「良いお店」ってのは、案外、世の中にたくさんある。とにかく情報が早いお店、品揃えが自分好みなお店、素敵なマスターがいるお店、居心地が良いお店、長い時間を共に過ごしてきたお店、なんだか分からないけどずっと居たくなるお店。
本企画『あなたの街の「良いお店」』では、毎回EYESCREAM.JPがレコメンドする「良いお店」を1つずつ取り上げ、店主への簡単なインタビューと共にご紹介。
第4回目を迎えた今回は、愛知県名古屋市で10年以上にわたって常に第一線を走り続けているショップ、UNEVEN GENERAL STORE。徐々にフィールドを拡げ、現在は2フロア構成で展開している同店。ブレないストイックさや実直さは、意外にもシンプルな考え方から生まれていた。
#04:UNEVEN GENERAL STORE(愛知県名古屋市)
— 名古屋のこのエリアにショップをオープンした経緯を教えてください。
2005年に泉エリアの2階店舗にてオープン。2011年には店舗面積の拡張と業務の拡大に伴い、現店舗に移転しました。2016年、現店舗の2階部分に新たなフリースペースを開設し、現在12年目となります。
— 店名のUNEVEN GENERAL STOREにはどのような意味がありますか?
UNEVENを直訳すると“平でない”とか”不規則な”という意味となります。良い意味で“ムラのある”、また余白の多いお店になればと考え、頭にUNEVENを、そしてGENERAL STOREは、アメリカの田舎町にあるような、豊かなコミュニティーを持つよろずや的な存在を思い描き、現代の都市生活者に重ね合わせて、UNEVEN GENERAL STOREとしました。
— 現在、2フロアでの展開ですがそれぞれコンセプトはありますか?
ショップとしては半期ごとにシーズンコンセプトを打ち出し、お店作りの基軸としています。また同時進行でシーズンヴィジュアルを作製し特設サイトにて公開しています。2016年春夏シーズンのコンセプトは3シーズン継続している”POST MODERNIST”なのですが、同じコンセプトを数シーズン打ち続けることで、強度を積み重ねていけると考えています。具体的には次の時代性を持ち、クリエイティブに生きる都市生活者をメインターゲットに、彼らの生活デザイン、価値観や美意識をイメージして、必要な要素をお店作りに反映させています。結果的に国内外のファッションデザインだけではなく、古着やフォークアート、デザインオブジェクトや植物等、デザインとカルチャーを共通項に横に広がっていくパッケージングが今期のコンセプトとなりました。
常に自分たちがやるべきことかどうかという部分を自問し、出来ないことには手を出さない。実店舗重視、メンズのみの展開という構造を基本的スタンスとしています。
— UNEVEN GENERAL STOREならではの強みはどういった部分でしょうか?
特に重点を置いているのは取り扱いブランド、取り扱い商品を正しく伝える為の丁寧な接客と空間作り・商品の伝え方です。具体的には、間口が広く公共的なイメージを持つ1階店舗と、閉鎖的で無味無臭空間である2階店舗を使い分け、よりクリアで伝達率の高い場作りを意識しています。各一画的ではなくスタッフ個人の持ち味を生かし、それぞれが役割分担を理解した集団としての力も、大切だと考えています。
また定期的に行うイベントにも重点を置いています。表層的な取り組みではなく、ファッション屋としての立ち位置をキープしながら、いろいろな角度から見られているという意識を持ってイベントコンセプトを磨いています。植物なら専門的な農家まで足を運びますし、デザインオブジェクトであればその背景もリサーチして、海外へ買い付けに行きます。
自分たちの足でしっかり立つこと、マーケットの中で独立した存在であることを目標として、その中で基本的プロセスを継続するということが、コンセプトを成り立たせる為のアクションにも繋がり、お店としての強みにも繋がっているのかな、と思います。
— 食文化が強く根付いている名古屋ですが「ウチの店へ来たら、近所でこれ食え」的な飲食店やお土産など、おすすめの食べ物があれば教えてください。
名古屋なので喫茶文化がお勧めです。
純喫茶ボンボンは、昭和24年創業、昭和の香り漂う純喫茶。美味しいコーヒーとケーキが頂けます。昭和22年創業コンパル大須本店も、名古屋独自の喫茶文化を牽引してきた老舗。モーニングセットが定番です。
—その他に 「ウチのお店へ来たら、ここは寄ってけ」的なおすすめのスポットがあれば教えてください。
リメイク商品も展開しているクリエイティブな実力派お直し屋さん、アトリエレイ。中でも、地元生地工場から出る廃材を使用し、しっかりと目を詰めて手編みで仕上げた100%リサイクルラグに注目しています。
北欧を中心としたアンティーク、古道具、民具、手工芸品屋さん、ミュシカはオーナーご夫婦の人柄がお店に現れた丁寧なお店。スウェーデンのストックホルムで活躍する女性の陶芸家アンソフィー・ゲルフィウスさんのストーンウェアが素晴らしいです。
—気になる今後の展開を教えてください。
2016年秋冬シーズン中には、北欧ミッドセンチュリーの器をソースに、現代のファッションと重ね合わせた企画展を行います。職人らしい手の込んだデザイン、実用性と生産性 をキーワードに、ファッションと器を同じ空間に並べ、その奥にある作り手としての共通項を探るというコンセプトで進行中です。
また、”地域性”をテーマに東海地方の良いモノを再考し、ファッション業界最前線で活躍するクリエーターの感性と重ね合わせて新しいプロダクツを創造するプロジェクト『Hello Tokai』も、ゆっくりと熟成させて納得がいく新しいプロダクトが完成次第、リリースしていきます。
—イベントもよく企画されていますが、近々開催の予定はありますか?
7月10日(日)まで、『古着とものさし展』が開催中です。現代のファッションシーンの中で、どうしても避けて通れない古着との関係性をテーマとした企画展で、東京町田のTREDICIをゲストに迎え、古着の良さと選ぶ楽しみ、見つけた喜び、着こなせた充実感を体感するイベントです。新品、古着、ブランド、ヴィンテージやレギュラーといったカテゴリーを排除して、自由で自分らしいスタイルやストーリーを作り上げる事こそが本当の個性であり、ファッションにおけるヨコ幅の拡張工事であると考えています。
私たちは新品商品を取り扱い、その時代を反映したファッションを提案する立場。一方、TREDICIも丁寧に古着を扱いながら、前を向いた新しい古着屋の方向性を感じます。そういった重なりを認め合う事で『古着とものさし展』は5回目の開催を迎えました。自身の価値観(ものさし)を信じてそのモノに十分な価値を見出し、自己の選択に満足するというプロセスは、豊かな生活をデザインする上で重要なポイントだと考えています。