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ひさしぶりに楽しいヒップホップが出てきたなって。(YO!HEY!!)
— BACK TO SCHOOLは渋谷ORGAN BARの人気レギュラー・パーティ、ELECTRIC THUNDERから派生したDJデュオだということですが、2人が放課後ラップを提唱するようになったきっかけは?
SHINGOSTAR:今から3年くらい前になるのかな。ちょうど、その頃、僕はロジャー・ヤマハとTurntable Labっていうお店を手伝っていて、そのニューヨーク本店のイベントでロジャーがDJするということだったんで、様子を見に行ったんです。当時、ディプロとかジャスティスみたいなエレクトロが盛り上がっていたんで、そういうものがかかるのかなって思ってたんです。
— そうではなかった、と。
SHINGOSTAR:そう。もっとヒップホップだったというか、ソルジャーボーイがかかると、みんな、バーッて踊り出したりしてて、その踊りがまた上手いんですよ。だから、「やっぱり、ヒップホップってカッコイイなー」って再認識させられつつ、同時期にYO!HEY!!からソルジャーボーイだったり、ジャーキング(ロサンゼルスのアンダーグラウンドから発生した新しいダンスのスタイル。→参考映像)みたいなダンス・ミュージック文脈のヒップホップが面白いって話を聞かされていたので、自分でもあれこれ調べていったんです。そうしたら、10代の子たちが放課後に撮ったような、自分たちの曲のプロモーション映像がYouTubeに沢山アップされていて、独自のシーンらしきものがあることが分かって。だから、その後も気になってチェックしていたんですけど、そのうち、映像のクオリティもどんどん上がっていくし、ネット上にアップされてる曲も自由にサンプリングしててカッコよければ、ラップも上手くなっていって。その一人がマック・ミラーっていうラッパーだったんですけど、彼のビデオがいつも格好いいんで、誰が作ってるのかなって調べてみたら、Rex Arrow Filmsっていう映像集団が作っていて、その子たちの作っている映像がみんな格好良かったんです。
— ネットにアップされてる音源と自作映像が特徴って、同人音楽とニコニコ動画の関係を彷彿とさせるような、なにやらイマドキなシーンの気配がひしひしとありますね。
SHINGOSTAR:そうそう。と同時に、僕はスチャダラパーと(映像作家)タケイ・グッドマンの関係性を思い出したりもしたんですけど、「これが来たなら、僕らがチェックするしかない!」ってことで、今に至るという。ちょっと前のアメリカのシーンはいわゆるセレブ・ヒップホップが盛り上がりつつ、ヒップホップ自体が大がかりなものになっていったのに対して、白人の若い子たちの間ではヴァンパイア・ウィークエンドみたいなインディーロックが盛り上がってて、「こんな感じでもうちょっとフランクにやってるヒップホップはないのかな」って思いつつ、その空白期間はダブステップやグライム、ジャングルに目が向いていたんですよ。というのも、そういう音楽の初期衝動性、サンプリングやマッシュアップが多用されてて、T.I.とかアウトキャストみたいなアメリカのヒップホップがネタになってたりして。やっぱり、アメリカのヒップホップって格好いいし、「何かきっかけがやってこないかな」って思っていたところにマック・ミラーみたいな子たちが出てきて、びっくりさせられたという。
— YO!HEY!!くん、なにか喋ってくださいよ(笑)。
YO!HEY!!:まぁ、そんな感じなんですよ(笑)。
SHINGOSTAR:ヒップホップっていう主張のある音楽が好きなのに、主張が弱い男なので(笑)。でも、そういう新しい音楽のきっかけを持ってくるのはいつもYO!HEY!!なんですよ。
YO!HEY!!:そういう若い世代の新しいヒップホップ、ここ2、3年っていうのは、さっきも言ってたように、ほとんどがネット上で音楽がやりとりされているんですよ。いま、現行のヒップホップが好きな人はレコード屋に行って、何か買うっていうスタイルではなく、ネットでブログにアップされている映像を見て、新しい作品を知ったり、その映像にしてもリリースされてない曲がどんどんアップされているんですよ。で、その映像を見ると、明らかに様子がおかしいというか、ヒップホップっぽくない人たちがラップをやってるところにハマってしまったんですよね。
— 様子がおかしいというのは?
SHINGOSTAR:中学生、高校生、大学生が中心になっていて、これは僕の主観なんですけど、夏休みになると映像がどんどんアップされて、夏休みが終わると、急に出てこなくなるんですよ。あと、大学生の子たちがしっかりした映像を作れるのは理由があって、向こうの大学生って寮生活だったりするじゃないですか。で、大学には音楽科や映像科もあれば、普通にパソコン好きもいたりして、そういう友達のつながりで録音した曲に対して、ビデオを付けたり、寮の中で全てが完結出来るんですよ。だから、映像に出てくるのも友達だし、パーティ風景も学生寮のパーティだし、そういう学生ノリがホントに面白いんですよね。
— お二人はそういうヒップホップを放課後ラップと称しているわけですね。
YO!HEY!!:そうなんです。僕らが最初に意識したのはパリス・ジョーンズってラッパーの「Winter」って曲のビデオだったんですけど、リリースされてない曲なのに、映像のクオリティは高いし、今主流になってるデジカメで撮ったような作品でめちゃくちゃかっこいいです。
SHINGOSTAR:あと、サグ・ラップとか、そういうイケイケな曲もあるんですけど、基本的に僕らが放課後ラップと呼んでる人たちは優しそうなルックスだったりして(笑)。
— さらに音を聴かせてもらった限りでは、白人ポップス的な端正な佇まいの曲が多いというか。
SHINGOSTAR:そうなんですよね。だから、ミックスCDを作る時に困るのが、放課後ラップはイントロがロック、ポップスばりに長かったり、ビート始まりじゃなかったりするので、DJでミックスしづらいんですよ。だから、基本的にはクラブでプレイされることが考えられていないんじゃないかと思うんですよね。
あと、サンプリングにしても、誰かが使ったサンプリング・ネタは使わないっていう不文律があった昔と違って、いいトラックはみんな使うし、例えば、ウィズ・カリファみたいなラッパーの流行ったトラックをそのままみんな使ったり、レゲエのリディムみたいなノリ、しかも、ネット文化になったことで、東海岸、西海岸ってことに関係なく、面白いか面白くないかってことだけなんですよね。
YO!HEY!!:そう、90年代と違って、サンプリング・バトルの感覚があまりないし、DJプレミアみたいにチョップせずに曲を丸々使ってたり、サンプリングの捉え方が違うところも大きな特徴だと思いますね。そういう感覚はカニエ・ウェスト、キッド・カディあたりの影響が強いかもしれないですね。
SHINGOSTAR:あと、ファレルですね。ビースティー・ボーイズとか、そういうことじゃなく、カニエ、ファレルからヒップホップを聴き始めた子たちのカルチャー。ただ、カニエみたいにお金がかけられないっていうところでみんな頭を使ってるっていう(笑)。
— 2000年以降、データが主流になったこと、それからサンプリングのクリアランスが厳しくなったことで、サンプリング・カルチャーが失速していく流れがあったと思うんですけど、放課後ラップではサンプリングの手法が復活した印象も受けます。
SHINGOSTAR:確かに、一時期はみんなトライトン(KORG社のシンセサイザー)を使うようになっていましたけど、放課後ラップはサンプリングが復活してきているというところが、一番引っかかった点なんですよ。ビートはきちっとしているし、サウスのマナーなんかを消化した今っぽいものなんですけど、ネットのフリーダウンロードが主流になったことで、サンプリングっていうヒップホップの原点に戻った感はあるかもしれないですね。
僕がグライムとかダブステップにハマってる時、YO!HEY!!が見つけたイギリスのアップタウン・レコーズっていうお店に行ったら、店にあるのは全部プロモの白盤、アーティストも分からないうえに、マジックで「マッシュアップ」とか「スカ」とか書かれてて、それを聴いてみたら、スペシャルズだったり、その当時流行ってたヒップホップだったりがネタになってたりして、そういうラフなサンプリング感覚が面白かったんです。ただ、アナログってなかなかリリースできないし、今はリリース形態がパソコンのフリーダウンロードに移行したことで、みんな勝手にサンプリングしてますよね。自分がもし若かったら、勝手にサンプリングして、どんどん作ってたなって思いますし。
YO!HEY!!:しかも、そのサンプリングで使われているのもインディ・ロック、しかも、昔の曲ではなく、ヴァンパイア・ウィークエンドとか、ヴィヴィアン・ガールズとか、いまヒットしているインディ・ロックなんですよね。だから、放課後ラップは、B-BOYじゃなく、ピッチフォークなんかを読んで、新しい音楽を常に探してるヒップスターっぽい人たちが聴いてるんじゃないかなって。
— 映像を見る限りでは、みんな小綺麗だし、育ちが良さそうなところも一つのポイントかな、と。
SHINGOSTAR:そう、たぶんミドル・クラスなんですよね。だから、ちょっといきすぎたヤツだと、映像に登場する車がよすぎて、ムカつくっていう(笑)。かたや、アメリカのフェスでライヴの合間に向こうでヒットしてるヒップホップがかかると白人もガンガンに踊ってたりして、「みんな好きなんだな」って思ったりもするし。
YO!HEY!!:だから、ヒップホップっていうのは、向こうではポップスなんですよね。
— なるほど。
SHINGOSTAR:あと、彼らの溜まり場はスケートボード・ショップみたいなところだったりして、そこで流れてる昔のヒップホップとかスケボーの映像に触発されて、昔のスケボーの映像みたいにHi8を使って映像を撮ってる子たちもいるんですよ。だから、ちょっと上の世代の人たちが若い子にヒントを与えているところもあるだろうし、放課後にお店に集まっているような感覚も放課後ラップ特有のものだなって。そして、放課後ラップは初期衝動が大切だと思っているんですけど、そういう初々しさがメジャー・デビューしたり、2枚目の作品を出したりした時、メインストリームを意識しがちだったりして(笑)。まぁ、でも、かつてのパンクもそうだったし、それは仕方ないかなって(笑)。だって、B-BOYといえば、女の子とワルとメイク・マネーが好きなわけだし、放課後ラップはその手前の文化だから、2枚目が良くなくても許そうっていう、と。
— はははは。
SHINGOSTAR:でも、僕らがいうところの放課後ラップで、マック・ミラーは日本の大型輸入CDショップでもあまり売ってないのに、向こうではホントに人気があって。新しいアルバムは初週15万枚売れてビルボードで1位になりましたし、ヨーロッパツアーの映像を見ると、1曲目からオーディエンスが大合唱っていう。本人もその状態にびっくりして笑ってるんですけど、彼は一人ビースティーって感じで、ヨーロッパでウケるのもよく分かるなぁと。
YO!HEY!!:ヒップホップ好きのなかには「マック・ミラーか…」とか「ウィズ・カリファも歌いすぎてて、あれはナイね」って言ってる人もいて、イラッとする部分もあるんでしょうけど…
SHINGOSTAR:そのイラッとするところが面白いんじゃんっていう(笑)。まぁ、昔に比べると、パイは大きくないんですけど、YO!HEY!!から教えてもらう向こうの音楽サイトはギャグ映像とアニメとヒップホップが同居しているものが多くて、放課後ラップの面白い曲はそういう色んなサイトで同時にアップされることからもシーンらしきものは一応あるみたいですね。
YO!HEY!!:ここ3年くらいって、ブルックリンだったり、ロサンゼルスだったり、アメリカでインディー・ロックが流行ってることもあって、それと呼応するように放課後ラップみたいなものもあるのかなって。
— A-TRAKのレーベル、FOOL’S GOLDからデビューした日本の女の子バンド、THE SUZANなんかはインディ・ロックでありながら、アメリカではカニエと同じイベントに出たり、クロスオーバーな活躍をしてますもんね。
SHINGOSTAR:THE SUZANは「いいな」って思う向こうのイベントにはあそこもここもって感じで出演してるし、最初、日系のバンドだと思ってましたもん(笑)。あと、YO!HEY!!がオープニングでDJをやらせてもらったアトランタのバンド、ブラック・リップスも普段はばりばりサウスのヒップホップを聴いてるって言ってたしね。
YO!HEY!!:あと、ヴァンパイア・ウィークエンドもヴォーカルのエズラくんはもともとラップ・グループで活動していて、その解散後にヴァンパイア・ウィークエンドを始めたんですよね。そういうところがアメリカっぽいなと思うんです。
SHINGOSTAR:しかも、白人のやってるコメディ・ラップみたいなものをJAY-Zやカニエがフックアップしてみたり、そうかと思えば、オッド・フューチャーとかマック・ミラーも突然出てきたような印象があるし、リリー・アレンが出てきたmyspaceみたいなプロモーションの仕込みとは違った、ちゃんとした流れらしきものがあるんですよね。
YO!HEY!!:ただ、だれがそのオリジネーターなのかはよく分からないというか。映像を手がけているRex Arrow Filmsもニューヨークが拠点なのかなと思いきや、フィラデルフィアとかLAとか手がけているアーティストの出身も様々だったりして。
— 音楽メディアで、チル・ウェイヴは特定の街やシーンを背景に持たない音楽ムーヴメントっていう形容をされていますが、2人が放課後ラップと呼んでるヒップホップも近いものがあるのかもしれませんね。
SHINGOSTAR:チル・ウェイヴも最初は北欧の音楽だと勝手に思ってたんですけど、実際はアメリカの田舎街出身だったり、そう、確かに近いんですよね。
YO!HEY!!:あと、アニマル・コレクティヴのリミックスをデイム・ファンクが手がけたり、デイム・ファンクとナイト・ジュエルがコラボレーションしたり、発想が柔軟なんですよね。
— 個人的にはオーバー30の2人が放課後ラップに入れ込んでいるところがイルで面白いと思ってます。
YO!HEY!!:気持ちが若いんです(笑)。
SHINGOSTAR:僕は映画『アニマルハウス』やアイビーとか、そういう学園ものがもともと好きで、そういうものとストリート・カルチャーが結びつくことはこれまでなかなかなかったんですけど、そこに放課後ラップが出てきて、学園もの好きの責任感がふつふつと湧いてきたっていう(笑)。
— そういえば、SHINGOさんが初期にベースを弾いていたホフディランも当初は学園ものの設定でしたもんね。
SHINGOSTAR:そうなんですよ。初期はタケイ・グッドイマン、かせき(さいだぁ)とシャシャミンも参加してたんですけど、あれは30人しかいない田舎の学校の学園祭っていうコンセプトでしたしね。
— ちなみにお二人はそういうフレッシュなヒップホップをどこから見つけてくるんですか?
YO!HEY!!:一番よくチェックしているのはThe FADERやHYPETRAK、2dopeboyzやNah Rightみたいな個人でやってる?有名ブログ……扱っているのはメインストリーム中心なんですけど、情報が集約されていて、スピードも早いし、そのなかに放課後的なヒップホップも混ざっていたりするんです。
SHINGOSTAR:あと映像ばっかりを紹介しているブログとかZineばっかりを売ってるFamilyってお店のブログ、ヒップホップ系の洋服屋さんのブログにも映像や音源がアップされているし。
YO!HEY!!:NYのファッション・ブランドMishkaも新しいものを積極的に紹介していますよね。
— 音楽、ファッション、映像やZineとか、そういうクロスオーバーな広がり方は楽しいですよね。
SHINGOSTAR:もちろん、メインストリームのヒップホップはメインストリームとして、カッコイイと思いますし。
YO!HEY!!:それはそれとして、ひさしぶりに楽しいヒップホップが出てきたなって。
SHINGOSTAR:文化系ヒップホップの復讐というか、コテコテなブラック・ミュージックのカルチャーが苦手な人にとっても入りやすいと思いますし、そういうヒップホップの幅を楽しんでもらいたいなって。あとは是非、誰か日本にマック・ミラーを呼んで欲しいんですよ。聴けば気に入る人は多いと思いますし、来日したら絶対行くんですけどね。
SHINGOSTAR Twitter
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YO!HEY!! Twitter
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BACK TO SCHOOL(SHINGOSTAR & YO!HEY!!) DJスケジュール
TOKYO No.1 SOUL SET「全て光」@恵比寿LIQUIDROOM
TITLE/全て光
公演日/2011年12月29日(木)
会場/恵比寿LIQUIDROOM(http://www.liquidroom.net/)
開場/19:00
開演/20:00
LIVE:TOKYO No.1 SOUL SET
DJ:BACK TO SCHOOL (SHINGOSTAR & YO!HEY!!)
料金/
(前売)All Standing¥4500(税込)
(当日)All Standing¥4500(税込)
※ドリンク代別
チケット販売情報/絶賛発売中
○ぴあ(Pコード154-022)
○ローソン(Lコード77885)
○イープラス http://eplus.jp
主催:HOT STUFF PROMOTION
企画・制作:Melody Fair/HOT STUFF PROMOTION
後援:avex entertainment
INFO:HOT STUFF 03-5720-9999 www.red-hot.ne.jp
ELECTRIC THUNDER
11/25(金) at 渋谷Organ Bar
LIVE
AFRA
DJs
BACK TO SCHOOL (SHINGOSTAR & YO!HEY!!)
Akeem the Dream (Ri$ky Bizne$$ / T19)
Roger Yamaha (Moonwalk Records)
HAT-CHACK
and More Special Guest!!!
OPEN 21:00 / DOOR 2,000yen (1D)
http://www.organ-b.net/