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俺は音楽を置き換えるのが好き。テクノのやり方でヒップホップをやってみたり、ある音楽の方法論を別の音楽に置き換えることで全然違うものが出来たりするのが、すごい面白いんですよ。
— 8月にリリースしたセカンド・アルバム『Good Days Comin’』が非常に素晴らしくて、これは話を聞かせてもらいながら、是非、ミックスもお願いしたいな、と。
Bushmind:あっしゃす。
— 2007年の『BRIGHT IN TOWN』はファースト・アルバムでありつつ、周りの才能が結集したコンピレーション・アルバムの体裁をとってもいましたよね。
Bushmind:そうですね。ファーストの時は一人で作るより、みんなで作った方が面白いし、周りにいっぱい面白い人がいるのに発表の場を独り占めするのはもったいないなと思ったんですよね。
— ファーストから4年経ちましたけど、自分の周りを取り巻く環境はどう変わったと思います?
Bushmind:まぁ、少しずつだとは思うんですけど、聴いてくれる人が増えてきてるんじゃないかな、と。
あと、どんどん年下が多くなってきてる(笑)。ファースト出した頃はギリギリ若手でイケたと思うんですけど、もう中堅っすね(笑)。
— 世代の違いを感じたりもします?
Bushmind:8月にカセットを出したHIRATUKA DECODER……OPPA-LAとかでライヴをやってる彼らとか、元々はヒップホップだと思うんですけど、”CUSTOM”とか”YouGonnaPuff”ってパーティをやってる連中のところに遊びに行くと、ライヴは全部ヒップホップで、DJは全部4つ打ちだったりとか、そんな感じで自然に無理なく混ざってるんですよね。
自分はその辺の音楽をずっと一緒に聴いていたんですけど、そういう人間が周りにはそんなにいなかったし、俺らの周りはそういうものが途中からくっついた感じなんで、彼らを見てると、いきなり人数がばーっといて、みんな雑食だったりするし、そういう状況はいいなって思いますよね。ヒップホップのライヴの後に4つ打ちでぶちアガってるのを見るとうれしくなっちゃいますもん。
— Bushmindの雑食性はどのように培われたんでしょう?
Bushmind:やっぱ、兄と姉の影響ですかね。ラジカセをゲットした小学生くらいの頃に兄貴からテープを20本くらいもらったんですけど、そこにビルボードのヒット・チャート物からジ・オーブとかKLF、ヒップホップなんかも入ってて、それをずっと聴いていたのがデカいのかなって。まぁ、とはいっても、格好付けたい頃だったんで、分からないなりに無理矢理聴いているうちにどんどん馴染んでいったというか。
その後、ずっとヒップホップを聴いてたんですけど、今はデトロイトに住んでる兄貴の部屋から4つ打ちがずっと聞こえてきてて、最初は初期のダフト・パンクとジョシュ・ウィンクなんかに反応したのを覚えてますね。ダフト・パンクは4つ打ちだけじゃなく、ブレイクビーツも使ってるじゃないですか。あと、TB-303がエグいジョシュ・ウィンクの「Higher State Of Consciousness」もブレイクビーツなんですよね。だから、ヒップホップとリズムが近かかったことで、ダンス・ミュージックに入っていけたんです。
そして、その兄貴がやってたテクノのパーティに16くらいで遊びに行ったら、みんながものすごいぶちアガってるのが衝撃的で、いきなり自分も超踊っちゃたっていう(笑)。
— DJを始めたのは?
Bushmind:中3の時にターンテーブルを買って、DJを始めたのは16歳の時ですね。ただ、18、19の頃だと思うんですけど、パフ・ダディが出てきた辺りでヒップホップが全然面白くなくなっちゃって。それから2年くらいはヒップホップを聴くのを止めて、アメリカに行った兄貴の友達とテクノのパーティーで遊びつつ、DJではブレイクビーツをかけてたんですけど、その割合が変わっていって、4つ打ちになっていったんですよ。
— DJスニークやDJラッシュ、いわゆるシカゴ・ハウスの流れにあるトラックをプレイしていたとか。
Bushmind:そうっすね。スニークなんかはトラックのサンプリングにB-BOY的な感覚があるからすんなり入っていけたというか。ただ、兄貴の周りはハード・テクノが多かったし、実際、踊るのはそれが一番楽しかったんで、どんどんテクノ寄りになっていったんです。
あと、同じ時期にもう一人の兄貴と姉貴と一緒に暮らすようになったことで、クラブ・ミュージック以外の音楽も色々教えてもらうようになって。当時はバイトもしてなかったし、大学も週に1回くらい行けばよかったんで、ボケーッとしながら家で延々とレコードを聴いてる、みたいな(笑)。そこでロックとかジャズとか……まぁ、全然浅いですけど、そういう音楽を掘る楽しみを知って。俺の最初のミックスCD(『LETTERS TO SUMMER』)はその時期に買って聴いてた音楽が沢山入っているんですけど、サイケデリック・ミュージックを知ったのも、ハマったのもその頃だったりして。カラフルで楽しい、ああいうキラキラした世界に触れることで、子供の頃、おもちゃで遊んでいた頃の感覚がまたよみがえってきた感じ。おもちゃの家を見て、「内はどうなってるのかな?」って想像するような、今まで見てきたもののさらに奥というか、外というか、そういう違う世界があるんだなって思ったし、それは過去に聴いてきたヒップホップに感じることはないものだったんですね。
— そのサイケデリック感覚をヒップホップに感じたのは?
Bushmind:アンチコンですね。あれは俺のなかでサイケデリック・ヒップホップなんですよ。彼らを知ったのは、2002年くらいだったんで、ハマったのはちょっと遅いんですけど、田舎の白人がやってるヒップホップ、浮世離れした、チルっぽいものばっかり聴いてましたね。だから、当時は服装もヒドかったですよ(笑)。見た目を意識するのが格好悪いって思っちゃって、細いジーンズにネル・シャツ着て、髪の毛もボサボサの状態でウロウロしてましたよ。
— ホワイト・トラッシュというか、アンチ・ファッションのファッションというか(笑)。トラックを作り始めたのはいつ頃からなんですか?
Bushmind:高校生の頃、一時期、作ってたんですけど、使ってた機材を兄貴がアメリカに持って行っちゃったので、しばらく作ってなかったんです。でも、アンチコンでヒップホップ熱が高まる前、ちょうど20歳くらいの時にYAMAHAのリズム・マシーンを買って、最初作ったのはその頃ちょうどハマってた4つ打ちだったと思うんですけど、そこから本格的にトラックを作るようになったんです。それでアンチコンを聴くようになった後、MPCを買ったんだと思いますね。
— ハードコア・パンクのシーンに初めて接したのは?
Bushmind:たぶん、一番最初はLIQUID ROOMでやったLESS THAN TVのメテオナイトだから、20歳くらいの時ですかね。いや、もう、すごい影響を受けてますね。音楽以上にスタンスとか、そこに集まっている人からも刺激をもらってますし、ハードコア流れで聴いたサイケデリック・ロック、MANWOMAN、JESUS FEVERみたいなバンドにも超ハマって。
— じゃあ、ハードコア・パンクもサイケデリック解釈で聴いていた、と。
Bushmind:そうっすね。俺はストラグル・フォー・プライドにもそういうものを感じるし、アブラハム・クロスにもものすごい衝撃を受けて、そこから友達を誘って、ちょっとずつライヴに行くようになったんですよね。
— そう考えると、ヒップホップを皮切りに、ハウス、テクノを聴きながら、サイケデリック・ロックにもハマって、その流れでハードコア・パンクとも出会う20歳から22歳くらいの音楽体験が非常に濃厚だったと。
Bushmind:ホント、兄貴や姉貴、周りの影響っすね。一番上の姉貴には小2くらいの頃、アルファベットの読み方を教えてもらったことで、英語に対する抵抗がなくなって、アメリカのカルチャーを知るきっかけにもなったと思いますし、すごい恵まれた環境にいたんだなって、自分でもそう思いますよ。
— そして、2004年には三重のパーティ、elevenでストラグルとMOODMAN、瀧見さん、表参道のフィットネス・プラザでやったパーティ、GODFATHERにアブラハムが出たり、ハウスとハードコア・パンクの融合ということが言われるようになりましたよね。
Bushmind:ストラグルとかアブラハムが大好きでしたし、4つ打ちも大好きだったんで、当時、俺はむちゃくちゃハマっちゃいましたね。ただ、周りに流されたところもあったような気がするし、あのシーン全体に対しては、今はまた落ち着いていることを考えると、結局は流行だったのかなとも思うし…。今思い返すと、まぁ、楽しかったですけど、地方に行くと、RAWLIFEを神聖化している子がいたりして、そういうのもどうかなって。
— まぁ、あの時期、何かが変わった人もいるんでしょうけど、一時の盛り上がりが日常に根付くことなく形骸化して、跡形もなくなっていくサイクルを哀しいかな日本のカルチャーは延々と繰り返してきてますからね。
Bushmind:バブルみたいなものだったというか。
— そうした状況の変化もありつつ、DJとしては、Amate-Raxiで不定期にやってるテクノ・パーティ”Rush”でもプレイしてますよね。
Bushmind:そうですね。でも、テクノはここ最近、面白いものに出会えてないんで、ちょっと落ち着いてるんですけどね。
“Rush”では過去2回、海外のDJを呼んでいて、1回目は兄貴と仲がいいデトロイトのルーク・ヘス、2回目は友達の友達経由でシカゴのテヴォ・ハワードだったんですけど、2人ともDJが超良くて、テヴォはオールドスクールのシカゴものを歌モノと303を交互にかけて、発見も多かったし、説得力もあって。
まぁ、”Rush”はタイミングでまたやりたいかなって。今はディープ・ハウスとかちょっとトライバルなテック・ハウスがクリエイティヴで面白そうですよね。
— そういう意味でBushmindのハイブリッド感は広く浅くではなく、広く深いところが突出していると思うんですけど、世の音楽シーンがいくらボーダレス化したとはいえ、これだけの振り幅で音楽をやってると苦労も多いんじゃないですか。
Bushmind:周りからは、何をやるか分からないから呼びづらいとか思われてそうですよね。でも、自分のなかでは飽きたり、気分転換でやってるところもあるし、今まで積み上げたもの、その選択肢を増やしていって、その時の気分に応じてやってるだけなんですけどね。
あと、俺は音楽を置き換えるのが好きなんですよ。だから、テクノのやり方でヒップホップをやってみたり、ある音楽の方法論を別の音楽に置き換えることで全然違うものが出来たりして、そういうのがすごい面白いんですよ。
曲作り、まぁ、DJもそうですけど、自分にとってはデザインに近いものなんですよね。俺は自分でゼロからメロディを作っていくタイプではなく、ありものを持ってきて、それをハメていくのが自分の特徴なのかなって。そういう構造さえ分かっていれば、全然違うものが出来るというか、今は機材も進化して、色んなことが出来るようになっているんで、例えば、テクノDJのやり方でヒップホップも出来るようになってきてるし、そういう置き換えが簡単になっているんですよね。
— 2009年にはCIAZOOのTONO、DJ PKとのプロジェクト、D.O.D.名義でリリースしたEP『Digital Dope Bombing Arrests』では、ガバやハードコア・テクノのトラックを用いたエクストリームなヒップホップをやっていますよね。
Bushmind:まぁ、とりあえず日本にはいなさそうですよね。ああいうビートでラップして、倍になって早くなるみたいな音楽は、オランダとかニューヨークにもあるっぽいんですけど、通過するフィルターが違うので、仕上がり方は違う感じになってるんじゃないかと。D.O.D.に関しては、DJ PKの存在がデカいんですよね。あいつは自分の周り以外で、初めて出会ったヒップホップと4つ打ちの両方を通ってきたやつだったんですよ。まぁ、俺の場合、ハード・テクノを通ってきたのに対して、DJ PKはヒップホップからB-BOYのままトランス、ダッチ・ハードコアにいって、「ダッチ・ハードコアのシンセがスクラッチに似てる」ってことを言い出して(笑)。それでまぁ、色々面白い音楽を教えてもらいつつ、一緒に曲を作ってみようってことでD.O.D.を始めたんです。あのプロジェクトは超可能性を秘めてると思いますね。
— D.O.D.はホント面白いですよね。次回作は作らないんですか?
Bushmind:やりますやります。今はメンバーにギターもいて、アルバムを作ってるんですよ。あの形は、ハードコアも全部打ち込みに置き換えられるし、さらにラップも乗せられるし、ダンス・ミュージックが基本にあるじゃないですか。だから、自分がやってる音楽では一番受け口が広いプロジェクトというか、がんばれば、世界標準になれるんじゃないかとも思っているんですけどね。
— そして、Bushmindにとって、アンチコン以降のヒップホップではやっぱりジェイ・ディーの存在は大きいですよね。
Bushmind:そうですね。まぁ、今さら俺が言うことではないと思うんですけど、ちょうど、ストラグルの『You Bark We Bite』の12インチをデトロイトに作りに行った時、みんなで遊びに行って、そのタイミングで出たジェイ・ディーの『DONUTS』を向こうでずっと聴いてたんですけど、デトロイトで聴くと、あのスネアの乾いた感じがしっくりきて、日本で聴くのとは全然違うんですよ。あの自由度はすごいですよね。しかも、あんなにカラフルで色んなノリがあるけど、トラックの作りは簡単に聞こえるし、一枚通して、ずっと聴いていられるのがスゴいですよね。
— それ以外では?
Bushmind:CIAZOOですね。出会ったのは、あいつらがちょうどハイフィーにハマってた時だったんですけど、その時の出会いは超衝撃的でしたね。それでマック・ドレーを教えてもらったんですよね。
— ははは。「Thizzle Dance」だ。
Bushmind:そうそう。「マジで? エクスタシー!?」みたいな。それでもうぶちアガっちゃって。
— おお、すごいタイムリーな話題。個人的な話になるんですけど、ちょうど8月に出た音盤時代の創刊号で、2000年以降のアメリカに出てきたエクスタシーの影響下にあるヒップホップ/R&Bの記事を寄稿したところなんですよ。
Bushmind:え、マジっすか。それ読みたい。だって、日本でその辺のことを文章にしてる人っていないですもんね。2003年に出たアッシャーとリル・ジョン「Yeah!!!」のPVを見た時、自分でもそういうことなんだろうなと勝手に思っていたんですけど。
— ハイフィーとクランクもそうだし、1999年頃からドクター・ドレとかエミネムのリリックでエクスタシーのトピックが扱われていたり、アウトキャストも『Stankonia』を作るにあたって、レイヴのフィールド・リサーチをしたらしいです。
Bushmind:アウトキャストは音もそうだし、見た目もそんな感じですもんね。で、まぁ、話を戻すと、CIAにハイフィーを教えてもらって、音楽もそうだし、ヒップホップとエクスタシーがつながったっていう事実にアガっちゃって。ハスリン・ラップでネタの話が出てくるのはまぁ分かるじゃないですか。でも、マック・ドレなんかは、レイヴの楽しい感じを出してるところがすごい衝撃で。
— 2002年に出た『Thizzelle Washington』のアートワークとか。
Bushmind:(笑)あれは最高ですよね。しかも、もともとは銀行強盗とかで、サグな人じゃないですか。そういう人がああいう楽しい感じになっちゃってる事実が熱かったというか。
で、まぁ、CIAからはハイフィーだけじゃなく、サウスものも教えてもらって、サウスの特殊な感じを知ってからはそういうものも掘るようになったり、シンセ使いもミニマルなものが多かったので、そういうトラックをテクノと重ね合わせて聴いたり、実際にDJでもそうやってプレイしてみたり。
— ただ、個人的には、トランス・ノリが落ち着いて、エレクトロ寄りになってるメジャーのヒップホップ、R&Bはいまいちピンと来ないというか。
Bushmind:はははは。萎えますよね。トランスの方がまだ許せるというか、聴きはしないけど、壮大すぎて、スゴいんじゃない?っていうか、よくそこまでイケるね、みたいな(笑)。でも、あのエレクトロのプラスチックな感じは俺も全然ダメなんですよ。深みも突き抜け方も足りないように感じちゃって。
まぁ、でも、最近のヒップホップはスゴい面白いですよね。やっぱり、機材の進歩だと思うんですけど、サンプリングの仕方がもっと広がっているというか、無理矢理トラックに合わせることが出来るから、想像したことがある程度形で出来るようになって、縛りがなくなったぶん、色んな形が出てきていて、ピッチにしても早いのも遅いのも色々あるし。
俺も人から教えてもらってるんですけど、カレンシー周りはノリが自由で面白いですよね。あと、今はみんな作品として出さずにフリー・ダウンロードで出してるじゃないですか。そういう埋もれているもののなかに面白いものがあって、俺らの周りではDJ HIGHSCHOOLってやつがスゴい掘ってて、やつから教えてもらうことが多いかもしれないですね。まぁ、作品通して全部いいものはなかなかないんですけど、自由度が上がってることもあって、ヤバい曲が突然出てきて、しかも、それがフリーでアップロードされてるっていう。だから、探せば探すほど面白いものはあると思いますよ。
— 非常に興味深い話です。
Bushmind:まぁ、でも、いま一番聴いてるのはERAですかね。
— ERAは最高ですよね。彼はもともとPAYBACK BOYSのMERCYとWIZ OWN BLISSってバンドをやっていたとか。
Bushmind:そうそう。俺もそのバンドのライヴは1回しか観たことがないんですけど、超格好よかったですよ。
— 7月に出たERAのアルバム『3 WORDS MY WORLD』は、個人的に今年聴いた日本のヒップホップで一番衝撃を受けたんですけど、そういうバンドのキャリアがありながら、やってることは非常にユルいというか。彼は一体何者なんですか?
Bushmind:まぁ、天才なんじゃないですかね(笑)。いや、ホント、そう思いますね。前から顔見知りではあったんですけど、俺も彼としゃべるようになったのは、一緒に曲作ろうってことになってからなので、ここ最近の話なんですけど。メロディのセンス、グルーヴ感もスゴいと思うし、あのアルバムに参加出来たのがホント光栄ですもん。
— D.U.OってグループとしてもCD-R2枚ぶんのアルバムがあるとか。
Bushmind:そう。本人たちが自分たちで聴くために作ってたアルバムで、身内のみ、会員のみが聴けるっていう。外に向いてない、一番ピュアなヒップホップというか。
— ERAの作風も、外に向けて全開って感じじゃなかったりしますし。
Bushmind:まぁ、そうっすね。基本スタンスは変わってないというか、ずっと少人数で、超贅沢に楽しむ感じで音楽をやっていくんだろうなと思っていたので、外に向けて、まさかアルバムを出すとはって感じでしたね。俺のなかでは、最先端かどうかは分からないですけど、説教臭さもないし、悪ぶったりもしないし、ホントに自分の気持ちを素直に形にしていて、いま一番面白いなと思ってますね。
— そういう意味で今回の『Good Days Comin’』に参加しているERAやCIAZOOだったり、いまのヒップホップ・シーンからは新しい才能が出てきてる予感があります。
Bushmind:そうですね。面白い人たちはまだまだいっぱいいると思いますよ。
— bushmindが参加しているSEMINISHUKEIっていうクルーについて教えてもらえますか?
Bushmind:SEMINISHUKEIは”美味しさ音楽探検隊”って最近言ってるんですけど(笑)、みんな内に向かってるというか、社交的な人間が少なくて、見た目はかなりユルいですね。メンバーは20人いないくらいかな。それぞれ追ってるものがあって、それぞれに色があるんですけど、あんまりガツガツしてないところが良さでもあり、信頼出来るところでもあるっていう。
— ただ、今は通販のHPもあるし、ブログもあるから、ちょっとずつ誰が誰だか分かってきたというか。
Bushmind:そう。もう、謎にするのはやめようかって話になってきていて(笑)、やってることが少しでも生活の足しに出来るようになればなとも思うので。まぁ、その点、人材は豊富だと思うんですけど、みんなにはもっと曲を作ってもらって、アルバム単位で作品をリリースするようになれば、それぞれの色がもっと出せるんじゃないかな、と。
— そして、Bushmindの8月にリリースされたセカンド・アルバム『Good Days Comin’』についてなんですけど、長らく構想をあたためていた感じなんですか?
Bushmind:もともとはベスト盤+未発表曲集って感じで、CD-Rで出そうと思っていたんですけど、(レーベル)PRESIDENTS HEIGHTSのMercyくんと話しているなかでセカンド・アルバムにしたらいいんじゃないってことになって。だから、ハード・ディスクに入ってる未発表トラックのストックをばーっと並べて、流れを作っていったんです。内容的には『BRIGHT IN TOWN』以前のものが半分くらい。新しいものだと、今年の春ぐらいに作った「New Decade」、MercyくんとDJ One-lawに参加してもらった曲ですね。だから、このアルバムでは曲を作り始めて積み重ねてきた曲を出した感じですね。
— このアルバムは、ヒップホップ・トラックからロービート、アシッド・ハウスにチルアウトなトラックもあるし、Bushmindの多面性が表れていると思うんですけど、その辺りのバランスは考えました?
Bushmind:いや、自分が楽しめるように作っただけなので、あんまり、そういう意識はなかったんですよね。TB-303を使ったアシッドハウスっぽい「G Dat E」っていう4つ打ちの曲は、自分のなかでイジャット・ボーズが流行ってる時に「ディスコ・ダブを作ってみよう」ってことで作り始めたら、ディスコ・ダブじゃなくなってった曲だし、「No Sleep Daydream」っていうテンポ遅めのダンス・トラックなんかはまだラッパーの知り合いがいなかった5、6年前のもので、最初は漢(MSC)のアカペラを乗せていたんですけど、そのままでは出せないので、CIAのアカペラを乗せてみたらぴったりハマったこともあって、ラップを録り直したんです。
— 「Archaelogical Digging」はワールド・ミュージック的なエスニックなフレイヴァーもあったりしますし。
Bushmind:この曲は「遺跡発掘」って意味なんですけど、俺、遺跡発掘のバイトをしてたことがあったので、それをテーマにインドもののレコードをサンプリングして作業したら、どんどん壮大になっていって。俺のなかではSFアドヴェンチャー・アクション映画のつもりで作ったんですよ(笑)。まぁ、伝わりづらいかもしれないですけど、ワープしたり、開けたり、そういう勝手なこだわりがある曲なんですよね。
— 今の話もそうですけど、Bushmindはサイケデリック・ヒップホップと形容されることが多いですよね。
Bushmind:正直言って、本気のサイケデリック音楽好きの耳が怖いですよね。こんなんでサイケデリックって言っていいのかなって。まぁ、サイケデリックってことは意識しましたけど、まだまだ表現しきれてないというか、曲のなかに驚きが足りないかなって。
— ただ、サイケデリックって、ドロドロしたものもあるし、色々あるなかで、Bushmindのトリップ感って、壮大なものじゃなく、きらきらしてて、色が沢山あって、また身近なところに着地する感覚。楽しい一日や時間が日常的に巡ってくる、そんな印象を受けました。
Bushmind:そうですね。あんまりフリーク・アウトしすぎるのも、まぁ、それはそれで面白いと思うんですけど、自分の芯にあたるものは、地に足が付いたものだし、そこはちゃんとしなくちゃなって思いますし、普段から楽しい日はいっぱいあると思っているんで。そういう感じを分かってもらえたら、うれしいですね。
あと重要なのは、今回、アルバムのアートワークを作ってもらったnoiseくんと話し合いながら、同時進行で作ったんですけど、あがってきたアートワークを実際に見て、イメージがふくらんだこともあったり、このアルバムのなかで彼の比重はすごいデカいので、そのことはちょっと付け加えさせてください。。
— そして、今回作ってもらったミックスのお話もお伺いしたいんですけど、聴かせていただいいて、いい意味で驚かされました。
Bushmind:ありがとうございます。ミックスのテーマは、『Good Days Comin’』もそうですけど、自分のサイケデリック感覚を養ってくれた曲、『Letters To Summer』を作ってた時に聴いてた曲を沢山入れてみました。
— 最後に今後の予定を教えてください。
Bushmind:せいっす。まず、『Good Days Comin’』のアナログが出ます。ジャケットもちょっと作り直して、曲も何曲かミックスし直そうと思ってます。それからwenodがやってるレーベルの7インチ・シリーズでBushmind名義の新曲を出します。あと、作り途中のミックスCDで日本語ラップ・ミックスとテクノ・ミックス。それからD.O.D.のアルバム、まだ実験中なんですけどSTARBURSTとDJ HIGHSCHOOLと俺の3人でサイケデリックヒップホップアルバムを作ってますね。それから、今回の『Good Days Comin’』はそこまで技術がなかった頃の曲が中心だったこともあるし、今の機材だったらもっと色んなことが出来るはずだと思っているんで、来年はオール新曲でサード・アルバムも出したいですね。
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Bushmind DJスケジュール
9月30日(金)
「Da Somkerz Delight vol.52」@原宿 Fiction UG
10月7日(金)
「Da Somkerz Delight vol.53」@三軒茶屋 Flower
10月15日(土)
「Hard Gain」@渋谷 Amate-Raxi
10月22日(土)
「2×4」@大阪 Compufunk Records Backroom
10月29日(土)
「Seminishukei」@青山 蜂
11月11日(土)
「space 2 space」@中野 heavysick ZERO