。まぁ、気づくの遅ぇよって話なんですけど(笑)、それ以前はただ曲を作ってるだけで、明確なものはなかったですし、あれこれ作っていくなかで分かることもあったりするじゃないですか。

— BBHの時に打ち出していた「サイケデリック・ヒップホップ」というキーワードはその一つですよね。

DJ Highschool:アンチコンから受けた影響もあったりして、好きな音色がどうしてもそうなってしまうというか。ディレイだったり、エフェクターが好きですし、サンプリングひとつ取っても、自分で手を加えたくなってしまうっていう。あとはシンセ使いにしてもそうですよね。ただ、以前は意識して盛り込んでいた要素が、その後の制作では自然と染みついて、さらに今は解像度が高いパキッとした音楽を目指しているんですよね。

— 今回のアルバムはどういうところから始まったんですか?

Prince Paul『Prince Among Thieves』 デ・ラ・ソウルの3rdアルバムまでの楽曲を手がけたことや、RZAらとの逆襲系ホラーコアユニットGravediggazの活動などで知られるプロデューサー、プリンス・ポールが99年にリリースした2枚目のソロ作。ストーリー仕立てで構成された、「聴く映画」ともいうべきコンセプトアルバム。

Prince Paul『Prince Among Thieves』
デ・ラ・ソウルの3rdアルバムまでの楽曲を手がけたことや、RZAらとの逆襲系ホラーコアユニットGravediggazの活動などで知られるプロデューサー、プリンス・ポールが99年にリリースした2枚目のソロ作。ストーリー仕立てで構成された、「聴く映画」ともいうべきコンセプトアルバム。

DJ Highschool:(WDsoundsオーナーのLIL)MERCYくんと話して、「まずはコンセプトを決めた方がいい」ということになって、あれこれ考えていたんですけど、自分の好きなアルバムにPrince Paulの『A Prince Among Thieves』があって。そのアルバムは、一日の流れのなかでストーリーが展開していく映画のような作りになっていて、自分もこういうアルバムを作りたいと思ったんですよね。でも、このアルバムでは、朝起きてから次の日の明け方までの時間軸のなかでの細かいストーリーはゲストのラッパーに自由に決めてもらって、自分はその背景を作ろうと。だから、同時多発的に同じ時間帯、何小節かで色んなやつが色んなことをしながら交差していく、そんな作品ですね。

— その枠組みを決めてから、アルバム制作をスタートさせたと。

DJ Highschool:そうですね。でも、作り始めてから完成まで1年半くらいかかったんですよ。いざ、自分のこととなると、どうしても盛り上がるタイミングを重視してしまうので、気分が乗らない時は置きっ放しにしてしまったり。そうこうしながら、制作に本腰が入ったのはラップを録り始めた今年の夏くらいですかね。

CENJU:僕のアルバム制作と同時期に進行していたんですよ。使うスタジオも被っていましたしね。

CENJU『CAKEZ』 2013年にリリースされたQROIXとのアルバム『THANKS GOD, IT’S FLYDAY!』を経て、多数のラッパー、トラック・メイカーを交えながら、ブルージーかつポップなフロー&ライムを際立たせた初ソロ・アルバム。

CENJU『CAKEZ』
2013年にリリースされたQROIXとのアルバム『THANKS GOD, IT’S FLYDAY!』を経て、多数のラッパー、トラック・メイカーを交えながら、ブルージーかつポップなフロー&ライムを際立たせた初ソロ・アルバム。

DJ Highschool:そうだね。CENJUのレコーディングは2月くらいから始まって、一緒に遊ぶようになったのもその頃かな。CENJUにしてもそうなんですけど、ここ最近はILL-TEEのアルバムに参加したり、今回のアルバムでも、JUCEとCOOKIE CRUNCHっていう若い子をフィーチャーしたり、SEMINISHUKEI以外の人と一緒に曲を作ったりすることが増えたんですね。あと、BBHの制作と並行して、機材をパソコンに変えたんですけど、その後、ラップのためのトラック制作を意識的にあれこれやってきたこともあって、今回のアルバム制作では機材の使い方を理解したうえで進めることが出来たということもあるし、聴く音楽も変わって、攻撃的なヒップホップを聴くようになったり、DJ Bisonとバウンス・ヒップホップに特化した(DJユニット)Foot Clubを始めたことも影響は大きいですね。Foot Clubに関しては、音だけじゃなく、歌詞も考慮に入れて、曲のセレクトはかなり厳選していますしね。

— なるほど。

DJ Highschool:バウンス・ヒップホップを聴くようになって、どうやら自分は電子音が好きらしいということに気づいたところはあって。サンプリングを活かしたザ・90’sヒップホップより、自分にはドラムがTR-808とか909だったり、シンセが入っていたり、そういうヒップホップがしっくりくるんですよ。BPM的に速いテンポの音楽を聴くなら、自分はテクノやハウスよりハードコアを選ぶんですけど、電子音楽という意味ではアンチコンと並行してエレクトロニカを聴いていたことも影響しているような気もするし、いまさら、王道のヒップホップに則って、大ネタを掘るのもね。

CENJU:いまさら「Boot Campが~」って言われたら、俺、困るもん(笑)。

— DJ Highschoolの場合、シリーズで出しているビート集『Bedtime Beats』ではインディ・ロックをサンプリングしたり、大ネタを知らないところが逆に個性になってますもんね。

DJ Highschool a.k.a. SONETORIOUS『Bed Time Beats Online』 CD-Rでのストリート・リリースが4作を数えるDJ Highschoolのホームワークにして、インディ・ロックほかのオルタナティヴなサンプリングネタを活かした人気ビーツ集のオンライン版。

DJ Highschool a.k.a. SONETORIOUS『Bed Time Beats Online』
CD-Rでのストリート・リリースが4作を数えるDJ Highschoolのホームワークにして、インディ・ロックほかのオルタナティヴなサンプリングネタを活かした人気ビーツ集のオンラインリリース版。

DJ Highschool:まぁ、それもやりすぎるとキワモノ・キャラになっちゃうので、どうかと思うんですけど(笑)、自分の場合、音に黒さは求めてないですね。

— あと、Highschoolは趣味でパワー・バイオレンス系のハードコア・バンドをやってますけど、バンド経験はトラック作りになりかしら影響しているんですかね?

DJ Highschool:曲に展開を付けたくなったり、楽器を弾きたくなるところに影響はあるかもしれないですけど……。

CENJU:あと、僕のアルバムに提供してもった曲では「こういう風にラップして欲しい」っていう細かいディレクションが入りましたからね。

DJ Highschool:ああ、そういう部分はバンドをやってるからなのかもね。

CENJU:D.U.O.の2人をはじめ、交友関係も広がったし、自分の今回のアルバムは、OS3(DJ Highschool)と知り合ったことが大きくて。

— 確かに、今回のアルバム『CAKEZ』は、CENJUくんが所属しているDOWN NORTH CAMPとLIL MERCY、DJ HighschoolがいるWDsoundsの接点を象徴する作品ですよね。

DJ Highschool『Make My Day』 持ち前のサイケデリック・タッチにバウンス感覚が加わった新感覚なトラックを背景に、朝から夜明けまで続く最高な一日の流れをフィーチャリング・ラッパーたちが描き出す待望のファースト・アルバム。

DJ Highschool『Make My Day』
持ち前のサイケデリック・タッチにバウンス感覚が加わった新感覚なトラックを背景に、朝から夜明けまで続く最高な一日の流れをフィーチャリング・ラッパーたちが描き出す待望のファースト・アルバム。

DJ Highschool:そうですね。今までは活動している場所が違うから交差していなかっただけで、結局、それぞれがやってることはあんまり変わらなかったっていう。ただ、酒飲んでるだけなんで(笑)。

CENJU:知り合った頃は2人で朝まで飲むのが日課になっていて。気が付くと朝11時っていう(笑)。

DJ Highschool:『CAKEZ』に入ってる「夜の帳」なんかは、そんななかから生まれた曲だったりして。

CENJU: トラックをもらったその日に、OS3のプロデュースでその場で録りましたからね。それ以外の曲も、ラップを録ってる時にOS3がいることが多くて、「どう?」って聞くと「もう1回!」とか言うんですよ。ホントうるせえなって感じでしたね(笑)。

DJ Highschool:CENJUのアルバムでは「UNTITLE DANCING」という曲で俺がjjjと一緒にラップしてるんですけど……。

CENJU: その16FLIPのトラックが届いた時もそういえば一緒にいて、聞いてみたら、OS3がラップやりたそうだったので、それを察して、「やる?」って聞いたという(笑)。

DJ Highschool:そのトラックはビートがオンじゃなく、敢えて外していて、すごいラップがしやすかったんですよ。「あ、こういうことか」と思って、CENJUのアルバムでもう1曲「maby c」のトラックを作ったんですよ。

— CENJUくんとDJ Highschoolの間ではそういう相互作用があったと。

DJ Highschool:でも、今回、CENJUとそういうやり取りを重ねるうちに、CENJUはダメ出しされた後にリリックを書き直して、俺がいない時に録ったテイクが最高なんですよ。だから、一回締め付けた後で解放するといい仕事をするってことが分かりましたね(笑)。

CENJU:OS3のアルバムで俺がILL-Tと一緒にやってる「Go Dumb」のレコーディングはあまりに締め付けが厳しくて、1回逃げだしましたからね(笑)。

DJ Highschool:第一声の最初の言葉を聞いた瞬間に「言葉がダサい。はい、やり直し!」って(笑)。でも、逃亡した後、次のレコーディングは早かったですよ。

— DJ Highschoolのトラックが浮遊感を特徴としているのに、その作り方に緩さは全くないという。

DJ Highschool:そうですね。簡単にOKを出したら、制作はスムーズに進むんでしょうけど、何年後かに絶対後悔する日が来ると思ったら、どうしてもシビアになっちゃうんですよ。だから、Toshi Mamushi、Nero、Campanellaの名古屋勢をフィーチャーした「Sunshine & City Lights」もNeroが「ヤバい曲が出来たんですよ」って、録ったラップを送ってきたんですけど、アガってるところで「や、ちょっと違うんだよな」って答えたら、向こうはざわついてましたからね。

CENJU:俺にとっても、やり直しを食らう環境は今回が初だったんですよ。今までは身内でしかやったことがなかったので、井の中の蛙だったというか、これまでのやり方は通じなかったという。

— でも、その結果、濃密なトラックでCENJUくんのラップは相当にキレてますもんね。

CENJU:俺、不協和音的なトラックの方が好きなんですよ。果たしてこれで合ってるんだろうかと思いつつ、その方がストレートにラップ出来るんですね。ラップ自体は締めるところは締めつつ、相当に遊ばせてもらいましたね。

DJ Highschool:CENJUはクラブでずっとラップしてきた自分のなかの自信があるからこそ、時に調子に乗るんですよ(笑)。だから、「じゃあ、テメエ、やれよ!」って言いたくもなるっていう。

CENJU:「じゃあ、テメエ、やれよ!」って、ここ1年で何回言われたことか(笑)。

— そのやりとりはまさにパワー・バイオレンスですね(笑)。

NERO『BEAUTIFUL LIFE』 Campanella、TOSHI蝮、Yuksta-Illなど実力派揃いの東海シーンから、今年の10月に投げ銭形式でリリースされたNEROのオンラインアルバム。今の名古屋を知るには欠かせない重要作。

NERO『BEAUTIFUL LIFE』
Campanella、TOSHI蝮、Yuksta-Illなど実力派揃いの東海シーンから、今年の10月に投げ銭形式でリリースされたNEROのオンラインアルバム。今の名古屋を知るには欠かせない重要作。

DJ Highschool:NEROとかもそうなんですけど、「自分はラップ出来る」って言うやつほど勝負しないと意味ないし、出来るんだったら、1回くらいダメ出ししても大丈夫でしょっていう。

CENJU: 今まではダメ出しされなかったから、ラップは簡単だと思っていたんですけど、今回、初めてダメ出しされて、迷宮に足を踏み入れてしまったという(笑)。

DJ Highschool:でも、負けず嫌いだからやり直すんですよ。そこで初めて作品になるんじゃないですかね。

— 日の時間軸が与えられたDJ Highschoolの『MAKE MY DAY』に対して、CENJUくんの『CAKEZ』には何か作品のテーマがあったんですか?

CENJU:何年も待ってたんですけど、みんなフィーチャリングしてくれないんで、こっちからフィーチャリングしてやろうかなっていう(笑)。

— はははは。

CENJU:だから、俺が誰かをフィーチャリングした形になっているんですけど、イメージ的には逆なんですよ。

DJ Highschool:自分のアルバムなのに自分がフィーチャリングされているっていう(笑)。まぁ、でも、全曲フィーチャリングもので、1曲もソロがないのに、それを気づかせないのはCENJUの人間性ですよね。まぁ、人間性とはいっても、実生活を見たら、なんだ、こいつらって感じですけどね。

CENJU:毎日、2人でビール1ケース開けて、10キロ太りましたからね(笑)。

— そうやって、『Make My Day』の最高な一日が作られたと。じゃあ、最後に今回お願いしたDJミックスについて一言。

DJ Highschool:今年はアルバム制作に集中していたので、気づけば、ミックスはほとんど出さなかったんですけど、今回のアルバムはヒップホップ・アルバムということで作ったので、ミックスもアルバムに即して、いま自分が好きでよく聴いてるヒップホップでまとめてみました。

「Mastered」は、
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新しいファッション&カルチャーメディアです。