Vol.23 Calm – 人気DJのMIX音源を毎月配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Yugo Shiokawa

MasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「Mastered Mix Archives」。今回登場するのはプロデューサー、DJのCalmこと深川清隆氏です。


Calmでの活動を軸に、Organ LanguageやK.F.、THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOとのJAPANESE SYNCHRO SYSTEMといった様々な名義での作品リリースほか、2002年にはバレアリック・リヴァイヴァルの先駆けとなるデンマークのレーベル、MUSIC FOR DREAMSよりコンピレーション・アルバム『Free-soil Sounds For Moonage』をリリースし、国内はもちろん、海外でも高く評価されている彼は、この夏、謎めいた新プロジェクト、Cosmic Blessing Ensembleでのライヴ活動をスタート。


このインタビューでは、長年に渡って育まれてきた音楽観を紐解きながら、音響や音質への飽くなき追求とそれらがもたらす音楽の楽しみについて語っていただくと共に、壮大な長尺DJミックスを提供していただいた。

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)

人間が五感、六感でアートを認識する感受性をデジタルが削っているような気がして、どこか疑問があるんだよね

— 最初の作品リリースから今年で15年になるんでしたっけ?

Calm:いや、恐らく、16年目になるんじゃないかな。俺も不確かなんだけど(笑)。

— その間、主軸のプロジェクトであるCalm以下、Organ LanguageやK.F.、THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOとのJAPANESE SYNCHRO SYSTEMといった様々な名義での作品リリースがありますよね。

Calm:同じ名義で、作品ごとにファンクやったり、フォークやったり、音楽性ががらっと変わる人もいるけど、名義を変える方が出す方にとっても明確だし、聴く方にも分かりやすいじゃない? 新しいプロジェクトを立ち上げた時点では多少コンセプトもあったりするから、あれこれ言い訳を付けたりもするけど、結局のところ、名義を使い分けている理由はその点に尽きるよね(笑)。

— はははは。いきなりぶっちゃけますね。個人的には、深川さんのどの作品からも、メロディ・オリエンテッドな音楽を聴き込んできた蓄積がにじみ出ているように思います。

Calm:メロディって、つい入れたくなるんだよね。基本的に俺はいつも、出音の音色と絶妙なコード感、それに合ったグルーヴを基本としていて、そうした要素のループだけで楽しめるように音楽を作ってて。でも、ついつい、そこに乗るメロディとハーモニーを入れたくなっちゃうっていう。

— その点に関していえば、深川さんはCalm以前に、ギタリストとしてバンドで活動されていた経験が大きいんじゃないかな、と。

Calm:そうだね。やってたバンドにはヴォーカリストもいたし、ギターソロも入れたりしていたし、その経験はすごく大きいかも。そのバンドのメンバーが就職を機にどんどんいなくなって、一人になった時に、それだとバンドは出来ないじゃない? そこでプログラミングを用いて、たまたま作ったのが今のスタイルになったんだけど、それは「これを作ろう!」と強く思って作ったわけじゃなく、川が流れるように自然とCalmは始まったしね。

— なるほど。

Calm:ただ、俺みたいにバンドをやってて、コードだったり、メロディ・メイクやアレンジに多少の理解がある人間は、そういうものが分からないままに作った音楽に対して、「すごいな。どうして、こういうアイディアが浮かぶんだろう。法則を無視してても格好いいな」って思うようになるんだよね。で、そういう音楽を作ってみるんだけど、なかなか思うようにいかなくて、そこで一回壁にぶつかる。逆に音楽のルールが分からないまま、わーっと作る人も何作か重ねていくうちに、「自分もコードを入れてみたい」って思ったりして、そこで壁にぶつかる。
だから、いずれのサイドから音楽にアプローチしても、ぶつかる壁は存在していて、そこを通過できるかどうか。音楽なんて、バンドをやってようがやっていまいが、機械がいじれようがいじれまいが、最初は誰でも作れるし、俺は「誰だって名曲1曲と名アルバム1枚は作れる」ってよく言ってるんだけど、音楽が好きな人なら、それは絶対出来る。ただ、難しいのはそれを続けていくこと。

— では、この16年で深川さんが最初にぶつかった大きな壁というのは?

Calm 『Moonage Electric Ensemble』 Calmの名を知らしめた1999年の傑作アルバム。星野之宣によるスペース・コミック『2001夜物語』に触発されたサウンド・ストーリーとバレアリック・フィールがメロディアスに響き合っている。名曲「Light Years」収録。

Calm 『Moonage Electric Ensemble』
Calmの名を知らしめた1999年の傑作アルバム。星野之宣によるスペース・コミック『2001夜物語』に触発されたサウンド・ストーリーとバレアリック・フィールがメロディアスに響き合っている。名曲「Light Years」収録。

Calm:(1999年に)セカンド・アルバム『Moonage Electric Ensemble』が出た頃くらいかな。自分がコツコツやってきたことと急に成功したこと、自分の気持ちと周りのスピード感のギャップがすごすぎて、自分のなかで消化しきれなかった。だって、自分のなかでやりたいことが100%固まっていない時にいきなり評価されるようになったら、そりゃ、悩むよね。
そこでぶつかった壁は、その後、リミックスだったり、ライヴをやったり、そのライヴ・アレンジを試行錯誤しながら、Calmの穏やかな面とはまた違った部分を掘り下げることで、壁を乗り越える術を自然と体得していった感じかな。

— そして、ここ最近の作品では、制作環境とリリース・フォーマットの両面から音質を追求されていますよね。

Calm:音質や音響面で一番最初に気づかされたのは、俺は基本としてコンピューターで音楽を作っているんだけど、そのコンピューターを動かす電気をきれいにするところから始まるんだよね。あれは2003、4年くらいだったと思うけど、エンジニアの得ちゃん(得能直也)から「電気をきれいにする機械があるから、それを通せば、音がめちゃくちゃきれいに鳴りますよ」って話を聞かされて、すぐに試してみたら、ホントにびっくりするくらい音がきれい鳴ったのね。
それ以前は音楽家なんて、曲さえ作れば良くて、音を作るのはエンジニアだと思っていたんだけど、それを境に音質や音響を追求するようになって研究が始まった感じ。周りにもそういうことにこだわってる友達がいっぱいいたし、青山CAYでやったり、現在は札幌フィルモアノースでやってるデヴィッド・マンキューソのLOFTパーティへ遊びに行くようになったことで、聴く面でも音響や音質に興味を持つようになった。
あと、俺はコンピューターが縁遠かったバンド時代にカセットMTRで録音するところからスタートして、アナログ・シンセ、デジタル・シンセをMIDIのシーケンサーで動かす時代、コンピューターをシーケンサーにして、色んなシンセを動かす時代を経て、コンピューターにシンセが入る時代……そういう変遷を運良く体験出来たから、コンピューターの電源を変えたことをきっかけに、今までの経験を活かしながら、音にこだわることが出来るようになったっていう。

— 電源ケーブルしかり、電源周りを変えることで音の鳴りは劇的に変わりますもんね。

Calm:そうだね。そういう気づきを経て、なんとなく、もやーっと「いい音にしたい」と思いつつも、雲に隠れて見えなかったその先がばっと晴れて、目標が見えた。で、「あ、あそこに行きたい!」って思ったんだよね。そこからはもう片足を突っ込んじゃったわけだから、リスニング面でもレコードの針にこだわったり、どんどん進化していったし、音源製作でも自分でミックスをするようになると、ミックスする以前のもともとの音が良くないと、いい音の作品にならないことにも気づいて。以前は「それはエンジニアの仕事でしょ!」って思っていたんだけど、もともとの音が良くなきゃ、それは無理だって気づいて、そこから自分の出す元の音も良くするように意識するようになったんだよね。

— 音の鳴りの良さを追求するようになると、作品には入っていたものの、鳴っていなかった音が聞こえるようになったり、音の質感の違いで音楽を楽しめるようになったり、音楽の捉え方もがらっと変わりますよね。

Calm:変わる変わる。だから、自分の過去の作品をいま聴くと恥ずかしくなるもんね。もちろん、当時の作品を今作ろうと思っても、それは不可能なことなんだけど、その初期衝動性やアイディアは良くても、音の部分ではもっと色々出来たなって思うし、それが形になっていたらその後の進むべき道も違ったんだろうなって思ったりはするかな。

— 海外と比べると日本はまだCDが売れていますけど、全体の流れとしては、レコードより音質が落ちるCD、さらにそれより低音質のMP3で音楽が聴かれる方向に向かっていますよね。今の時代における音楽の楽しみ方について、深川さんはどう思われますか?

Calm『Mellowdies for Memories...Essential Songs of Calm』 2011年にリリースされたCalm初のベスト・アルバム。チルアウト、バレアリック、アンビエント、ジャズをはじめとするブラック・ミュージック、ダンス・ミュージックを融合、熟成させた14年のキャリアが全10曲に凝縮されている。選曲はBar Music店主、MUSICANOSSA主宰の中村智昭氏が担当。 「Feel My Heart(Full Ver.」と「Sunday Sun(Live)」という2曲の未発表エクスクルーシブ音源を収録。

Calm『Mellowdies for Memories…Essential Songs of Calm』
2011年にリリースされたCalm初のベスト・アルバム。チルアウト、バレアリック、アンビエント、ジャズをはじめとするブラック・ミュージック、ダンス・ミュージックを融合、熟成させた14年のキャリアが全10曲に凝縮されている。選曲はBar Music店主、MUSICANOSSA主宰の中村智昭氏が担当。
「Feel My Heart(Full Ver.」と「Sunday Sun(Live)」という2曲の未発表エクスクルーシブ音源を収録。

Calm:楽曲のクオリティは昔と比べて下がってるとは思わないし、その時々で色んなアイディアが出てきて、面白い音楽やシーンが生まれて、それがまた淘汰されて、次の時代の音楽やシーンが生まれてっていう流れは常にあると思うんだけど、こと、音質のクオリティの面に関しては、一度落ちちゃったよね。それは聴く側もそうだし、作り手もそうだと思う。というか、作り手がそういう意識だったら、聴き手はそうやって作られた音源を聴かざるを得ないから、聴く人の耳も退化していくだろうし、さらにはその音源がMP3で聴かれることになるでしょ。音楽って、楽曲のクオリティだけじゃなく、いかに心に響かせるかっていう作業が一番地味でありながら、その点を向上させていくことで浸透度合いが一番強くなるわけで、2000年代はそのためにかける手間とアイディアが軽視されていたんじゃないかな。

— そうですね。

Calm:みんなね、楽な方に進むじゃない? 例えば、DJにしたって、昔はレコードカートをゴロゴロ転がしていたのに、いまはUSBスティック1本になったり、ファイルが軽くて、動きも早いMP3でプレイする人が増えているけど、扱いは楽な反面、多くの場合、音のクオリティは明らかに落ちてるし、そうやって楽することとクオリティの差をまずは発信者がもうちょっと見極めた方がいいよね。現場でserato SCRATCH LIVEを使ってるDJ KRUSHさんにしろ、Traktorを使ってるフランソワ・ケヴォーキアンにしろ、CD-Jを使うアンドリュー・ウェザオールにしろ、プレイする音を事前に吟味したり、自分でハイビットなマスタリングを施したりしているからこそ、プレイする音にあれだけ威力があるのであって、それ以外の表面的な部分だけを真似してもダメなんだよね。
それはサウンド・システムにもいえることであって、「LOFTはクリプシュ・ホーンのスピーカーを使ってるから、あんなにいい音がするんだ」ってことではなく、あのスピーカーはめちゃくちゃシビアなセッティングが必要で、それが出来て初めて、デジタルのイージーな音を軽く凌駕する音が出るし、設定に失敗すれば、ちょっとしたコンポを下回る音にもなるしね。

— だから、そのセッティングがばっちり出来るようになるためには、それ相応の時間と手間、蓄積した知識や経験が必要になると。

Calm 深川清隆のソロ・プロジェクト。97年のデビュー以来、Calm、Organlanguage、K.F.、THA BLUE HERB/BOSSとのユニットJapanese Synchro Systemなど、様々な名義を使い分けて幅広い楽曲を生み出し、現在に至るまでほぼ毎年フルアルバムなどをリリース。DJとしても、『Bound for Everywhere』と『Oasis』という2つのレギュラー・パーティーを中心に全国各地でプレイ。2013年夏、謎めいた新プロジェクト、Cosmic Blessing Ensembleを始動し、今後の展開が注目されている。 http://www.music-conception.com/calm/

Calm
深川清隆のソロ・プロジェクト。97年のデビュー以来、Calm、Organlanguage、K.F.、THA BLUE HERB/BOSSとのユニットJapanese Synchro Systemなど、様々な名義を使い分けて幅広い楽曲を生み出し、現在に至るまでほぼ毎年フルアルバムなどをリリース。DJとしても、『Bound for Everywhere』と『Oasis』という2つのレギュラー・パーティーを中心に全国各地でプレイ。2013年夏、謎めいた新プロジェクト、Cosmic Blessing Ensembleを始動し、今後の展開が注目されている。
http://www.music-conception.com/calm/

Calm:そう。最大限に音楽を楽しむためには、よりよい音を求める貪欲さが必要なんじゃないかな。同じ音楽だったら、より感動する音で聴きたいし、その作品の持つポテンシャルを最大限に引き出すために、レコードをきれいに磨くとか、そうやって段階を踏まえていけば、より良いレコード・カートリッジが欲しくなるし、いいアンプも揃えたくなるし、よりよく音楽を楽しむための工夫は色々出来るじゃない? でも、音楽を楽しむうえでの貪欲さが今の時代に損なわれているのは、「みんな、音楽に使うお金がないんだ」とか、「音楽以外のエンターテインメントが増えたからだ」みたいな分析がされたりしているけど、俺が思うに、携帯電話とパソコンの進化によって便利になった反面、人間が本来持っている動物的な感性、動物的勘や本質的な感受性をどんどん退化させているからという気がするんだよね。だって、音楽なんて、リズムとか音量のダイナミクスなんかが動物的な感性に、コードとかメロディなんかは人間の進化した脳にそれぞれ訴えかけるものじゃない? 。

— そうですね。でも、例えば、CDなんかは可聴領域が20kHzに決められていて、それ以上の音は人間の耳では聞こえないからという理由でカットされている。音楽がそういう不自然な形になったからこそ、音楽の潜在的な力が損なわれているんじゃないかという説もありますよね。

Calm:デジタル・サウンドはアナログと比べると音質的な部分ではクリアだから、そういう部分がもてはやされていたけど、デジタルのクリアなサウンドはもともと自然界には存在しないものだからね。CDがカットする20kHz以上の帯域にしても、聴感上、認識出来ないっていうけど、音楽は耳だけでなく、体でも聴くし、無意識に知覚している部分もあるんじゃないかと思うんだよ。だから、決して否定しているわけではないんだけど、人間が五感、六感でアートを認識する感受性をデジタルが削っているような気がして、どこか疑問があるんだよね。
デジタルか、アナログか、最終的には好みや時代性もあるから、なんとも言えないし、両方を実際に比べてみたり、その違いを認識する情報がなければ、分からない人には分からないだろうし。でも、個人的には、音楽の本質の部分、耳と心をつなぐバイパスのありなし、キャッチーなメロディが耳を捉えた先で心に浸透する度合いとか、地味なサウンドのテクスチャーがじわじわと伝わっていく具合はアナログとデジタル、音質や音響でだいぶ変わってくるんじゃないかなって。
でも、メジャー・レコード会社は音質や音響を軽視して、いま流行りの、分かりやすいキャッチーなコードとメロディということばかりにフォーカスした音楽を量産しているわけで、それを続けていると、長い目で見たら、自分たちの首を絞めることになるような気がするし、その影響は音楽シーン全体に及んでいくんじゃないかっていう心配があるんだよね。

— だからこそ、ダフト・パンクは新作アルバムをホーム・レコーディングではなく、ちゃんとしたスタジオでトップ・プレイヤーのセッションを元にした制作を行うことで、利便性追求の犠牲になっていた「音楽」を取り戻したかったと、最近のインタビューで語っていましたよ。

Daft Punk『Random Access Memories』 ネイザン・イースト、オマー・ハキムといったトップ・プレイヤーたちとのセッションをベースに、ナイル・ロジャースやジョルジオ・モロダーといったディスコ・レジェンドからファレル、ストロークスのジュリアン・カサブランカス、パンダ・ベアーら、コンテンポラリー・アーティストをフィーチャーした8年振りの最新作。

Daft Punk『Random Access Memories』
ネイザン・イースト、オマー・ハキムといったトップ・プレイヤーたちとのセッションをベースに、ナイル・ロジャースやジョルジオ・モロダーといったディスコ・レジェンドからファレル、ストロークスのジュリアン・カサブランカス、パンダ・ベアーら、コンテンポラリー・アーティストをフィーチャーした8年振りの最新作。

Calm:あの人たちは賢いから、このままデジタルで行っちゃったら、自分たちが終わっちゃうことに気づいてるんだろうね。だから、人間味やデジタルじゃない自然な部分を意識して、録音に関しては、プロツールスだったり、どうしても、デジタルなものになっちゃうから、それを補うアナログの機材だったり、人間の演奏力を面白がりながら、作品を作ったんだと思うんだよね。
ジェイムス・ブレイクも楽曲の革新性だけじゃなく、低域の出し方とか空間の作り方を通じて、「いい音とは?」という問いについて、みんなが気づくきっかけを与えてくれているよね。だから、彼らの功績には感謝しているよ。
それにさ、今でもちゃんとしたライヴには人が集まるじゃない? ライヴはコンピューターを使っていようが、デジタルの卓を使っていようが、アナログな要素もあったりするし、耳から心に通じていくバイパスがあるからこそ、もう一回行こうと思うんじゃないかって気がするし、ジャケット付きのCDやアナログで楽しむことが出来る視覚や触感から心に通じるバイパスを意識したら、CDのコピーでは満足しなくなってくるんじゃない?。

— 深川さんも、2010年にアルバム『Calm』のハイビットマスター版である24bit/88.2khzのDVD-R(通常のCDは16bit/44.1.khz)をご自身のウェブ・サイト限定で販売されましたし、2012年にリリースしたCalm Presents K.F.のアルバム『Dreamtime From Dusk Till Dawn』は24bit/88.2khzハイビット音源の配信と後送するパッケージを組み合わせて販売したり、試行錯誤されていますしね。

Calm Presents K.F.『From Dusk Till Dawn』 ダンスとチルを内包した夕暮れから夜明けまで展開される一夜のストーリーを思い描きながら制作された2012年の最新アルバム。この作品から派生したアナザー・アルバム『Dreamtime From Dusk Till Dawn』のリリースと24bit/88.2khzハイビット音源も配信されている。 http://ototoy.jp/_/default/p/26700

Calm Presents K.F.『From Dusk Till Dawn』
ダンスとチルを内包した夕暮れから夜明けまで展開される一夜のストーリーを思い描きながら制作された2012年の最新アルバム。この作品から派生したアナザー・アルバム『Dreamtime From Dusk Till Dawn』のリリースと24bit/88.2khzハイビット音源も配信されている。
http://ototoy.jp/_/default/p/26700

Calm:うん。ただ、自分で売ってはいるけど、ハイビット音源にはまだ疑問もあって、ハイビット音源だからといっても、パソコンのスピーカーやヘッドフォン・アウトで聴いたら、そこまで大きな違いは分からないじゃない(笑)? やっぱり、ハイビット音源を楽しむためには、しかるべきデジタル・オーディオ・インターフェイス、アンプやスピーカーも必要だし、結局のところ、よりよく楽しむには同じように工夫や試行錯誤しなくちゃね。だから、そのためには発信する音楽家からレコード会社、オーディオ・メイカーやパソコン・メイカー、リスナーそれぞれの意識が変わることで、相乗効果が生まれるんだと思うんだけどね。

— そういう意味で、アルバム『Dreamtime From Dusk Till Dawn』の先行シングルとして、12インチ・ヴァイナル「Dusk EP」は、300枚限定にも関わらず、ハーフ・スピード・カッティングという特殊な技術でヴァイナル・カッティングすることで高音質を追求した試みは、ヴァイナル化のさらにその先を模索する深川さんからの地道にして新たな提案だと思いました。

Calm:まぁ、人から見ると、わざわざ遠回りをしているように思うかもしれないけど、今回話しているように、今の時代、近道したら、自分の求めているところにすぐ着くか、その音楽が伝わるかといったら、必ずしもそうじゃないと思うんだよね。むしろ、遠回りしながら色んな人と出会うことで仲間が増えるかもしれないし、今は先を見据えた種まきの季節だと捉えて、俺は楽しんでやってるよ。

— そして、Cosmic Blessing Ensembleが6月2日に静岡のフェス、頂 ITADAKI 2013で初披露ということですが、現時点でほとんど情報がないこのプロジェクトについて教えてください。

Calm:このプロジェクトは、音楽の本当の在り方を提示する集団、コミュニティであればいいなと思っていて。そう、バンドとかグループというよりもコミュニティって感じかな。
Cosmic Blessing Ensembleに関しては、ネット上で瞬時に情報が共有出来る時代に逆行して、極力宣伝や情報を流したくないし、ネットで調べても、何にもならないと思う(笑)。そういう趣旨に賛同してくれる人のコミュニティになり始めていて、しかも、ヴァーチャルではなく、リアルなコミュニティなんだよね。そういうことを踏まえて、「どんな音楽をやってるんですか?」って聞かれたら、「いや、聴きに来てよ!」って、ただ、それだけ(笑)。

— では、最後に、今回の「80’s Magic」と題されたDJミックスについて教えてください。

Calm:DJミックスというよりは、選曲なんだけど、今回はタイトルにある通り、ここ1、2年興味があって、ハマってる80年代の音楽がテーマ。なんで、今この時代に興味があるかというと、80年代はデジタルとアナログが共存、融合した時代。なおかつ、コンピューターのテクノロジーが入ってきたことで、アナログの卓であっても、コンピューターの自動制御で動かせるようになったり、録音のクオリティもめちゃくちゃ上がっているので、昔の音楽の良さと新しい音楽の息吹、新しいテクノロジーに対する無邪気さが融合されているんだよね。そのうえで昔にはなかった斬新なミックスが施されているし、音質もそこまでデジタル臭くもないんですよ。そういう80年代ならではの音楽の在り方に自分は面白さを感じているんだけど、今回はそのなかでもミックスの技術が面白いものや録音や演奏のクオリティが高いもの、サウンドそれ自体が斬新なものなんかをピックアップしました。ストリーミングの音質に限界があるんだけど、とてつもない世界が響いてくるはずなので、スピーカーはもとより、ヘッドフォンやイヤホンで楽しんでみてください」